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最後からの二番目の真実

御意見無用、ガバナンス無用のWHが破産法申請

東芝傘下の原子力関連大手、米ウエスチングハウス(WH)が29日、連邦破産法11条の適用を申請する――と各種メディアが相次いで報じている。これにより東芝は海外原発事業からの撤退に向けて一歩踏み出したことにはなるが、コーポレート・ガバナンス(企業統治)や内部統制を保てない企業が、その存在意義さえ厳しく問われることを改めて示した。


東芝の2015年に粉飾決算が発覚する数年も前からWHは企業統治の問題が囁かれていた。「かつてWHが三菱重工業と親密だった時も、WHは技術面での優位を理由に三菱重工の意見に耳を貸さなかった。東芝の傘下に入ってもそうした姿勢は変わっていないらしい」というものだった。WHはずっと不羈で、御意見無用の会社だったのだ。経営に節度を欠いていた東芝が、ガバナンスの利かないWHを傘下に収めたのだから放漫経営に歯止めがかかるどころか、負の相乗効果が表れたと見るべきだろう。ガバナンスを蔑ろにしたWHの経営が破綻し、野放図にリスクを取り続けた親会社の東芝まで解体されていくのは当然と言えば当然の成り行きだ。

「それにしても......」と思わずにいられないのは、企業統治の難しさだ。一日の長があるはずの米国企業にさえ、ガバナンスの利かない企業があるのだ。やはり企業統治は経営者個人の資質や思考法によって守るのではなく、強固なシステムとの両輪が揃わなければ維持することはできない。

もうひとつ問題を挙げるとすれば、原子力事業は民間企業が抱えるべきものであるかどうかだろう。東芝がWHを買収した際、共同出資を働き掛けた相手に住友商事の名前もあった。WHへの出資を決める住商の取締役会では、一部の役員から「原発事業は民間企業が負えるリスクではない」として反対意見が出た。反対した役員は「私が反対したことは取締役会議事録にはっきり残してほしい」とも求め、その強硬さに他の役員が鼻白むほどだったと聞く。

しかし住商は親密なビジネスパートナーである三菱重工業との関係に配慮しなければならないなど、様々な事情があって結局出資は見送られた。出資に賛意を表した当時の住商役員は今、東芝の惨状を見てどう思っているだろう。

原子力関連事業のように長期にわたってリスクにさらされる続ける事業は、目先の利益を極大化させることを重視する現代の経営と間尺が合わなくなっているのではないか。国際的な安全保障上の問題としても重要な原子力事業は、売りたくても売れず、退出が難しい。世界を見渡しても、原子力関連企業には不正や不具合の隠蔽が決して少なくないのも、退出の難しさと無縁ではないだろう。

仏アレバがそうであったように日本でも原子力関連企業は国営化の道を辿り、東芝は本誌でも指摘した「東京電力と一蓮托生となって、核の墓守」として生き延びるしかない。

神戸製鋼、「中国関連」損失が第二幕

学校法人森友学園への国有地売却問題で、名誉校長だった妻とともに国会で連日「ヤリ玉」にあがっている安倍晋三首相だが、1979年から会社員として3年間勤めて「私の原点」と語っていた勤務先、神戸製鋼所まで株式市場でキナ臭くなってきた。

2月2日に神戸鋼が業績見通しを下方修正したからだ。単に業績の好不調に対する関心というよりも、中国経済の減速と鋼材市況の急落で16年3月期に216億円の純損失に転落した悪夢の再現が始まるのではないかという警戒感が漂い始めたらしい。

神戸鋼の下方修正は、高炉の改修費用を計上したのに加え、中国での建設機械事業で2015年度以前に発生した焦げ付きを引き当て処理したことによるもの。通期の売上高は従来見通しを据え置いたが、営業利益は従来比400億円減の50億円とし、連結純損益はトントンを見込んでいたのを400億円の赤字に修正した。当然、無配転落である。

鋼材市況は中国の減産でやっと底入れしたというのに、一難去ってまた一難?市場の憶測を呼んだのは、業績そのものというより中国での建機事業で計上した損失だ。

建機事業は神戸鋼のセグメントの中でも一定の存在感を見せてきた。ところがその中国事業は、営業と財務・経理を中国のパートナー企業が担当し、生産と技術は神戸鋼が受け持つ体制だった。中国側のパートナーは与信管理が甘く、回収不能になったり滞留したりする債権が膨張。近年は毎年のように損失計上を余儀なくされていた。

そこに打ち出されたのが、310億円もの引き当て処理だった。今回の神戸鋼の発表資料には「中国側パートナー企業と合弁解消」「貸倒引当金の追加計上」「滞留債権の回収が進まない状況」「支払い遅延の常態化」といった言葉が並び、事態が深刻であることをうかがわせる。中国事業の難しさを改めて浮き彫りにした格好だが、同時に異様さを感じ取った市場参加者は少なくなかったはずだ。「中国でハメられたのではないか」と信用調査会社も懸念を隠さない。

近年、中国市場で損失を計上した企業のなかには、かなりの痛手を負ったケースが目立った。2015年には中国現地法人の責任者が売上高を架空計上していたことが発覚し、民事再生法の適用を申請した江守ホールディングスや、ドイツ子会社が買収した中国企業の粉飾決算が明らかになり、社長のクビが飛んだLIXILの例がある。

神戸鋼も江守やLIXILと同様、2年ほど前から中国関連の損失が計上され、"何かある"と思われてきた銘柄の一つだ。昨年、10株を1株にする株式併合を行っているためわかりにくいが、併合前なら1株100円にも満たない低水準で取引される場面が多かったのはそのせいだろう。

神戸鋼が江守のような最悪の事態に追い込まれるとは思わないが、江守と神戸鋼には債権管理の甘さなど、似ている点があった。神戸鋼では今回の業績見通しを下方修正したことについて「過去の決算の修正を伴うものではない」と説明しているから、素直に受け止めれば中国のパートナー企業が売上高の水増し計上などを行っていたわけではなさそうだ。

しかしまもなく3月決算期末が到来する。江守がそうであったように、この先、監査法人の目が届きにくい中国関連の損失を計上する企業が再び増えるかどうか、気をもむ市場関係者は少なくない。

アベノミクスの失敗にもかかわらず、支持率6割強の「安倍一強」政権、最長政権も狙えると慢心し始めた矢先、静かにその強運に逆風が吹き始めたのかもしれない。

「難破船」東芝から取引先は逃げ出すか

船が沈没しかけると、船内のネズミたちが我先に逃げ出すという。信用調査会社が東芝の取引先の動向を調査し、近く発表するそうだが、その離散度合いを測る目安になる。

東芝は原発部門ウエスチングハウスでの損失が5千億円を超すと言われるほど膨らみ、2年連続の巨額減損処理を迫られそうな形勢だ。このままでは3月期末に債務超過に陥ってしまうため資本調達が不可欠とみて、早くも切り売り先に関心が集まるが、これまでの優良な顧客や下請けが逃げずに東芝に付いてきてくれるかどうかも再建の成否を大きく左右する。

バブル崩壊後に経営破綻が続出したゼネコン業界では、下請け先がほとんど逃げなかった業者の再建が早かったという実例もあるから、取引先の動向は決して疎かにはできない。

帝国データバンクが実施した2015年7月の調査では、東芝とそのグループ企業の取引先企業は国内で2万2244社。内訳は「仕入先・下請先」が9649社、「販売先」が1万3746社だった。その後、ヘルスケア事業や白物家電事業などの売却によって取引先が減っているのは間違いないが、残した事業でどれだけ取引先を引き留められているかがポイントになるだろう。

かつてシャープの取引先を帝国データが調査したところ、離散度合いが顕著だった。価格や納期、支払い条件でいじめ抜かれた下請けがそっぽを向いたためで、その後のシャープがどうなったかは改めて記す必要はあるまい。東芝も粉飾決算が表面化する前には、取引先に対して一方的に支払い条件の変更を求めていたから、これに不満を感じていた取引先は少なくないはずだ。

しかも東芝が会社更生法の申請など法的整理を避けられないとの論調も目立ち始め、風評が悪化している。事業のさらなる切り売りが避けられず「緩やかな解体が始まった」との論調が、いつの間にか「法的整理やむなし」との論調に傾き始めている。原発事業での損失が7千億円に膨らむとの公算が支配的になったためだ。

しかし「債務超過に転落することはあっても、原発部門を抱えたまま政府に見捨てられて経営破綻するようなことはない」との見方が支配的なのか、株価は昨年来安値も更新せず、250円前後で推移している。東芝の先行きを心配して信用調査会社に与信状況を問い合わせる電話も、ほとんどかかってこないというから、取引先は案外落ち着いている。

とはいえ、「Xデーはいつか?」といった市場の憶測が飛び交いやすい状況が当分は続くだろう。3月決算期末を乗り切れば、今度は6月の株主総会後(会社更生法などの申請に動きやすい時期とされる)に差し掛かり......といった具合だ。

東芝グループの社員数は20万人近い。その後の事業売却によって社員数が減ったとはいえ、これが破綻すれば、その家族や取引先の社員も含めて100万人を超える人々が路頭に迷いかねない。ちょっとした政令指定都市の住民が丸ごと漂流してしまうような話だ。「働き方改革」などとノンキなことを言っている場合ではない。

しかも民生電機メーカーのシャープと違い、東芝は総合電機メーカー。国防産業の一角でもあり、公的部門への関与も大きい。出資には政策投資銀行や産業革新機構など政府系金融機関が取り沙汰されている。

福島原発事故以前、政府は原発輸出をバックアップし、原子力発電をエネルギーミックスの要と位置づけてきた。その割には、東芝の支援にその関与が今ひとつはっきりしないようにみえる。政府の関与がはっきりすれば、取引先の離散や動揺を防げるはずだが。

オリンパス報道、LAタイムズとシンクロ

いかなる抗生物質も効かない超耐性菌の感染問題で追い詰められているオリンパスについて、月刊FACTA1月号に記事(「オリンパスは二度死ぬ」)を掲載した。

オリンパス製の十二指腸内視鏡が構造上の問題を抱えており、欧米で超耐性菌に感染した患者が大量発生。30人余りの死者を出して患者が集団訴訟を起こす一方で、米国の連邦食品医薬品局(FDA)や司法省などはオリンパスの対応に不備があったとして、水面下で数千億円の罰金のほか、薬事審査の拒否や執行役員らの逮捕を通告してきた――という内容である。

オリンパスは米国や南米の医療機関に利益供与したとして、この3月に米司法省と和解、罰金740億円を支払ったばかりだが、今度は同社の連結売上高の3分の1を占め、日本や欧州よりも大きな位置づけになった米国市場から追放されかけているようにさえ見える。

この報道を受けて、オリンパス株は一時下げ足を速めた日もあったが、オリンパスは例によって一片のニュースリリースさえ出すことなく沈黙を守っていることもあり、株価も落ち着きを取り戻した。しかし、国内外で報道陣のオリンパス包囲網は確実に狭まっているようだ。

ロサンゼルス・タイムズ紙に超耐性菌問題の調査報道記事を寄稿しているチャド・ターヒューン記者と本誌は協力関係にあり、彼もFACTA1月号発売(12月20日)とほぼ同時期の12月19日付で続報記事を彼の本拠であるカイザー・ヘルス・ニュース(KHN)に載せている。

それによれば、「矢部久雄執行役員らが11月30日と12月1日に東京の米国大使館で弁護士の尋問を受けたが、米国憲法修正第5条に則って黙秘権を行使した」「米国は1月には米国現地法人の役員に対して尋問を行う」と報じている。業界紙もオリンパスの記事を掲載するなど、オリンパス関連のニュースがメディアを賑わす頻度は上がっている。

感染者が発生していない日本では、この問題についてほとんど報じられてこなかったが、風向きが変わってきた。海外の監督官庁への報告に不備があったとして米国が逮捕を通告してきたとされる執行役員に対して、一部の全国紙が直接取材しようと接触を試みているという。

東京・八王子市にあるオリンパス石川事業所では、取材対応を求める記者と、広報を通して取材するよう求める執行役員側との間で険悪な雰囲気さえ漂ったという。

市場では不自然(?)な株価の落ち着きとは別に、アナリストたちがそわそわし始めた。

複数のアナリストがFACTA編集部に「詳しい話を聞かせて欲しい」と面会を求めてきているのだ。オリンパス株を買い推奨しているアナリストが多いだけに、報道が活発化していることに落ち着きを失っているのだろう。

ただ、大量感染が問題化したときに、FDAはオリンパス製内視鏡の販売や使用を禁止しなかった。感染リスクと内視鏡を使えなくするデメリットを天秤にかけた措置だったのだが、この対応に問題はなかったのか、との指摘もある。こうしたポイントも含めて、新年もオリンパスは本誌のネタになり続けるだろう。

関係各位に願わずにはいられない。どうぞよいお年を。

タカタ法的整理へ、「明日は我が身」の企業

エアバッグのリコール問題に揺れるタカタが再建に向けて、一つのヤマ場を迎えようとしている。再建の方向性を年内にも打ち出したいとしていたタカタに対し、外部専門家委員会がスポンサー候補を海外勢に絞り込んでいるとの報道が相次ぐようになった。

今後膨らむとみられる損害賠償金や制裁金、1兆円を超えるとも言われるリコール費用で自己資本が枯渇してしまうばかりでなく、エアバッグの顧客である自動車メーカーは相次いで「新型車にはタカタ製品を搭載しない」と表明しており、事業基盤の劣化を最小限に食い止める手当ては時間との戦いだ。

タカタは中間決算の発表時にも製品の安定供給を理由に、あくまでも私的整理にこだわりをみせた。これに対して、国内外のステークホルダーたちは法的整理による再建で臨もうとしているうえ、膨らみ続けるはずの偶発債務を前に"なんとしても健全な事業だけは生かす"という選択肢を選ぶのなら法的整理の方がいいとの指摘もあるから、タカタにとって厳しい結果になる公算が高い。

身から出たサビとはいえ、翻弄されているタカタを見ていると、改めて「こういう時代なんだな」と思わされる。海外事業で大きな失敗を犯し、それへの対応を誤ると手足を絡め取られるようにして経営の自由を奪われ、外国企業や投資ファンドの餌食になってしまう。資本の論理からみればタカタがそうなるのは仕方がないにせよ、日本の成長戦略や産業ポートフォリオの視点から見ればもったいない話だ。

日本企業が世界的に高い成長力やシェアを持っている分野であれば、なおさらだ。タカタへの出資を検討しているスポンサー候補の顔ぶれを見ていると、中には過去の出資案件で随分強引なことをやってきたファンドも含まれているし、米国籍でありながら資本上は中国企業傘下に入っている事業会社もある。まもなく決まるスポンサー企業がどこになるにせよ、力のある企業が最終的に誰に転売されるかわからない。

今さらこんなことを書いてみたのは、よく似た事例をいままさに追いかけているからだ。一企業の問題が、中長期的には国家戦略上の手痛い失点につながり、旨みのある部分がみすみす海外勢の手に落ちたり無力化したりしてしまうという深刻な問題である。「戦術があって、戦略がない」と言われる日本人や日本企業にとって、タカタの問題は対岸の火事ではないのだ。

まして年明けに発足するトランプ政権は、外国企業に対してビジネスフレンドリーとは言えない。過去に差別発言で顰蹙を買ったこともある人物が司法長官に指名された。爪はじきされるのはメキシコやキューバなど中南米だけではないかもしれない。白人至上主義者の目には、アジア人だって似たような存在に映っているかもしれない。新政権発足を前に、すでに喉元に匕首(あいくち)を突きつけられていながら、無為無策であるかに見える、ある日本企業についてFACTA次号でレポートすることを予告しておこう。

三菱自動車の内部統制と益子社長の「二重の責任」

株式投資の世界に身を置く者なら、企業の不正が明るみに出るたびに、誰でも「不正は数字だけにとどまらないのでは?」と考えたことがあるのではないか。

日々の業務が適正に行われていなかったのに、内部統制報告書には"内部統制は有効"と記載されている。これは虚偽記載にあたらないのか?つまり金融商品取引法違反にならないのか?

虚偽記載というと、有価証券報告書なら収益の水増しや総資産や純資産のかさ上げなど、数値に表れる"定量的な要因"が思い浮かぶだろう。東芝やオリンパスの粉飾決算はこれにあたる。

これに対して"定性的な要因"は、有報に記されている事業環境やリスクなど、数字では表せないものだ。業務が適正かつ効率的に行われるための仕組みができているかどうかを自己評価した内部統制報告書もこれにあたるだろう。

内部統制がシステムとして有効に機能していないのに、報告書にはさも機能しているかのように記載されていれば、場合によっては定性要因の記載に虚偽が含まれると指摘することもできるだろう。これに引っかかりそうな企業は決して少なくない。

三菱自動車のデータ偽装や東洋ゴム工業の免震偽装、三井不動産レジデンシャルが販売したマンションの杭打ちデータ偽装、あちこちで頻発する食品の原産地偽装などがそれだ。製商品の性能などに関する不正は業績の浮沈や財務内容、継続企業の前提にさえ直結するのだから、定性要因の虚偽記載は本来ならもっと深刻にとらえられるべき問題だ。

しかし内部統制はコーポレート・ガバナンスの要諦でありながら、体裁を整えただけの企業がほとんどだろう。東芝や三菱自動車以外にも、内部統制報告書に「内部統制は有効ではないと判断した」と書かざるを得なくなった企業が今年に入って数十社も出てきているのは、その証拠だ。

三菱自動車の場合、特に悪質なのは4月に燃費の不正問題が発覚した後も、燃費測定で都合のいいデータだけを抽出して新車を販売していたこと。6月に相川哲郎社長兼COOが引責辞任してはいるが、三菱自動車の内部統制報告書には「取締役会長兼社長CEO(当時)の益子修は、当社の財務報告に係る内部統制の整備及び運用に責任を有し」と明記されている。

内部統制の評価の範囲がどこまでかを吟味しなければならないが、相川前社長の辞任後にまだ不正が発覚したのだから、益子社長の責任は二重に重い。

特に内部統制に関して言えば、定性要因は数字に表れにくいだけに、これらについての虚偽記載や、それに伴う金融商品取引法違反に問われてペナルティを受けた企業は、まだない。

しかしこうした状況にようやく風穴が空くかもしれない。データ偽装などの不正が大きな問題になった場合、「縦割りで監督官庁が処分を決めるが、証券取引等監視委員会も開示情報のうち、定性要因の記述に問題がなかったか調べている」(金融庁幹部)というのだ。

監視委の取り組みが新たな領域に踏み出そうとしていると言えるかもしれず、これまでこうした問題を等閑視していた企業は真っ青になるだろう。

東京都「官製談合」疑惑追及3――醍醐本部長の危うい発言

前回予告したように、都立広尾病院の改築移転問題が「政治案件」であることを示唆した醍醐勇司・元病院経営本部長(現水道局長)と佐々木病院長のやりとりを公開しよう。佐々木院長は、都側が移転が先にありきで何のビジョンもないことに危惧の念を伝えていた。醍醐氏はそれを説得しに来たのだが、要するに「考え直す余地はない。現場(どこ?)が待っているから移転しかない」という問答無用の姿勢である。相手がなかなか手ごわいと悟って、とうとう持ち出したのが政治家の名前だ。週刊朝日の取材には不適切だったと認めたようだが、あくまでも背景説明の個人的な話と逃げようとしている。だが、実際には「ここだけの話」と言いながら、村上都議だけではない政治的圧力がかかっていることをほのめかしている。これだけでも醍醐氏は、十分当局に聴取される資格がある。



2015年1月21日醍醐本部長佐々木院長広尾病院

醍醐あのあと、秋山(俊行)副知事(現都人材支援事業団理事長)ときちっと話をしまして、先生のお気持ちは分かるのですが、我がほうの案件を副知事に了解をいただきましたので。NHKの話はいま進んでいるのですが、とにかく3月中に返事をNHKにもらう。そして、もしNHKの話がないということであれば、青山病院の跡地を使おうと。青山病院の跡地と、厚生労働省が持っている「こどもの城」というのがありますよね。あれが確か今年度末で廃止のはずで、あそこをつぶすと併せて2万7000(平方メートル)ぐらい。ですから、もし病院の移転がないとすれば、今度は青山ということで、どちらにしてもやはり移転、改築という(結論になります)。

なるべく早く、先生の思いは副知事に伝えましたので、「現場としては、とても待ちきれないので、ぜひ建て替えをしたいという強い思いがあるのですが」と言った上で、「技術的な問題や既に進行しているいろいろなこと考えると移転しかないでしょう」と。

実はこの話は自民党の村上(英子都議)さんには一応してまして、ヤマオカさんなどにはまだ下りていないのですが、ちょっとそれは内々にしていただきたいのですが、これはまだ推測ですが、自民党の村上(都議会)幹事長は渋谷区長選に出る雰囲気が。

佐々木そうですね。桑原(敏武)区長はもう出ないと言っていましたので。

醍醐急遽、2月12日だったでしょうか。渋谷で村上先生のパーティーがあります。たぶんそれが出陣式、決起集会なのだろうと思います。

佐々木桑原区長はこのあいだの渋谷区の新年会でもう出ませんとはっきり言っていました。

醍醐桑原さんの前(の区長)が小倉基さんで、その娘さんですから、ご本人もやはり(都議を)辞めたい意向があるのでしょうし、いま3月議会の調整をやっているのですが、村上さんは自民党幹事長として、この広尾病院の改築の必要性をぜひ質問したいと言っています。ただ、こちらも改築の必要性は十分認識しているというような答え方をするつもりですが、そのあと3月にたぶんいろいろな動きが出てくると思うのですが、そのへんのタイムラグの関係がありますから。

で、わが方としましても、いずれにしろそれまでの間、できる限りご要望に沿った改修をかけたいと思っております。これは今すぐという話ではないのですが、もうこれでやめますが、先生にご協力いただけるのをぜひお待ちしております。

佐々木いや、嘘もなにもないのでそれは、僕が前に言ったことで日程が具体的になってから、そこで協力できるかどうか考えています。

醍醐それで結構です。われわれ、ぜひお力を借りたいと思っております。もうこれでやめます。

<録音の音声ファイルはここをクリックしてください。クリックすると肉声が流れます>





小倉基(昨年11月死去)は自民党都議を5期つとめ、都議会議長もつとめた都の重鎮で、92年参院選に東京選挙区から出馬して落選。その後は渋谷区長を2期務めたが、長男が覚醒剤所持で逮捕されて三選を断念し引退した。村上英子はその長女で、03年に補欠選で都議に初当選、14年には女性初の都議会幹事長になった。

父の後の渋谷区長になった桑原は、同性カップルに証明書を発行する条例を通して全国に知られた。15年1月の新年会で桑原が勇退を表明、その後釜を狙って自公推薦で村上が出馬することになった。父が元区長だったからという安易な人選で、さしたる実績もなかったから、自民党と都が目玉政策として、広尾病院の移転を彼女の業績にして売りだそうとしたのだろう。

区長選は三つ巴になった。野党も民共相乗りで矢部一を立てオール野党推薦候補となったが、桑原後継で人気の出た無所属の長谷川健(前区議)がダークホースで当選、村上は矢部にも及ばない3位に甘んじた。見事に当てが外れたのだが、村上が落選してもなお広尾移転を強行したということは、その裏に本当の「黒幕」がいて村上もダシに使われていたということだ。それにしても、渋谷を地元にして川田龍平参院議員とともに矢部氏の応援に駆け付けながら、足元のこうした利権の蠢きに鈍感な長妻昭・民進党代表代行はなにをしてるんでしょうかね。灯台下暗しとはこれを言う。「ぜひお力をお借りしたい」などとおためごかしを口にしながら、政治への目配りを強調して移転を既成事実化しようとする醍醐の小狡い台詞をじっくり堪能すべし。ここには本誌が名づけた「シン・談合」の正体が垣間見えるのだから。

東京都「官製談合」疑惑追及2――前広尾病院長はなぜ録音したか

FACTAは都立広尾病院の前院長、佐々木勝氏の内部告発を精査し確証する形で、その裏に病院移転にとどまらない闇があることを、11月号の「東京都利権の『黒幕』五奉行」記事で暴いた。前回のブログでは、その佐々木氏が副知事から左遷を言い渡される生々しい場面を、肉声録音つきで公開した。録音はこれだけではない。佐々木氏にとって上司である都の病院経営本部幹部たちとの会話をなぜ録音したか――その事情を本人が本誌に語っている。それで見る限り、政治案件ちらつかせて役人が利権を強行する理不尽には、こうした録音と内部告発で対抗するしかなかったことがよく分かる。



私はなぜ内部告発したか



前広尾病院長・都保健公社副理事長(内閣官房参与)
佐々木



私がマスコミに向かって、広尾病院移転に関する手続きのおかしさを指摘していることについて、現在の都庁病院経営本部の幹部(内藤淳本部長)などが、悪口を言っているといった噂が耳に入ってきます。それは例えば、「佐々木は左遷されたことによる恨みつらみでやっている。彼にあるのは私利私欲だけ」といった類の話です。また、実際に取材を受け始めると、現在勤務している都保健公社の幹部から「本部が決めたことだから先生が今更ことを荒立てても」ということを言われてしまいます。

私は、誰に相談することもなく、ひとりで「最初に移転ありきはおかしい」と、訴えてきました。大切なのは、都民や利用者が広尾病院に求めているものはなにか、広尾の役割を満たすものはなにか、そして移転にせよ建て替えにせよ費用対効果が最も優れているものはなにか、という視点であり問題意識です。

それを口にすることが自分の役職や生活の役に立つとは思っていません。ただ、小池都知事のいう「都民ファースト」の考えに立てば、医療現場の声が反映されず、誰が決めたかわからないブラックボックスのなかで青山移転が決まり、医師会にもどこにも説明がないまま予算化されるような都政のあり方は、おかしいと思うのです。

NHKの放送部門が青山(こどもの城跡地)に移転し、その空いた土地に広尾病院が移転するという話は、2014年頃から流れていました。現場の声を参考にするわけでもなく、「移転ありき」はおかしいのではないか、と思っており、15年1月21日、醍醐勇司本部長が来院して説明されるというので、2人の会話を録音することにしました。

結果的に、会話を残したのは正しかったと思います。これがなければ、政治的な思惑が働いたであろう移転のおかしさを訴えることはできませんでした。紙の書類だけでは、プロセスが不明なまま手続きが正当に行われたという記録しか残らないからです。

ともあれ、醍醐本部長のその日の説明は、移転先候補地にNHK放送センターの代々木と、青山のこどもの城の2箇所があり、移転については秋山副知事も了承している、というものでした。移転ありきは明確で、しかも都議会自民党幹事長で渋谷区長選に立候補を予定している村上(英子)都議もこの話は了承していて、これを(選挙の際の)自分のアピール材料にするということでした。

移転先の都合に合わせて病院を動かすなんて、医師や病院職員、患者や利用者をバカにしています。そんなことがあってはならないと、6日後の1月27日、秋山副知事に会い、直訴しました。秋山副知事は、政治家の名前を出して迫ったことについては陳謝したうえで、「広尾病院の機能の在り方」の調査に1000万円、「病院の改修改築の在り方」について1000万円の予算を提案され、私は信用がありかつ中立的な業者ということでみずほ情報総研に依頼しました。

その結果、「機能の在り方」については3月末までに、「改築改修の在り方」については6月末までにまとめ、それぞれ小冊子にして病院経営本部に提出、報告するとともに、広尾病院の各責任部長科長に配布しました。この二つの報告書では、広尾病院を現地で改築改修する方にメリットがあることが明らかでした。

しかし、この報告書が病院経営本部で検討された様子はなく、質問、意見、要望といった働きかけはありませんでした。7月13日、醍醐本部長の後任の真田本部長が来院された時も、移転ありきではなく、改築改修を前向きに検討します、と言っていたのですが、その後も特に進展はありませんでした。

そうこうしているうちに、「広尾病院の建て替え困難」とする報道が日刊建設工業新聞(10月20日)に掲載されるのです。伊藤喜三郎建築研究所に「広尾病院整備に係わる調査業務」を発注したという報道ですが、「現敷地内で大規模な建て替えを行うのは困難と想定される」と書いており、やはり「移転ありき」です。

それが確実になったのは報道の翌日です。川澄俊文政策企画局長(現副知事)が来院、「舛添知事のレガシーのために広尾病院を青山に移転する」というのです。要は、醍醐本部長の来院時から「移転ありき」が変わることはなかったし、変えるつもりもなかったということです。最初はNHK跡地、それがダメならこどもの城跡地。みずほの調査も私の進言も、参考にするつもりはなかった。

この日を機に、私は対外的に発言をしていません。私も従業員の一人であり都庁から見れば事業所の一所長に過ぎず、本社の幹部が決定したことには従うしかありません。口を開く気になったのは、8月29日の私の大学の先輩である東京都病院協会の重鎮からの移転改築に関する経緯を説明して欲しいとの要望と舛添知事から小池知事にトップが変わったからです。小池知事は、豊洲市場や東京オリンピックで判明したブラックボックス化した決定のプロセスを再確認すると言われた。そして都政改革本部を設置した。そうした流れのなかでなら、広尾病院移転に関する政治決着のおかしさを取り上げてもらえると思ったのです。

今、私の身辺には不可解なことが連続して発生しています。9月8日には、「出る杭は打たれる。出過ぎた杭は打たれない。ただ、引き抜かれるのみ・・・・・・」という脅迫状が届いています。PC環境がおかしくなり、なにわナンバーの高級車が自宅マンションに横付けされていたり、セクハラを警告するように女性のハイヒールが私の車の後ろに投げ捨てられていたこともありました。

今年2月29日、秋山副知事と真田本部長が来院、さしたる理由は告げられずに、現在の東京都保健医療公社への異動を宣告されました。秋山副知事は、いろんな仕事を担当して欲しいといっていましたが、左遷であり閑職に追いやられたのは明らかです。なにしろ3月29日、公社の事務局長がわざわざ広尾病院に来院、「公社に来ても仕事はないし、出勤しなくてもいい」と告げたのですから。もちろん、そんなことは秋山副知事が自ら訪れて異動を告げ、「一週間以内に結論を出せ」と迫った時点で明らかでした。

今回、広尾病院の移転問題が、小池知事の言葉通りに「(取り上げたとしても)優先順位は低い」として、何事もなく行われるようなら「都民ファースト」の都政改革はどこに行ったのか、という話になると思います。そして私は、「ひとりで騒いでバカをみた」という存在になる。

広尾移転を強引に政治力で進めた人間は、順調に出世、あるいは恵まれたところに天下りをし、それが都民のためになっているのかと疑問を呈した人間は、左遷されて仕事を奪われ、生活圏を脅かされている。そんなことがあっていいんでしょうか。

私は、移転のプロセスのおかしさを指摘しているわけで、広尾での改築改修にこだわっているわけではありません。もし青山への移転が優れたプランだというなら従います。しかし、そうではなく何らかの政治的理由で移転が決まり、土地購入費用の370億円に病院建設費も含めると900億円にも達するという計画が、何のチェックもなされずにこのまま進んで行くようなことがあれば、小池知事に代わっても、豊洲の構造を残した都政のままだということになり、それを危惧するのです。



後段の2月29日の左遷の録音を前回ブログで公開した。次回は醍醐勇司元病院経営本部長(現水道局長)が昨年1月、広尾病院の移転先に渋谷区神南の放送センターか、青山病院跡地と国連大学が上がっていることを告げ、それが同4月の渋谷区長選に出馬する自民党の村上英子都議の"目玉"公約になりうることを示唆した問題の録音を公開する。

都庁幹部が一部政治家を応援するための計画だとしたら、官僚による利益供与にあたるから、醍醐氏は司直に裁かれねばならない。

東京都「官製談合」疑惑追及1――広尾病院長を左遷する「酷吏」副知事

東京都知事に小池百合子氏が就任してから、本誌FACTAも10月号の「小池が暴く豊洲『官製談合』」、そして11月号の「東京都利権に『黒幕』五奉行」と過去の都政と利権の追及シリーズを連打してきました。本誌は豊洲や五輪施設など都の大型ハコモノ利権にはすべて「官製談合」の疑いが濃厚であり、そのブラックボックスを暴くことが必要だと考えています。雑誌では紙数に限りがあり、入手資料などもかいつまんでしか触れられないので、その補足資料としてこのブログを活用することにしました。

本誌11月号では、都立広尾病院の移転改築を強行した都が、移転先にありきで何のビジョンもないことにあきれて抵抗した佐々木勝病院長が、今年2月29日に秋山俊行副理事(現在は都人材支援事業団理事長)と真田正義病院経営本部長から直々に左遷を言い渡されたと書いた。このときの録音を入手し、そのテープ起こしと肉声を公開する。

さあ、耳を澄まして、政治の先兵となる役人の弁を聞こう。



秋山(上写真/情報誌「どうきょうの労働」より)きょうは4月1日の先生の人事についてちょっとお話をしにまいりました。まずこの話をする前に、先生には平成19年度から広尾の副院長、24年度から院長で、医療環境がこの地域、大変厳しい中でご努力いただいたことにまず敬意を表したいと思います。そしてもう一つ、この病院の移転改築の道筋をつけていただき、私も病院は何度も仕事やってるものですから、都立病院の基幹病院で一番気になっていたのが、最後に残ったのは広尾病院で、府中もああいう形になって、駒込もああいう形で解消できて、それから墨東もやりますが、広尾だけがしていないという中で、どうしようかなというのを今回ああいう形で、事実上の予算案もああなりましたので決定しました。ただこれ、かなり長い時間かかるんじゃないかなという流れの中で、先生もちょっとご異動いただきたいと思っておりまして、保健医療公社の副理事長のポストをですね......。



佐々木(下写真)具体的にはよく分からないですが。

秋山ええ、ええ、あのう、東京都の保健医療公社はご存じのとおり地域医療をやる中で、25年たつのですが、その流れの中で副理事長というポストは今あることはあるのです。東京都の理事という同じ条件の中で、派遣によって副理事長に就いていただくという流れです。25年たってさまざま、保健医療公社の方向性を見直さなければいけないこともございますので、そこにある従事内容としましては3つお願いしたいと思っています。

1つは公社の保険医療体制についてヘンサン研修で振り返るとともに、総合診療基盤、救急医療、災害医療等についての研修を行って報告をお願いする。それから保健医療公社の今後の医療機能のあり方、救急医療、災害医療の検討、ならびに公社の医療安全対策に関する調査、研究を行って理事長に助言する。3点目は、理事長の命を受けて公社の医療提供制度体制について調査、研究を行い、災害医療に対応できる医療人材の育成を図る。一応この3点ぐらいを考えていて、この仕事をやるのに1つはスタッフをつけることを考えております。

勤務条件、位置づけ等はそこにあるとおり今とまったく変りません。派遣法による派遣という形になるかと思います。

佐々木(沈黙)で、これはいま即断するのですか。

秋山内々示ということできょう来ましたので、われわれとしてはできれば1週間ぐらいを目途に少し考えていただければありがたいと思っております。

佐々木ちょっと考えさせていただいていいですか。

秋山はい。

佐々木内々、こんな話かなとは思っていましたが、ちょっと考えさせていただいて。

秋山一応、通常の内示ではなく、内々示という形で早めに来ましたので、来週頭ぐらいに先生のお考えをお聞かせいただければと思っております。

佐々木これは......嫌だということはあるのですか。それは基本的にやめてくれっていう話はできるのでしょうか。

秋山あのですね、理屈だけの話をしますと、派遣法というのは本人同意が要ります。従いまして、嫌だということになりますと派遣ができず、一方では、人事異動を発令すると職務命令という形になってしまいますので、非常に中途半端な形になってしまいます。

佐々木中途半端になると......。

秋山ええと、派遣はできません。向こうには行けません。また先生の身分をなんらかの形でまた別のことを考えなければいけません。ただし、あまり言いたくないのですが、発令してしまうと職務命令違反というのが残ってしまいます。

佐々木辞めなければいけないということですか。

秋山いえ、辞めるかどうかはその程度によります。

佐々木よく分かりませんが、程度によるというのは?はっきり言ってほしいのですが......。

秋山普通はあり得ないということです。

佐々木本部長ではなくて副知事が来たのでそういった話だろうと......、具体的にはっきり言っていただいたほうが、僕としては気が楽です。

秋山辞めろというわけではありません。けれども一般的には局長級の先生ですから、ノーと言えば普通は辞めざるを得ないということだと思います。ただ、先ほど言ったように法律上どうだということになりますと、非常にややこしい話になってしまいます。

佐々木そういう形で広尾の院長として置いておきたくないというのが、本部の考え方だというふうに理解していいのでしょうか。

秋山置いておきたくないというより、2年期間ばかりかですね。向こうへ行ってお仕事をしていただきたいという。

佐々木ちょっと考えさせていただいて、それでお返事をさせていただければと思います。

秋山分かりました。

佐々木デッドラインはいつですか。

秋山来週の月曜、1週間後ぐらいでできればありがたいと思います。ちなみに、保健医療公社はいまの場所は?

真田竹橋にあります。ただ6月にお茶の水に。

秋山6月にお茶の水に移転ということになります。

佐々木それでは、だいたい分かりました。

秋山いいでしょうか。一応、もう一回、中身を見て確認を。一応、来週の月曜日、1週間後ぐらいを目途に、なにがしかお返事をいただけるということで。

佐々木すみません。わざわざ。

秋山とんでもないです。よろしくお願いします。ありがとうございました。

<録音の音声ファイルはここをクリックしてください。クリックすると肉声が流れます>



副知事と本部長は病院長の上司にあたるが、役人が部下を窓際に追いやるときにどれだけ慇懃無礼な物言いで有無を言わさぬかの典型例だろう。この「酷吏」たちは邪魔者を排除するとなれば、どれだけでも非情になれるらしい。幸い病院長は医師でもあり、気骨の人だし、都の小役人の靴の塵を舐めずとも食っていけるから、この貴重な録音ができた。

都の職員の皆さん、そしてサラリーマン諸君、あすはわが身ですぞ!

電通の石井直社長はなぜ逃げ隠れするのか

電通は自らPRを業としていながら、内部には報道管制を敷く矛盾した企業である。

女子社員の過労自殺問題では、三田労働基準監督署に過労死として認定され、東京労働局が電通本社や名古屋、大阪、京都の3支社、さらに電通西日本など子会社5社にも労働基準法に基づく立ち入り検査(臨検監督)を行う事態に発展したにもかかわらず、石井直社長は会見もせず、社長名のコメントも発表していない。


フィナンシャル・タイムズがスクープした「デジタル広告料の架空請求」問題では、9月23日に中本祥一副社長、山本敏弘常務らが会見したが、最高責任者の石井社長はやはり姿を見せなかった。今回は電通の全組織に及ぶ問題であり、立件の可能性もあるのに、社長が陰に隠れて広報が「調査に協力している」と言っただけなのだ。

塩崎恭久厚生労働相が閣議後の会見で「過去にも長時間労働に伴う自殺者を出した電通で再び自殺に追い込まれる事態が出た。極めて遺憾なケースだ」と述べ、菅義偉官房長官も「結果を踏まえ、過重労働防止に厳しく対応する」とコメントしている。政府でも問題視しているのに、どこ吹く風なのはどうしたことか。

ネットでは死んだ女子社員のツイートが回覧されて同情を誘い、電通は「ブラック企業」とレッテルを貼られて、ボロクソに批判されているのに、異常にツッケンドンと言うほかない。おそらく電通社員のリークだろうと思うが、ヴァイラル・メディアのBuzz Feedで、石井社長が社員に送ったメッセージが載っている。

それによると、
1) 労働管理の三六協定を刷新して、年次管理・月次管理に日次管理を加える
2) 現行では最長で月あたり法定外50時間(所定外70時間)だった上限を5時間引き下げて法定外45時間(所定外65時間とする)
3) 「自己啓発」「私的情報収集」による私事在館を禁止する
4) 最長50時間としている特別条項の上限を30時間とする
5) 16年4月に新卒入社した社員は、同11,12月に特別条項適用を認めない
6) 上記方針は即日実現へ取り組みを開始するとともに労組との協議を重ねる
という6項目で、これに人事局が「全館22時消灯」と通達している。

この通達はほとんど現実性がない。顧客の新聞やテレビなどマスコミが未明まで働いているのに、夜10時過ぎたら帰れ、なんて無理と現場は知っているはずだ。要は、場所を変えるなり、会社の預かり知らないところでやってくれ、と言っているようなもので、所詮、労働局対策としての社内文書だろう。これでは、一部で報じられたような残業時間の過少申告などが横行するだけだろう。この石井メールを見て、電通をよく知る小生の知人がこんな感想を漏らした。



高橋まつりさんの自殺が「社の業務上の事由にあることが行政に置いて認められた」としているが、ここまできてもまだ電通自身は非を認めていない。

「一連の報道に接し、心を痛めている社員の皆さんの心情を思うと、私自身、社の経営の一翼を担う責務を負っている身として、慚愧に堪えません」とあるが、慚愧に堪えないのは報道に対してであり、社長は「一翼」にすぎないらしい。これは電通社長らしい報道への脅しと責任逃れである。

「自己啓発」「私的情報収集」「私的電話・私的メールのやりとり・SNS」による私事在館を禁止とするのは、蛇足のようにみえて、実はこれを一番言いたかったのでしょう。社内事情を外部(マスコミ)にリークするなと。

「この難局を打開することは、私たち電通の新たな可能性を切り拓くことでもあります。共に、私たち自身の新たな未来を創り上げましょう」というくだりは、「共に」がキーワードですね。私は辞めませんという宣言ですね。



なるほど、いちいちもっともである。

臆病者で責任逃れの社長をいただく電通社員もお気の毒。ここは逆に、私的な電話・メール・SNSでむしろ内部告発せよ、と勧めたい。考えれば、高橋まつりさんはわが大学の後輩にあたる。どんどんブラック電通の実態を告発してください。創刊から10年、電通を告発しつづけたFACTAが受け皿になります。

地方大学を蝕むパワハラと統治不全

このところ象牙の塔で論文不正やパワハラといった不正やトラブルが絶えない。

数年前、西日本のある国立大学の工学部で、ある教授に対する感情的な反発がきっかけになり、人事労務担当の理事と部局長が共謀し、教授による学生に対する嫌がらせがでっち上げられた。

後に嫌がらせがでっち上げであることが判明。「大学の自治」という問題との兼ね合いで、文科省や捜査当局など外部の介入は招きたくない大学は本来、自主的に問題と責任の所在を明らかにしなければならないはずだが、学長らはそれをうやむやにしてしまった。

ところが最近になって、一部の大学関係者はこの事件を「パワハラとしてとらえてしまうと、問題が矮小化してしまう。むしろ大学のガバナンスの問題としてとらえるべき話」として、文部科学省に事態を通報した。つまり"内部告発事案"に発展しており、ちょっとした騒動に発展する可能性が高まってきた。

この大学にはこうした不祥事が複数存在し、教授・准教授や学生の間に深刻な亀裂と不信を拡大させてしまった。大学がこうした統治不全を起こすと運営費交付金の削減につながる失点としてカウントされかねず、大学側にとっては不祥事そのものを握りつぶそうとする誘因になっているのだ。

文部科学省が昨年、「運営交付金における3つの重点支援枠」として、期待される役割ごとに国立大学を3つに分類したことも影響しているのだろう。いわゆる「世界水準型大学」「特定分野型大学」「地域貢献型大学」への分類がそれだ。

国際標準型大学は東大を頂点とする旧帝大系に神戸大学や広島大学などを加えた16大学。特定分野型大学はお茶の水大学や東京外語大学、東京医科歯科大学などの15大学。地域貢献型大学はその他の55大学。早い話が、国から手厚い支援を受けられる大学を序列化し直したものだろう。

問題の地方大学は地域貢献型に分類されており、地盤沈下が進んでいた。都内の有力私立大学は、地方の大学教員の中でめぼしい人材を高額の報酬で一本釣りしており、地方の国立大学は教員の質を保つことさえ難しくなっているという。同時に学生の質を保つことも難しくなっており、電力会社やガス会社、地方銀行といった地元密着型の有力企業は「学生の質が、我々の求める水準に達していない」として地元大学の採用枠を取り払ってしまう動きが次第に顕著になってきた。

これはこの大学に限った問題ではなく、かつて大企業に財務・経理の専門知識を持った学生を多く供給してきた旧高等商業学校系の大学でさえ、そうした地盤沈下とは無縁ではない。

大学に対する運営交付金問題は、象牙の塔のガバナンス不全問題をあぶり出すと同時に、地方の衰退にも関わる問題なのだ。要するに、行政もまたガバナンス不全で病んでいるのだ。

オリンパスは反社の「共生者」か

オリンパスはついに反社会的勢力の「共生者」に堕してしまったのか。

本誌は最新号の記事『オリンパス「囚われの」従業員寮』で、中国・深圳にある同社の製造子会社(OSZ)が現地の反社会的勢力に食い込まれ、従業員寮を不法占拠されている疑惑を報じた。

ところが、我々が徹底調査したうえで送った質問状に、オリンパス広報は口頭での「ゼロ回答」で応じた。「反社とのつながりがないならないと、はっきり回答したほうがよいのでは」と、ファクタが老婆心から念押ししたにもかかわらずだ。それが何を意味するか、広報はまったく理解していないらしい。

詳しくは後段の質問状と回答の全文をお読みいただきたいが、質問の要点はシンプルだ。OSZが深圳税関とのトラブル解決のためにコンサルタント契約を結んだ中国企業「安遠控股集団」は、反社組織の疑いが濃厚である。笹宏行社長らオリンパス経営陣が弁護士チームに依頼して行った社内調査の最終報告書(2015年10月29日付)には、安遠に対するOSZの反社チェックは「ずさんなものであったと考えざるを得ない」と明記されている。

そんな報告を受けた以上、経営陣は直ちに反社チェックのやり直しを命じなければならない。そして「反社ではない」との確信が得られなければ、安遠との関係を断ち切るのが当然のはずだ。

では、最終報告書の提出から現在まで1年弱の間に、オリンパスは ①安遠の反社チェックのやり直したのか?②安遠との関係を断ち切ったのか?―― 質問の核心はこの2点に尽きる。

その両方にゼロ回答を寄こしたということは、オリンパスは安遠の反社チェックをやり直しておらず、現在も関係が続いていると認めたに等しい。

思い起こすのは、13年9月に発覚したみずほ銀行(旧みずほコーポレート銀行と合併する前の旧法人)の「反社融資事件」だ。同行がオリエントコーポレーションとの提携ローンを通じて反社に融資していたことを、経営陣は10年に事実を把握していたのに放置していた。それが金融庁の検査で見つかって一部業務停止命令を食らい、みずほフィナンシャルグループの塚本隆史会長ら経営幹部のクビが飛んだことは記憶に新しい。

オリンパス経営陣も同罪だ。笹社長らは、遅くとも最終報告書が提出された15年10月末までに(実際はもっと早かったはずだ)、安遠に反社の疑いがあり、まともな反社チェックも受けていないという情報に接していた。にもかかわらず適切な対応を取らず、安遠との関係継続を黙認していたとしたら、それはオリンパスが反社に食い込まれた「被害者」から、反社の「共生者」となる道を選択したという意味にほかならないのだ。

さて、オリンパスの自浄作用にはもはや期待できない。そこで注目されるのが、メーンバンクである三井住友銀行の対応である。同行出身で15年6月までオリンパス会長を務めた木本泰行氏は、OSZが安遠とコンサル契約を結ぶ前に「贈賄リスクへの留意」を指示していたことが最終報告書で明らかにされている。三井住友は、OSZの税関トラブルや安遠の反社疑惑について木本氏から何も聞いていなかったのだろうか。仮に知りながら調べもせず、オリンパスへの融資を続けていたのなら、三井住友もまた「共生者」と見なされても仕方がない。

三井住友フィナンシャルグループの宮田孝一社長には、ぜひ質問状と回答の全文を読み、自社の「反社会的勢力に対する基本方針」に則って直ちに行動していただきたい。みずほにきついお灸をすえた金融庁も、海外案件だからと尻込みせず、三井住友のオリンパス向け融資を徹底検査すべきだ。

以下が質問状と回答の全文である。



安遠控股集団との関係についての取材のお願い



平素は弊誌の取材活動にご協力いただき、ありがとうございます。
御社の中国法人Olympus (Shenzhen) Industrial Ltd.(OSZ)による中国の深圳税関当局への贈賄疑惑について、弊誌は御社が実施した内部調査の「最終報告書」を入手し、7月号(6月20日発売)で報道しました。その後さらに、最終報告書の内容の精査と情報収集を続けています。

最終報告書によれば、御社はOSZが抱えていたマイナス理論在庫問題を解決するため、安遠控股集団の傘下にある安平泰投資発展をコンサルタントとして起用。OSZが安平泰に支払った報酬2400万元の一部が税関当局への贈賄に使われた疑いについて、安平泰は内部調査への協力を拒否しました。

安平泰の"実体"である安遠に関しては、中国の反社会的勢力との関わりを示唆する現地情報が少なからず存在します。最終報告書の「主な事実関係」には、2014年1月に「OCAP内の一部の関係者間で、安遠の贈賄疑惑に関する記事を共有」、「阿部氏が平田氏に、『安遠グループ(公安一派)が反社チェック疑惑に引っかかった』と報告」、同年6月に「OCAP関係者から木下氏に、安平泰との契約解除が提案される」などと記されています。つまり御社の社内にも、安遠は反社ではないかと懸念する声が当時からあったということです。

同じく最終報告書の「内部統制上の問題点の有無」では、「OT幹部に安平泰を採用することの承認を求めた2013年(平成25年)11月中旬時点では、OSZは安平泰に対する適切な反贈賄デューディリジェンスを実施していなかった」、「2013年(平成25年)11月14日付『安遠控股集団有限公司について』と題する文書のなかには『社内反社会勢力チェック済み:問題なし(食堂業務委託契約時)』との記載があるが、(中略)どのようなデューディリジェンス行われたかは具体的には一切確認できなかった」、「2014年(平成26年)1月には、OCAPの法務部から、食堂業務委託契約締結時よりはるか前の2008年(平成20年)1月の時点において安遠の贈賄疑惑が報じられていることに対する懸念が示されていた」などと指摘。これらを根拠に、「食堂業務委託契約時に行ったとされる『社内反社会勢力チェック』はずさんなものであったと考えざるを得ない」と断じています。

以上の事実関係を前提に、下記7項目についてご回答いただきたく、お願い申し上げます。

1. 「反社チェックがずさんだった」との報告がなされた以上、御社は安遠に対する反社チェックをやり直す必要があるはずです。最終報告書が提出された2015年10月末以降、安遠への反社チェックを行いましたか。行った場合は、いつ、誰に依頼し、どのような結論が出たか教えてください。行っていない場合は、なぜ行わないのか理由をお聞かせください。

2. OSZは安遠傘下の安平泰と2011年10月に食堂業務の委託契約、12年2月に清掃業務の委託契約、同年4月に警備業務の委託契約、13年11月に廃水運搬処理の委託契約をそれぞれ締結しました。これらの契約は現在(16年8月時点)も継続し、安平泰が役務を提供しているのですか。

3. 最終報告書によれば、安遠は税関問題解決の見返りとして従業員寮2棟の譲渡を要求。OSZは「問題が解決した際には寮を売却する旨の補足契約」をOCAPの決済を経ずに締結しました。さらに、寮の売買契約を締結していないにもかかわらず、「従業員寮の使用収益権を安平泰に移転し、OSZが従業員寮居住者から取得していた家賃相当額を安平泰に支払って」いました。つまり、OSZはこの時点で従業員寮2棟を明け渡し、安遠に占有させたと理解して間違いありませんか。

4. OSZが安遠に使用収益権を移転し、家賃相当額を支払った従業員寮とは、具体的には最終報告書25ページに記載された「1棟及び10棟」ですか。

5. 最終報告書によれば、家賃相当額は2014年5月から15年2月にかけて支払われ、総額192万6000人民元とのことですが、それ以降は支払いを止めたのですか。それとも名目を変えて支払い続けているのですか。

6. 最終報告書の提出以降、寮譲渡に関する御社と安遠の交渉はどうなったのでしょうか。報告書にも記されているように、寮はHigh-tech Industry Park内にあり、深圳市政府によって第三者への譲渡や使用許諾が禁止されているはずです。御社は使用収益権移転の無効確認や占有された寮の返還を安遠に求めていますか。また、安遠はそれに応じましたか。

7. 本誌記者が実際に現地を訪れたところ、従業員寮の1棟と10棟は通りに面した1階部分が店舗に改装され、飲食店や雑貨店が多数入居していました。このような改装を行い、賃料収入を得ているのは安遠ですか、それとも御社ですか。前者の場合、御社はそれを黙認しているのですか。


以上です。弊誌の締切の都合もございますので、9月1日(木)までにご回答いただきたく、よろしくお願い申し上げます。



オリンパス広報の口頭による回答



「当社は2011年の不祥事を境に業務上疑問に思った案件については自ら徹底的な調査を行ってきました。そうした中で、あらゆるステークホルダーのみなさまに向けては、開示すべき事項があればすみやかにお伝えしてきました。そうした企業姿勢は今日でも継続しており今後も何ら変わるものではありません。

そうした企業姿勢のもと、中国深圳の現地法人に関する件について、内部で提起された疑問点について、自ら徹底的な調査を実施いたしました。当該調査は2015年10月に完了しております。2015年2月に調査委員会をつくり、社内外調査を実施し始めた当初からお伝えしている通り、開示すべき事項があればすみやかに開示するとしてきました。調査の結果、法的に違反する事実、開示すべき事項はありませんでした。

当社は個別の契約案件についてはすべて公表しているわけではありません。今回の調査報告の内容についても当社としては開示しておりません。ご理解、ご了承ください。ついてはご質問いただいた7項目について、個別の回答やコメント等は差し控えさせていただきます」

内憂外患の監査法人

監査法人や公認会計士は、超えてはならない一線を越えてしまったのではないか。

大阪府内在住の40代男性は7月19日、新日本監査法人が粉飾決算を漫然と見過ごしたとして、東芝に対して損害賠償請求訴訟を起こすよう求める書簡を送りつけた。損害賠償請求額は115億円。ベテランの会計士も「これまで監査法人を相手取って訴訟を起こす話など、聞いたことがない」というから、監査法人を手放しで信頼し、ありがたがる時代は終わったのだ。


これはこれで問題だが、実は国内に目を奪われているうちに、沖合に黒船が多数押し寄せていた。米国を中心とした海外機関投資家が、国内のある監査法人を相手取って集団で損害賠償請求訴訟を起こそうと準備に取り掛かっている。関係者によると、その数は数十社に上るというから、賠償請求額はそれなりに大きくなるだろう。

大手監査法人と言えども、純資産の蓄積にさほど厚みがあるわけではない。トーマツが公表している財務諸表によると、前期末(2015年9月末)時点で総資産501億円に対し、純資産は239億円。あずさ監査法人は同6月末時点で総資産528億円に対し、純資産は195億円。新日本監査法人は同6月末時点で総資産645億円に対し、純資産は148億円でしかない。外国人投資家の間で監査法人の責任を問おうとする機運が高まり、訴訟が次々と起こされるようだと監査法人は財務上の負担が高まる。

オリンパスの損失隠し事件では、監査役等責任調査委員会が立ち上げられ、そのなかで監査法人について「注意義務違反はなかった」との結論が導き出され、無罪放免となったことから監査法人を訴える動きは封じられた。

しかしその後も粉飾決算が相次ぎ、ユルフン監査の実態や日本公認会計士協会の自浄能力のなさが明らかになるにつれ、海外投資家は業を煮やすようになった。過不足のない言い方をすると、海外投資家は粉飾決算を見過ごしてばかりいる監査法人を監査の世界から追い出したいと考えている。

日本の民法で立証責任が投資家側と監査法人側のどちらにあり、立証がどれほど困難であるかという当面の問題はさておき、こうした訴訟がたびたび起こされれば監査法人の経営危機が囁かれる時代が来ても何の不思議もない。

日本公認会計士協会内でも火種がくすぶる。東芝の粉飾決算では、トーマツが裏コンサルを務めていたことが、漏出した社内メールから判明。公認会計士の間でトーマツの責任を追及すべしとの声が高まりつつあり、これに伴って一部には協会幹部の責任を問う声さえ出始めている。米国がそうであったように、日本でも監査部門とコンサル部門を完全に分離し、兼営を禁じる議論が出てきてもおかしくない。

まだまだ残暑は厳しいのに、日本の監査法人には一足早く厳しい冬の時代が到来したのだ。

泥水を漁る「ウミウシ」が伊藤忠を狙う

伊藤忠商事が空売りファンドに狙われている。

米国のグラウカス・リサーチ・グループが7月27日、伊藤忠について「必要な会計処理をせず、連結純利益を過大に計上している」として強い売り推奨のレポートを発表、伊藤忠株はその日の取引から急落したのだ。グラウカスが日本企業を標的にしたのは、これが最初だという。

グラウカスは、伊藤忠がコロンビアでの石炭事業で鉱山の減損処理を行っていないことを売り推奨の第一の理由に挙げ、第二に中国で中国中信集団公司(CITIC)などに巨額の投資をしながら、主導権を中国政府に握られていることを指摘している。

むしろ市場で懸念されているのは第二の理由だろう。

CITICに対する伊藤忠の出資額は約6000億円に上り、連結自己資本の3割近くに達する計算だ。すでに引き返すのが困難な水域に達している。日中関係が改善の糸口を見いだせないなかで、中国政府が見せしめとして何をしてくるかわからないだけに、伊藤忠が抜き差しならないほど中国に傾斜していることは市場でも大きな懸念材料なのだ。

伊藤忠の慌てぶり、というよりも危機感は相当なものだ。27日には11時30分に「当社の会計処理に関する一部報道について」を発表し、同日19時45分には「当社の会計処理に関する一部報道について(その2)」をTDnet上で公表した。商社は事業の性格上、メーカーなどよりも市場に近いところに立たざるを得ないことを割り引いても、無用の疑念が渦巻く事態を避けようとしていることはありありとわかる。

同じく空売り屋の先駆けであるマディ・ウォーターズ・リサーチを月刊FACTAが取り上げたのは、ちょうど5年前の2011年8月。マディ・ウォーターズが米国やカナダで次々に上場した中国企業を狙い撃ちにしている様子をリポートした。

カナダで上場しながら、マディ・ウォーターズに標的にされたシノフォレストはその後どうなったか。同年8月に経営トップは辞任に追い込まれ、2012年には加オンタリオ州の裁判所はシノフォレストの破産保護申請を認め、ついには上場廃止に至った。監査法人のアーンスト・アンド・ヤングや格付け機関のムーディーズも面目が丸つぶれになる事態に陥ったのだ。

マディ・ウォーターズは泥水を指し、中国語の「渾水摸魚」(泥水の中で魚を手探りする=どさくさに紛れて荒稼ぎする)という慣用句に由来する。

一方、伊藤忠を標的にしたグラウカスは海洋生物のウミウシのことで、同社のHPには特に「自身より大きく、より強力な毒を持つ生物を食べる」「獲物が持つ毒に耐性を持っており、この毒を捕食者に放出する」とある。なるほど、設立の趣意は"大物に憑りついて死をもたらす"ということか。マディ・ウォーターズ同様、中国企業を血祭りに上げた実績もあるから、伊藤忠が焦るのもよくわかる。

本誌がマディ・ウォーターズを記事で取り上げた後、オリンパスや東芝といった大企業にさえ粉飾の悪習が染みついていることがはっきりした。そしてオリンパスは中国でも゛汚染"されていることが、FACTA7月号で明らかになっている。

深センのデジカメ製造子会社が税関とのトラブル解消のため、現地の警察OBの企業を交渉役に使ったところ、贈賄の疑惑の泥沼に浸かっていたのだ。

米国の空売り屋の跳梁は、日本の株式市場がすでに中国の泥水まみれとみられていることの表れかもしれない。

オリンパス「二度目の不祥事」

6月29日をピークに3月決算企業の株主総会が一巡する。前年同様、中国関連の損失を計上する企業が少なくなかったし、深刻な不祥事や経営不振で株主に顔向けできない三菱自動車やシャープのような会社もある。三菱自動車と並んで「二度目の不祥事」に見舞われようとしているのがオリンパスだ。

株主総会を翌日に控えた27日、オリンパスの笹宏行社長が全社員に対してメッセージを発信した。FACTAが最新号でオリンパスの中国子会社に贈賄疑惑が浮上していることを報じる「オリンパス『深圳文書』の闇」を掲載、疑惑の調査に当たった弁護士チームが作成した「最終報告書」をHP上に掲載した。追随するメディアが現れたことで、これまでのようにダンマリを決め込んでいられなくなったのだろう。27日夜には、同社HPにも「当社及び当社子会社に関する一部報道について」と題して報告書の要旨をリリースした。そこでは関与した笹社長らの固有名詞が消えているから、歯がゆい投資家や関係者は、ぜひともFACTAの全文を参照していただきたい。


社長メッセージには「調査の結果、関係各国の贈賄関連法令に違反する行為があったとの事実はありませんでした」と強調し、極秘の最終報告書の全文が流出して本誌のHP上に掲載されたことについて「あってはならないこと。情報管理・統制の甘さを反省しています」と詫びているが、詫びるべきポイントが違うだろう。最終報告書には経営陣が決裁を避けて、現場の裁量で決裁せよと責任を押し付けていたことがはっきりと記されているのだから。

しかもオリンパスが調査に非協力的だったこともあって、調査に8カ月余りも費やし、弁護士に支払った料金は10億円前後に膨れ上がった。この10億円は本来株主に帰属する利益であったはずだ。大金を払ってこれを握りつぶそうとしたことをみても、やはりオリンパスは変わっていない。

これまで社内でも秘せられてきた最終報告書が全社員の目に触れるようになったことで、オリンパス経営陣の欺瞞は隠しようがなく、下手な言い訳は社員の離反を招くだけだ。早くも情報を提供したいという社員が現れている。

もちろん「なぜうちの会社ばかりを標的にするのか」と我々FACTAに対して憤りを感じる社員もいることだろう。しかし、それはあなたの会社の考え方が卑しく、振る舞いが見苦しいからだ。上場企業のあるべき姿(情報開示姿勢や、問題が浮上した際の対処の仕方)に照らし合わせて、あまりにも拙劣で、5年前の大きな不祥事から何の教訓も汲み取っていない。この報告書は、あなたがたに自浄能力がないことを世間に示している。

しかも最終報告書をまとめた弁護士チームの調査は不十分で、核心への切り付け方もへっぴり腰だ。しかし「(関係者に証言はあったが)証拠は出てこなかった」「法令違反はなかった」とまとめている割に関係者の処分を勧告したり、関係した役員は研修を受ける必要があるとはっきり指摘している。これが何を意味しているのかよく考えなければなるまい。

残念なのは、オリンパスに対する投資家や読者の関心が薄れつつあるように思えることだ。株主総会で贈賄疑惑を質す株主質問が出なかったのは、オリンパスを信用していると言うよりは、藪蛇になるのを恐れたせいではなかったか。それともシャンシャン総会にするための必死の演出だろうか。

しかし本誌は追撃弾を用意している。いずれそれを公開する時も来るだろう。5年前に本誌がオリンパスの企業買収に不審な点が多いと報じたとき、「オリンパスへの公開質問状と宣戦布告」と題して、ブログに綴った。そのときと同じセリフをもう一度書き留めておこう。

「ぜひとも、震えながらお待ちください」

LIXILの墜落19――上海美特は「第三のジョウユウ」か

前回のブログではLIXILの欠陥便器リコールに関する質問状と回答を公開しましたが、我々は同じタイミング(5月30日付)でもう一通の質問状を送っていた。LIXILが3月に「1シンガポールドル」(約80円)で売却した元中国子会社、上海美特カーテンウォールについてです。

本誌は6月号の記事で、LIXILの南アフリカ子会社グローエDAWNウォーターテックが「第二のジョウユウ」ではないかとの疑惑を報じました。それと同じく、上海美特には「第三のジョウユウ」の可能性があります。

同社はビル用の外壁材メーカーで、LIXILが6年前、シンガポールの華人投資家から32億円で買収(出資比率は75%)した。これは「名ばかりプロ経営者」の藤森義明氏がトップに就任する前のことで、当時の潮田洋一郎会長(現取締役会議長)が契約に調印しています。

そして今年3月1日、LIXILはIR(投資家向け広報)を出して上海美特の売却を発表。この時点では売却額を明らかにせず、「当連結会計年度の当社グループに与える影響は軽微」としていた。

これは、またしてもLIXILお得意の姑息な隠蔽でした。5月9日に公表した決算短信の注記事項のなかに、上海美特の売却額がタダ同然だったことや、それに伴う特別損失が約60億円に上ったことがしれっと書かれているからです。

32億で買収して売却損が60億? この6年に進んだ円安を勘定に入れても計算が合いません。そもそも60億もの損失を「軽微」と吹聴するのは、一般株主に対する背信行為でしょう。

同じく決算短信の注記事項には、上海美特の16年3月期の業績が売上高約196億円、営業損失約60億円だったとあります。営業損失が売上高の3割というのは尋常ではない。しかも前述の3月1日付IRには、14年12月期の営業損失が3700万元(当時の為替レートで約7億2000万円)と書かれている。わずか1年余りで営業損失が8倍以上に膨れたのはなぜでしょうか?

これらの疑問にLIXILがどう答えたかは、下記の質問状と回答書(6月6日付)をじっくりお読みください。見苦しい言い訳の行間に、実態がにじみ出ています。

なかでも味わい深いのは営業損失の急膨張に関するくだり。理由は「顧客からの支払い遅延による貸倒引当金」を決算に繰り入れたからで、監査法人の無限定適正意見を根拠に「過去の損失先送りなどといった不正会計は全く当てはまらない」というが、ジョウユウも同じではありませんでしたか?

もともと回収できない不良債権があり、損失の表面化を防ぐため引当金の計上を先送りしていた。ところがジョウユウの不正会計発覚で監査法人のチェックが厳しくなり、引当処理をしないと適正意見を出さないと迫られた。おそらく真相はそんなところでしょう。

明日はいよいよ株主総会。怒れる一般株主の奮闘に期待します。



FACTAの質問状



平素は弊誌の取材活動にご協力いただき、ありがとうございます。

御社は3月1日に中国の連結子会社、上海美特カーテンウォールの売却を発表し、5月9日付の決算短信で同社株式の譲渡の概要を公表しました。これに関して下記の5点にご回答いただきたく、お願い申し上げます。

1. 2016年3月期決算に計上された上海美特関連の損失は、営業損失が59億8400万円、株式売却に伴う特別損失が60億1800万円、合計で120億円(税引き前損失)という理解で間違いありませんか。

2. 売却発表時の3月1日付けIR(投資家向け広報)では、「当連結会計年度の当社グループに与える影響は軽微」としていました。60億円の株式売却損は、御社の認識では軽微なのでしょうか。

3. 上海美特の営業損失60億円は、御社の子会社のなかで最悪の業績です。ところが、4月11日付の業績予想修正のIRでは「中国ビル事業(上海美特社・3月末売却済)での税引後損失約△40億円等の一時的影響」と、特別損失だけにしか触れていません。5月9日の決算説明会でも、上海美特の営業損失について具体的な説明はありませんでした。なぜですか。

4. 決算短信によれば、上海美特の16年3月期の売上高は196億円(約10億2000万元)でした。その3割に相当する60億円(約3億1000万元)もの営業損失は、どう見ても不自然です。また、3月1日付のIRには14年12月期の売上高12億7000万元、営業損失3700万元と記載されています。わずか1年余りで損失が8倍以上に膨らんだのは、中国経済の減速だけでは到底説明できません。過去に利益の過大計上や損失先送りなどの不正会計が行われており、会社売却にあたってそれを整理した結果ではないのですか。

5. 2011年1月に上海美特を買収した際の取得金額は32億円でした。今回の売却損が60億円となった理由は為替差損ですか。それ以外の理由があれば教えてください。



LIXILの回答



上海美特に関する各ご質問についてご回答申し上げます。

通期の営業損失59億8400万円については、第3四半期までに中国不動産市況の不振に伴い、貸倒引当金繰入を含め前年度より大きく悪化している旨とその悪化理由等を決算説明資料に開示しており、投資家の皆様への説明に努めております。

一方、売却につきましては、売却損失として特別損失に計上しておりますが税効果の利益もあり、親会社株主に帰属する純利益への影響は若干の損失に留まっており、通期の純利益に与えた影響は、ほぼ上記の営業損失額となっております。

よって、3月1日付の開示は上記に記載のとおり、売却に伴い税効果が発生致しますので、親会社株主に帰属する当期純利益に与える影響は若干の損失に留まっているため軽微といたしました。なお、売却損には債権放棄も含まれております。

また、4月11日付で発表しました「通期業績予想の修正に関するお知らせ」は、修正の主な理由にご記載した通り、主語は「親会社株主に帰属する当期純損益大きな差異が発生した要因は、」ですので、親会社株主に帰属する当期純利益予想に与えた影響理由を記載しております。これは、適時開示規則に則り開示しております。

よって、これ以前に開示した業績予想以降、この時点で認識していた中国ビル事業がその予想に与えるであろう影響予想額を記載しております。

今回の営業損失の主要因は、顧客からの支払い遅延による貸倒引当金繰入であり、中国の不動産市況の不振の波に見舞われたものとの認識であります。会計処理は各四半期、各年度毎に適宜適切に処理しており、監査法人より各四半期においてはレビュー報告書を頂き、各年度末においては無限定適正意見の監査報告書を頂いており、過去の損失先送りなどといった不正会計は全く当てはまらないことを申し添えます。

以上

LIXILの墜落18――便器リコールの尻隠し

本誌の記事公開は通常は毎月18日ですが、特別にLIXILの記事を本日先行公開します。同社はタンクレス便器の主力製品「サティス」のリコールを5月6日にひっそりと公表。本誌はその呆れた実態を暴きました。

先行公開する理由は、6月15日にLIXILの株主総会が開かれるからです。本誌が1年前から追及してきた元中国子会社ジョウユウの不正会計事件の真相や、6月号で報じた南アフリカ子会社GDWの実態ともども、一般株主が経営陣を直接問い詰める貴重な機会ですからね。

彼らは、ジョウユウについては「中国人創業者の蔡親子が悪い」、GDWについては「グローエ前会長のデビッド・ヘインズが悪い」と言い逃れするかもしれません。しかし、サティスのリコール問題はそうはいかない。

詳しくは先行公開した記事をお読みいただきたいが、便器の主力商品で大小便が混じった汚水漏れを起こす欠陥商品を約1万5000台も出荷という、メーカーの根本的信用にかかわる大失態。しかも純然たる国内事業です。

それなのに、株主総会には持ち株会社の新任取締役に品質・技術担当の川本隆一副社長を昇格させる議案が上がっています。こんなお粗末なリコールを出しながら、一般株主に実態を隠し、何の責任も取らずにぬけぬけ昇進とは恥知らずにもほどがある。

3月にヘインズを更迭して水回り製品部門(LWT)を直轄下に置いた次期トップの瀬戸欣哉氏も、便器リコールの責任を免れません。また、品質管理体制の劣化は相談役に退く藤森義明氏がLIXILに持ち込んだGE流「ストレッチ」の副作用でしょう。総会で彼を追及するのもいい。

そして忘れてならないのが、創業家出身で事実上のオーナーとして暗躍する潮田洋一郎・取締役会議長の責任です。藤森氏のような中身空っぽの「能なしプロ経営者」に経営を丸投げし、自分はシンガポールで茶碗三昧。国内社員のモチベーションを蝕み、会社の屋台骨を腐らせた罪は万死に値します。

例によって、サティスのリコールについて本誌が5月30日付でLIXILに送った質問状と、その回答(6月6日付)を公開します。不祥事多発と株価低迷に怒っている一般株主は少なくない。総会で追及したい方は参考にどうぞ。



FACTAの質問とLIXILの回答



1. リコール対象は「2016年3月11日から2016年4月28日までの間に製造」された製品とのことですが、対象台数(出荷台数)は何台ですか。また、そのうち何台が実際に顧客のトイレに設置済みだったのでしょうか。

<LIXIL回答> 自主回収の対象台数は、約15000台です。一般的にトイレは納品後すぐに設置される商品です。出荷先については、ほぼ全数(99%以上)を把握しており、個別に対応を行っております。

2. お知らせでは「漏水する可能性がある」としていますが、実際には設置済の製品で漏水事故が起きたのではありませんか。出荷開始からリコール発表までの間に何件の漏水事故が報告されたか教えてください。

<LIXIL回答> 対象製品の全数ではなく、一部で漏水の可能性がございます。
出荷開始から、自主回収を当社ホームページで告知させていただきました。5月6日時点で約1400台での漏水を確認しています。

3.漏水の原因について教えてください。便器底部の配管に亀裂が生じ、汚物の混じった水が流出したのは事実ですか。

<LIXIL回答> 便器に洗浄水を供給する配管に亀裂が発生し、鉢内の溜水が便器外に漏水しました。

4. 配管に亀裂が生じた理由を教えてください。3月11日の生産から素材を変更した配管を採用したところ、強度不足で亀裂が生じたというのは事実ですか。素材の変更はどんな目的で、何から何に変えたのでしょうか。強度不足を見逃したのは、採用前のテスト等が不十分だったからですか。できるだけ詳しく、具体的にご回答ください。

5. 配管の亀裂については3月下旬に報告が上がり、4月上旬にいったん対策品を出荷したものの、対策が不完全で漏水を防げなかったというのは事実ですか。対策が不完全だったのは、出荷再開を急ぐあまり原因の検証が不十分だったからですか。

<LIXIL回答> 4、5について、以下に回答させていただきます。
製造工程での組付け性を改善するため、2016年3月11日から配管の材質を変更しています。この新しい配管に対する締付けトルクが適切でなかったため、配管の一部に破損が発生し、漏水しました。
この不具合に対し、4月1日生産分から締め付けトルクを見直しましたが、同配管で同様の現象が発生したため、最終的に2016年3月10日以前の材質に戻すことを決定しました。
尚、今後、お客様に同様のご迷惑をお掛けしないように、検証プロセスを強化し、品質管理を徹底します。

6. 設置済の対象製品について、5月下旬時点ではまだ暫定対策しか行われておらず、恒久対策品への交換時期を顧客に明示していないのは事実ですか。

<LIXIL回答> 恒久対策の準備が整いましたので、6月10日より恒久対策品に交換させていただくご案内を、6月1日から、流通店様、施工会社様を通じてエンドユーザー様にさせていただいております。

7. 対象製品の新規受注を5月から停止しているのは事実ですか。新規受注の再開および恒久対策品の出荷はいつになるのか、時期のめどを教えてください。

<LIXIL回答> 漏水事故が発生する可能性のある対象製品につきましては、漏水事故の未然防止のため、新規受注を停止させていただいておりましたが、恒久対策が完了したため6月3日から新規受注を再開し、6月10日から出荷させていただきます。

8. リコール対象外の「サティスG」の新規受注も5月から停止しているのは事実ですか。受注を停止したのはやはり水漏れの可能性があるのか、それとも別の理由があるのか、教えてください。

<LIXIL回答> 本件により、サティスGタイプへの注文が一時的に増加したため、納期遅れによるお客様へのご迷惑を考慮し、一旦受注を停止させていただいておりましたが、サティスGタイプも6月3日から受注を再開しており、6月10日から出荷を開始させていただきます。

9. 出荷済み対象製品のリコール費用(交換費用や損害補償)、および受注停止に伴う売り上げの減少額(1カ月当たり)の概算を教えてください。

<LIXIL回答> 正確な業績への影響は、現時点では確定しておりません。確定後、決算発表等適切な方法にてご報告させていただきます。

10. 便器の主力製品の欠陥を見逃し、受注停止が複数月にわたる大失態にもかかわらず、詳しい原因や対象台数、業績への影響などについて株主やマスコミに情報を開示しないのはなぜですか。

<LIXIL回答> 当社のホームページ、全国のショールームで、告知しております。また販売先を特定できておりましたので、ご採用いただいた流通店様、施工会社様を通じて迅速に対応させていただきました。業績への影響は上記の通りですが、連結業績への影響は重大でないと考えています。

お笑い「ホテル三日月の相談相手」

6月6日に舛添要一・東京都知事がヤメ検弁護士2人と「公私混同」釈明会見をして以来、小生および弊社に問い合わせが相次いだのでお答えします。

報告書のなかで、「相談相手として元新聞記者の出版会社社長を(ホテル三日月に)招いたが、面談時間は平成25年(2013年)は数時間程度、26年(2014年)は1時間程度にとどまった」というくだりがある。この「元新聞記者の出版社社長」って、もしかして阿部さん?と聞かれました。そうだったら面白いんだけど、という期待半分、敵意半分(小生も敵が多いので)。

残念でした。小生ではありません。舛添氏と会ったこともない。

小生の元クラスメートからの問い合わせまではよかったけど、某雑誌出版社、某テレビ局から聞かれるに及んで、やれやれ、うっとうしいけど早めのパブロン、いえ、ブログで否定することにしました。世の中、ほかにも「記者あがりの出版会社社長」はいるでしょうに。

しかし、ホテル三日月には何の怨みもないけど、正月早々、あのギョロ目の相談相手にわざわざあんな遠くまで行きますか。

「まさか」と否定すると、「じゃ、だれか知ってますか」と二の矢が来る。某宗教政党関係者かと聞きたいのかもしれませんが、それは「知りません」と答えるだけです。

ま、お笑いですが、小生に累が及ぶようなら、本気でクビを取りに行きますよ。東京ケチ事さま。

第三者委員会という名の茶番劇

テレビでは連日、政治資金流用疑惑を追及される舛添要一・東京都知事の怯えたようなギョロ目の画像と、壊れたレコーダーのような千篇一律の答弁が流れている。

「政治資金規正法に精通した元検事の弁護士2人にお願いして、第三者の公正な目で見てもらう」と繰り返すが、ブーイングの声にかき消されそうだ。

企業や公人が何か不祥事を起こすと、その真偽を調べるという名目で、第三者委員会や、それに準ずる調査委員会が設置されるが、急場しのぎの時間稼ぎ、という手のうちが丸見えで、批判の矢面に立たされるケースが増えてきた。

委員会が立ち上がった時点で、誰もがあきらめ顔になる。「どうせ『違法とまでは言えない』などと、どっちつかずの判断が下されるのだろう」と、期待から落胆に変わることが多くなった。

舛添知事が政治資金の使途に制限がないことをいいことに、いかにもセコい私的支出を平然と政治資金で賄っていることがこれだけ不評を買うと、第三者委員会に招聘された時点で、委託された専門家が社会的な信用や名誉を疑われかねないようなケースも出てきた。

舛添知事が私費で雇った第三者委員会など、誰も「第三者」とは認めまいし、依頼を受ける側も匿名にしている。引き受けること自体が後ろめたいのか。英姿颯爽とした専門家集団が乗り込んで、快刀乱麻の鮮やかさで不祥事をえぐり出してくれる――という社会の期待は早くも過去のものになった。

2010年に日弁連が設けた「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」はそうした危機感から生まれたものであろうが、現状を見る限りそうした危機感とは逆方向に進んでいる。

第三者委のような調査仕事が弁護士らの既得権益化するばかりで、信頼性は日に日に低下しているのが現状だ。様々な企業が立ち上げた第三者委の報告書を専門家の目で批評する、第三者委員会報告書格付け委員会さえ、評価が常に甘いメンバーが固定化していて、どっちを向いて仕事をしているのかわからない。

第三者委の調査報告書は警察や検察の捜査の叩き台になることも少なくないが、実際には調査そのものが杜撰で、後の捜査で報告書の内容に明らかな誤りが見つかったケースさえある。調査対象の企業や人物に対して無用な気遣いをして、調査範囲を限定したり、責任の所在について曖昧な記述しかしていない報告書も少なくない。

公開が前提になっている第三者委の調査報告書は別にしても、場合によっては握りつぶされてしまうこともある内部調査報告書やリーガル・オピニオンともなると、そうした曖昧さははっきりしている。

第三者委やそれほどの厳格さを求められない内部調査委員会を設置する企業や公人はその使い分けが恣意的過ぎるし、起用される弁護士らは依頼主に気を遣いすぎるから、そのお先棒を担いでいるような印象ばかりが残るのだ。依頼主側の恣意性を排除する工夫がほしい。

強制的な捜査権限を持たない第三者委や内部調査委が過剰に期待されるのは気の毒だが、依頼主に迎合したり、その胸の内を忖度したりするのはそろそろやめにしないか。

どっちつかずの歯切れの悪い調査報告書が目立つようになり、このままでは委員会の根幹に関わる。第三者委に加わるメンバーの選定も、何らかのルールを明文化しないと舛添知事のケースのようにお手盛りになってしまうだけだろう。

今回こうしたテーマを取り上げたのは、門外不出であるはずのリーガル・オピニオンや調査報告書が我われの手元に持ち込まれることが少なくないからだ。報告書を書いている本人たちは知るまいが、決して世に出ることはあるまいと思って書いたはずの報告書が、実は国内外の捜査機関がこっそり取り寄せていることさえある。

そうなれば世界的に事業展開する法律事務所が、問題の隠蔽に加担しているとみなされかねない。第三者委にかつがれる弁護士も無傷ではいられないはずだ。

中国を笑え! 弊誌に「オレオレ詐欺」メール

先週はFACTAオンライン画面のリニューアルでシステム上のトラブルが生じ、新規ご購読契約者の一部の決済や、18日夕の最新号公開が遅れるなど、いろいろご迷惑をおかけしました。東京五輪疑惑の記事なども掲載していることから、ハッキングされてどこかの妨害を受けているのではないか、などご心配をかけたことをお詫び申し上げます。一応、週末にはリニューアル版のほうも安定したのでご報告申し上げます。

さて、思わぬ余波というべきか、画面リニューアルに伴いドメイン情報を更新したら、中国からとんだメールが舞い込んできました。アップデートを嗅ぎつけて、よりによって弊誌に「中国版オレオレ詐欺」のメールを送り付けてきたというわけです。どっこい、そう簡単に騙されるものか。あんたらの手口くらい、すぐ見破れますぞ。しかし、こういう手口に日ごろ曝されていない日本の中小企業(とりわけ中国進出を考えているところ)は、この手のメールに「中国で先にドメイン登録されてしまうかも」と焦って連絡してしまうかも。

そういう犠牲者が出ないよう、ここに届いたメールを参考として掲載しよう。そして、このペテン師の浅知恵を思い切り笑ってあげましょうか。アハハハハ、と。



Subject: Notice for "facta"
Date: Mon, 23 May 2016 07:23:33 +0800
From: Jim Wang
To:

notice protect-- internet trademark intellectual property safeguard

Dear CEO,

(If you are not the person who is in charge of this, please forward this
to your CEO, because this is urgent, Thanks)

We are a Network Service Company which is the domain name registration
center in China.
We received an application from Huabao Ltd on May 23, 2016. They want
to register " facta " as their Internet Keyword and " facta .cn "、"
facta .com.cn " 、" facta .net.cn "、" facta .org.cn " 、" facta .asia "
domain names, they are in China and Asia domain names. But after
checking it, we find " facta " conflicts with your company. In order to
deal with this matter better, so we send you email and confirm whether
this company is your distributor or business partner in China or not?

Best Regards,

*Jim**
*General Manager
Shanghai Office (Head Office)
8006, Xinlong Building, No. 415 WuBao Road,
Shanghai 201105, China
Tel: +86 216191 8696
Mobile: +86 187 0199 4951
Fax: +86 216191 8697
Web: www.cnweb-registry.com



このウェブサイト、および社名cnweb-registry、そしてJim Wangにご注意。そしてもちろん、ほかの偽名も使うので、そのリストは以下のブログや掲示板をご参照ください。

http://goo.gl/NmHMwz
http://goo.gl/4aQcN1