EDITOR BLOG
泣き寝入り不要 フェニックス投資事業組合の契約書
フェニックス・キャピタルが組成したファンド「ジャパン・リカバリー・ファンドⅡ」の契約書を入手した。他の投資組合もほぼこれと同じはずである。そこで「善管注意義務」(善意の管理者による注意義務)についてどう書いてあるか、ご覧に入れましょう。
第14条 業務執行組合員の責任
1. 業務執行組合員は、本組合の目的に従い善良なる管理者の注意をもってその業務を遂行するものとする。但し、業務執行組合員は、自らの業務履行に関して故意又は重大な過失がない限り、本組合の業務の執行の結果生じた損失又は損害に関して、本組合又は非業務執行組合員に対して、いかなる責任も負わないものとする。
2. 業務執行組合員は、本契約上の裁量権の行使又は不行使の結果生じた損失又は損害に関して、それが本組合の利益になると誠実に信じて行われたものである限り本組合又は非業務執行組合員に対して、いかなる責任も負わないものとする。
3. 業務執行組合員は、本組合の債務を弁済する責任を負わないものとする。但し、本組合の債務が、組合財産全部による弁済後も残存する場合、業務執行組合員は、かかる残存債務の弁済義務を負担するものとする。
ご覧のとおり、「善意の管理者による注意義務を果たして」ファンドを運営すべきことは、ここに明記してありますよね。さらに「故意または重大な過失がない限りは損害賠償をしない」ことも、契約書の第33条に書いてあるのです。
第33条 業務執行組合員の辞任及び解任
1. 業務執行組合員は、やむを得ない事由がある場合に限り、非業務執行組合員の事前の同意の下、全組合員に対して書面による60日以上の事前の通知をして、辞任することができる。
2. 業務執行組合員は、下記の場合に限り、非業務執行組合員の3分の2の同意により解任されるものとする。
(i) 本契約により認められる場合を除き、第7条に規定された出資払込義務を通知により指定された払込期限から30日以上遅滞した場合
(ii) 第12条第1項の規定に違反した場合
(iii) 業務を執行し又は本組合を代表するに当り違法の行為を行った場合
(iv) 前各号のほか、本契約上の重大な義務に違反した場合
3. 業務執行組合員の辞任及び解任は、後任の業務執行組合員が非業務執行組合員の全員一致により選任されるまで効力を生じないものとする。
4. 業務執行組合員の辞任、解任又は脱退に伴い、後任として業務執行組合員に選任された組合員は、選任以前に生じた第14条の責任に関しては、これを負担しないものとし、辞任、解任又は脱退した当該業務執行組合員が、継続してかかる責任を負担するものとする。
この二つの条項を裏返しますと、はっきり分かります。「善管注意義務違反、ないし、故意または重大な過失があったら、投資家に損失・損害を補償する」と読むのです。
東京三菱UFJ銀行(BTMU)のいいなりになって、粉飾を見逃したニイウスコーへの投資の損失や、市場価格を無視して安売りした市田やティアックの損失に関し、フェニックスが投資家に損害賠償するのは、契約上も当然のことなのです。
フェニックスのファンドに投資した投資家は、もちろんフェニックスにそれを請求する権利があります。泣き寝入りする必要はないのです。契約を履行させればいいだけのこと。ティアックはTOB中ですから、早く声を上げることですね。100億円も投資して50億円の損?その投資の正当性を証明できないのなら、カネ返せ!そのカネをみすみす損をすると分かっている富士テクニカ宮津に回すなど、もってのほか!とね。
フェニックス・キャピタル安東元代表への公開質問状
三菱東京UFJ銀行(BTMU)系のファンド、フェニックス・キャピタルは2002年に設立された。手がけた最大の案件は、2004年にダイムラークライスラーの追加支援打ち切りで経営危機に陥った三菱自動車だろう。
巨大債権を抱えるBTMUは、資本増強策を柱とする再建計画を立て、三菱御三家を中心とした三菱グループ各社と中華汽車が優先株による増資に応じ、さらにフェニックスが普通株、JPモルガンが優先株での増資に応じることになった。
ところが、05年になると、これらの増資では不十分と言われ、三菱グループを中心に再増資が行われたのです。この過程でBTMUとフェニックスが対立、フェニックスが分裂する事態になりました。そこから明らかにフェニックスがBTMUに従属し、「痰壺」化していくのです。ニイウスコーなどもその過程で派生した事件です。とすれば、フェニックスの「痰壺」化の原点は、三菱自動車の再建をめぐる葛藤にあったのではないかと本誌は考えました。
そこで、フェニックスの創業者で、三菱自動車の増資に関わったのち、フェニックスと袂を分かった安東泰志ニューホライズン・キャピタル代表こそ、フェニックスの「変質」を知る人間と考えました。フェニックスに送った質問状と同日、以下のような質問状を送った次第です。
ニューホライズン・キャピタル
会長兼社長安東泰志様
フェニックス・キャピタルについての質問状
ファクタ出版株式会社
月刊FACTA発行人阿部重夫
拝啓
時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。ご承知のとおり、弊誌は昨年7,8,9月号で、ニイウスコー事件を再検証する記事を掲載いたしました。フェニックス・キャピタル創業者である安東氏は当時、ニイウスコーの経営実態を知る立場にあったと考え取材をご依頼いたしましたが、守秘義務を理由にご回答いただいておりません。そのフェニックスが最近、富士テクニカ宮津のTOBやティアック株の売却などで動きだしました。そこで改めて取材をお願いしたいと存じます。お尋ねしたい項目は以下の通りです。
① フェニックスの今回の富士テクニカ宮津へのTOBのリリースを見ますと、弊誌報道以来、フェニックスは新規募集をしていないので、安東氏がフェニックス時代に組成したファンドの投資家が支払った管理報酬があてられている可能性が高いと思います。これについてファンドの組成者として責任を感じませんか。
② ティアックへの投資も、安東氏がフェニックス代表だった時代に始めたと聞いています。結局、ディスカウントTOBになって大きな損失を被りましたが、それについてコメントをいただきたいと思います。
③ フェニックスが受け取った管理報酬は、社内でどのように分配されたのでしょうか。本来、損失を被った投資家に返済すべき性質のものと考えられないでしょうか。
④ 04~06年に発行された三菱自動車の優先株の強制転換事項に基づき、保有する三菱グループ各社の普通株転換が始まっています。この大量優先株の発行をめぐっては、当時の三菱東京UFJ銀行担当者、田中正明氏と、フェニックス代表の安東氏の間で確執があり、怪文書も出回りましたが、対立があったのは事実でしょうか。
以上でございます。弊誌次号(4月20日刊行)の締切もあり、恐縮ですが、4月8日までに直接取材、電話取材、文書回答、さらにメールの回答でも結構でございますので、ご回答をいただければ幸いでございます。よろしくご一考ください。
敬具
4月2日
この質問状について、安東氏か以下の回答をいただいた。こちらも壁は厚い。残念。尋ねたいことはいろいろあったのに……。
4月2日付質問状についての回答書
ニューホライズンキャピタル株式会社
取締役会長安東泰志
拝啓
陽春の候、貴社ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。
4月2日付にてご質問を戴きました諸点につき、以下の通りご回答申し上げます。
① 弊社は、フェニックス・キャピタル株式会社(以下「同社」)の会社分割を経て、創業者(安東)及び陣容の一部を同社から引き継いで現在に至っておりますが、現在は、弊社及び弊社代表の安東は同社の経営に関与しておらず、現在の同社の新規投資や、その投資手法についてコメントする立場にはございません。
② 同上の理由により、弊社は、現在の同社の投資回収にかかわる意思決定についてもコメントする立場にはございません。
③ 上記同様、弊社は、現在の同社の経営についてコメントする立場にはございません。
ただし、業界一般的に、管理報酬は、適切な投資運営を行うための必要経費を賄うためのものと考えられています。また、一般論として、投資家との契約において、業務執行組合員は善良なる管理者の注意をもって業務を遂行することとされており、故意または重大な過失がある場合を除き、投資家に対する損失責任は負わない旨、定められていると理解しております。
④ 弊社は、現在同社の経営に関与しておらず、また、守秘義務の観点からも、同社がこれまでに行なった、いかなる取引に関してもコメントすることはできません。
弊社代表の安東と特定の人物との関係等についての「怪文書」等が存在することは弊社としては一切承知しておりません。
弊社は、投資家に対する忠実義務を確実に果たす一方、円滑な事業再生の実現のために、三菱東京UFJ銀行様をはじめ、全国の銀行・信用金庫様と一貫して良好な協力関係を維持しており、昨今の中堅・中小企業を巡る経済情勢に鑑み、特定の銀行等との利益相反を疑われることのない独立系企業再生ファンドとして使命を全うして参る所存です。
敬具
平成25年4月8日
しかたがない。最新号記事「三菱『痰壺』ファンドの原罪」では、周辺取材を通じて安東氏側とBTMU担当部長、田中正明氏側との間に確執があったとの具体的証言を得て、当時の状況を再現した。
昔話の蒸し返しではない。三菱自動車の優先株はいまだに、自工のみならず、グループ各社にとっても重荷で、その「パンドラの箱」が優先株の普通株転換によって開き始めたのである。最新号の記事では、三菱自工が05年に行った再増資の矛盾が以下のように露呈してきたと指摘しています。
①三菱自動車が当時大量発行した優先株は、三菱グループ各社も手放すに手放せないまま、無配が続いていること。
②強制転換条項の期限である2014年6月まであと1年余に迫り、昨年夏から転換が五月雨式に始まっていること。
③三菱重工に15%強持たせ持分法適用会社にすることで、BTMUは三菱自を正常債権にすることができたが、転換が進むと重工の比率が下がって持分法適用会社が外れかねないこと。
メガバンクはどこも、フェニックスのようなファンドに不良債権を放り込み、自らの債権の健全化を吹聴してきました。三菱自動車の場合は、奉加帳方式でグループに優先株を買わせてカネを出させたうえ、元親会社の三菱重工に15%出資させて、不良債権を正常債権に化けさせる手品が使われました。
そこに“銀行のエゴ”が隠れていたのですが、今になって壁の中から骸骨が出てきたのです。記事では「天ツバ」と書きましたが、まさに「痰壺」ファンドが不良債権の飛ばしに過ぎないことの証左として、記事を読んでいただければ幸いです。
フェニックス・キャピタルへの公開質問状1
昨年7、8、9月号の三回シリーズの連載「メガバンクの仮面」で取り上げた三菱東京UFJ銀行(BTMU)系のファンド、フェニックス・キャピタルは、本誌報道で鳴りを潜めていましたが、3月から動きだしました。
折しも、リーマン・ショック後の中小企業の倒産を防ぐためにつくられた「生命維持装置」金融モラトリアム法(中小企業支援円滑化法)が3月末で期限切れと、実に微妙なタイミングです。
「ポスト円滑化法」で金融庁は倒産急増を防ぐためさまざまな延命策を講じているからです。フェニックスのような銀行の「痰壺」ファンドの二番手、三番手が全国で次々に設立されているのです。その先達であるフェニックスの行方は、「ポスト円滑化法」の日本の金融業界の貴重な先行例と言えます。
フェニックスが企業再建に成功しているならいい。しかし、ニイウスコーのようにその「粉飾」に加担した疑いが強いうえ、銀行の不良債権減らしの道具に使われた結果、ファンドの投資家には損を与え、企業再建もはかばかしくない、というアブハチ取らずの結果と言えるのではないでしょうか。
それを証明するため、フェニックスがこの3月、企業再生支援機構から引き受ける静岡の金型メーカー、富士テクニカ宮津のTOBと、米ギブソン・ギターにほとんど投げ売りするティアックのTOBについて、フェニックスに質問状を送りました。「またFACTAか」とBTMUとフェニックスは緊張したはずです。記事は最新号「三菱『痰壺』ファンドの原罪」のタイトルで掲載しましたので、お読みください。
以下、質問状とフェニックスの回答を公開します。
フェニックス・キャピタル株式会社
代表取締役三村智彦様
株式公開買い付けについての質問状
ファクタ出版株式会社
月刊FACTA発行人阿部重夫
拝啓
時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。昨年は御社および日本IBM等の取材にご協力いただき、心より御礼申し上げます。弊誌記事が連載された昨年夏以降、リリースが出ませんでしたが、この2月1日には関西アーバン銀行との業務協力協定の発表などが相次ぎ、慶賀に耐えません。3月15日には御社による富士テクニカ宮津株の公開買い付け、3月29日にはギブソン・ギターによるティアック株公開買い付け応募が発表されました。この2件について確認を兼ねて質問したいと思います。
富士テクニカ宮津株について
(1) リリースによりますと、出資者名には①フェニックス・キャピタル・パートナーズ・テン株式会社、②日本リバイバルファンド・スリー、③フェニックス・キャピタル株式会社の3社が列挙されていますが、このうち日本リバイバルファンド・スリー以外の2社からの出資は御社の自己資金と考えてよいのでしょうか。
(2) 御社は少なくとも、昨年6月号の本誌報道以来、新規のファンド募集をしていません。すると、富士テクニカ宮津株の公開買い付け資金が自己資金によるものであった場合、それは既存のファンドの投資家からの管理報酬と考えられますが、その認識は正しいのでしょうか。
(3) 弊誌昨年7月号は、投資家に対する善管注意義務を怠り、明らかに粉飾決算を行なっていたニイウスコーに対し、御社が三菱東京UFJ銀行(BTMU)の言いなりになって多額の投資を行ない、全損させたと指摘しました。本来であれば、御社は投資家に対しその賠償責任があるのに、今回の投資が損失を蒙った投資家から得た管理報酬からなされたとすると筋が通らないと考えます。他の投資に回すカネがあるなら、まず投資家にニイウスコーへの投資金額を弁済すべきだとは思いませんか。
(4) また、こうした投資家から得た管理報酬による余剰資金の一部は、三村代表取締役および渡邊前代表取締役の役員報酬・役員賞与等にあてられたとの情報があります。それは事実ですか。事実ならその額をご開示願いたいと思います。
(5) 富士テクニカ宮津への投資は、時価よりも40%も安いディスカウントTOBの手法を使っています。独立委員会の評価などでお墨付きを得ていますが、市場価格を無視するような手法を取ってまで当該投資を実施した理由は何でしょうか。
(6) 仮に当該価格で投資をしたとしても、開示されている当該会社の借入金はまだ80億円もあり、業績もまだ回復途上です。当該ディスカウントTOBの価格で日本リバイバルファンド・スリーの投資家に対する十分な利回りが確保できると考える理由は何でしょうか。機構の増資による支援額53億円を、そのまま機構から買い上げるための後付けの価格設定ではないのですか。
(7) メーンの静岡銀行はBTMUの親密地銀と言われています。企業再生支援機構に“飛ばし”ていた静銀の不良債権をこの公開買い付けで処理するよう、BTMUからの指示があったと考えてよいですか。
(8) 今回の取得株数は約16百万株ですが、これは過去の対象会社の平均売買株数が一日約3000株であることを考えると、市場で処理することは不可能な株数です。将来、どのようにこの株式を処分するつもりですか。御社が過去に市田などで実施したように、再び市場価格を大幅に下回るディスカウントで売却することになりませんか。
ティアック株について
(1) この株式譲渡は、市場価格(約60円)を大幅に上回る28円程度でのディスカウントTOBでの売却です。フェニックスの投資および投資回収は、市場)(投資家および株主)を無視した価格ですが、なぜでしょうか。
(2) ティアックへの御社の投資は計100億円近いと認識しております。この大損を投資家にはどう説明するのでしょうか。
以上でございます。本件は金融円滑化法終了後の金融証券取引法改正案の内容に関連して取材を進めております。お忙しいところ恐縮ですが、弊誌も締切の都合がございますので、何卒4月8日までに直接取材、電話取材、文書回答、さらにメールの回答でも結構でございますので、ご回答いただきますようお願い申し上げます。敬具
2013年4月2日
これに対する回答は4月8日、ファクスで届きました。予想通り、昨年と同じように守秘義務を理由にノーコメントに近い内容ですが、後半で何やらめめしい言い訳が書いてあるのが目につきました。全部が全部、企業立て直しに成功したとは言わないが、ま、努力はしてきたんです、といったトーン。昨年のケンもホロロ、よりは好感が持てますが、なんとか「痰壺」の汚名を晴らしたいという気持ちがありあり。「痰壺」全面否定でないのは、やっぱり後ろめたいのでしょうか。
ファクタ出版株式会社
月刊FACTA発行人阿部重夫様
平成25年4月8日
株式公開買い付けについてのご質問状回答
フェニックス・キャピタル株式会社
代表取締役三村智彦
拝啓時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
4月2日付のFAXにて株式会社富士テクニカ宮津及びティアック株式会社の株式公開買い付けに関するご質問を頂戴致しました。
大変恐縮ではございますが、両取引は公開買付期間中であることに加え、本件を含むいずれの個別のお取引につきましても秘密保持義務を負っておりますので、具体的回答は差し控えさせて頂きたいと存じます。
弊社は2002年の創業来、事業再生分野を中心に30社を超える会社に投資させていただき、いずれの案件においても、投資先の役職員の方々と手を携えて再生あるいは企業価値の向上に取り組んで参りました。大変遺憾ながら、ご指摘の通りこれらの投資s滝の中には損失計上を余儀なくされた案件もございますが、弊社と致しましては、いずれの投資案件においても、当社独自の判断で投資の意思決定を行い、その再生あるいは企業価値の向上に向けてベストを尽くし、投資家利益を極大化するべく努めております。
以上、ご質問の全てにご回答出来るものではございませんが、何卒、ご理解賜りますようお願い申し上げます。
敬具
はい、理解してますよ。彼らも予感している通り、「投資家利益を極大化」が笑って、ヘソが茶を沸かすBTMUとフェニックスの“最高傑作”三菱自動車の再生を取り上げましょう。その質問状は次回に。
SBIバイオテックは「轟沈」か?
弊社最新号記事「SBIバイオテック『一物二価』の怪」に対し、SBIホールディングスは3月19日に華々しい反論リリースを自社ウェブサイトに掲載した。例によって脅し文句つきである。
本件記事は当社として到底看過することはできないと考えておりますので、今後法的な対応等の実施も検討してまいります。
で、このブログで長文の再反論「SBIが墓穴を掘った反論リリース」を3月29日に掲載しているのはご覧のとおりです。
さて、それからずっと待っているのですが、「SBIバイオテックの気配値などグリーンシートのどこを探しても出てこない」という弊社の主張に対し、何の反論もしてきません。
トーマツが看過してくれないと、3月決算は困ったことになるのでは?
さて、われわれとは別に「SBI&サイバーエージェント研究会」というサイトでも、SBIバイオテックが追跡されてます。
HPの会社概要が更新されていました
http://www.sbibiotech.jp/corporate/profile.html
資本金63億3,083万円
発行済株式数7万6,696株
2012年12月25日現在
資本金66億3,083万円
発行済株式数7万9,696株
2013年4月1日現在
3000株×20万円=6億円
これでまた気配相場復活するかもしれません???
このサイトは弊誌と並行しているので、このブログも読んでいらっしゃるらしい。「気配相場復活するかも」とは、これはキツーい皮肉ですね。
しかも、こんな追記もある。
直近決算もトランスサイエンス未公開株ファンドのレポートより公開されています
http://www.morningstar.co.jp/webasp/pdf/monthly/2006092504_M_201303.pdf
売上0経常損失9.20億当期純損失9.39億自己資本(純資産)76.79億円
すごい赤字ですね。ところが、総資産たっぷり。クオーク株の評価で“イロ”をつけたってわけですね。先の反論リリースでも上場準備中とおっしゃってました。
両社(SBIバイオテックとクオーク)のもつこれらパイプラインとその臨床試験の進捗状況を東京証券取引所におけるマザーズ新規上場のガイドラインと照らしあわせた結果、SBIバイオテックの株式公開は可能と考えられることから、同社はみずほ証券を主幹事として2014年12月期中の株式公開を目指して現在準備を進めております。
なんかの冗談ですか。売り上げゼロで9億以上損を出して、上場準備?トランスサイエンスの資料を見たって、どこでそんなホラを吹けるのか。
将軍様が沈黙するのも無理はない。ま、あとは次号のお楽しみにしておきましょう。
SBIが墓穴を掘った反論リリース
FACTA最新号の「SBIバイオテックが『一物二価』の怪」の記事に対し、SBIはほとんどヒステリックな反論リリースを直ちに発表した。もちろん、訴訟で対決しているので、SBIが「後家のふんばり」でいきり立つ気持ちは分からないではない。しかし、それでもなお、読者の方々は全面否定にFACTAは再反論しないのか、と思っていらっしゃるようなので、それに応えたいと思います。
新訳聖書に「白く塗りたる墓」と偽善者を指弾する言葉がありますが、北尾SBIほど「白く塗りたる墓」はないと確信しました。それは以下のような理由からです。どちらの主張が正しいか、読者の方々はもう一度、この嘘に満ちたリリース文章を目を凝らして読んでいただきたい。
「SBI未公開株組入ファンドⅢ」は、2012年12月25日付リリースのとおり、同ファンド保有株式を現物出資して、SBIバイオテック株式の割り当てを受けましたが、その際の割当価額の評価額は、2012年12月末時点で1株当たり20万円となりました。これに対して、「SBI未公開株組入ファンドⅢ」の取得価格については、SBIバイオテック株式の気配相場が発表されなくなってから1カ月経過後もその状態が継続しており、このような場合には未公開企業の直近決算期の1株当たりの純資産価格で評価するとする投資信託協会の規則に従って、2013年1月末時点で1株当たり2万8847円30銭としたものです。
しかしながら、2012年12月末以降、SBIバイオテックの経営状態が大きく変化したというものではなく、SBIバイオテックの時価評価額は引き続き1株当たり20万円であると考えられることから、「SBI未公開株組入ファンドⅢ」における1株当たり2万8847円30銭という評価額との差分は、将来的に同ファンドの投資家の方々に帰属する含み益に相当するものと考えております。
他方、当社が保有するSBIバイオテック株式については、上記の投資信託協会規則の適用がないため、引き続き時価である20万円で評価しております。
したがって、「SBI未公開株組入ファンドⅢ」と当社とで、保有するSBIバイオテック株式の評価額が異なることについて、何ら恣意的ないし不適切な点はございません。
正直なところ、もう少し言い訳に知恵を使って欲しいというのが感想です。
SBIバイオテックはそもそもグリーンシートで取引などされていない。過去3年何処にもない。それともSBI証券でひそかに値段つけているのでしょうか?
興味のある方は、未公開株のグリーンシートを見てください。ほとんど忘れられた「死に体」市場でしょう。日本証券業協会HPを引用します。
グリーンシートとは、日本証券業協会が、証券会社による非上場企業の株式を公平・円滑に売買するために、平成9年7月からスタートさせた制度です。
非上場企業への資金調達を円滑ならしめ、また投資家の換金の場を確保する目的で、金融商品取引法上の取引所市場とは異なったステータスで運用されています。
現在、わが国では起業活動の活性化・ベンチャー型企業の育成に向けたさまざまな取り組みが行われているところです。また、既存の企業についても、経済環境の変化に応じ、産業再生や企業再編が求められるようになり、それを促す動きも出てきています。そのためにはこれらの企業にリスクマネーを供給する直接金融市場の活性化が不可欠であると言われています。
日本証券業協会では、グリーンシートがこれらの取り組みをサポートする役割を十分に果たしていけるよう、投資家に対するディスクロージャー、非上場企業による資金調達や非上場株式の流通の在り方等について検討を重ねており、可能となったものから改革を進めてきております。
2012年全体での売買代金は4521万円。これがSBIのよりどころなのですかね?ばか言っちゃいけません。過去3年、SBIバイオテックが取引された形跡はありません。
2010年。取引された銘柄は、
(株)アイジーコンサルティング
電子システム(株)
(株)サンマエデュケーション
ジャパン・トゥエンティワン(株)
(株)アクシコ
(株)富士テクノソリューションズ
洛王セレモニー(株)
OMソーラー(株)
(株)カワシマ・ゴールド
(株)シーキューブ
日本ジッコウ(株)
(株)日本ホームスパン
(株)ダッツ
日本エコカ工業(株)
(株)自由が丘フラワーズ
(株)アサヒ商会
(株)ハウインターナショナル
(株)NEXUS
(株)ミック経済研究所
(株)旅籠屋
(株)リビングギャラリー
(株)大生産業
(株)技建
(株)リライフコーポレーション
みどり証券(株)
ワンズ(株)
(株)カーゾーン
(株)iSERVE
(株)アメニティ
ザ・レジェンド・ホテルズ&トラスト(株)
(株)わかば総研
(株)CUBEホテルズインターナショナル
(株)日本ティーエムアイ
(株)アイコーメディカル
(株)アイ・ラーニング
(株)立神工業
コンピュータマインド(株)
(株)名学館
(株)テクノシステムズ
(株)宝木スタッフサービス
(株)碧
(株)オートハマーズ
(株)パブリックトラスト
(株)インフォース
マイコロジーテクノ(株)
ウインド・カー(株)
(株)グッドコム
(株)ラグネットジャパン
(株)プログレスインターナショナル
イー・エム・エー(株)
太陽毛絲紡績(株)
(株)グランディーズ
(株)フィル・カンパニー
(株)春うららかな書房
(株)エグザート
ファインネットテクノロジー(株)
(株)ホライズンワークス
エイチエス(株)
(株)CBMI
チッソ(株)
プラス・テク(株)
太平化学製品(株)
深川製磁(株)
(株)すばる光電子
(株)信貴造船所
三国商事(株)
(株)ミナミ保険
(株)ライフステーション
(株)レキオス
(株)メディアサポート
ジェイ不動産証券投資法人
SBIバイオテックの名はありません。続いて、2011年に取引された銘柄。
電子システム(株)
(株)サンマエデュケーション
ジャパン・トゥエンティワン(株)
(株)アクシコ
(株)富士テクノソリューションズ
洛王セレモニー(株)
OMソーラー(株)
(株)カワシマ・ゴールド
(株)シーキューブ
日本ジッコウ(株)
(株)日本ホームスパン
(株)ダッツ
日本エコカ工業(株)
(株)自由が丘フラワーズ
(株)アサヒ商会
(株)ハウインターナショナル
(株)NEXUS
(株)ミック経済研究所
(株)旅籠屋
(株)リビングギャラリー
(株)大生産業
(株)リライフコーポレーション
みどり証券(株)
(株)カーゾーン
(株)アメニティ
ザ・レジェンド・ホテルズ&トラスト(株)
(株)わかば総研
(株)CUBEホテルズインターナショナル
(株)日本ティーエムアイ
(株)アイコーメディカル
(株)アイ・ラーニング
(株)立神工業
コンピュータマインド(株)
(株)名学館
(株)テクノシステムズ
(株)宝木スタッフサービス
(株)碧
(株)オートハマーズ
(株)インフォース
マイコロジーテクノ(株)
(株)グッドコム
(株)ラグネットジャパン
イー・エム・エー(株)
太陽毛絲紡績(株)
(株)グランディーズ
(株)春うららかな書房
ファインネットテクノロジー(株)
エイチエス(株)
(株)CBMI
(株)アインザ
(株)トライアンフコーポレーション
チッソ(株)
プラス・テク(株)
太平化学製品(株)
深川製磁(株)
(株)信貴造船所
三国商事(株)
(株)ミナミ保険
(株)ライフステーション
(株)レキオス
(株)メディアサポート
ジェイ不動産証券投資法人
ほとんど同じ。でもSBIバイオテックの社名はやはりない。続いて2012年。
電子システム(株)
(株)サンマエデュケーション
ジャパン・トゥエンティワン(株)
(株)富士テクノソリューションズ
洛王セレモニー(株)
OMソーラー(株)
(株)カワシマ・ゴールド
(株)シーキューブ
日本ジッコウ(株)
(株)ダッツ
日本エコカ工業(株)
(株)アサヒ商会
(株)NEXUS
(株)ミック経済研究所
(株)旅籠屋
(株)リビングギャラリー
(株)大生産業
みどり証券(株)
(株)カーゾーン
(株)アメニティ
ザ・レジェンド・ホテルズ&トラスト(株)
(株)アイコーメディカル
(株)アイ・ラーニング
(株)立神工業
コンピュータマインド(株)
(株)名学館
(株)テクノシステムズ
(株)宝木スタッフサービス
(株)碧
(株)オートハマーズ
(株)インフォース
マイコロジーテクノ(株)
(株)グッドコム
太陽毛絲紡績(株)
(株)グランディーズ
(株)春うららかな書房
ファインネットテクノロジー(株)
(株)CBMI
(株)アインザ
(株)トライアンフコーポレーション
チッソ(株)
プラス・テク(株)
太平化学製品(株)
深川製磁(株)
(株)信貴造船所
三国商事(株)
(株)ミナミ保険
(株)レキオス
(株)メディアサポート
やはりSBIバイオテックの社名はありません。気配値はどこにあるのでしょうか。まさか、お手盛りでSBI証券の気配値じゃないでしょうか。そうであるなら、投信協会ルールと何の関係もない。自分で自分のグループ会社の値をつけて、それがいったい何の根拠と言えるのでしょうか。
投資信託協会にも電話してましみた。「昔のJasdaq店頭登録時代の遺物ではないか?」と聞いたら、あのころは基準価格と言っていた。気配相場ではない。これは、平成9年にNASDAQのOTC Bulletin Boardを真似てグリーンシートが出来たときの気配相場で証券会社が気配を出すという前提で書かれたもの」と答えました。
そこで「グリーンシートなんて現在取引ないのでしょう?」と聞いたら、「十分理解しております」だそうです。つまり、その通りと言うことでしょう。
SBI本体では20万円で、顧客資金しか入っていないファンドでは2万8847円30銭。リリースでも「一物二価」は認めているのではないでしょうか。
で、「含み益がある」ですと?冗談も休み休み言って頂きたい。買い付けを停止したこのファンドでは顧客からは売りしか来ない。売らせられる顧客は2万8847円30銭。損失を出せなくなっているSBI本体保有分は簿価下げなし。お客の分は簿価下げ。その理由が、投信協会の決めたという理由とのこと。
そもそもこのファンド、私募投信経由で投資しているのは、いざ投資失敗のときにわからなくするためでしょうが。そういう堤防決壊のときの備えがあっても浸水は起きるのです。
Quarkが大幅債務超過69milとなってしまったので、SBIバイオテックに株式交換させた。さらに、株式交換の評価額もはっきり開示していないで、そこでまた評価上げをしている。2011年12月には純資産約12,000円だったから、本来2011年末には12,000円で評価しなければならなかった。それを大赤字Quarkの株式交換で、28,847円まで上げているんでしょう。
この論理的破綻をとり繕うのに、バイオしか頼みの綱はないのかもしれません。
バハレーンALA関連IR5発はなんなのでしょう?トーマツに、ついにSBIファーマ720億円を問題視されているのですかね。3月期末のジタバタ、これもしっかり検証したいと思います。
「オリンパス内部告発」でいぶり出されるもの
(この記事は昨日ロイターに配信したものです)
こんな時事問題の出題はどうだろう。大王製紙の不正会計疑惑、女子柔道のパワハラ、大阪産業大学のやらせ受験……その共通点は何だったでしょうか。
正解は「内部告発がきっかけ」。今や臭いものにフタができず、かえって深刻な問題に発展する例が後を絶たないのだ。と思っていたら、我々FACTA編集部が一昨年手がけたオリンパスからも、本誌に匿名社員の内部告発状が届いた。
その内容をかいつまんで言うとこうだ。
「オリンパスが特設注意市場から東証一部市場への復帰を目指して東京証券取引所に提出した内部管理体制確認書に虚偽の内容が含まれている。医療機器関連の海外工場で行われていない監査を行ったことにして、確認書の日付を改ざんした」というもの。東証一部復帰のために立ち上げられた上場審査プロジェクトメンバーほか、多くの社員が知っているのだそうだ。
この内部告発状には、本来行わなければならないはずの監査の内容までも、社内でしか通じない用語を用いて、具体的かつ詳細に記されている。社外のだれかが悪意を持って捏造した内容とは思えなかった。それをここで公開しないのは、この内部告発者をあぶり出そうとする社内の“摘発チーム”をかわすためだ。
本誌は作法通り真偽を確かめる質問状を送った。が、回答は「ご指摘のような事実は見つかっておりません」という、全否定ではないが肯定もしないグレーゾーンだった。
内から刺されているというのに、自分の会社が国内外に工場を持って世界中に製品を出荷し、その株式が国内外の多くの投資家に保有されているという自覚もないようだ。
損失隠し事件で半死半生の目に遭っていながら、本誌の報道後、オリンパスは一貫して知らぬ顔の半兵衛を決め込んで、まともに向き合おうとしない。この期に及んでも、恥を知らないというのは困ったことだ。
社員が内部事情を本誌を含めた外部にリークし続ける状況下で、不正を働いて、それをうやむやにするとは、株式市場のど真ん中をストリーキングしながら練り歩くようなものだ。見られていないと思い込んでいるのは自分たちだけ。こういう組織からは、いずれ公然と造反者が出るだろうし、恥を知っている社員は嫌気がさして会社を去る。
問題の概要は本誌4月号「オリンパスが東証確認書を『改竄』」に記したとおりだが、実はこれには「最後から2番目の真実」しか書き記していない。本誌が広報・IR室にこの問題について質問状を送った後、白河オリンパス(福島県)に異動が決まった部長、副部長、GL(グループリーダー)ら3人の名前は確認できているし、他の関与者複数名についてもおおむね特定ができている。
オリンパスが行ったと言う「社内調査」が実際には申し訳程度のものだったことも、慌てふためいた役員たちが会議室に籠りっきりになっていることも、損失隠しに関わった戦犯社員たちが苦虫を噛み潰したような顔をしていることも、社内で厳しい緘口令が敷かれていることも全部筒抜けだ。質問状を送った後も、告発者による情報提供が止んでおらず、ダタ漏れのオリンパスはすでに死に体である。
株価は正直だ。本誌がこの問題を報じてから、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)が大きく反発する局面でもオリンパス株は上値が重くなった。オリンパスの経営上の問題は円高だけでなく、同社の隠蔽体質にもあることに気付き始めているのだ。オリンパスに資本参加したソニーも早晩減損リスクにさらされるかもしれない。
さらに重要なのは、オリンパスは今回の問題で別の深刻な問題に直面せざるを得ない点だ。ここで言う「別の深刻な問題」が何であるかは、またの機会紹介するとして、内視鏡の一本足打法となっているオリンパスの存続を揺るがす致命的な情報になる。
これ、オリンパスへの宣戦布告です。彼らの逃げ場を塞ぐ「最後の真実」を暴いて、穴ぐらからいぶり出してやらなければならないのだろうか。いぶり出されたときには、オリンパスは「死に体」どころか「死体」になっているかもしれないのに。
オリンパスもう火ダルマ――別の内部告発メール
これだけボコボコにブログで叩かれながら、不思議なことにオリンパスは「当社に関する一部報道について」というリリースを出さないまま(出せないまま?)、週末になだれこんでしまいました。
2月13日には、間髪入れずに「一眼レフカメラ撤退」の報道を否定するリリースを出したのに、今回はうんともすんとも言わない。笹宏行社長、さっさと事実を認めて、高山前社長みたいにペコペコ会見をやったらいかがでしょうかね。
さもないと、内部告発状がなだれのようにFACTAに舞い込んできますよ。こちらも目を離していると叱られてしまいます。たとえば、ひとつご紹介しましょうか。
拝啓FACTA様
アメリカではネットの交流に伴い新聞の廃刊が相次ぎ、メディアの監視が減った行政の不正が増えているという話を読んだことがあります。
貴誌の監視の減ったオリンパスがまさしくそんな状態です。
心あるオリンパスの社員がすでにご案内済みかと思いましたが、どうにも腹の虫がおさまらないので、ご案内申し上げます。
2月12日付けの人事通達で、ある社員の懲戒処分が発表されました。
それは期待していたような大物ではなく、GLクラスの社員たった1名でした(添付ファイル2月12日の懲戒)。そしてその処分も、降格という実に軽いものでした。
皆が期待するような貴誌が報じてきたような本部長や部長などの名は全く見当たりません。
そして当日社長メッセージが出されましたが、それがさらに失望感を増すことになるのです。
それは他に10数名の疑われる社員がいたものの、損失先送りという認識を持っていなかったからというものでした。
とても信じがたい内容です。そしてこの懲戒を受けた社員のみが全貌を知っていたというのです…。絶句です。
話はこれで終わりません。
さあ、ここまで読んで、百武広報・IR室長はいたたまれなくなったに違いない。
(また?何が?)
そう思ったでしょう。添付ファイルをここに載せてもいいが、個人名が出るのでやめときましょ。もちろん、懲戒処分ですから、社外秘(INTERNAL USE ONLY)ですが、FACTAには何の意味もない。
以下の続きは、これとは別の2月27日付の懲戒のことです。
2月の2回目の人事通達において2つの注目すべきものがありました。
一つは、ある契約社員の懲戒です。
ある契約社員が販促品をネットオークションで販売し、その売った金を着服したというものです。そしてその社員の処分は諭旨退職。そしておまけに彼の監督不行届きで3人もの上司まで連座で譴責処分されています(添付ファイル2月27日の懲戒)。
日本企業の信用を世界的にどん底に落とした大経済事件を起こした社員がただの降格で、たかが知れた金を着服した契約社員が諭旨退職。
このバランスの悪さはなんなのでしょうか?
結局は、上司の言うことを聞くやつはどんな犯罪を犯したところで守るという、考えられない体質は今だ変わっていないのです。オリンパスは本当に最後の変わるチャンスを失ってしまったのです。
勝手な想像ですが、オリンパスは部長以上の異動人事は新聞に発表しており、今回の処分をGLまでにとどめたのは、外部へ漏らさないためとも思えます。
どこまで、陰湿でブラックな企業なのでしょう?
さて、もう一つ。そう、上司の言うなりになり、何も話さない人物、そう貴誌でも実名で報道されていた若き部長(S氏)は、この2月27日の通達で、映像事業の構造改革推進室室長になっていました。なんと、おめでたい会社でしょう。
この人物は、損失隠しでオリンパスを危機に陥らせる片棒を担いだ後、息絶え絶えの映像事業の社員たちに引導を渡すつもりなのでしょうか?
どうか、腐敗し、ブラック度を増す、オリンパスに、貴誌の監視の目を再びと願わざるを得ません。
この添付ファイルも武士の情けで転載しないが、オリンパス首脳陣はたまらんでしょうな。自社の社員にこうやって次々にバラされていくのは。白旗を掲げるときは、ちゃんと誰にでも見えるように。土下座は頭より尻を高くするものです。こそこそすると、もっと弾が飛んできますよ。あなたの背中からね。笹社長。
オリンパス笹宏行社長の社員向け言い訳(社外秘)2
大山鳴動、ネズミ一匹の続きです。笹社長が2月13日、社員に後ろめたそうに送った社外秘メッセージの分析です。では、メールの文章の引用から。
一連の不祥事に関しての役員・従業員に対する責任調査は、本件をもって終了としますが、本質的な問題として、本件不祥事の中で実務に関与した従業員が、隠された事情は知らないまでも、異常事態を察知できる局面はいくつもあったように思います。
おいおい、もう幕引きかね。そりゃ早いだろう。本誌への回答でも、内部管理体制確認書問題でまた新たに調査委員会をつくったそうな。調査委員会さえつくっときゃ、FACTAの目を逃れられるとでも思っているんですかね。お飾り委員会で、査問の仕方も知らない委員会をいくつ立ち上げたって、言い訳にはなりません。しかも知ってて指示に従ったという一人を処分したと言ったあとで、「隠された事情は知らないまでも、異常事態を察知できる」云々とは、頭隠して尻隠さずでしょう。
これは、知ってたけど、知らないことにしていた連中がいることを示唆しているんじゃないですかね。「いくつもあったように思います」?何を寝とぼけたことを言っているのだろうか。あったと思うなら徹底して調べるべきでしょう。これは言い逃れに目をつぶっていることを示しているんじゃないですかね。
また、実際に異常を察知していながらそれを問題として取り上げることが出来なかったことや、そのための仕組みが十分機能していなかったことが事実の発見を遅らせ、経営への影響を大きくしてしまったという事も事実だと思います。
要するに確信犯じゃないか。みんなで渡れば怖くない、ってことでしょう。それが発見を遅らせたんじゃない。意図的に隠したんでしょう。誰もが保身で、上司を傷つけまいと、隠し通してきたってことでしょう。南部や百武はその尖兵であり、彼らの共犯構造をえぐり出さないで、きれいごとを言ったって始まらない。
これだけ大規模な粉飾で、いやしくもバランスシートを知る人間が、社内で異常なことが起きていると察知しないとすれば、よほど無能な経理マンか、目が節穴の人としか考えられない。少しはプライドがあるなら、そんな阿呆の真似をするのはやめて頂きたい。
仕組みの面では、社外にコンプライアンスヘルプライン窓口を設置したことをはじめ、様々な対応を図ってきましたが、その一方で問題の芽を摘むためのスキルや、発見した問題を臆せず指摘し前向きに改善するためのマインド醸成も非常に重要な課題です。
嫌になってしまう。なんでこんな空々しいことを書き連ねて、平気でいられるんでしょうか。君らの嘘八百は、そうした窓口に投書して割を食った浜田正晴さんの例で、みんなよく知っている。誰がチクるもんか。だったら、とFACTAに内部通報が集まる仕組みができあがっているのだ。あなたがたよりFACTAのほうが取材源は守るし、信用されているのだ。下手な工作は、尻が丸見えなのです。
そこで、実務に関与した従業員に対し、この認識を新たにしてもらうために私から改めて厳重注意を行うとともに、経営としての課題に正面から向き合い、コンプライアンス体制充実の活動の一環として階層別・機能別のカリキュラムを検討し、教育・啓蒙活動に取り組んでいきます。
できるなら是非やってください。でも、もっと近道がある。「不正があれば、すべてFACTAに内部通報しなさい、そうしたら彼らが糺してくれる」と社長自らリコメンデーションしてくれませんかね。階層別・機能別に保身に励むポチをあぶり出しましょう。
言うまでもないことですが、経営陣、従業員すべてのオリンパスのメンバーが二度とこうした不祥事を起こさないという強い信念を持って業務に向かうことが何よりも大切です。皆さんも是非ともこの気持ちを強く持ってください。
笑えますね。FACTAがオリンパスを告発できたのは、オリンパス社員のなかに「強い信念を持った人」がいたからじゃないですか。不始末をしでかした共同正犯の連中から、今さら強い信念だのなんだの説教されるなんてこんなブラックジョークはない。
さて、さる1月21日、東京証券取引所に「内部管理体制確認書」を提出しました。過去の損失計上先送りとその解消に絡む一連の不祥事の発覚に伴い、1年前に特設注意市場銘柄に指定されて以後、その指定解除に向けてコーポレートガバナンスの改革、内部管理体制の見直しと改善、コンプライアンス推進に向けたの取り組み等を進めてきました。そして、いよいよ内部管理体制確認書を提出して東証の審査を受ける段階となりました。提出したのは内部管理体制確認書および付属書類は驚くほど膨大な量です。この作成のために各部門から上場審査プロジェクトに招集された皆さんはもとより、各職場において内部管理体制見直し等の取り組みに参画していただいた皆さんのご協力には心から感謝しますが、審査はまだ始まったばかりです。これから東証の審査官の手によって、提出した書類通りに内部管理体制が機能しているかどうかの検証がなされていくことになります。特設注意市場銘柄の指定解除は、中期ビジョンの基本戦略で掲げた「ガバナンスの再構築」の具現化のひとつと言えます。必ずやこの目標を達成すべく、引き続き全社挙げての協力をお願いします。
残念でした。本誌最新号の記事「オリンパスが東証確認書を『改竄』」は、このオリンパスの悲願を粉みじんに打ち砕く内容である。その前提として同社に送った質問状は3月19日付の本コラムをご覧ください。てんやわんやになった理由は、この社長メッセージと読み比べるとよくわかるでしょう。要するに、菊川残党をお咎めなしで飼っておきながら、内部管理体制の改善など期待できっこないということ。さっさと“毒麦”を取り除け、それが笹社長に進言したいことである。
世間では、円安効果による企業業績の回復基調が報道されていますが、当社においては2月12日の3G決算発表にあわせて通期見通しを下方修正したことが示すように、事業の実態は厳しい状況と言わざるを得ません。これから期末に向けて目標とした取り組みの追い込みをしていく時期と思います。インフルエンザやノロウイルスが蔓延していると聞きますが、体調には留意し、充実感をもって今期を締めくくれるように最後まで努力していただくことを期待します。
おやおや、オリンパス社内にはびこる粉飾ウイルスはそっちのけで、社員の風邪まで心配していらっしゃる。まことに見上げた社長の鑑だ。業績低迷も大丈夫、天下の御用新聞がチョウチン記事を16日に書いてくれてますからね。もっとも、18日には株価が反落した。その日は本誌記事がオンラインで公開された日です。はてさて、これでも東証の審査官は、特設注意銘柄の指定を解除しますかね。
われわれはもちろん、オリンパスを「FACTA銘柄」から指定解除するつもりはありません。
オリンパス笹宏行社長の社員向け言い訳(社外秘)1
2月13日付でオリンパスの笹宏行社長が「関係者の責任追及に関して」と題して社員に送ったメッセージです。どう思います?批評を加えながら引用します。
本日は、2月12日にグループ通達で発令した懲戒処分について補足します。
過去の損失計上先送りとその解消に絡む一連の不祥事に対する対応として、第三者委員会、取締役責任調査委委員会、監査役等責任調査委員会を立ち上げて調査を進め、本件に関与した旧役員並びに外部関与者に対する責任を民事訴訟という形で現在進行中です。その一方で、従業員としての立場で本件に関与した者への対応についても検討してきました。外部弁護士にも協力を仰ぎ、社内調査に加え、現在進められている訴訟の中から得られる資料・情報も検証するなどして、関与した従業員の特定と、処分の妥当性について、詳細かつ慎重に検討してきました。
のっけから弁解調です。役員と外部関係者への処罰は、何より東京地検による刑事告訴によりなされているものであり、民事はいわばその尻馬に乗ったもの。なのに、あたかも自ら主導して民事訴訟を起こして、役員処罰に積極的であるかのように見せていること自体、後ろめたさから発したものであることは間違いありません。
この社長メッセージを「INTERNAL USE ONLY」(社外秘)として、外部に公表しなかったことが、オリンパスの後ろめたさを雄弁に物語っています。
この結果、本件の損失先送りと解消のそれぞれのスキームに何等かの形でかかわった従業員は10数名いたものの、ほとんどの従業員は損失先送りおよび解消という目的を認識しない中で、指示に従って実務だけこなしていた方達で、いわゆる懲戒処分の対象とならないと判断いたしました。
まず関わった従業員は10数名となぜぼかすのでしょう。きちんとした調査を行っていない証拠です。OBを含むのか、他の部門へ転出した人はどうなのか、徹底した検証をしたのでしょうか。また「目的を認識しない中で、指示に従って実務だけこなしていた」との証明はどうされたのでしょうか。本人の供述ですか。そんなものは信用できない。口裏を合わせている可能性についてどう検証したのか。
アガサ・クリスティーの『オリエント急行殺人事件』を知ってますか。エルキュール・ポワロは口裏を合わせている乗客全員の証言を疑って、その嘘を見破るのですよ。そういう手間暇を惜しんで、「先に結論ありきではなかった」などと言い張るのなら甘い。
経理担当の社員は全員グルと疑ってかかるべきじゃないんですか。株価情報などの余禄にありつかせ、利益共同体になっていたとの情報もあります。10数名の社員の預金通帳、資産調査をしましたか。その他、関与が疑われる社員の周辺――急に贅沢になったとか、ツジツマの合わない行動をとったかとか、査問にかけてぎりぎり締め上げたのでしょうか。
何ならFACTAで査問役を請け負いましょうか。可視化してDVDで流してもいいですよ。オリンパス社員が脂汗を流す光景、だれでも見たいと思いますよ。
唯一、一名の従業員だけが背景事情、全貌を知った上で実務を遂行していたことが判りました。この従業員も、当時の上司であった旧経営陣から従属的な立場で業務を指示されていたということではありました。しかしながら、ステークホルダーからの信用を大きく失墜させることになったという本件がもたらした結果はあまりにも甚大と思わざるを得ませんので、情状も酌量したうえで相応の懲戒処分を実施し、2月12日に通達発令しました。
それが大山鳴動、ネズミ一匹。財務課長ひとりだけの処分である。あとは安堵の息、枕を高くして眠れるというわけだ。「ステークホルダーの信用を失墜させた」という結果があまりにも重大だったので、いやいや処分して、それを最小限にとどめました、と言外に言っている。
1200億円に及ぶ損失先送りとそれを解消するスキームの無理さ加減は、英ジャイラス買収のプレゼン前に送られたメールでも、財務担当部署で共有されていたことは明らかだ(本誌12年11月号「日本IBMオリンパスに『悪知恵』」)。それを「従属的立場で指示を受けただけ」とは、法廷に立ったナチス親衛隊のアイヒマンと同じ言いぐさである。
悪の凡庸さ――ハンナ・アーレントが言ったとおりだ。オリンパスが見逃した連中は、最悪の類の「凡庸なる悪」である。
社長メッセージはまだ続く。あまりにお粗末な言い訳なので、次回も徹底的に。
本誌公開質問状に対するオリンパスの回答
3月1日、本誌の質問状が届いて、オリンパスでは騒ぎになったそうだ。11年6月の株主総会前に送った本誌の最初の質問状に対し、木で鼻をくくったような回答をして、あとで大火傷した記憶がよみがえったのだろう。2年ぶりの悪夢が頭をよぎり、「またか!」と背筋が冷たくなったのだろうか。
しかしこちらも、オリンパスが東証に提出した「内部管理体制確認書」に改ざんがあった、との内部告発状が届いているのだから、会社としての正式回答を聞かずにはいられません。びっくり箱で人を脅して喜ぶひねくれた性格ではないつもりですが、作法にのっとってお送りした次第です。
すると3月6日、オリンパスの広報・IR室長名義でファクスによる回答書をいただきました。ありがとうございます。「下郎の分際で下がりおろう」と言わんばかりの2年前とは別格の待遇、ちゃんとお答えいただけるとは、身に余る光栄でございます。
室長名は百武鉄雄様。目安箱に投書したら左遷されたオリンパス社員、浜田正晴氏の訴訟では、女性弁護士と組んで大活躍だった前秘書室長様です。
おお、われわれもついに百武様直々のご回答を得られる身分となりましたか。カンゲキ、カンゲキ!
しかも一昨年暮れには、百武様がおかくまいなされた菊川剛元会長とそのペットの隠れ家、白金の宿を本誌がみつけまして、いろいろお騒がせしましたっけ。そのマンション契約書に百武秘書室長の忠義のあかし、サインを視認いたしまして、このブログであっぱれポチと褒めたのが懐かしい。
いまは新体制のもとでポチに磨きをかけていらっしゃるのでしょう。宿敵FACTAに回答状を書くお立場であらせられるとは、その勇気、見上げたものです。
今回もよほど自信があるのでしょう。木で鼻はくくっていないけれど、指で鼻をつまんだような回答です。世の鼻つまみ雑誌には、まことに時宜を得た内容ともども感服つかまつりました。オリンパスが苦節2年弱で、いかに粉飾体質を改め、何も包み隠さない立派な会社になったかをご覧ください。
月刊誌FACTA発行人
編集部阿部重夫様
拝啓早春の候、貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
平素は格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。
3月1日付けで貴社よりいただいたご質問につきまして、以下の通りご回答申し上げます。
貴社からのご質問をうけて、弊社としても、直ちに社内調査チームを立ち上げ、ご質問において起債しておられた事実に関する調査に着手いたしました。
これまでに、関連すると思われる資料・書類のチェック、ご指摘いただいた「内視鏡製造部」(なお、弊社にはそのような名称の部署は存在いたしません。)を指しておられると推測される関連部署および担当者へのヒアリング等の調査を実施しました。
しかしながら、現時点では、ご指摘のような事実を確認するに至っておりません。
今後も引き続き調査を継続する所存ではございますが、正確な調査を進めるうえでは、告発の対象とされている事実につき、その特定のためにより具体的な情報が欠かせないと考えております。弊社といたしましても、誰がそのような告発をしたかという問題についてではなく、告発のような事実の有無の解明にもっぱら精力を傾注して調査を進める所存です。誠に恐縮ではございますが、上記のような次第でございますので、貴社ご指摘の事実につきまして、より具体的な、さらなる情報をご提供いただきたく存じます。
何卒よろしくお願い申し上げます。
敬具
2013年3月6日
オリンパス株式会社広報・IR室
室長百武鉄雄
オリンパスへの公開質問状
久しぶりにオリンパスに質問状を送りました。
菊川剛元会長らの逮捕と起訴、東証での上場維持、そして木本会長―笹社長への体制一新と、ソニーの資本参加でメエタシメデタシと思っている連中、および新聞など忘れっぽい既存メディアに対し、FACTAはまったく違う次元を歩んでいます。内部情報がある限り、オリンパスへの告発は終わらない。
粉飾の中枢部門だった経理部などへの処分(課長たったひとりが懲戒処分であとはお咎めなし)を見ても、オリンパスを腐らせた戦犯たちはまだのうのうと生き残っていると見ているからです。司直もメディアも決着済みとフタをした案件でも、腐敗した根が残っているのなら、彼らが駆除されるまで「ターミネーター3」の液体人間のように形を変え手を変え品を変え、どこまでも追いかけます。
さて、今回送った質問状は、東証自主規制法人の“無策無為”の理事長、林正和(元財務事務次官)のおかげで上場廃止を免れたオリンパスは、「特別注意指定銘柄」とされて最長3年ほどは“保護観察処分”の身で、東証に内部管理体制などをいちいち報告しなければなりません。
その内部管理体制確認書を改竄した、との内部告発状がFACTAに寄せられました。その裏づけをとったうえで質問状を発したものです。これは保護観察中の問題児企業が、依然として「非行」を隠しているにひとしい。問題社員の追及や処分を疎かにし、粉飾の企業体質を温存しているのが、オリンパスの現状とみて、最新号の4月号で「オリンパスが東証確認書を『改竄』」(山口義正記者)の記事を掲載しています。
質問状は以下の通りです。
オリンパス株式会社
広報・IR担当者様
内部管理体制確認書についての質問状
拝啓
早春の候、貴社いよいよご清祥のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
先ごろ、貴社社員の方より匿名の内部告発状を頂きました。それによりますと、貴社が1月21日に東京証券取引所に提出なさった内部管理体制確認書には偽造された内容が含まれているとのことです。匿名ではありますが、その内容は具体的かつ詳細で、これが悪意を持って事実を歪曲したものとは思えません。
告発文を要約すると「八王子の内視鏡製造部で海外工場を監査しなければならないのに、担当者が工場への連絡を怠り、確認書提出の予定日に間に合わなくなった。そこで、やってもいない工場の監査を行ったことにして内部管理体制確認書の日付を手書きで改ざん、押印して東証に提出した」とのことです。
その後、この内部告発者の方と質問と回答をやり取りした結果、さらに詳細な情報提供を受けることができました。そこで確認したい点は以下の通りです。
①内部管理体制確認書の日付を改ざんし、押印して東証に提出したのは事実か。
②正しいとすれば、有印私文書偽造にならないか。
③この問題の責任者である八王子製造部本部長の吉益健・執行役員ほか、担当役員と監査役はこれをどのようにチェックなさったのか。その認識と責任は?
④社内にこの改ざん問題を知っている人物は本社や八王子工場総務の上場維持プロジェクトメンバーほか多数存在し、組織的な隠蔽の可能性もあるが、どのようにお考えか。
この件はオリンパスが本当に生まれ変わったのかを確かめる試金石になると同時に、ご回答に万一、不誠実で不正確な内容が含まれていた場合には、特設注意市場からの脱出はおろか、就任後1年に満たない笹社長や担当役員、監査役の進退に直結する恐れがあるかと存じます。かつ、これまで貴社を庇ってきた東証のメンツをつぶし、筆頭株主となったソニーの信頼を失い、ソニーも株主から出資の責任を追及されかねない問題をはらんでいるはずです。
お忙しいところ恐縮ですが、弊誌の締切もあり、3月6日(木)までにファクス、メール、郵送、直接取材のいずれでも結構ですので、何卒、誠意あるご回答をお願いしたく、よろしくお願い申し上げます。
敬具
平成25年3月1日
その回答全文はあす掲載します。
オンライン版公開は午後4時から
本日18日はオンライン会員にご契約いただいている読者に、一足先に誌面をお読みいただけるオンライン公開日ですが、製作過程の都合もあり、公開を正午から午後4時に変更いたします。
株式市場の場中の公開は不測の混乱を招く恐れもありますので、今後も毎月18日のオンライン版公開は午後4時とします。ご了承ください。
ファクタ出版ウェブサイト担当
教皇フランシスコ1世と『薔薇の名前』
初物尽くしの新ローマ教皇フランシスコ1世について一言。小生はカソリックでも、クリスチャンでもないが、アルゼンチンのホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿(76)がなぜ、第266代にいたるまで忌避されてきた「フランシスコ」の名を選んだのか、誰も説明してくれないのがちょっと不満です。
新聞はもっぱら、中南米出身の法王は史上初めてで、欧州以外の地域から法王が誕生するのは第90代法王のシリア人グレゴリウス3世(在位731〜741年)以来1272年ぶりだということ、さらにイエズス会出身の教皇も初めてだということを強調しています。
確かに教会力学から言えば、バチカン銀行の金銭スキャンダルや有力枢機卿のセクハラ・スキャンダルが多々起きており、欧州人でない教皇を選ぼうというモチベーションが働いたのでしょう。毎日新聞は、地元紙の記事をこう転電(引き写し)しています。
3月15日付イタリア紙コリエレ・デラ・セラは新ローマ法王フランシスコ1世(76)が法王選挙会議(コンクラーベ)で、選出に必要な参加枢機卿115人の3分の2を大きく上回る90票以上を獲得して選出されたと報じた。
アイルランドのブラディ・アーマー大司教の話として伝えた。投票の際、フランシスコ1世の得票が選出に必要な77票に達すると会場から拍手が起きたという。コリエレ・デラ・セラ紙によると、コンクラーベに先立つ準備会合で、イタリア人枢機卿団の有力者は、「身内」のスコラ・ミラノ大司教(71)を推さないことで一致したという。スコラ大司教を排除したいイタリア勢と、「米州法王」を望むドーラン・ニューヨーク大司教ら米国枢機卿団の間で「合意」が成立した結果、フランシスコ1世の選出に結びついたと分析している。
それはそれでいいが、なぜベルゴリオ枢機卿は「フランシスコ」の名を選んだのでしょうか。フランシスコといえば、中世の聖人「アッシジのフランシスコ」。サンフランシスコの名の由来でもありますが、その清貧主義に基づき13世紀に托鉢修道会「フランシスコ会」教団が結成され、教会はすべてを投げうって貧しき人を救えと当時の教皇庁を突き上げました。
やがて教団は分裂します。修道院の荘園運営を重視し、現実的な路線を歩む多数派(共住〈コムニタ〉派)と、貧困の聖化に徹する少数派(聖霊派〈スピリチュアーリ〉)に割れます。
僧院を出て貧者や病者のもとに飛び込んだ修道士たちは、否応なく「猛烈な経済発展で強く特徴づけられた市民社会と接触」(コンスタンティーノ・マルモ)することになり、かえって寄進や遺贈を受け入れ、不動産の売買に手を染めて、貨幣経済に丸ごと浸かっていくのです。
この矛盾と分裂をふさごうと1279年、フランシスコ会総長ボナヴェントゥラの助言に従って、教皇ニコラウス三世が教書を出します。そこで「修道院に財産権なき事実上の用益権(usus facti)を認める代わりに、財産権は教皇庁に属すことにする」という便法が持ち出されます。
これに対し、プロヴァンスのフランシスコ会士で、利子を肯定したヨハニス・オリヴィは、用益権を最少にする「清貧なる使用」usus pauperを唱えて聖霊派の肩を持ちます。
聖フランチェスコが「聖霊の時代」のキリストなら、オリヴィは聖パウロに比定されます。1248年か49年にプロヴァンスのセリニャンで生まれ、パリで大学入学資格(バカロレア)と取ったのち郷里へ帰り、周辺に聖霊派の弟子たちが集まります。
1285年にオリヴィは「迷妄的な徒党の領袖」として告発され、存命中から弟子たちへの迫害が始まります。結局、オリヴィは98年にナルボンヌで世を去り、死の床で自分の著作の是非は教会に委ねると遺言していますが、翌99年にはリヨンでその著作が異端と断罪され、所持するだけで破門される禁書になってしまいます。
その10年後、フランシスコ会はついに共住派と聖霊派に分裂、教皇クレメンス5世のもとで査問が行われ、1318年にはマルセイユで聖霊派の4人が火刑に処せられる事態となります。
「オッカムの剃刀」で有名な神学者ウィリアム・オッカムが、フランシスコ会総長とともに教皇に召喚され、命危うしとみて逐電する事態も起きました。
察しのいい人は分かりますね。これはウンベルト・エーコが書いた『薔薇の名前』の世界です。ワトソン役である修道士メルクのアドソが、フランシスコ会聖霊派の指導者から聞かされるのは、異端視されたこの使徒派のことですし、実在の異端審問官ベルナール・ギイは『薔薇の名前』にも登場します。
さて、この中世の暗闘は通い昔のことではありません。高齢を理由に退位した前教皇ベネディクトゥス16世が、2010年3月10日に行った第216回一般謁見演説にはこんなくだりがあります。
聖ボナヴェントゥラの時代に、「聖霊派」と呼ばれる「小さき兄弟会」の一派がこう主張していました。聖フランチェスコをもって歴史のまったく新しい段階が始まり、「永遠の福音」が現れた、黙示録に語られるこの「永遠の福音」が新約に取って代わるのだと。〔中略〕フィオーレのヨアキムは、新しい時代の始まりは新しい修道制によって到来するという希望をかき立てました。ここから、フランシスコ会の一グループが、アッシジの聖フランチェスコを新たな時代の創始者とみなし、フランシスコ会を新しい時代の共同体と考えたわけを理解できます。この聖霊の時代の共同体は、位階的教会を後にして、もはや古い組織に縛られない、新しい聖霊の教会を開始するのです。それゆえ、そこには、へりくだりのうちに福音と教会に従った聖フランチェスコのメッセージを深刻な形で誤解する危険がありました。そして、この誤解はキリスト教全体に関する誤った考え方を含んでいました。
はっきりとフランシスコ会を非難しているのがお分かりでしょうか。保守派と言われた前教皇は、中世に由来する托鉢修道会が、「財産放棄」という革命的スローガンによってローマ教会の秩序を揺るがしたことに否定的な立場でした。
新教皇は前任者のもっとも嫌がる名を選んだことになります。黒田日銀が白川日銀の「全否定」をスタート台にするように、フランシスコ1世もよどんだバチカンの薄暗がりに窓を開けられるのでしょうか。
首相官邸「聞いてなかったことにしよう」ホラー
3月6日、つまり来週の水曜日にホラーが起きる。
この日、東京高裁でいわゆる「一票の格差」訴訟の判決がある。またか、と思うなかれ。昨年暮れに安倍自民党が圧勝し、野田民主党がボロ負けした総選挙を対象に、合憲かどうかを問う裁判が全国高裁・支部で14訴訟が提起されていて、第一弾の判決が言い渡されるのだ。審理迅速化の原則100日ルールにより、3月27日までに次々判決が下される。
さて、思い出してほしい。野田前首相は衆院小選挙区の「0増5減」を実行する法案を速やかに成立させることを条件に、自民・公明党と「3党合意」して解散に応じたのだ。つまり、最高裁大法廷で昨年、前総選挙を「違憲状態」とする判決が出たにもかかわらず、「0増5減」を“予約”する形で、旧区割りのまま総選挙を実施した。
ところが、勝って兜の緒がゆるみ、安倍政権は320議席の絶対多数を維持したいから、区割り改定の熱意を失って、野党に転落した民主党に対し「今国会での合意は難しい」(2月12日、石破幹事長会見)として改正を急がなくなってしまった。
ところがどっこい、である。第一弾の東京高裁判決は、理論派の難波孝一裁判長だけに、違憲状態で行った12月総選挙は「違憲」との判決を下す可能性が高い。違憲違法とするか、違憲無効とするかのどちらかだろうが、安倍政権は総選挙やり直しを免れそうな「違憲違法」判決を期待している。時間稼ぎができると踏んでいるのだ。しかし最高裁に国が上告しても、昨年の大法廷判決を踏まえて、最高裁も「違憲」とする公算が大きい。
違憲判決が出た途端、升永・久保利弁護士ら原告団は、国家賠償訴訟に出ることを考えている。違憲判決だけで、衆院議員に対し賠償請求する条件が整い、しかも度重なる「違憲状態」判決にもかかわらず党利党略で先延ばししてきた国会へのフラストレーションを溜まらせている最高裁が、ここでも国賠を認める可能性が大きいと踏んでいるからだ。
国賠と言ってもいくらか。これは判例がある。海外在留邦人が小選挙区での投票権がなかった時期に起こした訴訟で、その精神的苦痛に一人5000円とされたのだ。「一票の格差」訴訟の弁護団は、これをもとに日本初の巨大な集団訴訟を起こそうとしている。訴訟の原告になってくださいと大キャンペーンを張り、1000万人規模の原告を集めるつもりだ。
そんなことが可能か。可能かもしれない。
勝てば一人5000円がいただけるからだ。必要なのは住民票の謄本代(200~500円)だけ。1000万人だと、賠償額は500億円。誰が払う?国のカネは税金=国民のカネだから充当されない。国会議員一人一人が現金1億円を徴収される。
仮に有権者全員(1億451万人)に5000円支払いだと、5225億円となり、国会議員のほぼ全員が破産する。党が原資を銀行から融資してもらって立て替えようにも、そんな資金を貸す銀行があるだろうか。
政党助成金と、あの豪華な議員会館と議員宿舎……いたれり尽くせりの国会議員を裸にすることができるわけだ。これって「政治不信」の無党派層には、永田町への懲罰としては最適だろう。しかも小遣い4500円以上が入るのだから、願ったりかなったり。12月総選挙で投票率を前回より10%下げた無党派の棄権票が、この「マツリ」に燃えるのではないか。
いや、オウンゴールで大敗した民主党支持層だって「自民勝ち過ぎ」と思っているから、この「マツリ」に乗ってくる可能性がある。自民党にしても、実は得票率ではほぼ横ばいだったと知っているから、これはヤバイと思うだろう。すなわち、安倍政権の絶対多数は風前の灯、融けて消えるかもしれない。
ただ、原告団は議員に課徴金を課すのが目的ではない。それを武器に、政府と各党に対し最後通牒をつきつけるという。その中身は①もう一度解散して「総選挙やり直し」、②小選挙区議員300人は旧区割りでなく、全国完全比例代表選挙で行うという期限付きの緊急立法を成立させる――という条件だ。選挙後に誕生する内閣は「選挙管理内閣」で、1-2年内に新しい選挙制度を決めて、そのうえで解散総選挙を行え、と求める。
これは安倍政権への強烈なビーンボールとなる。総選挙をやり直し、完全比例なら、絶対に再び320議席は取れない。いまやゾンビの海江田民主党もむくむくと蘇えり、日本維新とみんなの党ももっと議席を取るだろう。安倍官邸には悪夢である。
さあ、どうする、と官邸内で検討が始まるかと思いきや、「事前にはそうなるという予想を聞かなかったことにしよう」という空気だとか。ライオンに襲われるのが怖いと砂に頭を突っ込んだダチョウさながら?
打つ手なし、だからだそうだ。これは日本の憲政史上、初めて起きる司法府による立法府に対するクーデターと思える。つまり、現行の行政府も立法府も、司法府に刺されることを想定していない。しかし三権分立の現行憲法をよく読めば、それもありうるという前提になる。日銀総裁のように人事権を行使しようにも、最高裁判事は国民審査によってしか罷免できないから手が出せない。
「衆参のねじれ」より怖い「立法・司法府のねじれ」――。安倍総理にも麻生副総理にも菅官房長官にも石破自民党幹事長にも、どうにもならない。
慌てて「0増5減」を通したらどうか。原告団はノーである。では、自民党の腹案だった「21増21減」はどうか。それもノーである。原告団は「問題は一票の格差、つまり2倍以下なら、とか、1倍以下なら、とかの数字論議ではなく、人口比例選挙を行えと言っている。だから、格差0の比例選挙が一番」という考え方だ。
「決められない政治」は1387~1417年のローマ教会も同じだった。教皇が3人も乱立していた「分裂」時代、パリ大学の神学者が修道院の中庭に箱を置き、分裂を終息させる方法を思いついたら紙に書いて箱に投じよと呼びかけた。1万人余のメモが集まった。55人の教授が分類し、大別して三つの方法があるとした。それは、①3教皇が同時に退位して、適正選挙で一人を選ぶ「譲渡の道」、②仲裁を通じて3教皇のうちの一人を教皇とする「妥協の道」、③カソリックの全司教を集めて公会議を開き、そこで正式投票によって決める「協議の道」――の三つである。
1414年からコンスタンツで教会統一の宗教会議が開かれたが、①と②は明解で単純だが「船頭多くして船山にのぼる」で実際は不可能だった。そこで③が残ったのだが、これは今なら原告団が主張する「総選挙やり直し」案に近い。
ようやくこれで17年に分裂に終止符を打てたが、実は③に乗った陰謀家の教皇ヨハネス23世(バルダッサレ・コッサ)が、逮捕され投獄されて教皇位を剥奪されてしまった。残る二教皇も支持を得られず、まったく新しい教皇が選出される代償を払ったのだそうだ(Stephen Greenblatt ‘The Swerve’より)。
その故事から見ても、「決める政治」とは大きな代償――つまり、既存政党全部にお灸をすえるガラガラポンを伴う。官邸にその覚悟ありやなしや。「聞いてなかった」とは言わせませんぞ。
27日のNHK「クローズアップ現代」はチンドン屋以下
チンドン屋どころじゃなかった。NHKはもう報道機関の看板を下ろしたほうがいい。
言うまでもなく、本ブログで予告した2月27日の「クローズアップ現代」のことです。「密着レアアース調査船~“脱中国”はできるのか~」と題したルポの実態は、南鳥島沖の海底に眠るレアアースをダシに予算を獲得したい文部科学省や海洋研究開発機構(JAMSTEC)の片棒を担ぐ広報番組。そこまでは予想の範囲内でした。
ところが、海底レアアースの価値を誇張しようと、NHKがわざと事実を隠したりねじ曲げたりしているのに驚愕しました。報道機関としての一線を超えており、とても看過できない。
FACTAが2月号の記事『レアアース「脱中国」の大嘘』や本ブログで繰り返し言及してきたように、レアアース・バブルはすでに1年半前に崩壊し、価格はピークから7~8割も暴落しています。市場にはレアアースの在庫があふれている。中国の鉱山や精錬所が操業停止に追い込まれていることや、日本の磁石大手の日立金属が高値掴みしたレアアースの評価損150億円を計上する羽目に陥ったことも報じられており、NHKが知らないはずがありません。
にもかかわらず、番組ではこれらの事実にまったく触れなかったばかりか、あたかもレアアースの高騰が続いており、日本企業が入手難に苦しんでいるかのように巧みに演出した。もはや誤報どころか「ヤラセ」の域に近いと言えるでしょう。
放送を見逃した方もいるだろうから証拠を示します。番組中盤でレンズの研磨剤に使われるセリウムの価格高騰に苦しんでいるという工場が紹介され、下のグラフが画面に登場しました。
中国政府の輸出規制や2010年9月の“漁船衝突事件”の影響でセリウムの価格が17倍になったというものだが、グラフの横軸はなぜか2011年6月までしかない。その後、価格が暴落した事実を意図的に隠したのです。
さらに、番組では「セリウムの急激な値上がりで、この工場では(研磨剤の)新たな購入を控えている」と前置きして、経営者が「(研磨剤の在庫は)今はもうこれしかない、これでおしまい」、「もう手が出ない、その金額では」などと窮状を訴えるシーンを流した。レアアース市場の実態を知らない視聴者は、セリウムの高騰が今も続いていると信じたはずです。
事実はまったく違う。セリウムはレアアースの中でも資源量が豊富な元素の1つで、それゆえバブル崩壊後は市場でじゃぶじゃぶにだぶついています。しかも、米国のマウンテンパス鉱山や豪州のマウントウェルド鉱山など中国以外にも大量に埋蔵されているため、供給不安はほとんどない。ことセリウムに関しては、膨大なコストをかけて深さ4000メートル以上の海底からレアアースを採掘する必然性はゼロなのです。
こんなインチキ丸出しの番組作りでは、肝心の海底レアアースの価値もマユツバに見えてきます。断っておきますが、小生は海底レアアースの可能性そのものは否定しない。将来、画期的な技術革新により陸上の鉱山と競えるコストの採掘法が見つかるかもしれず、その日に備えて海底鉱床の探査を続けたり、採掘技術の研究を進めるのは意義なしとはしません。レアアースを“人質”に取ろうとした中国への牽制としても効果的でしょう。
とはいえ、海底レアアースの採掘がすぐにも商用化できそうな虚偽のイメージで視聴者を洗脳し、文科省や経産省が税金を湯水のように注ぎ込む口実作りに荷担するようでは、NHKが報道機関を名乗る資格はない。
現時点では、最先端の技術をもってしても海底レアアースの商用採掘は不可能です。実はNHKはそれを知っている。なぜなら、番組に出演した科学文化部の春野一彦記者が、採掘コストについて「母船や掘削設備の建造に700億円、運転コストに年間400億円」という試算を口頭で明らかにしたからです。
おいおい、気は確かかね。日本のレアアース輸入総額がバブルピークの2011年を除けば600~700億円程度に過ぎないことを知らないとは言わせません。しかも、これはレアアース合金のインゴットや酸化物パウダーなど精錬と加工を経た中間材料の金額。春野記者の試算が年間何千トンの生産を前提にしたものかは知らないが、深海から泥を引き上げ、薬剤を使ってレアアースを抽出するところまでのコストが年400億なんて悪い冗談にしか聞こえない。
百歩譲って商用採掘の可能性があるというなら、政府が採掘権を入札にかけて民間にやらせればよろしい。すでに鉱床の存在は明らかになったのだから、さらなる探査も含めて企業に任せれば税金を節約できます。少なくとも文科省や経産省よりはるかに効率的なのは、火を見るより明らかでしょう。
FBIが終わらせない「オリンパス周辺」追及
(この記事は本日ロイターに配信したものです)
今回はおトクな個別銘柄情報をひとつお届けしよう。
その銘柄の名を聞くと市場関係者だけでなく、捜査当局も色めき立つというとびきり元気な会社だ。オリンパス事件で登場した海外ファンドの実質的オーナーが社長を務め、このところ兜町の金融ブローカーの間に「M資金が動いて1000円まで値上がりする」という怪情報が乱れ飛んでいるという。そのためか昨年11月には200円そこそこだったジャスダックの株価は値動きも軽く、今年に入って700円をうかがう展開になった。
このオーナーに対してマネーロンダリングの疑いがかけられていることは前回の当コラムで触れたとおりだが、実はつい最近になって米連邦捜査局(FBI)が来日し、オーナーについて関係者から話を聞いて帰ったという。今頃はシンガポールや香港で収集した情報も持ち寄り、4日間にわたって開かれた報告会を終えたばかりのはずだ。
ここでFBIがどのような情報を得たのかを書き散らかすことは控えるが、今後、FBIの捜査は第二段階に入り、これまでにも増して捜査の網は広げられる見通しだ。このオーナーらがオリンパス以外の事件で荒稼ぎした資金も吐き出させ、オリンパス株で損害を被った投資家のダメージ・リカバリーに充てるためだ。
加えて、オリンパスに対しても米国で刑事と民事で併せて数百億円の訴訟が起こされる見通しだという(オリンパスは2月22日にソニーを引き受け先とした2回目の増資を発表しているが、これらの資金もいずれ訴訟で召し上げられてしまうかもしれない)。
オリンパス事件の捜査が始まった当初、日本では警視庁もオーナーの関与を疑って戸籍情報から細かく洗い直して捜査の準備を進めたほどだったが、オーナーは損失隠しの「海外ルート」関係者として証券取引等監視委員会と東京地検特捜部が担当することになってしまったうえ、事件の逮捕者との具体的な接点が見いだせなかったことも重なり、結局「国内ルート」の解明を担当することになった警視庁の捜査線上からは外れた。
通常、日本の捜査当局が取り調べを行った人物にFBIが接触する際には、警視庁にも事前に連絡が入る。しかしオーナーの場合、捜査線上から外れてしまったため、警視庁にはFBIから連絡は来なかったという。日本の捜査当局は黙殺されたのだ。
そんな経緯もあるから日本の捜査関係者に、この企業の株の高騰とその背景を話すと、「実に面白い。この社長をとっつかまえることができれば」と、並々ならぬ意気込みを見せた。もちろん上に書いたような株価の上昇要因だけで逮捕できるわけはないが、その意気込みやよし。
市場ではこの企業の株価上昇を囃しているのはごく一部で、本当に1000円まで値上がりすると信じている参加者がどの程度いるのか。多くは「株式投資の経験がないお年寄りなどに、二度と戻らないくらいの株価水準で買わせて、Mら高値で売り抜けるのだろう」とすべてをお見通しだ。
この件については業界紙だけでなく、一般の週刊誌も情報を入手しており、さっそく我々のもとに「情報交換のために会えないか」と言い出しているくらいだから、各種メディアが「買ってはいけない」としてイチ押しの注目銘柄でもあるのだ。
27日のNHK「クローズアップ現代」はチンドン屋になるか
今回は大丈夫でしょうね?
本ブログが「日経より悲惨な」と指摘したNHKのレアアース報道について、NHK首脳の関係者から電話をいただき、非公式のコメントとして「ご指摘の通りでした」と案外素直に受け入れられました。
訂正うんぬんは言葉を濁していましたが、実はその踏み絵が目前に迫っています。2月27日の「クローズアップ現代」でレアアース問題を取り上げると予告しているからです。
クロ現の公式ブログによれば、タイトルは「密着レアアース調査船~“脱中国”はできるのか~」だそうで、はてさてどう報道するのか、ワクワクさせられます。
というのは、先のニュース報道はどうやら経済部発だったらしく、1300億円も予算をふんだくっておきながら空振りのレアアース予算の正当化のために、経済産業省が“御用放送”を利用してミスリードした形跡があるからです。
ところが、今回のクロ現のネタは社会部・科学部発らしい。となると、こちらは文部科学省がNHKを上手に乗せて、予算正当化の理由づけにしようとしている可能性があります。
クロ現が放映するのは、文科省傘下の海洋研究開発機構(JAMSTEC)が今年1月に行った深海調査研究船「かいれい」による現地調査のドキュメンタリーだそうです。
なぜ南鳥島沖か?それは東京大学の加藤泰浩教授の研究チームが昨年6月、南鳥島周辺の排他的経済水域(EEZ)内の海底にレアアースを豊富に含む泥が大量に眠っていると発表したからです。
深海底に眠るレアアースを採集すれば日本の救世主になれる――いかにも文科省官僚のとびつきそうな予算獲得ネタです。JAMSTECはこの調査に同行取材するメディアを公募し、審査の結果選ばれたのがNHKだったというわけです。
なあんだ、JAMSTECの協賛番組じゃないか。
募集要項によれば、「かいれいの活動について、国民及び世界に広くアピール」することや、「南鳥島周辺海域におけるレアアース泥分布の概要の把握について国民が興味関心を抱き、理解を促す」ことが条件になっている。取材前からこんな約束をして、客観的な報道ができるんでしょうか?
海底資源の探索は研究としては面白いが、陸上の鉱山に劣らぬコストで採掘できなければ経済的価値はないに等しい。絶海の孤島周辺の深さ5600メートルにあるレアアース泥を引き上げて、果たして算盤が合うのか、ビジネスマンなら誰もが首をかしげるでしょう。
だが、裏でほくそ笑んでいる輩もいる。予算や天下りポストを増やしたい文科官僚、新しいプロジェクトや調査船が欲しいJAMSTEC、調査船や掘削装置を受注したい造船会社などにとって、こんなオイシイ話はない。中国という「横暴な隣国」に対抗するためだともっともらしい説明をすれば、勉強不足のメディアはコロッと騙され、国民の目をごまかせますからね。
ニュース番組のバラエティ化が進むNHKのなかで、「クロ現」は今や貴重な硬派の番組です。レアアースの「不都合な真実」にもしっかり切り込んだ報道で底力を見せてもらいたい。
税金を投じたJAMSTECの調査をNHKが受信料で取材しておいて、ほとんど文科省の広報番組に終わったら視聴者に顔向けできませんよ。
それに経済部が認めた誤報を、社会部・科学部が的外れな報道をしたら、「やっぱり、NHKの縦割り官僚組織は駄目だ」と烙印を押されることになります。
今からでも間に合います。石田研一放送総局長、放送前にしゃかりきで番組をチェックして、ディレクターの尻をたたき、文科省のチンドン屋でないことを証明する番組にしてください。
これって、クロ現の宣伝みたいだけど、27日の放送を楽しみにしています。
時代を読む――ベラスケスとベイコン、富者の心得
新潟日報など日本海側の新聞に寄稿しているコラム「時代を読む」を掲載しました。
*****
フランシス・ベーコンが日本にやって来る。といっても16~17世紀の哲学者のほうではない。
グロテスクだが、一目見たら忘れられない強烈な絵を描いた20世紀の画家で、すでに価格はピカソより高い。甘口好きな日本人は敬遠しがちだが、知る人ぞ知る画家だろう。東京国立近代美術館で3月8日~5月26日に33点の展覧会を開くから、機会があったらぜひ一度ご覧を。
あれは1996年5月だった。ロンドンの投資会社のオーナーで有名な美術収集家から、特別なパーティーに招待された。あの広大なナショナル・ギャラリーを全館借り切ったという。
好奇心に駆られて行ってみると、奥まった一室の正面に教皇インノケンティウス10世の座像が飾ってあった。あ、ベラスケス!思わずはっとする鋭い眼光は写真で見知っていたが、実物はもっと恐ろしい。
反対側の壁には、収集家が私蔵するベーコンの絵が5点飾ってあった。すべて先の教皇像にデフォルメを加え、叫んだり、睨(にら)んだり、肉塊のように歪(ゆが)んだ絵ばかり。エイゼンスタインの映画「戦艦ポチョムキン」からもインスピレーションを得たというが、これまた怖い絵だ。
片隅に当の収集家が立っていて「どうだ?」と言わんばかりに微笑していた。ようやく意図が読めた。ベーコンは教皇像をただ模写したのではなく、その写真が忘れられず、憑依(ひょうい)されたようにベラスケスに挑み続けたという。ベーコンは92年に世を去っているから、ベラスケスと絵同士で“ご対面”させてやろうというのだ。
ただ、教皇像はベラスケスがローマ滞在中に描かれたもので、今もイタリアの画廊が所蔵し、門外はむろん、国外も不出の絵のはずだ。それをロンドンに運搬させ、しかも私蔵のベーコンの絵と対峙(たいじ)させるとは、何という贅沢(ぜいたく)!
財力だけではない。17世紀と20世紀の対面なんて芸当ができたのは、この収集家の妻もロンドンのテート・ギャラリーの理事の一人であり、その見識といい、私蔵コレクションの素晴らしさといい、夫婦ともに美術界で高い声価を得ていたからだろう。
実は、この収集家はロスチャイルド家の番頭格の人で、野村証券の故田淵節也氏の紹介で知遇を得た。生前のベーコンとは親交があり、画家が同性愛者であることも承知の上でその天才を尊敬していた。
95年にサー・ジェイコブ・ロスチャイルドに私がインタビューすることができたのも、この収集家の仲立ちがあったからだ。一度、ランチの誘いを受けたことがある。セント・ジェームズ宮殿そばのオフィスに行くと、運転手つきのジャガーに乗せられた。おやおや、どこかのレストランに行くのかと思ったら、都心の瀟洒(しょうしゃ)な自邸に着いた。レンガ造りの建物に入ると、個人美術館になっている。
エントランスから、巨大なピカソやベーコンの絵がぞろぞろ壁にかかっていた。「こ、これ、本物?」と愚問を発しそうになった。たしかヒラメのムニエルをご馳走(ちそう)になったが、途方もない数の絵画に圧倒されて味はよく覚えていない。
お茶になって、書斎にいざなわれた。壁一面が本棚、しかも彼が好きなモンテーニュのコレクションの書棚だった。「随想録」は初版から、各国の翻訳まですべてそろっているという。
「ちなみに日本語版は?」と聞いてみた。
「ありますよ。私には読めないが」
関根秀雄訳だった。私も拾い読みしたことはあるが、覚えていなかったので「モンテーニュはどう読めばいいのか」と聞くと、懇切に教えてくれた。隅々までそらんじるほど読んでいる。
ああ、これが本物のコレクターなのだ。やがて彼が会社をスイスの銀行に売って引退し、訃報が届いた。ホゾを噛(か)んだがもう遅い。今回、ベーコンの絵と再会したら、アベノミクスのバブルに踊らない富者の心得でも考えてみよう。
名はギルバート・ド・ボトン。セファラディ(西方系ユダヤ人)の恩人である。(敬称略)
日経のレアアース報道のお粗末2
懲りないなあ、日経も。
またお粗末なレアアース報道をしています。2月17日付の朝刊中面に掲載された「窮地に立つ日本企業レアアース問題のその後」と題する記事。レアアースを原料に使う高性能磁石を生産する日本メーカーが、中国の新興磁石メーカーの安値攻勢、中国政府の自国産業保護、日本の経産省の技術移転規制などにより苦境に追い込まれているという。
実はこの記事、「電子版セレクション」と銘打っていて、もともと2月12日に日経電子版に掲載された記事をおよそ半分に短縮し、日経本紙の日曜版に転載したものです。電子版の原文もウェブサイトに残っているから、両方を読み比べれば、担当デスクがどの部分を削除したかが一目瞭然にわかります。
どこを新聞の読者に読ませたくないか、担当デスクの心理が丸見えなので、新聞研究には最適の教材じゃないだろうか。例えば原文にあった次のような部分が、本紙の記事ではきれいさっぱり消えています。
昨夏から、日本の大手をはじめとする世界のエアコンメーカーのあいだで、日本製磁石から割安のフェライト磁石へ切り替える動きが一気に進んだ。同じような現象がハードディスク駆動装置(HDD)や産業用コンプレッサー、スピーカーなどでも起こっている
「トヨタとホンダが中国企業から磁石のサンプルを取り寄せ始めた」。こんな噂が関係者の間で飛び交い始め、日本メーカーの焦りの色はいよいよ濃くなっている。
日立金属は1月30日、13年3月期の連結純利益が従来の増益予想から一転し、前期比33%減の120億円になるとの見通しを発表した。磁石の販売不振に加え、レアアースの評価損が150億円も発生。数年前からジスプロの在庫を積み増していたことが裏目に出てしまった。
もうおわかりでしょう?日本の磁石メーカーの窮地は、中国の攻勢や経産省の規制だけが原因じゃない。ネオジム磁石に代表される高性能磁石は、日立金属、TDK、信越化学工業の日本企業3社が世界市場を独占してきました。彼らはそれに胡座をかき、高値づかみしたレアアース原料のコストを製品価格に転嫁しようとしたが、同じ日本の電機メーカーや自動車メーカーにそっぽを向かれた。さらにレアアース・バブルの実態を見誤り、相場暴落で原料在庫の損切りを余儀なくされているのです。
つまり経営の失敗と言える一面があるのに、担当デスクはその部分をごっそり削り、お定まりの「日本企業かわいそう論」に仕立てている。「企業に甘い意図的な改竄」と言われても反論できないでしょう。それとも、なぜ上記の部分を削ったのか、名乗り出て理由を言える勇気はあるだろうか。
しかも改竄した証拠を自ら公開してしまっているから、痛々しくて目も当てられない。仮に他の記事でもこんなデスクワークが横行しているのなら、日経の報道全体の信用にかかわります。電子版の担当者も、こそこそとこの証拠紙面を隠さないで、天下にさらしておいてください。
他にもいろいろあるが、もう1点だけ指摘しておこう。FACTAは最新号でネオジム磁石の発明者である佐川眞人氏のインタービュー記事を掲載しました。
佐川氏は1978年に発明の着想を得たものの、当時の勤務先の富士通から研究を認められず、わざわざ住友特殊金属(現日立金属)に移籍して82年にネオジム磁石を誕生させた。この発明は会社の命令ではなく、佐川氏が個人の独創的アイデアを評価してくれる企業を探し求め、自ら道を切り開いた成果です。その功績が認められ、日本版ノーベル賞と呼ばれる「日本国際賞」を昨年受賞しました。
ところが日経の記事は、佐川氏の個人名を出さず「日立金属の元社員が発明」と、まるで匿名のサラリーマン研究者が発明したように書いている。佐川氏は88年に住友特殊金属を退社しており、日立金属の社員だったことは一度もありません(住友特殊金属との合併は19年後の2007年)。日本が世界に誇る発明の功労者に対して、いくらなんでも無礼じゃありませんかね?
記事を書いた記者はおおかた、日立金属の広報かどこかの聞きかじりを鵜呑みにし、「元社員とは誰か」を調べる知的好奇心も持ち合わせていなかったのでしょう。記者の不勉強はもとより、こんな初歩的ミスに担当デスクも校閲も気付かないなんて赤っ恥もいいところ。日経の編集局全体の地力が落ちているのは間違いないようです。かつて在籍したOBの1人として、ますます悲しくなりますね。
もうこれ以上、レアアースの「不都合な真実」を隠す与太記事が載らないことを祈念いたします。
日経より悲惨なNHKのレアアース報道
2月2日のブログで日経新聞のレアアース報道のお粗末ぶりを指弾したら、NHKからもっと悲惨なものが出てきました。同じ日に放送された『レアアース 中国からの輸入が減少』と題するニュース。テレビでは見逃したが、NHKのウェブサイトに動画付きで公開されています。
下記の引用を一読すれば明らかなように、「誤報」と言っても過言ではないレベルで突っ込みどころが満載。一定期間が過ぎるとNHKのウェブサイトでは読めなくなるから、記録を兼ねてこちらに「魚拓」も貼っておこう。
日本は、かつておよそ90%を、世界最大の産出国である中国から輸入していました。
しかし、ここ数年、ベトナムやフランスからの輸入が伸びた結果、中国からの輸入の割合が減り、おととしはおよそ68%、去年は58%まで下がったことが、財務省の統計で分かりました。
これは、3年前、中国がレアアースの輸出規制に踏み切り価格が高騰したことから、日本政府が中国以外の国でレアアースの資源開発を支援するなど、調達先を広げる取り組みを進めたことによるものです。
ただ、フランスのように中国から調達したレアアースを精製して日本に輸出している国もあり、中国からの調達が滞れば、日本も影響を受けるおそれがあるため、政府は今後、アメリカやインドからの輸入量を増やすなど、調達先の一段の多角化を図りたいとしています。
このニュースの一番「痛い」ところは、日本のレアアース輸入に占める中国産の比率が60%を切った理由を「ベトナムやフランスからの輸入が伸びた結果」と説明しておきながら、実はフランスからの輸入が「中国から調達したレアアースを精製して日本に輸出」したものであるというオチを自分でばらしていること。この際だから、本誌2月号の記事『レアアース「脱中国」の大嘘』に掲載したグラフを参考までにお見せしましょう。
2月号の締切は2012年12月分の貿易統計の発表前だったので、グラフは同年1~11月のデータです。NHKの記者が使ったのは通年(1~12月)のデータだから数字は多少違いますが、大勢は変わりません。
さて、首位の中国の比率は確かに60%を切っています。しかし2位以下のフランス、ベトナム、エストニア、韓国、米国の比率がなぜ増えたのか、まともな記者ならば疑問を持つのが当然だし、ちゃんと調べて報道するのがイロハのイのはずです。
実際、NHKの記者は2位のフランスが「中国から調達したレアアースを精製して日本に輸出」したことを知ったうえでニュース原稿を書いている。ではなぜ、ベトナム、エストニア、韓国、米国については調べなかったのか。3位のベトナムが中国南部から密輸出されたレアアースの一大精製拠点であることは、商社やメーカーを取材すれば簡単にわかるはずです。
5位の韓国も原料は中国産。違うのは4位のエストニアと6位の米国だけで、合わせても10%に届きません。しかも、その原料は02年に閉山した米マウンテンパス鉱山で10年以上前に掘り出された“不良在庫”ときている。同鉱山を所有する米モリコープが11年にエストニアの工場を買収し、そこで分離精製したレアアースを日本の日立金属に売っているのです。
ちなみに、マウンテンパス鉱山は再稼働したとの報道もあり、NHKのニュースにもショベルカーの映像が出てきます。ところが、商社筋は「採掘は止まっている」と口を揃える。そりゃあそうでしょう。モリコープはレアアース相場の暴落でただでさえ苦しいうえ、昨年11月には投資家に不正確な情報を開示した疑いで米証券委員会(SEC)が調査を開始。翌月にはマーク・スミスCEOが辞任しました。要するにまともな経営状態ではない。本誌はそこまで調べたうえで2月号の記事を書いたのです。
以上の事実関係がわかれば、『中国産レアアース、第三国経由の輸入が増加』のような見出しを立てるのが正常なジャーナリストの感覚でしょう。ところが、このNHKの記者はろくに取材もせず、そのくせ「日本政府が中国以外の国でレアアースの資源開発を支援するなど、調達先を広げる取り組みを進めた」「政府は今後、アメリカやインドからの輸入量を増やすなど、調達先の一段の多角化を図りたいとしています」などと、経産省におべっかを使うことだけは忘れていない。
さすがは「国営放送」。視聴者に正確なニュースを届けるよりも、お上を褒め称えるのが記者の使命だと心得ているのでしょう。
2月2日のブログでも触れたように、経産省が540億円の税金を投じて権益確保に動いている中国以外の海外鉱山からは、まだ1kgのレアアースも日本に輸出されていません。政府がアメリカからの輸入を増やすだって??経産省は住友商事への金融支援を通じてモリコープに出資し、マウンテンパス鉱山の権益確保を目指していたが、向こうから足下を見られて11年9月に交渉を打ち切られました。12年の米国とエストニアからの輸入は民間ベースの調達です。
ついでに言えば、上記の540億のうち80億は東日本大震災の復興予算からの流用。経産省は被災地のために使うべき予算を直接関係ない海外レアアース鉱山の権益確保に投じておいて、今のところ何の成果も上げていない。NHKは復興予算の流用・便乗問題を昨年9月のNHKスペシャルで大々的に報じましたが、この80億は単独案件では最大の流用ですぞ。それを取材した形跡が見当たらないのは、一体どうなっているのでしょうか?
真実の神は細部に宿る――。全文500字に満たないニュース原稿1本から、NHKの報道の深刻な劣化ぶりが露呈しました。この際、記者とデスクの教育をイロハのイからやり直すしかなさそうです。