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最後からの二番目の真実

電通を撃つ9――ガーラの回答

先の質問状に対して、ガーラの管理本部長、藤田公司氏から5月1日にファクスで回答があった。

もちろん、こちらの疑念に正面から答える内容ではなかった。出来高から見ても、ガーラ株の不自然な上昇はわずか3人の社員の取引で惹起されたとは考えられない。他の社員または外部、そして提携先の電通にも疑惑が及ぶはずなのに、社内調査は単独で実施していて、電通と共同で行わなかった理由も明示されていない。3人に課徴金が課せられたことで、事件の全容が明らかにされないまま幕引きしたことの不条理について、一言も説明がないのは解せない。とにかくガーラの回答が、すでにウェブサイトで公表したものを繰り返すだけの内容だったことは、以下の通りである。



貴殿よりご質問いただきました内容につきまして、以下の通り回答致します。

(1)証券取引等監視委員会の調査、勧告を受けた際、電通にもその旨を連絡、一緒に社内調査等をされましたでしょうか?

(回答)
まず、当社が証券取引等監視委員会による調査を受けた時点では、当社から株式会社電通様に対して連絡は行っておりません。

後日、当社従業員への行政処分の勧告がなされた時点で、当社より株式会社電通様に当該勧告について一連の報告を致しました。なお、報告の主な内容につきましては、当社が発表いたしました『証券取引等監視委員会による当社従業員への行政処分の勧告について(本年1月13日付)』および『当社のインサイダー取引未然防止の改善策について(本年1月16日付)』と同内容でございます。

また、当社の社内調査等につきましては、当社単独で実施しており、共同で行った事実はございません。


(2)電通との業務・資本提携を発表された昨年6月22日にいたるまで、御社との交渉にあたった電通の担当者が誰であったかを教えていただけますか。

(回答)
業務上の機密事項ですのでお答えできません。


(3)インサイダー取引を行った3人の従業員は、電通との交渉の過程をどこまで知りうる立場にありましたでしょうか?彼らから外部に情報が流れた可能性、あるいは他のガーラ社員が漏洩源になった可能性についてどのような結論が出ているのでしょうか。

(回答)
インサイダー取引を行った当社従業員3名のうち、営業担当1名は、業務提携ならびに資本提携の詳細を知り得る立場であり、他2名は、概要を知り得る立場でありました。

当該従業員による外部への漏洩につきましては、当社社内調査の結果、その事実はございませんでした。

また、当該情報を取得した他の従業員に対しても情報漏洩やインサイダー取引の有無について事実確認を実施しておりますが、該当事項は認められませんでした。


(4)金融庁が初めての課徴金命令を下したのは今年2月9日ですが、その際、電通には何らかの報告はされましたでしょうか。あるいは電通からなんらかの申し入れはありましたでしょうか。

(回答)
金融庁による課徴金納付命令の決定後、株式会社電通様に当該決定の事実とその内容及び当該決定に対する当社の対応について報告を致しております。

報告の内容につきましては、当社が発表致しました『金融庁による当社従業員への証券取引法違反に対する課徴金納付命令について(本年2月9日付)』および『当社従業員の行政処分に関する追加処分について(本年2月10日付)』と同内容でございます。


電通を撃つ8――ガーラへの質問状

では、FACTA第2号で続報を載せた「電通疑惑」<下>の取材経過を、前月に続いて公表しよう。

<上>で取り上げたネットプライス、オプト、シーエーモバイルとの業務・資本提携にからむ株価の不自然な動きのいわば「原型」とも見える、ネットコミュニティ企業ガーラのインサイダー取引(社員3人が課徴金を支払った)の件につき、電通との関連を問い質す質問状である。4月26日に送っている。

質問状では菊川社長(当時)とのインタビューを求めたが、広報はファクスで返答したにとどまった。文中にあるように編集長は面識があるのだが、ガーラ経営陣はインタビューに臨む勇気はなかったようである。こういう逃げ腰で公開企業の資格があるのか、と問いかけたい。



ガーラ広報担当入江様

先ほどは電話で失礼いたしました。(中略)現在、総合経済誌の『FACTA』(ファクタ出版、4月20日創刊)が掲載した電通モバイル広告戦略の過程で発生した「インサイダー疑惑」の取材を続けております。

記事内容は、別送しましたコピーの通りで、菊川暁社長は覚えておられるかと思いますが、『FACTA』編集長は総合情報誌「選択」の編集長時代に、菊川氏と村本理恵子会長にお会いしたことがあり、当時の名刺をまだお持ちかと存じます。

当時からガーラと電通の親密な関係を存じあげておりましたが、今回の記事では、電通がネット広告やモバイル広告会社との業務・資本提携を発表する直前、出来高を伴って株価が上昇するという不自然な値動きを見せることを指摘し、昨年末から1月にかけての3社の関連株価について疑問を提示しました。ガーラについても昨年6月22日の提携発表の約1カ月前から同じような値動きが見られます。このため、御社株のインサイダー取引問題と通底する部分があるのではないかと考えた次第です。

さて5月20日発売の続編では、電通の情報管理のあり方に言及することになっておりますが、その際に御社株のインサイダー取引問題にも言及せざるをえません。証券取引等監視委員会および東京証券取引所は昨年5―6月の値動きの「異常」から、インサイダー取引を認めた御社従業員3人に課徴金を課しましたが、この3人の取引高では1カ月にわたる急騰の説明がつきません。

上記3人は氷山の一角にすぎず、彼ら以外にもインサイダー取引に関わった関係者がいるのではないかと考えるのが自然だと思います。年末の3銘柄の値動きと考えあわせますと、我々は電通側にも情報漏洩その他の問題があったのではないかとして取材を続けております。

そこで以下のような点につきまして、お話をうかがえませんでしょうか。

(1)証券取引等監視委員会の調査、勧告を受けた際、電通にもその旨を連絡、一緒に社内調査等をされましたでしょうか。

(2)電通との業務・資本提携を発表された昨年6月22日にいたるまで、御社との交渉にあたった電通の担当者が誰であったかを教えていただけますか。

(3)インサイダー取引を行った3人の従業員は、電通との交渉の過程をどこまで知りうる立場にありましたでしょうか。彼らから外部に情報が流れた可能性、あるいは他のガーラ社員が漏洩源になった可能性についてどのような結論が出ているのでしょうか。

(4)金融庁が初めての課徴金命令を下したのは今年2月9日ですが、その際、電通にはなんらかの報告はされましたでしょうか。あるいは電通からなんらかの申し入れはありましたでしょうか。

勝手なお願いで恐縮ですが、正確な記事を作成するためにもご協力願えればと思います。また、締め切りの関係もありまして、5月2日(火曜日)までにご回答いただけませんでしょうか。御社にお邪魔してお話をうかがえるのであれば、5月9日(火曜日)までのご都合のよろしい時に、1時間ほどお時間をいただければ幸いです。

菊川社長には、編集長からもよろしくご協力をお願いしますとの伝言を預かりました。ご検討いただければ幸いと存じます。


東をどり

顰蹙(ひんしゅく)を買うかもしれないが、手嶋龍一氏と一緒に新橋の料亭「金田中」(かねたなか)に行った。28日の日曜日である。もちろん、料亭は普通日曜には開かないが、「東をどり」期間中は別なのである。

私はこの日、交通事故の被害届を提出しに麹町署に出頭、そこからタクシーで直行した。電通の株主、時事通信本社(昔の銀座東急ホテル)下のスタバで手嶋氏と待ち合わせたのだが、ほどなく手嶋氏が現れた。

話をしながら、道路を眺めていると、「東をどり」初日の演目がハネて、新橋演舞場から客が出てくる。誰が誰と連れ添っているかを眺めるには、この時事本社一階の屋外テーブルがベストポジションなのだ。

さて、夕暮れ。新橋演舞場から指呼の間の金田中に、赤い提灯の火が灯った。玄関をあがると、懐かしい顔ぶれが次々。手嶋氏の出版記念パーティに参じた新橋のきれいどころがお見えになった。

さっと、襖が引かれ、三味線と照代姐さんの唄で、さきよ姐さんとかつよ姐さんの豪華コンビの踊りを拝見しました。で、ひとつ発見。カッポレの歌詞が実は子守唄だったことに気づいた。ご存じの方には恥ずかしいが、はっとしたのは最後の詞である。

寝ろてば、寝ろてば……

これは疲れきった子守が泣きやまない赤ん坊をあやしているせりふだ。一見明るい旋律だが、五木のララバイのように実は悲しい。それだけではない。このせりふにデジャヴュ(既視感)を覚えた。北原白秋の「まざあ・ぐうす」の訳が、このかっぽれを下地にしていたからだ。白秋もお茶屋遊びをもとに詞を書いていたらしい。マザーグースの「靴のなか」である。



おくつの中におばあさんがござる
子供がどっさり、しまつがつかない、
おかゆばっかり、パンもなにもやらず、
おまけに、こっぴどくひっぱたき
ねろちゅば、ねろちゅば、このちびら。



それを知らなくても、この「ねろちゅば」は語感が素晴らしい。ちなみに原文は



There was an old woman who lived in a shoe.
She had so many children she didn't do what to do;
She gave them some broth without any bread;
She whipped them all soundly and put them to bed.



最後の一行の白秋の意訳がいかに素晴らしいかがお分かりだろうか。谷川俊太郎訳では、



みんなベッドへおいやった
むちでたたいておいやった



このほぼ直訳、白秋訳に遠く及ばないと思う。

さて、少し遅れて駆けつけたのが、この日、ダービーでメイショウサムソンにクビ差で2着となったアドマイヤメインの生産牧場、ノーザンファームの吉田勝巳ご夫妻。残念だが、常勝は打たれるばかりだから、と納得の様子。実は最終レースの目黒記念で1、2着をノーザン・ファーム馬が占めたので意気揚々でした。

照代姐さんが産経新聞に書いた手嶋氏「ウルトラ・ダラー」の書評を読んだ。ちょっと類例をみないが、どうも産経の住田社長のお声がかりらしい。ううむ、住田さんもなかなか隅におけません。

踊ってくれたカツヨ姐さんにお酌されながら会話。京都の話が出た。かくて、若い芸妓さんたちのやっこさん踊りに拍手しながら、新橋の夜も更けたのであります。

無理はしない

ムチウチもあるので、金曜は早めに帰宅。が、家はまだ誰も帰っておらず、がらんとしていた。

金曜朝に見舞いの水羊羹が届いた。これには恐縮した。ブログで書いて、予想外の反響となり、あちこちから見舞いのお言葉をいただいたうえに、申し訳ない。ご心配には及びません。ちょっと安静にしているだけです。

そういえば、追突した後ろのタクシーの乗客は、女子バレーボールの元全日本選手、大林さんとそのマネジャーだったそうな。現場ではすぐ車を離れたわれわれと顔をあわせなかったが、あちらも救急車で運ばれたという。同病相憐れむ。お見舞い申し上げます。

でも、どうせならサインでももらえばよかったか。小生も中学高校はバレーボール部に所属していたから。

さて、本日のフリーコンテンツ(無料公開記事)は、「産科医がいなくなる!」である。

子供を産もうという女性にとっては、深刻かつショッキングな問題だ。

福島の産婦人科医が罪に問われたことが、医師のあいだに衝撃を走らせたことは、高校時代の同窓生で弁護士の安福謙二氏らに聞いていたが、医師とリスクの問題は根が深い。直近まで私が寄稿していた医師中心のサイト「新・先見創意の会」でも、たびたび議論されていたテーマである。

産科医だけでなく、リスクを恐れて救急病院はどこも医師不足、看護師不足であることは、先日、送り込まれたERでも間近に見ることができた。医師ひとりで休む間もなく運び込まれてくる患者に対しなければならない。

根っこまで腐った社会保険庁だけではない。厚生行政は破綻に瀕している。「少子化」とは豊かな戦後の風潮というだけでなく、行政も共犯だったのではないか。

ちなみに「新・先見創意の会」に掲載された「ある保険官僚の生涯」は、4月末に死去した元社会保険庁長官で、健保連副理事長だった下村健氏が、いかにして晩節を汚したか(日本歯科医師会事件で有罪)を回顧した出色のObituary(追悼記)だが、一読をお奨めする。

まだ痛いけど

ムチ打ちの痛みは少々残っているが、それを押して出社。午後、整形外科に行って、もういちど診断してもらった。椎間板などに多少の歪みがあるが、まあ、事故のせいではないだろうという。とりあえず、1週間の痛み止めをもらって様子見となった。あとでぶり返すこともあるので、用心用心。

というわけで、このブログもおっかなびっくり。あまりキーボードをたたけないから、短文になるがご容赦あれ。

きょうのフリーコンテンツ(無料公開記事)は、松井証券の奇妙な人事について。日経報道を否定しながら、すぐ取締役の大幅入れ替えを行い、旧山一の取締役3人の代わりに実弟起用という奇妙な人事の背景を分析した。

ネット証券では先行したはずの松井証券だが、このところネット掲示板などではクソミソ。野村が格安のジョインベスト証券で乗り出してきたのに、若返りと称してほとんど対抗策になっていない。IPO玉狙いのデイトレーダーを、つなぎとめられないと見えるのだが。


村上氏が帰国している

ギョロ目君、シンガポールへ逃げたはずが、なぜか帰国しているそうだ。

どこへ行くのか。塀の中へ???

だとすれば、ライブドアのニッポン放送株取得がらみのインサイダー取引疑惑だろうか。4月に宮内、熊谷氏らライブドア元取締役たちが検察に再度呼ばれたのとも平仄があう。オリックスも村上ファンドからカネを引き揚げるという情報が流れたのはそのあと。阪阪連合との交渉が進まなかったのも、熟柿が落ちるのを待っていたのか。

首が痛いなんて言っていられない。本日復帰します。

きょうから第2号掲載記事のフリーコンテンツ公開(無料公開)。

第一弾は「おサイフケータイ」で前傾姿勢が目立つものの、業界第一位と組めないドコモの夏野氏の戦略の「弱点」を分析

サイトではお目にかけられないが、雑誌では「iD」を売り込む夏野氏の童顔の笑顔を掲載した。

ムチ打ち

乗っていたタクシーが追突された。23日午後10時半過ぎ。三宅坂近辺である。首に鈍痛を覚えた。

意識ははっきりしていたが、救急車に乗せられて、御茶ノ水の医科歯科のER(救急病棟)へ。レントゲン診断では、頚椎に損傷はないが、捻挫(ムチ打ち)とのこと。そのまま深夜帰宅したが、首に湿布し、しばし安静を必要とすることになった。

とほほ、髪の毛は残ったが、首ががくっと落ちかけた次第である。


まだ髪の毛はありますが

カメラマンの小嶋三樹さんが、ひょっこりオフィスに現れた。「編集長の髪の毛が……」と視察に来たのだという。幸い、いまのところ頭髪は頭皮の上にとどまっております。

しかし油断大敵。ここはしばらく気を緩めないでいきます。

さて、本日のフリーコンテンツは、昨日もお知らせしたように、創刊号の「電通疑惑」の第二回。原稿が雑誌で4ページ分と長いので、分載しています。出し惜しみではないので悪しからず。

本日も出たり入ったり、忙しく過ごしました。面白そうな情報がいろいろ耳に入ってきて、どれを次号でやるか迷っています。

昨日、ご報告した漆の贈り物の件、ウェスカー氏からメールが届き、逆に慰められました。ま、駐車違反にとっつかまったようなものさ、と。どうせだから、彼の慰めの言葉を日本語訳で紹介しよう。



シゲオさん(私の呼称はどうぞアーノルドで)

お手紙ありがとう。この一件で貴殿が困惑されたそうで、まことに残念です。ご心配なさらないで。政府からVAT(付加価値税)の払い戻しを受ける手だてを見つけましょう。まったくお笑い草。人生のある一面はクレイジーです。

せっかく素晴らしい贈り物をお送りいただいたのに、それを受け取る喜びをスポイルしたくはありません。

ほら、妻のために何かを買おうと店に立ち寄ったり、友人の家を訪れて、車を駐めっぱなしにして、駐車違反の罰金を払う羽目になることがあるでしょう。あんなふうなことです。有名なことわざがあります。

善行は罰せられることなし(NO GOOD DEED GOES UNPUNISHED)

笑ってやりすごしましょう。貴殿の贈り物にわくわくして待ちきれません。タカコさんからもお皿が届くとか。我が家は日本の神社みたい!

どうか気に病まないで。われわれも気にしていません。東京にこんなに親切な友人がいると思うと感謝の気持ちでいっぱいです。

お元気で。

Arnold


無事届いたかしら

いよいよ第2号が発送された。今度は遅配が起きないかどうか、実は固唾をのんでみつめている。

だって、起きたら丸坊主だもん。気が気じゃない。「Shallweダンス?」の竹中直人を思い出す。ああいうカツラでもかぶる身になるのかと思うと、ゾクゾク。一部はメールで「届いた」という知らせが入ったから、まあ、なんとかなっているとは思うが、ふたをあけてみなければわからない。

そのフタは新聞広告。月曜の朝日朝刊になるから、「届いてない!」とお叱りを受けるのはそれから。おお、ブルーマンデー。

月曜からは、創刊号に載せたスクープ「電通インサイダー疑惑」の<上>を分載する。第2号では<下>が載っているから、まず下地として<上>だけ公開することにした。もはや知られざる特ダネではない。

閑話休題。抗議する側に回ろう。イギリスの税関のおかげで、贈り物が無事に届かなかった例です。

1995-98年のイギリス駐在時代、お世話になった劇作家アーノルド・ウェスカー夫妻に先週お祝いの品を贈った。蜷川劇にもなった「キッチン」などの戯曲で知られるアーノルドは、昨年末にサーの称号を女王陛下に授与され、妻のダスティも晴れてレディーを名乗る身になったからだ。

今週、ダスティーの誕生日を祝い、一族郎党、知人を集めて城館で祝賀パーティーを開く。ま、日本の叙勲騒ぎと思えばいい。ふたりとも庶民の育ちで、手放しの喜びようはほほえましい。何か贈ろうと思って、福井の漆器屋さんに特注でワインホルダーと手鏡をつくってもらい、それぞれ2人の銘を入れて国際郵便で送った。



ところが、アーノルドのメールによると、税関が一品を贈答品でなく商品持込とみなし、なんと107ポンド支払わないと引き渡さないと知らせてきたという。おいおい、一品だけというのはどういう意味だ。どっちが商品で、どっちが贈答品とみなされたのかもわからないが、写真のようにちゃんと銘が入っていて、他人には使えない。なんというあこぎな役人か。当惑したアーノルドのメールを紹介しよう。



Something a little embarrassing has just come up. I had a lovely letter from Mr Abe telling me he'd started a new magazine and that he was sending two presents: one for Dusty's birthday and one to celebrate my knighthood. It was very generous and thoughtful of him.

Yesterday we had notification that they had arrived but would not be released until they received payment totalling £107. We phoned them to tell them these were gifts and not trade but they explained that only one of them had been declared as a gift. The amounts are to pay for Import Duty, VAT, and Parcel Force Clearance.

Of course we will pay the amount because it was such kind thing for Mr Abe to do. I gather that they are specially hand made lacquered pieces. And if the VAT is so much then the gifts must have cost a small fortune.

Please don't let anyone else send such gifts. It's lovely to receive them but we can't afford them!!! It's a pity he did not ask you to bring them then the authorities would have understood they were gifts.



抗議しようにも、電話口でダスティはあきらめ顔だ。「いったん決めたら彼ら(税関)はかえないもの」。しかし、贈り手はかえって迷惑をかけたことになる。私事とはいえ、イギリスのゴクつぶし収税吏、許すまじである。

とにかく、英国税法に詳しい方がいたら教えてください。漆器は英語でも「japan」というのだ。日本が誇る工芸品(ふん、英国には逆立ちしたってマネできない)が、どうしてこういう不当な仕打ちを受けるのか教えてほしい。

「新潟日報」への寄稿――マニ化するブログ

友人の手嶋龍一氏(元NHKワシントン支局長)と2人で、互い違いに新潟日報に毎月寄稿している。「時代を読む」という週末のコラムで、今月は私の番だったから、13日の土曜に掲載してもらった。

もう5日経ったので、このブログで再録しよう。タイトルは「マニ化するブログ増殖の先に待つもの」。自分がブログをやっていると、その動向が気になって、ここでも何度も取り上げたが、この記事はその延長にある。

月刊文藝春秋など中高年メディアでも「グーグル論」が躍るようになった。「ウェブ進化論」のような手放し礼賛とは逆の一方的な脅威論もいかがなものかと思う。そういうコケ脅しの論理とは違う視点を示したつもりだが、うまく書けたかどうか。





「神の国」や「告白」を書いた古代ローマの教父アウグスティヌス(354~430)が、キリスト教回心前は熱心なマニ教徒だったことはよく知られている。

光と闇の二元論的宇宙観で有名なこのマニ教という「邪宗門」が、一時とはいえキリスト教と拮抗するほどなぜ人々を魅了しえたのか、不思議でならなかった。が、11世紀にペルシャ語で書かれた異端者列伝「バヤーン・アル・バディヤーン」を読んでやっと納得できた。教祖マニは絵画芸術の達人だったのだ。

チグリス河畔(現在のイラク)に生まれたマニは、ダ・ヴィンチのような万能の天才だったらしい。画家が色彩や輪郭に巧みなように洗練された書字(カリグラフィー)の名人であり、製本術も学んで教典を挿絵つき美本に装丁した。しかも13字しか字母のないペルシャ語パーレヴィー方言を、母語である東方アラム語の22の字母で表すという言語革命まで敢行したのだ。

マニ教のあとで勃興したイスラム教が、あれほど厳重に偶像を禁じ、メッカのカーバ神殿にも黒石しかないのは、マニ教が開花させた図像の魔力をよく知っていたからに違いない。が、イスラム化されたペルシャでも、なおマニの名は美の象徴だった。現に世界中のモスクは天井も側壁も、聖人像の代わりに壮麗なカリグラフィーに覆われている。

話を現代に飛ばそう。インターネットで公開している「日記風のオンラインサイト」であるブログの宇宙が、いま“マニ化”している。

ブログ(blog)は「ウェブ・ログ」(サイトの時間推移記録)の略称だけに、これまではテキスト(文章)中心だった。パソコンや回線などの容量の制約も、データ量の多い音声や画像、さらに動画などは転送に時間がかかった。ところが、ブロードバンド(広帯域)や高度メモリー(記憶媒体)の普及で、そのバリアが取り除かれたのだ。

しかもブログのサイトが爆発的に増加している。世界で2500万サイトを超え、1時間5万サイトのペースで増えているという。一人でも多くの人に見てほしい素人たちが中身に工夫を凝らすのも当然で、私的に撮った画像や録音をファイルにして楽にやりとりできるなら、ブログが「フォトブログ」または「vログ」(vはビデオのv)に進化するのは時間の問題と言えよう。

昨年12月、アメリカ西海岸のサンマテオで起業したユーチューブ(YouTube)のサイトをのぞいてみればいい。ホームビデオで撮ったクリップを簡単にインターネットで公開できるのがミソだが、開始早々、1日平均8000本のクリップの投稿があり、それを見る人が同300万人と驚くような人気サイトになった。

現在はさらに膨れあがり、投稿が1日3万5000本、視聴者は同4000万人である。検索エンジンの王者、グーグル系列のライバル「グーグル・ビデオ」の4倍に達している。新聞王マードックが昨年買収した「マイスペース・ドットコム」でも、流れる快いメロディーは投稿者の曲。メジャーな映画会社や音楽会社の専属にならなくても、才能さえあればヒットメーカーになりうるのだ。

マニ教がキリスト、仏陀、ゾロアスターを習合し、西方ではグノーシスを、東方では唐で道教をも飲みこんだように、参加型メディアの進化型である「vログ」の福音は、ハリウッドをも蚕食しかねない。音楽CDがアップルの「iPod」やその転送ソフト「iTunes」に食われていることは明らかだが、DVDまで売れ行きが鈍ってきた。ヒット映画の不作のせいというより、参加型メディアの台頭でニーズが変わってきたのではないか。

だれもがスピルバーグになれるわけではない。しかし私空間で夢中になれるのは、ハリウッドが量産する大作より、自分だけの映像づくりだろう。ソファーで眺める「背もたれ」(lean-back)型から、パソコン画面に向かう「前かがみ」(lean-forward)型へ。「vログ」は21世紀のマニ教かもしれない。

しかしブログの宇宙神話が善意と悪意の不断の葛藤であるように、「vログ」もいずれマニ教的な善悪の相克に遭遇し、アダルトサイトが跋扈するだろう。

教祖マニには殉教の運命が待っていた。ササン朝ペルシャの宮廷の庇護を失い、旧宗教の嫉妬を浴びてキリストのように刑死したのである。

ぬか喜び?

なあんだ。ソフトバンクが13日付の日経報道(ソフトバンクとアップルがiPod内蔵携帯で合意)の否定リリースを発表した。

わが古巣の新聞だけに、悲しい事態だね。喜んで損したなあ。また、なし崩しに誤報を認めた大和証券報道ではないが、「日経お得意の誤報かい?」なんて冷やかされてほしくないから。

実は前回の「素直に喜ぶ」に対し、知人から「素直に喜べないかも…」というメールをもらった。両社は「ぜんぜん合意していない」のだという。ただ、孫正義とスティーブ・ジョブズが会ったところまでは事実だが、そこから先の「iPod内蔵携帯」の合意にはいたっていないらしい。FACTA創刊号の記事と一歩も進んでいないじゃん。どうせ後追いなら誤報だけはしないでほしい。せっかく第2号の編集を終わった休日で、ほんとに「素直に喜んだ」のに、これじゃ気が休まらんよ。また、すぐ取材を始めなくちゃ。

瞬間湯沸かし器のジョブズだけに、この報道を見たら、プンプンに怒りかねない。それを恐れてソフトバンクも慌てて否定コメントを出したのではないか。

ところで、16日にBSテレビに4分ほど出演します。午後1時からのBS朝日(5チャンネル)の昼のニュース番組の中。だいたい午後1時40分ごろになりそうだとか。

創刊号の編集期間から何度か撮りに来ていて、ようやくオンエアの運びになった。新参の雑誌だけに、ささやかなプロモーションになればと協力した。見ることができる人は一見を。鼻水たらたらで最悪状態で仕事をしている姿を撮られた記憶があるから、ま、とても男前には映っていないと思うが。

どうにか放送にこぎつけたスタッフに感謝し、これも素直に喜びたい。そして、これまたヌカ喜びに終わらないことを祈る。テレビ朝日グループは国税問題を抱えているだけに……。

素直に喜ぶ

昨日(13日)付の日本経済新聞朝刊1面トップで、ソフトバンクがアップルと提携し、買収したボーダフォンの携帯電話にiPod搭載機を開発すると報じられた。FACTA創刊号が報じたスクープの後追いである。

孫正義社長とスティーブ・ジョブスの東京会談を報じた創刊号の記事は

「ソフトバンク携帯」の侮れぬ隠し玉

で、このサイトでも無料公開しているから、改めてご覧ください。4月24日にウェブ公開したが、無料公開記事ではもっとも読まれた記事である。世の中の人はちょっぴりトクをしたことになる。

ここで、ソフトバンクの名誉のために言っておきたい。

この記事はソフトバンクの誰かから本誌が「もらった」ものではない。ずっと以前から我々が懇意にさせていただいている人がソフトバンクにいるのは確かだが、この記事はまったく独自に取材して、孫-ジョブス会談を別ルートで確認して掲載したものだ。抜いたライターに拍手!この人の実力である。

したがって記事はリークによるものではなく、ソフトバンクがわれわれを特別扱いしたことはないので、日経ほかソフトバンク担当の大手メディア記者は、彼らを責めないでほしい。

とにかく、小人数の月刊誌でも人海戦術の新聞を出し抜ける、という見本と思って、素直に喜びたい。

阪阪連合vs村上ファンド5――討ち死にすべし

村上ファンドのシンガポール高飛びと、電通疑惑の「二元中継」という綱渡りの1週間だった。

ブログの効用の一つは、イメージの引用ができることだろう。出たがり村上氏の顔はよく知られているが、電通は先にも書いたように「顔のない集団」だから、画像が少ない。でも、さすがにサイバー・コミュニケーションズ(cci)のような上場企業(マザーズ)は、立派なウェブサイトをお持ちで、そこに社長も顔をさらす。解任された新井敏夫前社長は堂々たる「社長挨拶」のページがあった。

笑えるのは、リクルート用のページである。ちょっと不気味な笑顔で、ご立派なことをおっしゃっている。



組織の中で個人は「歯車」と捉えられがちですが、弊社では違います。社員一人一人がまるでパーツの一部のように欠点を矯正されたり、画一化されたりするのでは組織を形成する意味が全くありません。人間一人で生きて行くためには欠点は修正する必要があります。欠点があればそこにつけ込まれ、競争社会で生き延びるのは至難の技だからです。しかし、組織では個人の欠点は他の人が補ってくれます。むしろ、個人の長所をつなぎ合わせて、個人の数千倍のパフォーマンスを実現するのが、本来の組織のあり方なのです。個々が集まり、集団の中で長所を発揮し合ってこそ初めて組織のメリットが生まれ、“強い集団”へと成長することができます。

会社はあくまでも舞台の一つにしか過ぎません。そこでどのように行動し、考え、成長していくのかということは、社員一人一人のやる気にかかっています。



ふーん、「長所を発揮し合う」のが、数千倍の私利私欲を追求するインサイダー取引とはね。本日の日経3面の表にあったように、cciの株価は年初来高値から52%も急落している。この落とし前、どうつけるのだろう。

彼も電通出身であり、cciの後始末に後任社長を兼任することになった長沢秀行インタラクティブ・コミュニケーション(IC)局長と年齢もほぼ同じだが、東大の2年後輩。ということは、このお二人、もとからお仲間で、後始末とは「臭い物にフタ」ではないのかしらん。

さて、それはともあれ、「阪阪連合」シリーズの最終回です。実は第4回の後半だったのだが、長かったので、2日に分けて載せることにした。わがゲストライター君の奮闘に感謝します。



昨日の記事でも引用したが、村上氏の投資手法は一種の売りぬけだ。だからこそ穴が出てくる。昨年のTBS株買占めでも、株価を上げて売り抜けやすいように「僕の持分を買ってくれる会社が5,6社はいる」と関係者に吹聴。焦った楽天がいざ買い進むと平気な顔をして、保有株の一部を市場で売却した。

株を大量保有→投資ファンドに認められていた大量保有報告の時間差開示を活用→保有株の魅力を皆に誇張する→株価を上げる→売り抜ける。単純化すると、これが村上ファンドのビジネスモデルだ。

付言するならば、本業以外にも当局は村上氏個人の資産運用に興味を持っていたようだ。旧通産省時代に担当していた業界情報を利用して株式売買をしていた疑いがあった。最近だと、テレビ東京株をわずかながらも保有しておきながら、やるつもりもない買収プランを打ち出し、結果的に株価が上がると保有株を見切り売りしている。村上氏個人のメーン証券である日興、買収先候補を紹介してきたHSBCなども調査段階にあるという。

このブログのホストである阿部重夫編集長と違って筆者は余り知見がないので、あまり格好の良いことは言えないが、一般に革命というものは三段階に分かれているそうだ。

第1期はアジテーションとテロ

第2期はテロ軍の正規軍化と決戦

第3期が新レジームの整備

明治維新でいうならば、吉田松陰とか革命初期の人間はたいがいが暗殺されたり、討ち死にしている。後期の伊藤博文、大久保利通などは新レジームで栄華を極めるが、日本人は早逝した革命家を愛してやまない。

これまで引用してきた刑事事件的な側面は除く。阪神買占めは、村上氏が初めてグリーンメーラーから買収屋に生まれ変わるチャンスだ。村上氏の対応次第では、せっかく育ってきた株主による企業統治理論、ひいては日本人に欠けているオーナーシップ哲学が後退してしまう。

4人のお子さんを含む家族の方々には申し訳ない。ここまできたら解体だろうがなんだろうが徹底的に戦い、殺される相手は検察なのかマスコミなのか誰かは分からないが、村上氏には見事討ち死にしてもらいたい。ただの仕手戦で終われば、日本の資本市場はブーン・ピケンズなどが跋扈した20年前から全く進化を遂げていなかったことになる。

阪阪連合vs村上ファンド4――11日朝から売却交渉開始

こういう同時進行ブログをやっていると、村上ファンドのTBS株再購入など、フラッシュニュースで新聞などと競い合ってしまうことになる。ニュースは短命ですな。で、思わぬところからメールがきた。

確定情報です。今週中は日本。
日曜日からシンガポール移住です。

村上氏のことである。すぐあとに、メールの主から電話がかかってきた。

「さっき、本人と電話で話した」そうな。土曜には、あのギョロ目さんは、グッバイらしい。

36計逃げるにしかずだが、やっぱりこのままでは塀の中に落ちると思っているのか。もう日本に帰らない「さまよえるオランダ人」になるのかしらん。

で、ゲストライターの「阪阪連合vs村上ファンド」シリーズ第4回を。本人は必死の取材で寝る間もなかったらしい。やっぱり「ほぼ毎日」ブログがいかに大変か、思い知ったでしょう。



ついに、なんと――11日朝8時ごろから、村上世彰氏は阪神電気鉄道、阪急電鉄と持っている阪神電鉄株を売却する交渉を始めた。阪神側のアドバイザーである大和証券SMBCの佐治顧問などが、村上ファンドと交渉するために朝方に六本木ヒルズを訪れる姿が目撃されている。

巷間では、「村上氏が阪神株の過半数以上を買い増すのでないか」「阪神を乗っ取ってバラバラにするのではないか」とささやかれているが、村上氏は本日から買い増しを止めたそうだ。株価に影響を及ぼす大株主として売却交渉を始めたため、この期に及んで売買したらインサイダー取引に該当してしまう可能性が高くなるから、という論理らしい。

ああ残念。そんなに怖いか、アンシャン・レジームの力。日本の経営者マインドを市場の力で変える創業時の志はどうした。

村上氏は4月中に家族ごと住民票を海外に移し替えており、すでに非居住者になっていた。阪神に対しては、取締役の選任など2日に株主提案を出している。1年のうち過半数の日数を海外で暮らす非居住者に阪神の経営なんかに口出しできるのか。「シンガポール移住は、脅迫を続ける阪神タイガースファンから家族を守るためだけだよ」と村上氏の周囲は語るがどうも腰が入っていない。

「あんなやつは高校の後輩として恥ずかしい」

阪急の角社長は村上氏が卒業した関西の名門灘高校の先輩だが、経営改革を訴える裏ですぐ利食い売りプランをたくらむ村上氏のことが大嫌いらしい。結局、村上氏が売却すれば経営統合が成立するので嬉しいはずなのだが、阪神買収ではコワモテぶっているくせに、ついに交渉のテーブルに着いた村上氏を「男らしくない」と馬鹿にしている。

阪急幹部は昨年末に“元祖ハゲタカ・ファンド”のサーベラスからの訪問を受けている。サーベラスは西武鉄道に出資を決めるか決めないかのころで、サーベラスは阪急に「うちは不動産だけに関心があるので、鉄道事業を買いませんか」と打診していた。阪急や阪神幹部にとって、こんなに節操のないサーベラスと村上ファンドの姿が妙にだぶるのだという。

昭栄へのTOB(株式公開買い付け)に始まり、東京スタイル、大阪証券取引所、ニッポン放送・フジテレビジョン、TBSと、ぬるま湯体質の企業株を買い占めてきたが、結局のところ村上氏は最後まで勝負した例がない。

「額に汗して働いている人々や、働こうにもリストラされて職を失っている人たち、法令を遵守して経済活動を行っている企業などが、出し抜かれ、不公正がまかり通る社会にしてはならない」

これは東京地検特捜部を率いる大鶴部長が就任時に語った言葉。ものづくりだからよくて、ヒルズ族だから悪いなんて、勧善懲悪的な考え方には賛成できないが、少なくとも非居住者となってしまった村上氏がこれから額に汗するとは考えにくい。

特捜をマークする記者が多いが、弱小といわれている証券取引等監視委員会の方が村上氏を狙う意欲が強い。刑事事件を担当する特別調査課の佐々木課長はクレディ・スイスの損失飛ばし事件、プリンストン債事件と金融監督庁時代に多くの大型経済事件を手がけている。大鶴特捜部長もクレディ・スイス事件を担当しており、佐々木特調課長とは知らない仲ではない。村上問題でも情報交換をしている。

実はゴールデン・ウィーク前後から特捜は、ライブドア元取締役の宮内被告に再聴取を始めたと聞く。狙いはずばり、一番タレコミが多いニッポン放送買収事件での村上氏の言動。

昨年、2月8日にライブドアはニッポン放送株の29・6%の時間外取引を利用して電撃買取をしているが、株式の一部4%程度を村上氏が売っている。同1月17日に堀江が村上を訪問して、「ニッポン放送株を買いたい」と申し込んでいるだけに、村上が時間外取引の投資家を斡旋した疑いが持たれていた。時間外取引は一種のフィクションで、一応売り手と買い手が偶然結びついたことになっている。持ち合い解消でみんなやっていたことなのだが、「偶然」結びついていない場合は、証取法で禁止されている馴れ合い売買となる。

村上氏はライブドアに対して共同の買収を誘ったのに、ニッポン放送の株価が急騰すると残りの株式を市場で売却した。村上氏が2001年ごろに関西のホテルで迫ったアイドルの卵も、ライブドアで合コンの女性調達担当だったUに紹介された。

「あれだけ仲間だと思っていたのに」。宮内被告などライブドア関係者は村上氏に根強い恨みがあり、村上氏の悪口話にはよく乗ってくるそうだ。

阪阪連合vs村上ファンド3――再びTBS大株主に?!

勝利宣言したものの、電通の原稿直しに追われて、目がしょぼしょぼしてきた。

あまりはやばやと勝利宣言などすると、電通内部とおぼしき「insidedentsu」氏から、「失望ですね」と題した叱咤のメールが飛んでくる。



新井氏の疑惑が発覚しただけで、お喜びになるとは失望です。

本来の疑惑のデパートは長澤局長であり、彼がCCIの社長に
なることの意味をご理解されていないよう。



はあ、おっしゃる通り。雑魚で喜ぶなということですね。俣木盾夫社長のクビをとれ、と?

なかなか期待が重いなあ。とにかくFACTA次号でがんばるから待っていてね。電通幹部の方々もクビを洗ってお待ちください。

さて、村上ファンドのほうも盛り上がってきています。第三回のきょうはテレビメディアが驚く耳より情報つき!



「これって、違反すると3年以下の懲役か300万円以下の罰金の刑事罰ですよね」

村上世彰氏に近いB氏のもとにはマスコミ関係者からの問い合わせがひっきりなしにくる。記者たちの関心は、「果たしてライブドアの堀江被告のように、村上氏も東京地検特捜部に起訴されるのか」。ゴールデンウィーク最中には「村上ファンドの月末ガサ入れ説」が流れたほど。

大手マスコミは「MHK」シナリオを本気に信じている。ある通信社の司法クラブと経済部の記者は、Xデーを見越して「村上ファンド特別取材班」を編成したほどだ。たとえば、阪神電気鉄道の買収劇にしぼると、記者がまず最初に注目したのは、大量保有報告書制度に違反した可能性なのだという。

ちょっと専門的になってしまうので説明を端折って単純化することを許していただきたい。証券取引法と関連法令では、一般に投資家が5%以上の株式を買い増したら5日以内に買い付けたことを開示しないといけない。しかし、村上ファンドのような運用会社や投資ファンドは「経営支配権の取得ではなく、純投資が目的」なので、大量取得の情報開示が3ヶ月(または1ヶ月)ごとの例外規定を守っていればよかった。

こうした例外規定は今回の国会で「2週間以内の開示」に改定されてしまったが、昨年のTBS株買占めなど、村上ファンドは例外規定が定めるギリギリまで情報開示を控え、売却先を打診したり、会社側の対応を見極める「後出しじゃんけん式」の投資手法を最大限活用してきた。

昨年秋に進めた阪神株の買占めでも、例外規定での開示だった。だが、実は村上ファンドは昨年からの阪神経営陣との会談で、しょっぱなから「資産利回りが2%に満たない事業は見直してくれ」と経営の根幹にかかわることを要請。最近の保有比率は過半数に迫り、村上ファンドが選んだ社外取締役の選任を株主提案している。「経営支配が狙いでないか」と阪神側が質問状を村上ファンドに送っているのも、法令違反の可能性を見込んでのことだ。

村上氏の高校時代の友人の父親でもある、阪神の非常勤取締役を務める玉井英二・元住友銀行副頭取を経由して阪神側の情報が村上ファンドに漏れていた可能性も調べている。これは、玉井氏に商法が定める取締役の善管注意義務(善意の管理者による注意義務)違反を問うシナリオである。

ちょっと難しい話が続いてしまった。要するに、マスコミは村上ファンドを敵視しており、粗探しにまい進しているのだ。有名な事件なので細かいことは書かないが、村上氏にはニッポン放送、TBS株を買い占めた際の、いくつかのマスコミ批判語録がある。これが全面対決の引き金になった。

「規制に守られたマスコミの経営者は公開企業の意味が分かっていない」
「どんなに無能でも大手に勤めていたら40歳で2000万円近い給料がもらえる」
「全く競争に晒されておらず、日本の病巣だ」
「TBSとかテレビ局になんて公共性はない」

どれも、はっきり言って本当のことばかり。そうなのだけど、村上氏はさらに、テレビ局の買収を親会社の新聞社幹部に持ちかけたり挑発行為を繰り返した。マスコミ経営者はこれを業界に対する挑戦状と受け取った。

実際、東京地検特捜部のマスコミ対応の窓口となる副部長クラスは、「村上氏には興味がある」と司法クラブ記者とのオフレコ懇では材料提供を求めている。これは、ライブドア事件と同じ構図。同事件ではフジテレビや日本経済新聞に情報提供者の紹介者や会社情報を流してもらう見返りに、捜査の進捗などをリークする――日本の検察とマスコミの独特の共存モデルが村上ファンドにも適用されており、最近の村上ファンド担当記者は特捜にとって「鵜飼いの鵜」となっている。阪神・阪急事件を材料に、何とか村上ファンドのネガティブ情報を集めようとしている。

村上氏もばかじゃない。マスコミの包囲網に気づいた。だからこその国外逃亡。本日10日から村上ファンドの本社は六本木ヒルズからシンガポールになる。だが、これはただの撤退でない。転進だ。なぜかと言うと――

小難しい法律談義を最後まで読んでくださった読者に、ここでサービス。

どうやら村上氏はTBS株を先週末時点で発行済み株式の4%を購入した。放送法が上限としている20%まで買いあがることを現在真剣に検討している。TBSは今週に入って、ある幹部が気づき、月曜日に早速井上社長にまで情報が上がっているが、全く対応がないという。20%を保有している楽天との交渉期限が6月に切れるが、今のところは「三木谷社長の買収意欲は衰えた」と自社株買いを検討しているだけだ。

阪阪連合vs村上ファンド2――GS住友は獅子身中の虫

ゲストライターの前に、編集長からひとこと。

勝利宣言――電通が白旗

やった!電通がとうとうインサイダー取引があったことを認めた。広告界の「ゴリアテ」を、「ダビデ」FACTAが倒した、といったら格好よすぎるか。とにかく、汐留のあの巨艦ビルにむかって、凱歌の祝杯をあげよう。

ことはこうだ。同社が47.6%の株式を保有するネット広告子会社cci(サイバー・コミュニケーションズ)は5月9日、cciの新井敏夫社長(53)の辞任とともに、cci社外取締役である長澤秀行電通IC(インタラクティブ・コミュニケーション)局長が後任の社長に就任すると発表したのである。

未上場子会社インビジブルハンド株を個人で売買し、4億円の利益をあげていたことが、監査法人トーマツの指摘でわかった、という発表である。やれやれ、往生際が悪いなあ。ほんとはFACTAの指摘でしょうが。

cci社長交代の意味するところの詳細は、FACTAの次号を読んでいただくほかない。電通が発表した内容より、ずっと根が深いのだ。乞う、ご期待!

さて、ニュース殺到で困りますが、以降はゲストの連載「阪阪連合vs村上ファンド」の第2回。



ウェブ初体験の老記者には実に名誉なこと。連載1回目にして、早速トラックバックを頂きました。いのうぇブログさん、ご指摘をありがとうございます。同氏によると、連休中に村上ファンドの村上世彰氏が訪れていたのは、シンガポールだそうです。筆者は「東南アジアか北米」としてました。

恥ずかしながら、追加取材しました。いのうぇブログさんの情報提供は確かですな。新しいオフィスの住所はシンガポールの中心街、orchardroadにある高島屋のすぐそば。村上氏だけでなく、阪神電気鉄道買収を昨年から担当しているナンバー2の丸木氏など村上ファンドの幹部は全員移住するんですって。ということは、東京の六本木ヒルズにある村上ファンドの本社オフィスはもうも抜けの殻。

「検察なんてチャンチャラ怖がっていない」なんて書いちゃいましたが、もしかすると村上ファンドの社員全員が、虫の悪い知らせがあったのかも。道理で…今日になって、村上氏は阪神の売却価格を1200円から1100円に下げてきたんだ。当初はあんなに強気に「1500円はあるぞ」と阪神経営陣に強調してきたのに。

夜討ち、朝駆けと昔流の取材手法にこだわっている記者諸君、六本木ヒルズに張り付いてももう無駄ですぞ。近所迷惑だから、とっととシンガポールに飛びなさい。

「虫」といえば―――今回の登場プレヤー、阪急電鉄、阪神、村上ファンドの全員に共通する、「獅子身中の虫」に第二部ではスポットライトを当てたい。それは、メーンバンクの顔をした、三井住友銀行と指南役のふりをしている大和証券SMBC、米国の大手投資銀行ゴールドマン・サックス。「虫」というよりマッチポンプ役というのが適切かな。

今月2日の東京・大手町。三井住友銀行本店には、阪急、阪神の幹部が集まって、村上ファンド対策や今後の統合計画を話し合った。村上ファンドの動向が読みにくいなか、三井住友銀行やグループ会社の大和証券SMBCがこだわったのが、「阪急が阪神を買収する際のファイナンスは三井住友銀行が主導するスキーム」。三井住友銀行は阪神のメーンバンク、阪急の準メーン、大和証券SMBCは阪神のアドバイザー。資本関係が利益相反ないのは、阪急側についたM&A仲介会社のGCAだけ。

要するに、三井住友銀行はファイナンスで、もうければいいだけじゃないの?阪急はもともとが旧三和銀行のメーンだけど、UFJとなってからは影響力が低下した。不動産投資が不良化したツケが出て、昨年夏に400億円の増資をするほど財務体質が弱っていた。こんな格付けの低い会社が企業買収に資金調達をしようとするれば、景気がよくなってきたといえ、普通の会社よりは1%弱は高い年3-4%の金利を取られるのは確実。阪神の買収に新規に調達する資金を3000億円ぐらいとするならば、100億円はもうかるはず。

そもそも、阪神の非常勤取締役を務める玉井英二・元住友銀行副頭取は三井住友銀行の前頭取で郵政公社の西川善文社長のお師匠役だったね。西川氏は昨年春以来、村上氏に対して「阪神は狙いどころ」と買収を勧めていた形跡がある。三井住友銀行は融資先を守るメーンバンクのはずなのに、村上氏を敵対買収者として阪神にけしかけて、融資先のかんぬきをはずす。そして、ホワイトナイトとして阪急を登場させて、自行が融資を出して鞘を抜く。

ははーん。何から何まで身内で固めるこの構図、どっかでみたことがあるぞ。というか、旧住友銀行系の案件でゴールドマンが絡むといつも出てくる。ゲーム用語でいうならば、千日手のように逃れられない「はめ技」というやつですな?

最近だったら、潰れちゃったディールだけど、カネボウと花王が酷い「はめ技」だった。2年前に両社のメーンバンクだった三井住友銀行がカネボウの破綻を防ぐと同時に花王にカネボウを買収させて、M&Aで儲けようとした。カネボウには大和証券SMBC、花王にはゴールドマンが付いていたっけ。カネボウは結局産業再生機構に行っちゃったが、こんなのが実現していたら…。

年初にゴールドマンが増資した三洋電機もそうだ。三井住友銀行がメーンだけど、リストラのアドバイザーには大和証券SMBCをつけた。そして、三洋電機ならず、三洋電機クレジットもゴールドマンが時価を相当下回る、有利発行もどきの買収をしている。

村上氏もちょっと脇が甘い。ゴールドマンの東京支店長を務める持田昌典氏が阪神の共同買収と非上場化による解体案を持ちかけていて、どうも村上氏はそれに乗っかっている感じがある。

昨年、大株主になった三共への対応では、三共へのアドバイザーを狙っていた持田氏に「敵対的買収をやるなら一緒にやろう」と誘われて、その気になったら、「うちは三共につくから」と梯子を外されている。当の三共には「僕が村上ファンドから守ってあげますから」と営業していたのに!

そのうち書かせて頂きますが、ゴールドマンこそが東京地検や監視委員会が狙っているこれから一番ホットな玉。3年前の三井住友銀行への出資では、当時の森昭治金融庁長官を自家用ジェット機でニューヨークに連れて行ったり、NTT株政府放出の際には接待付けにしていたノンキャリから入札情報を聞き出したり――村上ファンドよりずっと悪質だったのが、ゴールドマンですぞ。

ちょっと脱線しましたが、住友・GSラインの罪と罰をもうちょっと紹介する。年初以来、メディアには「阪神が村上と和解する」「阪急が時価よりも安い価格で阪神にTOBをかけて、村上氏が株式を放出する」という誤報が相次ぎ、阪急株が下げたのを覚えていらっしゃいますか。

そこで何が起きた?村上氏が阪神の株価下落で逆に買い進んだのだ。こうした誤報は、三井住友銀がネタモトとされている。「あえて間違った情報を出し→阪神株を下げさせ→同盟を組んでいる村上氏に買わせるように仕向ける」。これこそ、マッチポンプではないの。これを村上氏が知っていたのかどうかは藪の中だが、こんなのは無知のマスコミを利用した株価操作もどきではないか!

村上氏を国外追放に追いやった、当局のみなさん。銀行法、証取法、刑法に照らして、もっと調べることがあるんじゃないの?

阪阪連合vs村上ファンド1――国税が怖い?

最後はちょっと天気がさえませんでしたが、いい連休でしたか。こちらは完全に連休返上。ブログこそお休みしていましたが、ひたすら仕事をしていました。われわれ新参の月刊誌業者にとって、悲しむべきことにGWはあとにシワ寄せがくる恐怖の季節。月曜からはまたも体力ぎりぎり勝負になります。

で、夢遊病のような日記を書く羽目になりますが、幸い、今月は助っ人が登場しました。きょうから4日間、いまもっともホットなテーマである「阪神・阪急連合vs村上ファンド」を現在進行形で連載してくれます。FACTA次号では締め切りに間に合わないので、涙を飲んで新聞・週刊誌の報道合戦をながめていなければならないところですが、ありがたや、今はネットがある。同時進行にこれほど適したメディアはありますまい。

そこで、ゲスト・ライターの助力を借りて、このFACTA Onlineで参戦することにしました。さあ、日刊および週刊のメディア諸君、FACTAという紙とネットの二刀流メディアがどこまでやれるか、ご覧あれ。ライターはそうとう食い込んでいるから怖いぞ。この内容はもちろん紙媒体の月刊誌には載らないので、今のところは出血サービス。でもこんな貴重な情報はいつか有料化しますから、よろしく。では、まず第1回――。



中肉中背で坊ちゃん刈り。見てくれは、童顔のおじさんだけど、ぎょろ目と激しくまくし立てる口調には妙に迫力がある。

ご存知、村上世彰氏。阪神電気鉄道の大株主として世間を騒がせている村上ファンドを率いるファンド界のカリスマは、マスコミに会わないことで有名だ。2000年に昭栄にTOBをかけたころは、「コーポーレート・ガバナンスを日本に広げるんだ」とどんな記者でも積極的に会っていたが、ここ最近は、「日本のマスコミのレベルが低すぎる」と失望して誰にも会わなくなったと村上氏の周囲は話している。つまりのところ、新聞やテレビに出ている「村上記事」のほとんどは裏取りがなされていない欠陥商品だ。

村上逮捕説や引退説とか、誰もが実しやかに話すが真相は藪の中。それでは、せっかくなので、「経済報道に強いFACTA」が阪神問題にフォーカスして、最近の村上氏動向をルポしましょう。

どこにいっちゃったの?

筆者も含めてだけど、ゴールデンウィークの最中、東京、大阪のマスコミは村上世彰氏を追いまわした。だが、誰も所在をつかむことができなかった。村上ファンドは阪神の発行済み株式の46%を保有して、5月2日に取締役の推薦など株主提案をしたばかり。一方で、阪急電鉄は阪神に「鉄道会社としては戦後最大」という大経営統合を申し込んでいる。

村上氏の意向次第で、ディールの成否が決まる。むろん、記者連中はゴールデンウィークを返上で、村上氏が住んでいる六本木ヒルズにベタッと張り付いた。六本木ヒルズのオフィス塔と住居塔の間を走る坂道、ケヤキ坂に並んだ記者の黒塗りハイヤーは、週明け後も夜の風物詩になっている。

先ほど、やっとのことで村上氏を良く知る関係者A氏にたどり着いた。しつこく食い下がると、どうやら村上氏は移住先を求めて海外に行ってしまったらしい。A氏は具体的な国名については口を濁したが、「候補地は東南アジアと北米」。へー、何で?どうして?村上氏には、華僑の血が流れていると聞いていたけど、関係があるのかな?

「俺までをやるんだったら、こんな国から出てやる」

話は昨年末までさかのぼるそうだ。ライブドア元社長の堀江貴文逮捕説がささやかれてから、村上氏はこんなことを仲間内で言っていたという。

通称「MHK」。Mは村上氏、Hは堀江元社長、Kは元金融庁顧問で、現在は金融コンサルタント兼日本振興銀行会長の木村剛氏。これが、マスコミの間で人口に膾炙された、東京地検特捜部が狙うターゲットのイニシャルのもじり。確かに3人とも仲良しだったと記憶しているが、企業買収から合コンまで、村上氏を「師匠」と慕っていた堀江元社長が証取法違反で起訴されて「被告」になったから、次は村上氏の番だという読み筋らしい。

A氏によると、どうやら村上氏本人は検察の動きをちゃんちゃら気にしていない。雲隠れの本当の理由は税金が原因とか。一時、竹中総務相が大学教授時代にやっていたとして、国会で問題となったが、日本に住んでいない「非居住者」扱いとなって、所得税、地方税はもちろん、株式譲渡益税とから逃れようとする魂胆なのだという。

阪神買収の経緯は他の大手メディアに譲るとして、村上ファンドは現在阪神株の半分近くを押さえており、1株700-800円程度の廉価で買収をもくろんでいる阪急に対して、村上氏は1200円を強く主張している。

現在1000円程度の株価に対して、村上ファンドの平均購入価格は655円。時価総額は4000億円程度だから、100円買い取り価格を上げさせるたびに、村上ファンドには200億円のもうけが転がり込むことになる。目標価格で売れたとするならば、なんと1100億円の利益!

ちょっと専門的になるが、「恒久的施設理論」なるものが税務の世界にある。これは、投資会社が海外にあり、投資決定も海外でなされたのなら日本の税法がかからないが、「日本国内に投資判断ができる恒久的施設がある場合はその限りではない」という税法上の理屈だ。どうやら、村上ファンドを率いる村上氏が移住を考えているのは、これが怖いらしい。

ちなみに、村上氏の個人資産は推計100億円あるとされる。大半が2000年に昭栄に株式公開買い付けをかけて以来のもうけだが、村上氏は一度も長者番付上位に顔を出したことがない。なのに、「東京国税局は一度も村上ファンドに査察に入ったことがない」(大手紙社会部記者)。どうやら、村上氏は税務査察という別件逮捕ならぬ別件調査を恐れている節がある。

どうも村上ファンドの腰が据わっていないのは、このためか。村上氏はマスコミの目をすり抜け、先月21日金曜日、22日土曜日と神戸に出向き、阪神、阪急の首脳に水面下で会っている。その時に阪神・阪急連合に手渡した株主提案の試案には単に「株主価値向上のため、弊社が推薦する9名を取締役候補者とする」とあり、強気姿勢を前面に出していた。

だが、今月2日に提出した提案には、阪神の非常勤取締役を務める玉井英二・元住友銀行副頭取の名前があり、三井住友銀行をメーンバンクとする阪神にややすり寄った感じ。村上ファンドのウェブサイトには「阪急との統合は2月から自分たちが提案していたが、阪神が拒否していた」ともあり、阪急・阪神の統合案に擦り寄った感じがある。

本当に自分のやっていることに自信があるのなら、さっさと阪神株を買い占めて、非上場化して不動産事業などをバラバラに解体すればいいのに。どうせ、超金持ちなのだから、ローンスターやリップルウッドなどのハゲタカの真似をしないで、日本国内で税金を払えばよい――。

(以下続く)

ブログはしばしお休み

外をみると、目に青葉、さんさんと光があふれて、幸福な気分になってくる。つくづく、ブログとは深夜のメディアだと思う。田中康夫長野県知事からの返信メールにも、弊社への抗議メールは知事室で勤務中にではなく、午前1時に書いたとあった。なるほど、みんな宵っぱりで、明滅するディスプレーを眺め、キーボードに指を走らせているのか。

で、罪滅ぼしに7日まで、このブログをお休みすることにした。PCを捨てて外へ出よう。思い切り大気を吸って、健康な日差しを浴びよう。とはいえ、小生は連日出社して、次号の編集作業をしていますので、会社は開いています。

お休みはブログだけ。4月から走りっ続けなので、すこし充電期間を必要としています。週明け8日に再開しますので、よろしく。


再び戦闘モード3――官邸からの使者

創刊号発刊日に朝日新聞で全5段広告を掲載した。すると、弊社オフィスに電話がかかってきて、こちらに直接来て購入申し込みをしたいという。実直そうな男性が現れた。しかし申込書を書く段になると、名前も住所も書きしぶる。「それじゃあ、毎月お届けできませんから」と説得して、やっと書いてもらった。

「東京都千代田区永田町2丁目××」

ははあ、この住所、明らかに首相官邸である。ご愛読、ありがとうございます。

数日して弊社に手紙が届いた。編集発行人の身元調査をしたうえ、お書きいただいたようなので、そのご意思を尊重してよけいなコメントをはさまず、そっくり引用しましょう。読み手がどう考えるかは、各自の判断に任せたい。



抗議書

当職は内閣官房長官・安倍晋三(以下通知人という)の代理人として、貴社に対し、以下のとおり、貴社発行にかかる「FACTA」創刊号(平成18年5月号、以下本件雑誌という)における不当な報道について抗議します。

本件雑誌において、「蓋された安倍晋三の実像」と題する記事(76頁)その他において、通知人に関する報道をしておりますが、種々の事実関係の摘示に誤りがあり、公正妥当な報道とは到底認められません。

本件雑誌の編集発行人である阿部重夫氏は、選択出版株式会社において「選択」誌の発行人であった頃、通知人に関する虚偽報道の記事を掲載したものであり、これについて名誉毀損であることを認める東京地方裁判所の判決が、先般下されたばかりであることは、貴社も熟知されていると存じます。

上記裁判は、本来であれば阿部氏個人に対する賠償請求も併せ提訴し得たところ、会社のみを被告としたのは、記事の内容が会社組織による判断と思われ、発行人個人の責任は宥恕すべきと思われたところによります。

しかるに同一人物が、所を変えて発行人となった本件雑誌の今回の報道は、記事対象となる通知人側への取材活動を一切していないという、ジャーナリストの基本を無視した態度で「選択」誌の名誉毀損記事と共通しており、同誌と同じく、正確な事実報道を目指したものというより、通知人の社会的評価を貶めるための政治的な意図を持った記事と断じざるを得ません。

上記裁判でも原告として主張してきたところですが、政治家に対するジャーナリズムからの批判は自由であるべきものの、それはあくまで真実を前提においてのものでなければならず、本件雑誌のごとく虚偽事実を前提においた批判記事は、報道や評論ではなく、誹謗中傷に過ぎません。

以上、厳重に抗議を申し入れます。

以上


平成18年4月26日
東京都千代田区麹町二丁目四番
麹町鶴屋八幡ビル九階

電話03(3263)5974
Fax 03(3265)4022

柴田総合法律事務所

弁護士柴田敏之
弁護士澤口秀則
弁護士山田
弁護士高橋伴子



ともあれ、創刊号のご精読を編集発行人としてお礼申し上げます。謝々。

再び戦闘モード2――抗議文の後半

きのうに続き、抗議文の後半を掲載する。なかなか弊社のみならず、私個人にとっても耳に痛い内容だが、中に書いてあるように「undisclosed」にはできないので、歯を食いしばって公開しよう。

最初の段落はちょっと難解だが、おまえのように心臓に毛は生えていないよ、という意味なのだろう。



小生は未だ内視鏡等の医療機器を用いて、自身の心臓の内部を目視する経験を有してはおりませんが、恐らくは胸毛も臑毛も心臓内部に生えてはおらぬ凡夫であり、それ故、「もし、剣もほろろの対応をされれば、そのままネットで公開しよう。」と敢然と言明された貴兄とは異なり、斯くなる意思は露程も持ち合わせぬ事を予めお伝えする所です。

然れども、「音楽CDのスパイウエア批判記事を報じつつ広報セクションとの質問状と回答のやりとりを公開していった。それを踏襲しよう。」と創刊号の「送付」に当たり、改めて覚悟の程を記された貴兄が、<undisclosed-recipients:>にSからメールを送らねばならぬ状況に陥った原因と、一連の対処の詳細を、undisclosedな状態に留めず、可及的速やかにHP上で公開される気概も持ち合わせた表現者たらん事を強く願っています。

而して、「アンタッチャブル」な存在だった「電通」の真実を勇猛果敢に抉る宣言をされた貴兄が、嘗て碌を食まれた組織たる「日本経済新聞」の杉田亮毅社長の弟で歯科医師を務める人物が、「健康保険不正請求」の廉で民事訴訟を起こされている、との「風聞」の真実をも次号で、或いはWebで間髪を置かずに解明されますように。

加えて、「企業」なる組織に於けるクライシス発生時に、誰が如何に対処するかで、件の組織が果たして機能しているか否か、社会に対して果たして開かれているか否かが露呈する、と捉える小生は、ノーブレス・オブリージュ精神が横溢する貴兄が何故、今回の「遅延」若しくは「遅滞」を説明する営為を、先頭に立って行われなかったのか、若しくは行い得なかったのか、この点も、小生を含む多くの透視力と想像力が欠落した読者の為に、千の耳として万の目として、お伝え頂きたく存じます。

最後に、貴兄のアドレスを存じ上げず、support@facta.co.jp宛にお送りする、即ち、他のスタッフの方々のPCにも同送されるであろう宛先にお送りせざるを得なかった点、御寛容下さいますよう、お願い申し上げると共に、編集長宛の個人アドレスをWeb上に明示されてこそ、「FACTA」たり得るのでは、とお伝え申し上げます。

とまれ、縷々申し上げた以上の項目に関し、お返事を頂戴出来れば、と存じます。



これは参りましたね。皮肉がよく効いている。あっぱれというほかない。実は彼は名を名乗っていて「田中康夫」氏とあった。アドレスも「yassy」、長野県知事である。知事室でここまで長文の抗議文を書いていただけるとは恐れ入る。「きっこのブログ」で暴露されたケースなど、書けと言われてもなあ……。とにかく、お詫びのメールを送りました。



ご指摘の通りで申し訳ありません。

「貴行」という言い方はまったく論外で、小生も唖然といたしました。銀行に送付する文章でも芳しい敬称ではなく、いわんや大事な読者のみなさまをこういう呼び方をすることは礼を失しています。なぜこうなったかを本人に急ぎ質したうえで、営業担当者からも改めてお詫びを申し上げたいと思います。また、データ管理の欠損と、運送会社の手違いによる配送の遅れは、土曜の時点では現場が混乱していて矛盾をきたしたのだと思います。

いずれにせよ、こういうお詫びのメールを差し上げたとはつゆ知らず、小生の監督不行届きを認めます。心より謝罪申し上げますとともに、今後はかかる過ちを犯さないよう、本人も含め体制を見直しますので、ご海容をお願い申し上げます。



もちろん、彼が知事だから謝ったのではない。これだけ熱烈な抗議メールを書いていただける人に、こちらもきっちり応えるべきだと思ったからだ。そして当然ながら、彼と同じメールを受けた読者の方々にも同じ思いを伝えたいと思っています。