EDITOR BLOG
高橋洋一「日本経済のウソ」のススメ 日銀赤っ恥を予言
日銀の鳴り物入りの追加緩和が、なぜ円高の火消しにならないか、それを知りたい人は本書をひもとくといい。
FACTAは8月号でエール大学の浜田宏一教授と、嘉悦大学の高橋洋一教授の対談「白川日銀の迷走と危うい小野理論を憂う」を掲載している。浜田教授が東大時代の弟子、白川方明日銀総裁を批判する文章を公表したからだ。
その高橋教授(「埋蔵金男」)が、ちくま新書から出したのが「日本経済のウソ」である。そのページの多くは日銀批判にあてられているが、リーマン・ショック直後から白川日銀の頑迷と小出しと、結果としてシロをクロと言いくるめる強弁を批判してきた本誌としては、この本のロジックと軌を一にするところが多い。
本書を「視野が狭い」などと批判する、視野の狭い評者もいるようだが、8月10日の政策決定会合ではFRBに置いてけぼりにされて、円高と株安に追いまくられ、催促相場に負けて追加緩和になることが分かっていたのに、白川総裁はちっぽけな虚栄心にこだわってあえてカタストロフを選んだ(カンザスシティーにまで逃げだして緩和圧力を無視し、ダダをこねたあげくに、臨時会合を開いてやっぱり渋々緩和し、出遅れの証文に市場は冷ややかに反応した)。
そんな「地頭の悪い」総裁を見ていたら、どちらの視野が狭いか一目瞭然だろう。
本書の81ページにでてくるスタンフォード大学のジョン・テイラー教授の講演会は、FACTAが主催したもので、高橋教授にもパネラーとして出席していただいた。そこでは2003年の円売り・ドル買いの「非不胎化介入」で、当時の大蔵省財務官、溝口善兵衛氏(現島根県知事)とテイラー米財務次官の“協調”が話題になった。その時のテイラー教授の感触では、現状でその再現はムリらしいというものだった。
財務省は介入に踏み切ったが、さっぱり効かないばかりか、非不胎化も円高にブレーキをかけるにはいたらない。
いずれにせよ、FACTAが挑んだ論争にだんまりで通し、陰では「批判するのいい加減にしてほしい」と呟いていた白川日銀が、10月5日の政策決定会合でゼロ金利復活と非伝統的手段による5兆円の資産購入で、あれほど嫌がっていた量的緩和の姿勢をアピールせざるをえなくなった。本誌は「だから、いわんこっちゃない」と言いたい。
「緩和のフロントランナー」だって?笑わせますなあ。
ノビ太君総裁、とうとうパンツを脱がされたのに、まだイチジクの葉でなんとか取り繕おうとしている。結局、頑迷のうえ耳が遠く、ゼロ金利解除失敗の恥さらしをした速水総裁の二の舞ではないか。
その後退戦を早々と高橋氏の本は予言している。なぜ日銀の緩和が効かず、円安のカンフルにならないかはこの本にしっかり書いてあるのだ。それを拳々服膺するには、手ごろな新書だといえよう。
いっそタイトルを「日銀のウソ」としたほうがよかったかも。
FACTAleaks――対セラーテム戦争16 勘違い回答
予想通り、セラーテムから回答書が届いた。第一印象はまあ、于文革氏からの抗議文と大差ありません。
田原君の協力を得て中国で取材をしたことを、鬼の首でも取ったように騒いでいるのがおかしい。フリーランスの記者に取材を依頼して何が悪いのでしょうか。FACTAはFACTA、新世紀は新世紀です。新世紀が田原君に協力を依頼したとしても、どちらも自分の取材を土台にしているので、本来の出所は別々の記事だということがわからないんでしょうかね。
回答書がブログで公開されるのを意識して、FACTAがいかに「悪徳」であるかを強調しようと必死ですが、大証批判はこれとは別にとことんやりますのでセラーテムさんはご心配なく。回答書が感情的になってくるのはこちらも思う壺である。それで自分たちの信用が回復すると本気で思っているのだとしたら、別の意味でコワイ方々だ。
本誌が送った4通の質問状に、セラーテムは一度もまともに回答できなかったばかりか、中国の「新世紀」誌の記事が自主的に削除されたなどと真っ赤な嘘をついて大恥をかいた。冷徹な投資家にとって、それがすべてと言っても過言ではないでしょう。
さて、回答書を掲載しよう。なぜかファクスで送ってくるので、打ち直しに手間が掛かる。
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ファクタ出版株式会社
阿部重夫殿
平成22年9月13日
株式会社セラーテムテクノロジー
代表取締役社長池田修
1はじめに
貴社のFACTA9月号(平成22年8月20日発行)や「対セラーテム戦争」と題する貴社編集長ブログは、当社に対する敵意や偏見で満ちあふれており、真実を国民に伝えようという姿勢は見あたらず、過激な表現で読者の関心を引こうとしているだけです。しかも、貴社の取材は、北京誠信の1つのオフィスを外から見ただけで従業員がほとんどいないと判断したり、他人の写真を于文革氏であるとして掲載したり、当社決算説明会の司会担当者が大証の「宮川やすし調査役」であるとして、「ゴキブリ」、「愚かなスタッフ」と攻撃するなど(司会は宮川氏ではありません)、極めて杜撰であると言わざるを得ません。
当社が貴社に対して回答することにより、商業主義に偏向した雑誌社に協力することになるのは遺憾ですが、これ以上誤った情報が掲載されることを避けるため、必要な限りで回答させて頂きます。
2質問事項に対する回答
(1)質問項目1)について
北京誠信の従業員数は、平成21年12月末の買収完了時点で、すでに360名であり、平成22年6月末時点では424名です。北京誠信は実態がないという貴社の見解は、全くの虚像であり誤解です。これらの従業員は、北京誠信の登記上の住所である北京市豊台区科技園以外に、観湖国際1座含む北京市朝陽区内の3拠点で勤務しております。これらの拠点はすべて北京市主管部門に登記されておりますので、中国内でまともな調査を行えば、上記の事実はすぐに判明するはずですが、貴社には、そのような調査能力すらないものと思われます。
なお、当社社外監査役および当社監査法人により、上記の拠点の実地監査も実施されております。
また、豊台区科技園のオフィスにてお会いになられた北京誠信の女性社員の入社が数日前と質問状に記載されておりますが、彼女は、4年前にすでに入社しております。また、本人に確認したところ、そもそも入社時期についての質問は受けていないとのことです。
(2)質問項目2)について
前回の回答の通り、北京華電恒盛電力は2002年よりほぼ事業を休止し、現在抹消手続き中です。北京市供電局の方針により、抹消手続き中の法人代表の変更は行われません。
また、于文革は、北京市供電局を2009年5月に退官し、同時に北京京供誠信電力工程の法人代表および総経理を辞任しました。同社法人代表の変更手続きに関しても当社が北京誠信を買収した2009年12月までには完了しております。
于文革および北京誠信のオペレーションは、北京市供電局および北京京供誠信電力工程とは、一切関係ありません。
(3)質問項目3)について
中国雑誌「新世紀」の報道関しては、貴社は、記者側関係者である田原真司氏が中国の雑誌社「新世紀」に貴社8月20日発行のFACTA誌とほぼ同様な内容を投稿したにもかかわらず、その事実を読者に隠し、意図的に「ほか一名の記者の連名」と記載するなど偏見及び悪意をもった編集方針で当社に対する記事を作成しております。その後、この中国雑誌「新世紀」は、同社社内調査を行った結果、記事の内容は事実と異なることが判明し、自主的に同社HP記載の記事を削除しています。
また、当社が民政局住宅合作社の責任者に確認したところ、同社として本件に関する取材を受けた事実はなく、電話すらないとの事でした。
当社プレスリリースの通り、当社では中国のスマートグリッド事業を川上である発電所/川中である送電網および供電局/川下である智能小区と分類しており、当社が開示した2つのプロジェクトは川下の智能小区のプロジェクトであります。事業主および契約概要はプレスリリースに詳細に記載されており、当社開示に何ら問題はありません。
(4)質問項目4)について
前回回答の通り、白雲峰氏が科信能環の役員およびCEOに就任した事実はありません。
以上
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この回答書には、見るべき点が2つある。1つ目は、「于文革は、北京市供電局を2009年5月に退官」したというくだり。つまり、于文革氏はそれまで北京市政府の公務員であり、彼がトップを務める北京誠信は北京市政府の関連企業だったということだ。
回答書を受け取ったのは10月号の続報記事の校了直前。このため記事中では詳しく解説できなかったが、政府の関連企業を海外で裏口上場させるには複雑な操作が必要だ。正規ルートの上場は、北京誠信程度の規模では中国証券監督管理委員会(CSRC)の許可が下りない。だから、セラーテムのような海外の「ハコ」を使うわけだが、裏口上場は表向き、外資企業に買収される格好になる。政府系企業のままでは何かと都合が悪い。そこで、経営者が政府関連の持ち株を買い取って「民営化」し、政府との資本関係を消すことで、裏口上場への地ならしをする必要がある。
北京誠信でも同じ操作が行われた。同社の登記簿によれば、セラーテムが北京誠信と戦略提携する直前の2009年8月5日付で、株主の変更が記録されている。株主名簿に名前がなかった于文革氏が11.06%を取得するとともに、既存株主の于文翠氏(于文革氏の姉または妹とみられる)が持ち株を23.75%に増やして筆頭株主になった。同時に、大株主の上位4者を占めていた法人の名前が消え、北京誠信は個人株主17人が出資する“純民営企業”に衣替えした。
ちなみに、北京誠信の資本金は7000万元(約8億7500万円)。于文革氏(と于文翠氏)は額面ベースでも2000万元(約2億5000万円)の資金が必要だったはずだ。それをどうやって用意したのか。本誌は2度にわたって質問したが、回答はなかった。
沈黙の理由は容易に想像がつく。このような操作は、見方を変えれば政府のカネとコネで作られた企業の私物化にほかならない。まして、于文革氏は共産党員である。政府関連企業だった北京誠信をどさくさにまぎれて民営化し、日本で裏口上場させて私腹を肥やしたと証明されたら一体どうなるか。于さん、それはあなたが一番よくご存じですね?
見るべき点の2つ目は、「白雲峰氏が科信能環の役員およびCEOに就任した事実はありません」というところ。前回のブログの質問状を見ていただけばわかるように、本誌はチャイナ・ボーチー前CEOの白雲峰氏が、科信能環CEOの肩書きでセラーテムの役員会に出席していたことや、中国の複数の大学で行われたイベントでスピーチしていた事実をつかんだうえで質問している。だが、セラーテムの回答書はそれに一切触れていない。
白雲峰氏も共産党員である。政府にコネを持つ彼の経歴に傷をつけられないということですかね。まさか庄瑩氏の時と同様、白雲峰氏は「便宜上、科信能環CEOという肩書きを使う場合はあったかもしれません」とでも言い訳するつもりでしょうか。
こんなデタラメな会社を監査する会計士は、さぞかし大変でしょう。パシフィック監査法人の笠井浩一会計士からは、以下のような回答書が届いた。その評価は投資家にお任せするとしましょう。
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月刊FACTA発行人
阿部重夫様
9月10日付ご照会の件、下記のとおりご回答申し上げます。
(ご質問内容1)
1) 上記の事実から、セラーテムによる北京誠信の買収は、企業会計基準が開示を義務付けている「関連当事者との取引」に該当するはずです。しかし、セラーテムの有価証券報告書には全く記載されていません。笠井先生は監査にあたり、どのような判断を下されたのですか?「関連当事者との取引」に該当しないとすれば、理由を教えてください?
(ご回答1)
ご存じのとおり、監査基準において、「監査人は、業務上知り得た事項を正当な理由なく他に漏らし、又は窃用してはならない。」こととなっております。
したがいまして、申し訳ありませんが、被監査会社に関連するご質問に関しては守秘義務の関係からお答えすることが出来ません。
(ご質問内容2)
2) 北京誠信の子会社化と同時に、中国側から于文革氏ら3人がセラーテム取締役に就任し、日本側からは池田修氏が北京誠信の取締役に就任しました。親会社から子会社への派遣が1人で、子会社から親会社への逆派遣が3人というのは異例です。同時に、セラーテムは社外取締役のポストを新設し、東京大学名誉教授の高橋満氏を招聘しました。この社外取締役のポストは、笠井先生のアドバイスにより設けられたと聞いています。その理由は何ですか?IRでは「コーポレートガバナンスを強化するため」と説明していますが、具体的にはどういう意味でしょうか?
(ご回答2)
まず、そもそもとして、社外取締役に関して私どもがアドバイスをしたという事実はありません。当ご質問は、何らかのアドバイスをしたことが前提となっているかと思いますが、アドバイスをしていない以上、その理由等については当然お答えのしようがありません。
上記も含め、被監査会社に関連する事項については、守秘義務の関係からお答えするのは難しかと存じます。あしからずご了承いただければ幸いです。
よろしくお願い申し上げます。
2010年9月13日
パシフィック監査法人
代表社員笠井浩一
FACTAleaks――対セラーテム戦争15 四度目の質問状
于文革氏からの抗議文が届いた翌日、本誌はセラーテムに四度目の質問状を送った。今回も締切ぎりぎりである。于文革氏は「回答する義務はない」と啖呵を切ったが、痛いところを突けばおそらく反応すると読んでいたからだ。
同時に、セラーテムの会計監査を担当するパシフィック監査法人の笠井浩一会計士にも質問状を送った。そちらも併せて公開しましょう。
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セラーテムテクノロジー
取締役会長于文革 様
代表取締役社長池田修 様
取締役CFO宮永浩明 様
本誌の質問状に対する于文革会長の回答書(9月9日付)を受け取りました。本誌の報道にご気分を害されたのだとしたら遺憾ですが、質問の内容は日本の投資家が当然抱くはずの疑問ばかりです。それに一切回答しない、あるいは回答できないとすれば、株式公開企業の経営トップとしての責務をないがしろにしていると考えざるを得ません。
于会長は回答書の最後に「今後貴社の質問に対して回答する義務はない(対于今后貴公司的問題、我公司没有義務回答)」としています。しかし「回答しない」とは明言しておられませんので、ここに改めて追加の質問を送らせていただきます。ご検討のうえ、ご回答をお願いします。
1)北京誠信能環科技のオフィスについて
本誌は北京市朝陽区の観湖国際1座9層のオフィスを数度にわたり訪問し、8月12日以前はオフィスに社員が数人しかおらず、人の出入りもなかったことを確認しています。その後、8月24日に訪問した際には急に人が出入りしていて驚きましたが、オフィス内の見学は拒否されました。さらに8月27日、北京誠信能環の登記上の住所である豊台区科技園のオフィスを訪問しましたが、「数日前に入社した」という女性が1人いただけでした。北京誠信能環には400人を超える社員がおられるそうですが、彼らはいったいどこに出勤しているのですか?本当のオフィスの住所を明かせない理由があるのですか?
2)于文革氏と北京市供電局の関係について
8月12日付の回答書の中で、御社は「『北京華電恒盛電力技術公司』は、北京市供電局傘下企業200数社のうちの1社であり、于文革氏は北京市供電局の幹部として複数の傘下企業の代表者として登記されておりました。于文革氏は、『北京華電恒盛電力技術公司』の代表者としても登記されていましたが、同社は、2002年よりほとんど事業を休止しており(以下省略)」としています。北京市工商行政管理局の企業登記情報によれば、于文革氏は現在も北京華電恒盛電力技術の法人代表として登記されており、登記証は毎年更新されています。ということは、于文革氏は現在も北京市供電局の幹部なのですか?
北京誠心能環のオフィスがどこにあるかを明かせないのは、北京華電恒盛電力技術と同様に実体のない会社だからではありませんか?于文革氏は、セラーテムが2009年12月に北京誠心能環を買収する直前まで「北京京供誠信電力工程有限公司」の法人代表と総経理を務めていました。北京誠心能環のオペレーションは、現在も北京京供誠信電力工程および北京市供電局と一体なのではありませんか?
3)2010年7月16日付「スマートグリッド受注」のIRについて
上記IRにおいて、御社は「北京市民政局住宅合作社及び北京中弘投資有限公司との間で、北京市内における『地域内スマートグリッド建設』に関する契約をそれぞれ締結いたしました」と発表しました。しかし8月30日付の中国「新世紀」雑誌の報道によれば、事業主はいずれも「広い意味での智能化は取り入れているが、本格的なスマートグリッドではない」という趣旨のコメントをしています。また、北京誠信との契約についてもはっきり認識していないようです。これらのプロジェクトは正真正銘の「スマートグリッド」と呼べるものなのですか?
4)白雲峰氏の科信能環CEO就任について
8月12日付の回答書の中で、御社は「現時点で白雲峰氏が科信能環の役員に就任した事実はありません」としました。しかし本誌は、8月6日に東京の大和証券の会議室で開催されたセラーテム取締役会に白雲峰氏が出席し、科信能環CEOとして報告を行ったとの情報を得ています。また、白雲峰氏は7月15日に母校の華北電力大学で開催されたイベントに科信能環CEOの肩書きで出席したほか、8月18日から北京科技大学で開催された「科信能環杯」の開幕式にも出席し、冠スポンサー代表としてスピーチしています。これらは事実ではないのですか?
以上の4点について、9月13日までにご回答ください。
よろしくお願いします。
2010年9月10日
月刊FACTA発行人
阿部 重夫
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パシフィック監査法人
代表社員笠井浩一 様
お世話になっております。
先月ご連絡させていただいた際はどうもありがとうございました。
追加で確認させていただきたい件があり、再度連絡させていただきました。昨年12月の、セラーテムによる北京誠信能環の子会社化に関することです。
2009年6月、中国系投資ファンドの「Wealth Chime Industrial Limited(WCI)」および「New Light Group Limited(NLG)」の2社がセラーテムの第三者割当増資を引き受け、同社の大株主になりました。その後、セラーテムは北京誠信能環の買収資金を調達するため、WCIに対して再び第三者割当増資を行い、2009年12月21日付のIRで北京誠信の子会社化完了を発表しました。
この買収に関して、セラーテムは「WCI、NLG、北京誠信の3社の間に深い関係はなかった」と主張していますが、買収がWCIのオーナーである趙広隆氏の仲介で行われたことを否定せず、NLGのオーナーである庄瑩氏が北京誠信と顧問契約を結んでいたことを認めました。また、庄瑩氏が北京誠信副総経理の肩書きで行動していたことについて「あったかもしれません」と事実上認めました。つまりセラーテムは、大株主(庄瑩氏)が副総経理を名乗って顧問を務めていた企業(北京誠信)を、筆頭株主(趙広隆氏)の仲介で買収し、大株主(庄瑩氏)の元雇い主(于文革氏)を会長職につけたことになります。
以上の経緯については、担当監査法人の会計士としてよくご存じのことと思います。そこで以下の質問にご回答ください。
1)上記の事実から、セラーテムによる北京誠信の買収は、企業会計基準が開示を義務付けている「関連当事者との取引」に該当するはずです。しかし、セラーテムの有価証券報告書には全く記載されていません。笠井先生は監査にあたり、どのような判断を下されたのですか?「関連当事者との取引」に該当しないとすれば、理由を教えてください?
2)北京誠信の子会社化と同時に、中国側から于文革氏ら3人がセラーテム取締役に就任し、日本側からは池田修氏が北京誠信の取締役に就任しました。親会社から子会社への派遣が1人で、子会社から親会社への逆派遣が3人というのは異例です。同時に、セラーテムは社外取締役のポストを新設し、東京大学名誉教授の高橋満氏を招聘しました。
この社外取締役のポストは、笠井先生のアドバイスにより設けられたと聞いています。その理由は何ですか?IRでは「コーポレートガバナンスを強化するため」と説明していますが、具体的にはどういう意味でしょうか?
以上の2点について、9月13日までにご回答ください。
どうぞよろしくお願いします。
2010年9月10日
月刊FACTA発行人
阿部 重夫
FACTAleaks ―― 対セラーテム戦争14 于文革からの抗議文
于文革氏への質問状は回答期限を9月7日としたが、音沙汰がない。そこで「朗」氏にメールを送り、「反論できないということか」と念を押した。すると9月9日、中国語の文書がFAXで送られてきた。読めば一目瞭然だが、回答書ではなく抗議文である。このブログの挑発に乗って感情をむき出しにするあたり、上場企業経営者としての于文革氏の資質が垣間見えて興味深い。FACTAは投資家の目線で質問しているという前提が、まったくわかっていないのでしょう。
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FACTA出版株式会社
阿部重夫 様
2010年9月9日
株式会社セラーテムテクノロジー
会長于文革
田原真司氏が王建鋼氏を通じて2010年9月2日に電子メールで当社に送付した書面資料(編集部注:質問状のこと)に対して、以下のように回答します。
貴社が8月6日と10日に送付してきた質問状に、当社は8月10日と12日にそれぞれ書面で回答しました。しかしながら、貴社は当社が回答した内容を無視し、8月20日に発行した雑誌に事実に合致しない内容を掲載しました。
こうした状況にもかかわらず、当社は真実を説明するため、引き続き書面の形式で回答することを決定していました。
しかし、貴社の編集長(編集部注:発行人の誤り)は最近、「対セラーテム戦争」というタイトルで何度もブログに記事を掲載しました。ならば私は、戦争の相手に対して、いかなる問題についても回答する必要はないと考えます。
そのほか、貴社の連絡人である田原真司氏は、中国の「新世紀」雑誌に同様の内容の記事を掲載しました。しかも貴社の編集長のブログは、この記事を田原真司氏が書いたという事実を読者に対して隠し、「ほか一名の記者の連名」などと名前を伏せました。当社に対する貴社の報道が偏見と悪意を帯びていることが、ここから読み取れます。貴社が作成した記事は、ニュース報道が従うべき客観性、公正性、真実性などの基本原則から完全に逸脱しています。ジャーナリストの職業規範に反した貴社の行為に対し、当社は深い遺憾の意を表明します。
従って、貴社の今後の質問に対して当社に回答する義務はないことを、ここに特に通知いたします。
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読んでおわかりの通り、抗議文がブログで公開されるのを意識したのだろうか。于文革氏は北京に行った田原君の実名をあげて、奇想天外な批判をしている。
田原真司氏は、中国の「新世紀」雑誌に同様の内容の記事を掲載しました。しかも貴社の編集長のブログは、この記事を田原真司氏が書いたという事実を読者に対して隠し、「ほか一名の記者の連名」などと名前を伏せました。当社に対する貴社の報道が偏見と悪意を帯びていることが、ここから読み取れます。
何もご存じないようだから、事実を教えましょう。中国の「新世紀」はFACTA9月号のスクープ記事に強い関心を持ち、我々に情報提供を求めてきた。調査報道に強い彼らの加勢はFACTAにとっても有り難いから、事件のあらましや未解明のポイントを伝えました。その連携の労を執ってくれたのが田原君です。新世紀の記事は、田原君の情報を参考に張伯玲記者が独自に取材して書いたもの。記事の中身は当然FACTAとは違います。
このブログでは、新世紀の記事に最初からリンクを張っています。記事には張記者との連名で田原君の名前も出ていますが、彼の名前を伏せる必要があれば、そんなことはしない。田原君は8月6日の決算説明会で池田社長、宮永取締役と名刺を交わしているし、北京誠信にも実名で取材しています。
于文革氏はこのブログを読んでいるようだから、改めて聞きましょう。于さん、あなたは新世紀の記事を「田原真司氏が書いたという事実」を、田原君または新世紀に一度でも確かめましたか?このブログは多くの投資家も見ています。すぐにばれる嘘をついて、投資家がどう思うか考えたことはありますか?
FACTAleaks――対セラーテム戦争13 于文革への6項目質問状と悪徳雑誌呼ばわり
8月下旬、本誌はセラーテムが子会社化した北京誠信能環科技のオフィスを再び訪れた。また、同社の登記上の住所も確かめに行った。その顛末は10月号の「窮鼠セラーテムの『お笑い』弥縫策」をお読みいただきたいが、現地に行ってくれたのは前回のブログで触れた田原君である。
北京誠信が尋常な会社でないことは、実際に訪れればすぐにわかる。応対に出てくる社員は、何を聞いても「自分にはよくわからない」、「広報担当者が不在」と言うばかり。広報担当者の名前と連絡先を聞いても答えない。「あなたの名前と連絡先を残せば、広報担当者が連絡する」というが、実際には音沙汰なしだ。
しかし、彼らはFACTAが登記上の住所まで調べに行くとは思っていなかった。実際に行ったのは8月27日の昼間だったが、不意を突かれて大慌てしたのだろう。その日の夕方、田原君の携帯が突然鳴った。相手は北京誠心の「朗」と名乗る人物で、「話がしたいので8月30日午前11時にオフィスに来てもらいたい」と、こちらの都合も聞かずにいう。だが、田原君は翌朝の便で帰国しなければならなかった。そこで、北京在住のジャーナリストの王建鋼氏に代理を頼んだ。王氏がちょうど出張中だったため、「朗」氏に日程変更を求めると、9月2日午前10時を指定した。
ところが当日の午前9時になって、「朗」氏は一方的にキャンセルを通告してきた。その間、8月28日にこのブログの連載が始まり、8月30日には中国の週刊誌「新世紀」がセラーテムの記事を掲載した。よほどお気に召さなかったのでしょう。
広報担当者が会おうが会うまいが、FACTAは聞くべき事を聞くだけです。9月2日、北京誠信会長兼セラーテム会長の于文革に宛ててメールとFAXで6項目の質問状を送った。以下はその全文です。原文は中国語なので多少ぎこちない日本語になっている点はご容赦ください。
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北京誠信能環科技有限公司 会長
科信能環(北京)技術発展有限公司 会長
日本株式会社セラーテムテクノロジー 会長
于文革 様
こんにちは。
私どもは日本の政治経済誌「月刊FACTA」です。私どもの調査によれば、日本の上場企業であるセラーテムテクノロジーが昨年6月以降に発表した中国事業に関するIR(編集部注:投資家向け広報)には、少なからぬ矛盾や疑問があります。そこには中国系ファンドへの第三者割当増資、北京誠信の買収をめぐる操作、スマートグリッド事業の実際の状況などが含まれます。あなたは北京誠信能環、科信能環、セラーテムの3社の会長を兼務しており、全ての背景について明確にご存じのはずです。そこで下記の質問について、9月7日までに私どもの取材を直接お受けいただくか、書面でご回答ください。
1)8月中旬以前、観湖国際9階にある北京誠信のオフィスには社員が数名しかいませんでした。また、登記上の住所である豊台科技園のオフィスにも1人がいただけでした。北京誠信には実際のところ社員が何人おり、どこに出勤しているのですか?御社は実際のオフィスの住所を隠しているのでしょうか?
2)8月30日付の中国の「新世紀」雑誌の報道によれば、セラーテムが7月16日付のIRで公表した2件の“スマートグリッド”受注に関して、北京市民政局住宅合作社および北京中弘投資有限公司はともに「プロジェクトは広い意味でのスマートシティに過ぎず、国家電網公司の要求水準には達していない」と表明しました。また、国家電網公司も、2件のプロジェクトが“スマートシティ”のモデル事業に入っていないと表明しました。この報道に関して、御社はどのように説明または反論されますか。
3)あなたと趙広隆氏の関係について詳しく説明してください。セラーテムによる北京誠信の買収は趙広隆氏の紹介で実現しており、あなたと趙広隆氏は以前から親密な関係でした。北京誠信と趙広隆氏の間には、業務上の取引、投資、雇用、顧問などの関係があったのではありませんか。
4)あなたと庄瑩氏の関係について詳しく説明してください。公開されている記録によれば、庄瑩氏は2004年に北京誠信の人力資源部長、2009年に北京誠信の副総経理の肩書きで公の場に出席しています。このことは、庄瑩氏があなたの長年の部下だったことを示しています。庄瑩氏にセラーテムに出資させたのは、何が目的だったのですか。
5)あなたと白雲峰氏の関係について詳しく説明してください。趙広隆氏と庄瑩氏によるセラーテムへの出資は白雲峰氏の紹介で実現しており、あなたと白雲峰氏は以前から親密な関係でした。あなたが白雲峰氏を科信能環のCEOに招聘したのは、何が目的ですか。
6)工商登記の記録によれば、2009年8月5日付で北京誠信の株主に変動があり、于文革氏が同社株の11.06%を取得するとともに、于文翠氏(編集部注:于文革の姉または妹とみられる)が持ち株比率を23.75%に増やしました。この取引の目的は、北京誠信に対するMBOですか。また、この取引には最低でも2000万元の資金が必要だったはずですが、あなたは資金をどうやって調達したのですか。
ご協力に感謝します。
2010年9月2日
阿部重夫
月刊FACTA発行人
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ところで8月14日には「切込隊長ブログ」が参戦している。
FACTAと同じく北京誠信のオフィスを訪れ、当時はモヌケの殻だったことを確認、やはり実体を疑っている点ではFACTAと同じ論調である。これにもセラーテムは狼狽したはずだ。株価は急落、問い合わせが殺到したはずだからだ。
Yahoo!掲示板によれば、宮永取締役は問い合わせに答えて、ブログの内容をすべて事実無根とし、弊誌を「悪徳雑誌」呼ばわりしているようだ。このメールが本物なら、「悪徳雑誌」の十分な根拠を示せなければ、本誌に対しても十分名誉毀損に値すると思いますがね。
メールが本物かどうかは、下にアドレスがあるので、関心のある方に問い合わせていただこう。宮永取締役に直に愛のお便りを。
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いつもお世話になっております。
お問い合わせいただきありがとうございます。
WEBコンタクトがIRメールではなく、Saleメールに入った関係で、貴メールへのご返信がかなり遅れてしまいました。申し訳ありませんでした。
ブログに書かれたことはすべて事実無根です。
悪徳雑誌が作った虚像ネタをそのまま流したと思われます。
昨晩開示させていただいたとおり、当社の中国子会社は通常通り業務を展開しております。
業績も極めて順調に推移しております。
今後とも引き続き宜しくお願い申し上げます。
宮永浩明Aug.,17,2010
miyanaga@celartem.com
株式会社セラーテムテクノロジー
〒105-0021
東京都中央区日本橋本石町 3-1-2-7F
Phone 03-6820-0740
Facsimile 03-3275-0825
URL www.celartem.com
FACTAleaks――対セラーテム戦争12 やっぱり「裏口」が好き
そろそろブログを再開しよう。
9月15日、セラーテムの株主総会が開催された。毎月20日発売のFACTAにとって、締め切りの都合上、ほとんどカバーできないタイミングだった。10月号に掲載した続報記事は既に校了済み、民主党代表選の記事を下版の直前に突っ込むため、小生は編集部から離れられない。
そこでフリージャーナリストの田原真司君に取材を頼んだ。セラーテムに関する調査報道は、日本と中国の複数のジャーナリストから協力を得ている。田原君はその1人で、中国語も堪能だ。8月6日の決算説明会では小生に同行し、北京にも行ってもらった。今回あえて彼の名前を出した理由は、おいおい説明しましょう。
さて、セラーテムの株主総会は9月15日午前10時から、東京赤坂の山王健保会館の2階会議室で行われた。もちろんFACTAは株主ではないから、会場内には入れない。取材の主目的は、総会後に会場から出てくる役員や株主から話を聞くことである。
山王健保会館は関東ITソフトウェア健康保険組合のビルで、出入口は外堀通りに面した正面玄関と裏側の従業員通用口の2カ所。総会が行われた2階には、会議室のほかに喫煙所を兼ねた休憩スペースとトイレがあるだけだった。“張り込み”には好都合だ。
開会20分前、休憩スペースから廊下越しに会議室の様子をうかがっていると、宮永浩明取締役CFO(最高財務責任者)と鉢合わせした。彼は動揺した表情で「田原さん、もしかしてうちの株主ですか」と向こうから聞いてきた。
「まさか。会場の外で取材するのは自由でしょう」と返したところ、宮永氏の脇にぴったり寄り添っていた部下(ネームプレートには「山田」とあった)が、「会場内に関係者はいるのか」と追問してきた。我々を総会屋か何かといまだに勘違いしているらしい。
株主総会は定時に始まり、一度も休憩を挟まず午前11時40分頃終了した。波乱は特になかったようだが、異変が起きたのはその直後。会場から出てきた株主に話を聞こうと近づいていくと、スーツを着た目つきの鋭い男性が「ノー」と言って割り込み、取材を妨害したのだ。明らかに日本人ではない。「なぜ邪魔をするのか」と中国語で聞くと、何も答えずへらへらと笑っている。続けて「あなたは北京誠信の社員か、それともセラーテムか」と問うと、「セラーテム」と答えた。同社が雇った“用心棒”ということらしい。
総会に出席した一般株主は目算で30~40人程度だった。その場の不穏な空気を察したのか、株主たちはそそくさと足早に去っていく。
そこで作戦を切り替え、会議室の前でセラーテムの役員陣が現れるのを待つことにした。ちょうど北京誠信の王暉社長が出てきたので、「日本で裏口上場した目的は何か」とぶらさがりで質問すると、「不回答(答えない)」と言ってトイレに駆け込んだ。王暉氏がトイレから戻った後は、役員は誰も会議室から出てこない。しばらくすると、会議室に弁当が運び込まれた。ここで昼食を取り、続いて取締役会を開くためだ。
2つ目の異変が起きた。セラーテムがビルの管理室に連絡し、警備員を呼んで記者の排除に動いたのだ。警備員の説明によれば、このビルは健保組合の組合員しか利用できない決まりで、非組合員の立ち入りは認められないという。仕方なくビルを出て、正面玄関前の歩道で待つことにした。前述したように、ビルの出入口が正面と裏側の2カ所しかないことは先に調べてある。
しかも、外堀通り側のビルの外壁はガラス張りで、2階の休憩スペースの様子は歩道から丸見えだった。邪魔者を排除して安心したのか、池田社長ら数人の役員と監査役が会議室から出てきてタバコをふかしていたが、1人で手持ち無沙汰そうにしている者、肩を寄せ合いひそひそ話をする者など、立ち位置の違いを観察させてもらった。調査報道では、こういった何気ない情報が後で役に立つことが多いのだ。
取締役会は午後1時頃に始まり、2時10分頃終わったようだ。2時12分、例の“用心棒”が休憩スペースに現れ、記者がまだいることを確かめて奥に消えた。その10分後、ビルの職員が正面玄関から出てきて、「ご一行はもうお帰りになりました」とわざわざ教えてくれた。念のため「裏側の従業員通用口からですか」と確認すると、「間違いない」との返事。さらに10分後、ビルの受付の女性に頼んで会議室をちらりと見せてもらったが、確かにもぬけの殻だった。
“裏口上場”企業だけに、やっぱり裏口が好きらしい。もちろん、FACTAの取材を拒否するのはセラーテムの自由だ。しかし本当にやましいことがないのなら、堂々と正面玄関から出てきて「ノーコメント」と言えばいい。本誌の指摘にまともに反論できす、ひたすら逃げ回る彼らの姿は、もはや滑稽としか言いようがない。
次回からは再び、セラーテムとの質疑応答を公開します。
10月号の発送とオンライン版リニューアル
いやはや、民主党代表選の9月14日というタイミングは、本誌にとって最悪だった。ほとんど下版と間がないので、やむなく締切を1日繰り下げた。そのため、10月号の配達も1日遅れになりますのでご容赦ください。
オンライン版のほうは、通常通り19日正午より最新号の全記事をご覧いただけます(定期購読会員のみ)。まだ登録をされていない方は、こちらよりお手続きください。
さて、そのオンライン版ですが3年ぶりにリニューアルします。ご利用いただいている読者の方が戸惑わないよう、なるべく全体の構成や配置を変えずに、より見やすいデザインにしたつもりです。なお、本日14~19時の間は、作業のためいったん閉じさせていただきますので、こちらもご容赦ください。
FACTAleaks――対セラーテム戦争11 真っ赤な嘘
民主党代表選のカバーで編集にばたばたしているが、再び速報を挟もう。
10月号の締切間際にセラーテムから回答書が届いた。その全文は編集期間が終わってから公開しますが、同社の本質をあからさまに示すくだりがあったので、そこだけ先に披露しましょう。
このブログの「対セラーテム戦争3 日中連携報道」で、中国の週刊誌「新世紀」が「セラーテム、智能電網(スマートグリッド)の謎」と題した長文の記事を掲載し、同誌のウェブサイト「財新網」にも公開されていると伝えました。この記事について、セラーテムは回答書で次のように言ってきた。
この中国雑誌「新世紀」は、同社社内調査を行った結果、記事の内容は事実と異なることが判明し、自主的に同社HP記載の記事を削除しています。
むろん真っ赤な嘘である。記事は今も財新網に公開されている。念のため新世紀の胡舒立発行人、王爍編集長、記事の担当デスクの3人に直接確認したが、「ありえない」と一蹴されました。当然ですね。
ちなみに新世紀は毎号の発行日から1週間、ウェブサイトで記事全文を公開し、その後は登録ユーザーだけが閲覧できるようにしている。公開直後の記事のリンクを開くと、2週間目からはログインを求める画面に飛ぶが、まさかそれを「削除」と勘違いしたのでしょうか。
回答書は池田修社長の名前で送られてきたが、最低限のチェックすらしていなかったことがこれではっきりした。北京誠信が送ってきたデタラメな報告を鵜呑みにしたのだろう。池田社長が彼らのいいなりであることを示す何よりの証拠だ。
財新網のトップページにある検索ボックスに「Celartem」と入力すれば、記事のタイトルがすぐに表示されます。投資家のみなさんもぜひお試しください。そして明日の株主総会で質問してみてください。「なぜ嘘ばかりつくのか」と。
FACTAleaks――対セラーテム戦争10 再質問状への回答
半ばあきらめていたが、8月12日ギリギリにセラーテムから再度、回答をいただいた。もう締め切りである。それがどう雑誌に反映されたかは、FACTA9月号(8月20日発売)の「『中国のハイエナ』が大証裏口上場」の記事をご覧ください。これまでのやりとりを含めて、FACTAの調査報道がどこまで徹底しているかの証明となるだろう。しかもこのブログで完璧に質疑を公開しているのだ。こちらは万全の構えで、あとはボロをだすのを待つだけだ。
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ファクタ出版株式会社
阿部重夫殿
平成22年8月12日
株式会社セラーテムテクノロジー
代表取締役社長池田修
貴社からの平成22年8月10日付けファックスに対し、以下のとおり、ご回答します。
「北京華電垣盛電力技術公司」は、北京市供電局傘下企業200数社のうちの1社であり、于文革氏は北京市供電局の幹部として複数の傘下企業の代表者として登記されておりました。于文革氏は、「北京華電垣盛電力技術公司」の代表者としても登記されていましたが、同社は、2002年よりほとんど事業を休止しており、庄瑩氏が于文革氏と「北京華電垣盛電力技術公司」で実質的に共に仕事をしていたことはありません。
中国農業大学のウェブサイトの記載が誤っております。庄瑩氏は、当時CEEの顧問であり、副総経理などではありません。
庄瑩氏は、便宜上、「副総経理」という名称を使う場合はあったかもしれませんが、CEEの副総経理ではなく、CEEとの間で雇用契約を締結したこともありません。庄瑩氏は、CEEと顧問契約を締結していたことがあるのみであり、于文革氏の長年の部下などではありません。
北京誠信能環の主業務であるIT技術を使った省エネコンサルティングサービスについては、中国商務省の外商投資指導目録の中の制限産業に当たらず、参入規制分野ではありません。しかし、主業務以外の業務、また中長期的にこれから参入する分野を見据えた上で、当社は戦略的に契約支配型ストラクチャーを採用しています。したがって、当社の説明に何らの矛盾もありません。
当社グループが行っているのは、スマートグリッドおよび電気自動車充電ステーションの事業主からの受託建設、受託業務であり、外商投資指導目録で規制されている「建設、運営」には該当しません。同目録で規制されている「建設、運営」とは事業主として「建設、運営」することであり、建設を請け負うことは含まれてません。
上記B)と同様、科信能環が行うスマートグリッド事業は、事業主からの受託であり、外商投資指導目録で規制されていません。
笠井浩一会計士の事務所の電話番号は03-6277-8776です。事務所に職員が不在の場合は、笠井浩一会計士の携帯電話に転送されているとのことです。
現時点で、白雲峰氏が科信能環の役員に就任した事実はありません。
以上
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さて、この回答から1カ月経った。その間にもFACTAとセラーテムの応酬は続いているが、当方は次号を編集しなければならないから、しばらく間をおこう。
セラーテムは9月15日、株主総会を開く。株主に提案したい。FACTAが発した質問状を株主総会で改めてぶつけてみたらどうでしょうか。ついでに、新しい質問のヒントを差し上げましょう。
セラーテムの株主のひとつであるNewLightGroupのオーナー、庄瑩が「副総経理」ではなく「顧問」だと言い張っている点です。これは庄瑩が副総経理だと認めると、セラーテムによる北京誠信の買収が企業会計基準で開示が義務づけられている「関連当事者間取引」に引っかかるからではないでしょうか。肩書きの枝葉末節にこだわるのは、何か隠しているせいとも思えます。
もうひとつ、一方、チャイナボーチー元CEOの白雲峰については、回答書では「役員に就任した事実はない」と答えていますが、8月6日に大和証券の会議室で開かれたセラーテムの取締役に出席していたとの確かな情報を得ました。実は、墓穴を掘ったのは白雲峰自身です。彼が自分のブログに「8月5日に東京にいた」と書いていたので、調べたところ、取締役会出席が確認できました。彼らの回答の随所でほころびが出ていることがこれで証明できます。
ぜひ、そこをつついてみてください。株主のお楽しみが増えます。シドロモドロの池田社長の醜態と、あわててボロ隠しに口を出す宮永取締役の「絶妙の漫才コンビ」を見物できるかもしれませんから。
次号の編集が終わったら、FACTAも再び参戦しましょう。
FACTAleaks――対セラーテム戦争9 再質問状
8月9日付ファクスでセラーテムが打ち返してきた回答は、詳細に取材していたFACTAの追及をかわそうと、懸命に反論しようとしているが、随所で矛盾をきたしていた。もはや締め切りギリギリである。間際に4項目の質問を送り、最終デッドラインまでの回答期限をつけた。
最後の段落は、ありきたりの法的措置云々の脅しに対するカウンターパンチである。この手の脅しに弱い新聞やテレビとFACTAは違う。過去にも徹底報道の結果、当局が動いて立件にいたった事例がいくつもある。
このブログでおいおい明かしていくが、本件は捜査当局および関係当局も取材対象にしているので、当然、お上も周知の事件になっている。立件される見通しになれば、その時に報じよう。
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セラーテムテクノロジー
代表取締役社長
池田 修 様
弊誌質問状への回答書をお送りいただき、ありがとうございました。なお、回答期限について8月6日と記載していたのは弊誌のタイプミスであり、この点に関しては失礼をお詫びします。
さて、回答書を拝読しましたが、下記の点について改めて確認させていただきたく存じます。ご回答をよろしくお願いします。
1) 庄瑩氏について
「庄瑩氏は北京誠心能環の副総経理ではなく、于文革氏の長年の部下でない」と回答されましたが、本当ですか。
A) 庄瑩氏は2009年6月に東京地裁に提出した陳述書において「2002年に北京華電恒盛電力技術公司に入社し、副総裁に就任した」としています。北京市工商行政管理局の企業登記情報によれば、北京華電恒盛電力技術公司の法定代表者は于文革氏です。于文革氏と庄瑩氏は、上司と部下の関係ではなかったのですか。
B) 中国農業大学のウェブサイトには、2006年4月の学内ニュースとして同大学電信学院と北京誠心能環の技術提携が報じられており、于文革氏、王暉氏、庄瑩氏の名前がそれぞれ総経理、副総経理、人力資源部経理として記載され、3人の写真も出ています。これは事実ではないのですか。
C) 2009年6月に開催された「2009北京国際節能環保高層フォーラム」の共催者のウェブサイトには、庄瑩氏が北京誠信能環副総経理の肩書きで同フォーラムでスピーチしたことが記載され、写真も出ています。これは事実ではないのですか。
2) 北京誠信能環の事業について
「北京誠信能環は、電力関連企業ではなく、IT技術を使った省エネコンサルティングサービス会社です」と回答されましたが、過去のIRや先週の決算説明会での説明と矛盾しています。
A) 2009年11月13日付の「北京誠信能環科技有限公司子会社化に関するお知らせ」の6ページの「北京誠信子会社化のスキーム」において、御社は「北京誠信はIT、省エネを主業務とした会社であり、免許などの外資規制で当社が直接買収する事ができず、他社事例で多く採用されている契約支配型ストラクチャーを採用いたします」と説明しています。また、先週の決算説明会で池田社長は「本来は直接出資するのが望ましいが、ライセンスの関係で契約支配の形態をとった」と説明しました。北京誠信の事業が外資参入規制分野に当たらないとの回答は、これらの説明と矛盾していませんか。
B) 今年7月16日付の「連結子会社のスマートグリッドプロジェクト(2件)受注に関するお知らせ」によれば、北京誠信が北京市内における「地域内スマートグリッド建設」に関する契約を締結したとしています。中国商務省の外商投資指導目録には、「電力網の建設、運営」は投資を制限する産業として明示されています。北京誠信は建設ではなく省エネコンサルを受注したのですか。また、8月6日付のIRで「電気自動車充電ステーションの建設事業を開始」と発表しましたが、これもコンサルとしての参入なのですか。
C) 今年3月26日付の「連結子会社の新規事業の開始に関するお知らせ」によれば、100%外資である「科信能環(北京)科技」がスマートグリッド事業を開始するとしています。IRの文章を読むと、常識的にはスマートグリッド設計、建設、運営等を手がけるものと受け取れますが、これは外資規制の対象項目ではないのですか。また、先週の決算説明会の後、池田社長は「科信能環は外資なのでライセンスが取れるかどうかわからない」と説明しました。外資の参入が制限され、発表から4カ月が過ぎてもライセンスが取れるかどうかも分からない事業についてIRを発表したのは、投資家をミスリードする行為ではありませんか。
また、追加で以下の2点についてもご回答をお願いします。
3)笠井浩一会計士の連絡先について
先週の決算発表会で、池田社長はパシフィック監査法人の笠井浩一会計士の連絡先を教えてくださると約束しました。笠井氏の連絡先をお知らせください。
4)白雲峰氏について
チャイナ・ボーチー前CEOの白雲峰氏が、科信能環(北京)科技の役員に就任したのは事実ですか。肩書きは総経理ですか。
以上の4点について、締め切りの都合もありますので、ご多忙中恐縮ですが、8月12日までにご回答ください。
なお、法的措置云々の件については、同じような警告を日本振興銀行、木村剛前会長からも受けました。結果がどうなったかはご存じの通りです。本件についても日中両国の当局を含めて、取材には万全を尽くす所存です。そのためにも、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
2010年8月10日
月刊FACTA発行人
阿部 重夫
FACTAleaks――対セラーテム戦争8 脅しつき回答
8月10日、先の決算説明会で手渡した9項目質問状に対し、セラーテムから回答がファクスで送られてきた。仰々しく社印と代表者印が捺してあり、「貴社が虚偽の事実を記載した雑誌を発行した場合には、法的措置を執る用意があります」などと脅しの文句を並べている。
調査報道がこれくらいで動じると思っているのか(現に発行から2週間以上たった9月9日現在、なんの抗議文も届いていない。サイトで勝手なリリースを流し、弊誌に正面から反論を挑んでもこない)。
とにかく回答なるものをここに掲載しよう。
なお、FACTAが調べたセラーテムと北京誠信の相関図は下記の通りである。こちらを念頭に、セラーテムとのやり取りをご覧いただきたい。
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回答書
ファクタ出版株式会社
阿部重夫殿
平成22年8月10日
株式会社セラーテムテクノロジー
代表取締役社長池田修
貴社から平成22年8月6日に手渡された書面に対し、以下のとおり、ご回答します。
1はじめに
まず、貴社は、平成22年8月6日に突然、上記書面を手渡し、その中で「8月6日(金)までに面談による取材をお願いします。承諾頂けない場合は、その理由と各項目に対する回答を、同じく8月6日までに文書で送付ください。」という相手の都合も考えない一方的かつ非常識な要求をされていることは、極めて遺憾であります。
また、貴社は、上記書面の中で、「①中国資本による実質的なセラーテム買収、②CEEの日本の株式市場への『借殻上市』」などと結論付けられており、そのような偏見を持った貴社の取材をお受けすることはできません。しかし、貴社が虚偽の事実を記載した雑誌を発行することにより、当社の信用が毀損され、または当社の取引先、投資家、その他の関係者が誤信することを避けるため、以下のとおり、書面にて回答します。
なお、当社の回答にもかかわらず、貴社が虚偽の事実を記載した雑誌を発行した場合には、法的措置を執る用意がありますので、念のため申し添えます。
2質問項目に対する回答
(1)質問項目1)について
以下の点は、事実と異なります。また、その他の点の事実誤認については、質問項目2)以降をご参照下さい。
① WCI、NLG、CEEは現実に一体の存在であるとの事実。
それぞれオーナーも異なり、それぞれの間に支配または従属関係はありません。
② チャイナ・ボーチーの日本事務所と当社がオフィスを共有しているとの事実。同一フロアーであるだけで、オフィスを共有してはいません。
(2)質問項目2)について
庄瑩氏は、CEEの副総経理ではなく、于文革氏の長年の部下などではありません。
庄瑩氏は、CEEとの間で雇用契約を締結したことなどなく、顧問契約を締結していたことがあるのみです。この顧問契約も昨年6月以前に解消されています。
また、CEEは、NLGやWCIとの間で雇用および業務上の深い関係があったものではありません。なお、趙広隆氏および庄瑩氏の人的ネットワークを使って中国市場へ進出する予定であることは、NLG およびWCIに対する増資の際の2009年6月1日付けIRでも開示しております。
(3)質問項目3)について
当社と提携前の資金調達であり、当社は把握しておりません。また、于文革氏個人のプライバシーに関わる問題であり、そもそも回答できません。
(4)質問項目4)について
複雑な操作ではなく、裏上場でもありません。
(5)質問項目5)について
負ののれんの発生は、企業結合時のCEEの時価純資産額が取得価格を上回ったことによるものです。企業買収の価格は、前年度の業績(2009年上半期は赤字)、経済情勢、将来性、リスク要因などを総合考慮して判断されるものであり、純資産価額と異なるのは当然です。
当社は、上記の負ののれんを正確に開示しており、見せかけの業績を底上げするような意図などありません。
(6)質問項目6)について
CEEは、電力関連企業ではなく、IT技術を使った省エネコンサルティングサービス会社です。中国政府商務部公布の外商投資指導目録にも省エネコンサルティングサービスは、外資参入規制分野ではないと記載されています。したがって、契約支配型ストラクチャーにより、受注が取れなくなる可能性はありません。
(7)質問項目7)について
同上。
(8)質問項目8)について
CEEのウェブサイトに記載された電話番号の所属部署は、平成22年6月28日に事務所移転を行ったが、ウェブサイト上、古い電話番号が残ったままになっていたようです。
知らない者が突然訪問して質問をしても回答しないことは当然であり、受付女性も当然の対応をしたものです。
CEEは、当社のIRのとおり、実体のある会社です。
(9)質問項目9)について
当社によるCEEの契約支配型買収については、中国政府の担当部門に許認可されており、質問項目5)のとおり、問題はありません。
また、中国資本に支配されているという点がWCIとNLGが過半数の株式を保有しているということであれば、既に開示されており、貴社が言うような「装い」はありません。
以上
FACTAleaks――対セラーテム戦争7 9項目質問状
8月6日の会見後に9項目質問状を、池田、宮永両人に手渡した。質問状を作成したのは7月30日であり、途中の回答期限を8月6日としたのは当方の誤記である。
7月30日にFAX送信するのをやめて会見で手交することにしたからで、この時点での回答期限は8月9日(火)とすべきところだった。次回で披露する回答で噛みついてきたが、質問状の内容を読めば、単にアリバイ的な質問ではなく、取材の経過も含めてFACTAの意図を丁寧に説明してある。
これがセラーテムを震撼させたことは間違いない。即答できないほど慌てたに違いないが、こちらも締め切りがあり、そもそも取材拒否して逃げ切りを図ったのはセラーテムなのだから、時間の問題は彼らに責任がある。
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セラーテムテクノロジー
代表取締役社長
池田 修 様
平素はお世話になっております。
弊誌の取材依頼をお受けいただけない旨のご連絡をいただき、大変残念に思っております。『当社は方針により、雑誌等の取材はご遠慮させていただいております』とのことですが、御社は最近もアエラ(8月2日号)やラジオ日経(6月19日放送)の取材を受けており、理解に苦しみます。
御社の中国事業については多くの投資家が感心を寄せており、十分な情報開示が望まれます。メディアの取材への対応は、上場企業として当然の責務であるはずです。つきましては、弊誌が御社に取材を申し込むに至った経緯、および具体的な質問事項について、以下に説明させていただきます。ご一読のうえ、取材にご対応いただけますよう、改めてお願い申し上げます。
取材申し込みの経緯
中国経済の高度成長と日本経済の長期停滞を背景に、中国企業が日本の上場企業を買収したり、日本企業が中国市場に活路を求めるケースがかつてなく増えています。弊誌はそうした事例を調べる中で、偶然セラーテムのケースに行き当たり、非常に興味を持ちました。
御社は昨年6月、英領バージン諸島に登記された中国系投資ファンド「Wealth Chime Industrial Limited(以下WCI)」および「New Light Group Limited(以下NLG)」に対する新株予約権付き社債の割り当てを行いました。この社債は昨年9月に株式に転換されています。相前後する昨年8月、御社は中国の電力関連企業「北京誠信能環科技(以下CEE)」と戦略提携し、11月には同社を子会社化すると発表しました。CEEの買収に必要な資金を調達するため、御社はWCIに対する第三者割当増資を行い、契約支配型ストラクチャーによってCEEを連結対象の完全子会社としました。
この一連の操作により、WCIはセラーテムの発行済株式の49.56%を保有する筆頭株主になりました。NLGも4.56%を保有しており、両社を足すと過半数を超えます。また、CEEの子会社化に伴い、御社はCEEから于文革氏(CEE董事長)、王暉氏(CEE総経理)、蔡静偉氏(CEE董事)の3人を役員として受け入れ、于文革氏はセラーテム会長に就任しました。その結果、御社の取締役会は総勢7人のうち3人が中国子会社からの派遣で、会長職も子会社出身という異例の状況になっています。
弊誌は公開情報の分析と独自の取材を通じて、これら一連の操作の目的が、①中国資本による実質的なセラーテム買収、②CEEの日本の株式市場への「借殻上市(Back Door Listing)」にあったという結論に至りました。
表向き、セラーテム株の過半数を単独で支配する株主はいません。また、49.56%を保有する筆頭株主のWCIに関して、御社は有価証券報告書の「事業等のリスク」の項目で、『当社はWealth Chime Industrial Limited との交渉を通し、同社が当社の議決権の過半数を超える経営権を取得する意思がない点、中長期的にも同社が当社の経営に関与する意思がない点、当社の既存株主に対し十分に配慮を行っている点を確認しております』としています。WCIおよびNLGとCEEの間に、直接の資本関係を示す資料もありません。
しかしながら、WCI、NLG、CEEは現実には一体の存在であり、セラーテムを実質的に支配しています。そのように考えるのが自然と思われる事実が、数多く見受けらるのが理由です。
まず挙げられるのが、NLGのオーナーである庄瑩氏が、実はCEEの副総経理であり、于文革氏の部下であることです。さらに、セラーテムによるCEE買収は、WCIのオーナーである趙広隆氏の仲介で行われました。庄瑩氏(NLG)と趙広隆氏(WCI)は昨年6月に同時に同額の社債を引き受けるなど、同一歩調で行動しています。つまりセラーテムは、大株主(庄瑩氏)が役員を務めている企業(CEE)を、筆頭株主(趙広隆氏)の仲介で買収したうえ、大株主(庄瑩氏)の上司(于文革氏)を会長職につけたことになります。
次に、東証一部上場の中国企業「チャイナ・ボーチー」を媒介とした密接なつながりです。WCIの趙広隆氏と、NLGの庄瑩氏は、ともにチャイナ・ボーチーの顧問を務めています。また、セラーテム側で一連の操作を主導した宮永浩明取締役は、現在もチャイナ・ボーチーの上級顧問を兼務しています。チャイナ・ボーチーの日本事務所は、セラーテム本社とオフィスを共有しています。
趙広隆氏と庄瑩氏を宮永取締役に紹介したのは、チャイナ・ボーチー副董事長(前CEO)の白雲峰氏です。趙広隆氏は中国で「北京国能中電能源」という企業を経営し、山西省のボタ発電所建設プロジェクトでチャイナ・ボーチーと合弁しています。趙広隆氏と白雲峰氏は業務上密接な関係にあります。さらに白雲峰氏は、セラーテムの中国法人である「科信能環(北京)技術発展」の開業式典に出席しており、于文革氏とも近い関係にあります。このように、関係者全員が顔見知りで、業務や雇用を通じた利害関係者であることは明白です。
以上の事実関係を整理すると、①NLGの庄瑩氏はCEEの于文革氏の傀儡としてセラーテムに出資。②WCIの趙広隆氏はCEEの于文革氏の代理人または投資パートナーとしてセラーテムに出資。③NLGとWCIの両社でセラーテム株の過半数を握ったうえで、CEEを買収。④于文革氏ら3人を取締役会に送り込み、セラーテムの経営を実質支配。⑤中国資本による実質的なセラーテム買収とCEEの「借殻上市」が完成。このように考えれば、全て辻褄が合います。
なお、御社の宮永取締役は、中国側とともに一連の青写真を描いた中心人物であり、中国側(于文革氏ら3人の中国人取締役、趙広隆氏、庄瑩氏)と完全に利害が一致します。3人の中国人取締役に宮永氏を加えれば、取締役会の過半数を占めています。セラーテムは資本と経営の両面において、中国側の支配下に入ったと考えるゆえんです。
なお、「借殻上市」は中国や香港の証券市場でしばしば行われています。適法かつ十分な情報開示を伴って行われれば、「借殻上市」それ自体に問題はないと考えます。
しかしながら御社の場合、既存株主を含む日本の投資家に対して十分な情報開示を行っているとは思えません。また、CEEが中国で行っている事業の中身も、具体像がまったく見えません。そこで弊誌は、投資家に代わって御社を取材し、事実を明らかにしたいと考えました。長くなりましたが、以上が取材申込みに至った経緯です。
質問項目
下記の項目に関して、8月6日(金)までに面談による取材をお願いします。承諾いただけない場合は、その理由と各項目に対する回答を、同じく8月6日までに文書でご送付ください。
注)ここが日付を間違えた箇所である。正確には9日とすべきでした。
1)上述の「取材申込みの経緯」の事実関係について誤りがあれば、具体的な箇所の指摘と反論をお願いします。
2)NLGのオーナーである庄瑩氏はCEEの副総経理であり、CEEのトップである于文革氏の長年の部下です。また、CEEの買収はWCIのオーナーである趙広隆氏の仲介で行われました。つまりCEEは、NLGおよびWCIという大株主と、雇用および業務上の深い関係があったことは明白です。にもかかわらず、CEEの買収にあたり、日本の投資家に情報を全く開示していないのはなぜでしょうか。
3)セラーテムがCEEとの戦略提携を発表する直前に、于文革氏はCEE株の11.06%を取得しています。同時に、于文革氏の親戚と見られる于文翠氏がCEE株を18.81%買い増し、株式の23.75%を握る筆頭株主になっています。これらの株式取得には、額面ベースでも2100万元(約2億7000万円)が必要です。于文革氏はこの資金をどこから調達したのでしょうか。趙広隆氏が融資したのでしょうか。
4)2006年の規制強化により、中国企業がオフショア企業を介して海外市場に上場するには、中国証券監督管理委員会(CSRC)の許可が必要になりました。CEEがWCIとNLGを介した複雑な操作により「借殻上市」したのは、CSRCの規制を回避するためではありませんか。
5)昨年12月、セラーテムはCEEの子会社化と同時に「負ののれん」が発生したと発表しました。15億円の買収で3億4000万円の負ののれんが生じたということは、CEEを実際の純資産より2割以上安く買収したことになり、常識では考えられません。なぜこれほどの負ののれんが生じたのですか。負ののれんに伴う特別利益の計上で、セラーテムの見かけの業績を底上げしたのではありませんか。
6)CEEは電力関連企業であり、外資による買収が規制されています。このためセラーテムは、直接的には科信能環(北京)技術発展を子会社化し、CEEとの間に排他的契約を結ぶことで実質支配する「契約支配型ストラクチャー」を採用しています。その結果、CEEは外資が支配する内資企業というグレーなポジションにあります。CEEの顧客の多くは政府関係であり、外資企業と見なされれば受注を取れない可能性があります。このリスクについて、投資家に一切説明しないのはなぜでしょうか。
7) 御社は今年3月、科信能環(北京)技術発展が火力発電所向け大型省エネ事業とスマートグリッド事業に新規参入すると発表しました。また今年7月には、CEEがスマートグリッド2件を受注したと発表しました。しかしながら、中国では外資の電力関連事業への参入が禁止されています。一体どのようにして参入、受注が可能なのでしょうか。また、そのリスクについて投資家に一切説明しないのはなぜでしょうか。
8)CEEのウェブサイト(http://www.c-ee.cn/)を見ると、日本企業との戦略提携に関する記述を除き、セラーテムによる子会社化の情報が全くありません。それどころが、于文革氏ら経営陣の名前が一切伏せられており、異様な印象を受けます。「連絡先」に記載された代表電話番号(010-59283951)に何度かけても誰も出ません。そこで、中国のジャーナリストに依頼してCEEの住所を訪ねたところ、受付の女性は「買収なんてわからない」と答えました。また、オフィス内にはほとんど人がいませんでした。CEEは本当に実体のある会社なのですか。
9) CEEは外資の参入が禁止されている政府関連事業を受注するため、セラーテムの子会社である事実を隠し、あくまで中国企業を装っているのではありませんか。同様に、セラーテムは中国資本に支配されているにもかかわらず、中国進出に成功しV字回復を遂げた日本企業を装っているのではありませんか。このような行為は、顧客および投資家の信頼を欺くものではありませんか。
以上、ご回答をよろしくお願い申し上げます。
月刊FACTA発行人
阿部 重夫
FACTAleaks――対セラーテム戦争6 お笑い決算会見(下)
8月6日のセラーテム決算説明会のQ&Aの続きである。
セラーテムの中国プロフィットセンター、北京誠信に実体があるのかと問い詰められて、池田社長も宮永取締役も色をなした。やはり、北京を取材したいと言われて取材拒否したのは、行かれては困る理由があるからだろう。彼らはFACTAがすでに現地を取材していることを知らなかったのだ。まさか中国まで見に行くことはあるまいと高をくくっていたのだろう。甘い甘い。
*****
セラーテム宮永取締役この件については関東財務局とも協議して、とくに問題が指摘されていなかったのですけれども。
FACTAそれは要するに、中国(企業)と提携してこういう複雑なスキームをつくって、関東財務局がよくわからなかったからではないですか。
セラーテム宮永取締役弊社の中国の(子会社の)ほうに行っていただいて、会社が実在しているかどうかを含めて、(ビジネスを)実施しているのかということですが、当然、弊社のほうも監査法人も入って監査もしています。ご質問の意図の、要は、本当はやっていないのにやっているのではないかと言う意図がよくわからないのですが、我々のほうの会社で実際にやったことを実施しているということは事実です。
FACTA詳しく申し上げると、セラーテムのホームページにも載っている北京誠信の電話番号に何度かけても電話が通じない。まずそれで北京誠信のホームページに載っている住所のオフィスに行きました。
そちらにちゃんと北京誠信という会社の看板はあったのですが、人は数人しかいませんでした。さらに「日本企業の傘下に入った会社ですか?」と聞いたら、知らないと言われました。これはどういういうことかということですね。
セラーテム宮永取締役弊社のホームページのほうですか。
FACTAそうです。
セラーテム池田社長すべて誤解ですという以外は当然ないのですが、ちょっと電話番号の記載事項うんぬんに関しては、弊社の日本語のホームページ?
FACTA日本語のホームページから北京誠信のホームページに飛びます。
セラーテム池田社長飛んだ、その日本語ですか。
FACTA日本語ではありません。中国語です。
セラーテム池田社長中国語ですか。それに関しては再度、私も含めて調査をします。
注)決算会見から10日後の8月16日、セラーテムは「当社中国連結子会社である北京誠信能環科技有限公司の現状に関するお知らせ」という写真付きのIRを出した。アナリストの眼前で本誌に「北京誠信に実体はあるのか」と指摘され、週明けとともに株価が急落したので大あわてしたのだ。ほぼ同時に、北京誠信の代表電話がつながるようになった。そこで再び北京のオフィスに行ってみると案の定、10日前はひっそりしていたオフィスに人が出入りしている。これがほんとの“一夜漬け”。
このお笑い弥縫策の続きは、9月20日発売のFACTA10月号をお楽しみに。
セラーテム池田社長会社が当然、実在しているかどうかということに関しては、監査法人を通らないので。これだけの規模の会社でですね、会社が例えばなかったとかいう場合、通らないので。
FACTA(セラーテムの監査法人の)パシフィック監査法人というのはどこにあるんですか。
セラーテム池田社長赤坂にあります。
FACTAぼくらには住所がはっきりわからないのですが。
セラーテム池田社長もともと隆盛(監査法人)様というところで、いわゆる一ツ木通りの、そちらに住所があります。
FACTAあとで住所を教えてくれますか。
セラーテム池田社長はい、わかりました。
注)会見から数日後、パシフィック監査法人の電話番号を告げられたので電話した。笠井浩一会計士によると、事務所も代表電話もあるが、それは規定上の要件を満たすため。オフィスに常駐のスタッフはおらず、電話も秘書代行サービスを使っていると白状した。やはり幽霊である。
さらに、セラーテム以外に監査を担当する上場企業がないこと、中国企業の監査経験がほとんどないこと(昔中国の会計士と共同作業したことがあると言い張っていたが)も確認した。
笠井会計士は隆盛監査法人に所属していた。隆盛は「ネクストジャパンホールディングス」「セブンシーズホールディングス」「ヤマノホールディングス」「堀田丸正」など、その筋の人にはハハンと分かる“世評の高い”企業ばかり監査を担当していた。セラーテムもほんとにご立派な監査人をつけていらっしゃる。
ここで他の質問者に移る。新年度の売り上げ目標など定型の質問だった。
司会そのほかにご質問等はありますか。
他の質問者基本的なことを確認したいのですが、新年度の売上目標があると思うのですが、ITと省エネを分けたうち、どのようになっているのか。それをまず確認をしたい。同じようにして、もしよければ営業利益段階でどのようにセグメント的に分かれるのかどうか。
今の話と若干からむのですが、科信さんと誠信さん、親会社というようなかたちになっていると思いますが、ここの役割分担というのが正直言うとなかなかよくわからなくて、事業も分けるというようなかたち、確か最初のころのリリースを見ると、事業も分けるようなかたちになっていたと思うのですが、親会社の売上など、あまり現状で出ていないような気がするので、どのようになっているのか。若干、複雑なんですよね。
セラーテム池田社長親会社とおっしゃられているのは、セラーテムの日本……。
他の質問者科信。
セラーテム池田社長ああ、科信能環。
他の質問者科信と北京の関係だとか。事業のくくりだとか、いちおう分けるというかたちに確か説明はなっていたと思うんですけれども。
セラーテム池田社長まず、買収した段階においては科信能環は機能としては何もないというなかで、今回、リリースしたときに科信能環のほうで先ほどの火力発電所のプロジェクトに関してやっていこうということで、とくに火力発電所に関してはプロジェクトの規模が若干大きくなるということ。それから、ビジネスの内容的にもしかすると契約形態として単純に受注をするというやり方と、我々としてお客様と一緒に投資をして、将来的にその投資からの収益を持って来るという、ちょっとキャッシュフロー的には先に持ち出しが多くなるような商売も可能性としてはあり得るような商売をそちらの科信能環でやっていく。
北京誠信は、もともと従来の商売と今回、発表させていただいている新規のものをやっていくというようなかたちで、振り分けをする。科信能環はもともとは従業員もまだまだ全然、小さく、実際に火力発電所向けのビジネスをやるという段階で人を増やしていく。北京誠信との間で人事交流というのは当然ながらありますが、まだまだ人数はほとんどのものは北京誠信の人数になっております。科信能環は今、20名前後ということでこれから新規にやっていくという段階です。
司会すみません、ちょっとお時間の関係がありまして。
他の質問者はい、もう一つ質問していると思うんですけれど。
セラーテム池田社長すみません、もう一つの質問のほうは。
他の質問者要するに新年度の目標の内訳を。
セラーテム池田社長ああ、そうですね。内訳に関しましては開示をしないような状況でして、当然ながらこの新規事業のほうの出来次第というところもありますし、現段階で明確にご回答することができないので、ご了承いただければと思います。
司会お時間の関係がありまして、本日はここまでとさせていただきたいと思います。本日はご出席いただきましてありがとうございました。
注)司会は大証ジャスダック本部上場サポートグループ(宮川やすし調査役)だった。読めばお分かりのとおり、これ以上の追及を封じようと、途中で打ち切りにしたのだ。取引所が投資家保護よりも上場企業を守ろうとして、当然の質問すらさせない体質であることがよくわかった。こういうゴキブリは株式市場から追放すべきだろう。
(大証が独占してきた日経平均先物が、東証のCFD=差金決済取引=方式の株価指数先物で風穴をあけられる事態になっても、米田道生社長が日経にアクセスできずに焦っているのは、こういう愚かなスタッフを抱えているからなのだ。)
FACTAはQ&A後に、池田社長に直接追加質問をぶつけた。
FACTA北京誠信はもともとライセンスを持っていた中国企業だが、科信能環は新規設立の100%外資企業ですよね。スマートグリッドの事業ライセンスを取れるんですか。
セラーテム池田社長科信能環についてはライセンスが取れるかどうかまだわかりません。
注)またもオウンゴール。彼らはライセンスがとれるかどうかも分からないのに、堂々と新規事業開始のリリースを流していたのだ。あいた口がふさがらない。
もうひとつ、収穫があった。宮永取締役と名刺を交換した際、その名刺入れの中に、チャイナ・ボーチーの名刺もあったことだ。両社が一体であることの証明だが、「それってチャイナ・ボーチーの名刺ですよね」と指摘すると、あわてて隠していた。笑える人たちだ。
FACTAleaks――対セラーテム戦争5 お笑い決算会見(中)
8月6日のセラーテム決算説明会の会見の続きをお知らせしよう。FACTAの追及に続き、会見に出ていたアナリストも質問を始めた。
*****
他の質問者先日、御社は中国でスマートグリッドを受注されたというリリースが出たので、私、問い合わせましたけれど、対応した方の説明だと、単に電力メーターを遠隔監視をするというシステムだという説明でした。それはそもそもスマートグリッドと呼ぶのでしょうか。
セラーテム池田社長まず、開示いたしました3件のところで、先ほどの図のところの川下と川中で、送電網に関してはおっしゃるとおりで、送電の仕組みのなかでどれだけ最適化するかということでリモートでモニタリングをするなどのシステム的な部分があります。
川下に関しては、送電網から、いわゆるスマートメーターを単純に置くというだけではなく、電力の流れのネットワーク化に近いものなので、そういったかたちで使用量に応じて最適な量で制限する。それを送電からまず町、町のなかからそれぞれのマンション、マンションからマンションのそれぞれの部屋ということで、それを最適化するようなシステムもあるので、最初に言われたスマートグリッドのいわゆる大きな概念のなかの一部と考えていただいて結構です。
すみません。ご説明のほうがちょっと不十分だったかもしれませんが、そういったものです。
注)まったく不十分で、どこかで聞いたスマートグリッドの説明をおうむ返しに言うだけ。スマートグリッド受注案件3件とは、10年7月16日発表の北京市民政局住宅合作社と北京中弘投資有限公司、そして7月30日に発表した広東電網公司との契約のことだろう。対セラーテム戦争3で報じたように、「財新メディア」の取材ではその実体に疑問符がついている。
他の質問者ここも子会社になって北京の会社ですけれどもね。
セラーテム池田社長そうです、はい。
他の質問者設立が2004年ということで、比較的若い会社だと思いますが、もともとは何を作っていた会社ですか。
セラーテム池田社長もともとは省エネというところで、まずシステム的に例えば先ほどの省エネの診断システムであったり、同じようなもの、いわゆる電気の使い方をいかに効率的にするか。どこが効率的ではないのかというような診断のシステムを作っています。
それからその診断システムのもとに、例えばどの設備を入れたほうがいい、どの設備をリプレースしたほうがいいというような、これはノウハウになりますが、例えば機器の選定をしてあげたりとか、そういったかたちのサービス。それから運営した後のポストサポートのサービスをするというようなかたちの会社です。
ですから、ハードウエア自体を何か作るというよりは、ハードウエアは基本的には仕入れて売る場合と、お客様に「こういったハードウエアがいいですよ」というようにコンサルをして、お客様が直接買われる場合は、うちは入らないでシステム的なところだけをというような商売の体系をしていた会社です。
ですから、スマートグリッドは若干延長と言えなくもない、当然な部分ではありますので、ノウハウは若干もともと持っていたものを使っていくということは可能です。
他の質問者ハードを作っていない会社が、今、ご説明にあったような高度なシステムを受注するというのが、まずもって信じられないですよね。というのは、日本においてスマートグリッド関連銘柄として実体のある企業が手掛けているのは、せいぜいメーターを作っている大崎電気のような会社ぐらいです。中堅重電各社も今、おっしゃったグリッドに直接接続している電気の需給管理をすべて丸ごとやるような、そんな高度なシステムは持っていないのですけれども、なぜサービスをやっていた会社ができるのか。
セラーテム池田社長サービスと言っても先ほどの診断のシステムであったり、今の電力業界にもともと向けたソフトウエアやシステムをつくっていたということなので、それの延長線上でやっている、例えば今回発表させていただいているものに関しては、1件に関してはハードウエアを仕入れる場合もありますが、ほかの件に関してはシステム及び、いわゆるサポート、導入のサポートもサービスをしてやっているので、どうしてできたかというか、もともとの延長線上で認めていただいて導入ができたと。
ただ、導入をしてリリースでもしましたけれども、これをきちんと納品してはじめて、内容物もきちんと納品されてちゃんと動いているということで実績になっていきます。納品予定が年末ということで開示させていただいているので、それに向けてきちんとしたものができて、はじめて実績ができたということになると考えております。
他の質問者最後の質問ですけれども。電気自動車の充電システムの話ですが、電気自動車の充電システムというのは思いつきで作れるものではないと思うんです。これは北京の会社がつくるのですか。
セラーテム池田社長はい、その予定と、あとは第三者から仕入れるということも含めて考える。
セラーテム宮永取締役充電ステーションのシステムというよりも、充電ステーションというのは事業主は国家電網であったり南方電網であったり、我々がそこの彼らオーナーから建設業務を下請けとして受託建設という感じなので、もちろんその規格に合格した設備については我々が仕入れるということで、そもそも充電ステーション、充電設備については中国はむしろアメリカと日本より研究で先行しています。その技術がたぶん世界レベルから見ても中国のほうがトップクラスだと思います。
注)また助太刀。スマートグリッドをよく知らない池田社長ではボロが出ると危惧して、あわてて補強したのだろうが、充電システムは米国や日本より中国のほうが優れているなどと、珍妙な発言になった。もとは中国人の宮永取締役だけに、はからずも中華思想が出てしまったらしい。中国の優れた充電技術とやらをぜひ説明してほしいものだ。
他の質問者確認したいのですが、充電器を作るわけではないんですか。
セラーテム宮永取締役私どもは充電ステーションの建設ということなので、その設備については南方電網と国家電網の要望について、そういった合格したスペックを私どもが仕入れして、それを周辺の設備とともに建設するという意味です。そういう充電設備の開発で我々がシステムをつくったりなどはしていません。それは本日発表したプレスリリースをご覧ください。
FACTA先ほどのリスクを提示したという、ニュースリリースの何ページ目かをちょっと伺いたいのですが。何ページ目にどういう文章でリスクを提示したのですか。
セラーテム宮永取締役11月13日のですね。
FACTAリリースはここにありますから、何ページですか。
セラーテム宮永取締役少々お待ちいただいて、今、インターネットでちょっと見ますから。
注)自分でネットを検索し始めたのにはあきれた。どういう文言でリスクを提示したのか、ちゃんと覚えていないらしい。浙江省出身で京大に留学した元中国人の宮永氏だが、日本語の文章は速読できないのか。あわてているので手間取っている。
FACTAいや、ここにありますけど。どこにどういう文章で提示したのかというのがわからないので。
「5.北京誠信子会社化のスキーム」というところに、「信頼できる知名度の高い中国法律事務所によりその有効性について法律意見書をいただいております。また会計処理上も連結決算の対象になることを当社の監査法人より確認をいただいております」という、このくだりですか。
セラーテム宮永取締役(社員が駆けよって耳打ち。やっと答える)決算短信のですね、開示文書と同じですから、決算短信。例えば、本日発表させていただいた決算短信の24ページ、「企業結合等関係」のところの1の(4)「企業結合の法的形式」のところで開示しています。
FACTAこれがリスクの提示ですか。では、去年の11月にリリースしたときにはこの部分はないですよね。
セラーテム宮永取締役同じような記述が11月13日のプレスリリースの部分に記載されています。
FACTA「免許などの外資規制で当社が直接株式を買収することができない」というのが、リスクの提示になるのですか。
セラーテム池田社長私どもがどのように北京誠信を買収するか。これは中国政府による免許などの外資規制で当社が、本来であれば直接、株式を取得することのほうが望ましいのですけれども、直接、取得することによって免許が剥奪されるというリスクがあるので、当社は、中国では一般的に使われているそういった支配目的の複数の契約を締結することによって、北京誠信を実質的に当社グループが支配しております。これについてはもちろん、はい。
注)ここもオウンゴール。池田社長は北京誠信を直接買収すると「免許を剥奪されるリスクがある」と認めた。では、支配目的の契約を結ぶことによる実質子会社化ならリスクはないのか。とんでもない。
セラーテムが用いる「契約支配型ストラクチャー」は、中国政府の外資規制を尻抜けにするための常套手段で、それ自体は珍しいものではない。だが、個別のケースが合法かどうかを判断するのはあくまで中国の規制当局で、企業自身やそのお雇い弁護士ではない。
セラーテムは北京誠信の子会社化を発表した09年11月13日付のIR(投資家向け広報)で、「契約支配型ストラクチャーの有効性については、信頼できる知名度の高い中国法律事務所よりその有効性について法律意見書をいただいております。また、会計処理上も連結決算の対象になることを当社の監査法人より確認をいただいております」としているが、中国当局のお墨付きを得たとはどこにも書いてない。
そこで、契約支配型ストラクチャーのリスクを理解するための格好のテキストを紹介しよう。07年4月に鳴り物入りで東証マザーズに上場したものの、創業経営者による横領と粉飾決算の疑いが発覚し、わずか1年余りで上場廃止に追い込まれた中国企業「アジア・メディア」の有価証券報告書だ。
アジア・メディアの上場をサポートしたのは、主幹事が野村証券、会計監査があずさ監査法人、法律顧問が森・濱田松本法律事務所というそうそうたる顔ぶれだった。それだけに、有価証券報告書の「事業等のリスク」の項目は実に10ページ以上を使って詳しく説明しており、契約支配型ストラクチャーのリスクだけでほぼ1ページを割いている。
「中国の関連当局により、当社グループの支配関係に関する契約ストラクチャーが中国の広告産業に対する外資規制に合致しないと認定された場合、当社グループは中国の関連行政機関により厳しい制裁が科される可能性があります。(中略)当社グループは上記の契約ストラクチャー及びそれらを通じた当社グループの中国における業務運営が中国の現行法の規定に合致すると認識しておりますが、当社グループは中国政府が現行法について異なる解釈を行う事、または新しい法律、法規を公布することはないと保証することはできません」
皮肉なことに、アジア・メディアはこうしたドキュメンテーションについては優等生だった。ところが、肝心の経営者がペテン師で、これだけ周到な文面でも上場廃止に追い込まれたのだ。
では、セラーテムはどうか。宮永取締役が「開示した」と言い張る有価証券報告書で、ここまでリスクをきちんと開示しているか。読んだら、笑えますよ、ほんとに。大証の上場グループの目は節穴ですね。少しは恥を知ったらどうか。さてQ&Aに戻って、いよいよ核心に踏み込もう。
FACTAいや、要するに北京誠信という会社に実体があるのかどうかということを伺っているわけです。我々は北京のお宅のオフィスに伺っているのです。けれども、あのオフィスでニュースリリースで発表されているような受注ができるとはとても思えない。
セラーテム宮永取締役北京誠信という会社が実在されていないという、そういうこと?
FACTA要するに、あの会社で(スマートグリッドを受注)できるのかと伺っているのです。
セラーテム宮永取締役あの会社で何ができないと。
セラーテム池田社長リリースしている内容のことが実際にできているのかどうかと聞いているのですか。
FACTAそうです。
セラーテム宮永取締役我々が複数の契約を締結した契約書も、日本の関係当局にも提出しているので、そこが、どこが問題なのか。
FACTA関係当局というのはどこですか。
セラーテム宮永取締役大証さんには提出しておりますし。
FACTA大証は当局ではないですよ。
*****
もう少し続きます。
FACTAleaks――対セラーテム戦争4 お笑い決算会見(上)
セラーテムの4~6月期決算の発表と会見は、8月6日に東京の茅場町の日本証券会館1階、大証インベスターコンファレンス会場で行われた。本来、セラーテムは大証ヘラクレス上場企業だけに大阪で発表するかと思ったが、東京で行われることになったのだ。
飛んで火にいる……とはこのことだろう。
腕を撫して待つFACTAは一番前の正面の席を占めた。会見には池田修社長(写真)と、CFOの宮永取締役が出席した。池田社長が1時間近く、業績の説明(というよりはパワーポイントのポンチ絵を映しながら、ウェブフォントサービスなど画像ソフト事業の説明)を延々と続け、肝心の中国省エネ事業については「省エネに関する総合ソリューション」「省エネITコンサル事業」などと銘打って、えらく抽象的なお題目ばかりを並べたてた。ご本人がまるで分かっていないらしく、ほとんど口パクとしか聞こえない。
それからQ&Aに移って、FACTAの追及場面になる。同席していたアナリストも目をむくような質問の連続(われわれを証券監視委員会の人間かと思ったらしい。まさかね)に、池田社長はあたふたするばかり。いきなり馬脚を現わしたのには苦笑してしまった。彼らが公開した動画でQ&Aをオミットしたのは、少しは恥を知っているということか。
退屈な社長の独演はすべて飛ばし、Q&Aだけとりあげよう。
*****
FACTA決算発表を聞かせていただきまして、今期の売上34億のうち、中国での売上が17億、ほぼ半分ですね。セグメント情報のアジアのところが事実上、中国の北京誠信の売上と利益というように考えていいと思うのです。
セラーテム池田社長ほぼそうですね。まあ、全額ではないですが。
FACTAはい。ほぼそういう理解でよろしいですよね。4億1500万ぐらいの利益が出ていると。
セラーテム池田社長はい。
FACTAちょっとここで伺いたいのが昨年、子会社化を発表をされたときでは、2008年12月期の段階で北京誠信の売上21億、当期利益は5億2000万と出ているので、それより減っているのですけれども、これはどういうことか理由をお聞かせください。
注)実はこれは北京誠信の業績の信憑性を試す引っかけ質問だった。北京誠信を買収したのは昨年末なので、今期連結決算には半期分しか組み入れられていない。だが、半期分の数字をわざと通期の数字として言い、池田社長がそれに気づくかとうか試した。案の定、池田社長は「それは半期の数字です」と指摘できず、業績の数字がいかにデタラメかを暴露してしまった。彼らのオウンゴールを招いた点で、こちらはほくそ笑むばかりだった。
FACTAもう一つはこちらはスマートグリッド等の事業は中国においては基本的に外資の参入が制限されている業務であるはずです。とくに建設・運営というところはもう明確に制限されているところだと私は理解しているのですけれども、ここについて御社は100%の外資でありながら事業参入し、今後も拡大されるということについては、どういう仕組みでやっておられるのか。リスクはないのかということについて教えていただきたいのですが。以上2点、お願いします。
セラーテム池田社長2番目の質問で、リスクがないのかというのは、どういった面の?
FACTA要するに中国政府の規制上は外資の参入が規制されているところですよね。
セラーテム池田社長外資であることでリスクはないのかという(ことですか)?
FACTA外資であるにも関わらず、なぜここに参入できるのかというのが一つよくわからないのと、参入しているとしたらどういうロジックで参入されているのか、そこについてです。例えば中国のほうで規制が変わるとか等によるリスクというのはないのかというのが質問の趣旨です。
セラーテム池田社長では、まず1点目の2008年度から売上が減っているのではないかということですが、例えば2009年は最初の6か月は大きな赤字であります。これは我々のアメリカの政府向けの事業もそうなのですが、政府の予算に大きく左右される商売であることは明白で、いきなり政府予算が使われなくなってしまうと、受注がないというような状況は当然あり得る話です。ですから、そういった面で、例えば2008年度に関してはある程度の予算の取り込みはできて、2009年度に大きく落ち込んで、現在、我々としてはそれを踏まえて新しい事業を取って行こうということで、回復するべく全力を挙げています。
FACTAということは、現時点で中国の北京誠信の事業は伸びているのですか。
セラーテム池田社長結果として、例えば前年比では、前年の2009年1月から6月は赤字でしたので、伸びていますね。2009年はたぶん、どこの会社様も最低の年だったと思います。そういう意味ではどこでも伸びていると言えば、伸びているところではありますが。結果としては伸びています。
注)ここがオウンゴール。池田社長は北京誠信が最初は赤字だったことを暴露してしまった。
セラーテムは09年8月10日、北京誠信との「戦略的パートナー関係提携」をリリース。そこでは「北京誠信は、中国国内においてソフトウェア開発、IT技術及びソフトウェアを駆使した省エネコンサルティング、サービスの提供を多数の官公庁機関に提供しており、中国の環境政策における重要な役割を担っております。中国の環境関連市場は、近年最も注目されている市場であり、多数の参入企業がある中、同社の技術力の高さが認められ、近年市場シェアの拡大に成功しております」と書いてあるが、赤字であるとは一言も書いていない。
さらに11月13日、北京誠信を子会社化すると発表しているが、ここでも同社の紹介はほぼ同文。子会社化のメリットとして「(米国と並ぶ)二大プロフィットセンターの早期確立」などを掲げているが、そこでも「北京誠信の既存事業である省エネ環境関連事業からの収益により、中国市場参入に関する当社の基本方針のとおり、平成22年6月期の黒字化を確保しつつ、次年度以降の成長基盤を確立し、中国市場参入に関するリスクと時間を大幅に短縮することができます」とあって、少なくとも半期は赤字の会社を子会社化することとプロフィットセンター化の矛盾について一言も触れていない。
セラーテム池田社長それから外資としてどうかということですが、こちらのほうは我々の買収の形態というのが、例えばジョイベンをつくるとか、買収を実際しているというような形式ではなく、契約的な買収というかたちを取っています。買収のときに詳しいところはご説明していますが、北京誠信自体が外資ということではなく中国の会社ということで、例えばもともとそういったかたちでスマートグリッドだけではなく、免許というものが当然、ビジネスをやっていくうえで必要です。そういったものもまだ現在でも持ってやっているので、外資というよりは中国の会社というかたちでやっているので、その面に関しては大きなリスクはないかと思います。
注)シドロモドロ。何を言っているのかよく分からない。池田社長は中国商務省の外商投資指導目録のことなど何も知らないのだ。社長がカイライであることがよくわかるくだり。
FACTAただ、契約支配型ストラクチャーで海外に上場するというケースはよくあって、その場合、事業リスクの項目のところに普通はそのリスクを開示するのが常識だと思うのですが、御社については全く開示されていないのはどういう理由があるのでしょうか。
セラーテム宮永取締役開示しています。
セラーテム池田社長開示していると……。
注)あまりのシドロモドロにたまりかねて、脇からCFOの宮永取締役が一声。これで誰が主役で、誰が操り人形か明らかになった。
FACTA開示されていますか。事業リスクの項目にはないですけれども。
セラーテム池田社長どこですか。
セラーテム宮永取締役プレスリリースの面においては開示しております。昨年度の11月13日のプレスリリースにその仕組みについて詳細を開示しています。
FACTA有価証券報告書には開示していないですよね。リスクのところには書かれていないですね。
セラーテム宮永取締役有価証券報告書には開示しています。EDINETに登録されているのでご参照ください。
FACTA事業リスクの項目のところには入っていなかったと思うのですが。
セラーテム宮永取締役その他の範ちゅうです。
*****
以下しばらく他の質問者に移ったので、次の回に。
FACTAleaks――対セラーテム戦争3 日中連携報道
番外編として、ここで速報を挟もう。セラーテム“事件”がついに中国で報道された。
今年1月に発足した「財新メディア」が発行する週刊「新世紀」8月30日号に張伯玲記者ほか一名の記者の連名で、長文の記事が掲載され、同誌のインターネットメディア「財新網」にも載っています。
タイトルは「セラーテム、智能電網(スマートグリッド)の謎」
同じ記事はたちまち、「新浪財経」「網易財経」「騰訊財経」「路透(ロイター)」に転載され、セラーテムが中国でスマートグリッドを受注したという奇怪な話は、中国でもマユに唾をつけられていることが明らかになりました。中国語が読める方はリンク先をクリックしてください。その報道内容も含めた続報は、9月20日発売のFACTA10月号に掲載しますから、お楽しみに。
ところで、「財新」をご存じない方のためにここでちょっと解説。「財新」は中国でもっとも名高かった調査報道誌「財経」の後身。「中国最危険的女人」と呼ばれ、容赦ない報道で中国社会を震撼させた胡舒立編集長が昨年秋、オーナーとの対立から編集スタッフとともに辞任、独立して創業したのが「財新」である。
その経緯については、本誌09年12月号の「中国唯一のスクープ誌『財経』挫折」をご参照ください。ま、「選択」を辞めて「FACTA」を創刊した私と似た立場と言えば言える。北京で「元気いっぱい」強気の彼女にインタビューしたこともあるし、私が尊敬する中国人ジャーナリストの一人としてFACTAも折に触れて協力してきた。
「財新」には辣腕スタッフが馳せ参じているから、まだ創業早々とはいえ中国社会へのインパクトは大きい。現に転載サイトの多さがこの雑誌のステータスを示している。中国のSECにあたる中国証券監督管理委員会(CSRC)にも影響力大だから、「財新」の報道は、FACTAにとって千人力の助っ人になる。
日本の某経済誌には、セラーテムから「広告を載せられないか」との打診があったそうだ。FACTAleaksにたまりかねて、広告で弁解しようというのだろうか。それとも逆宣伝か。ま、そんなお笑い広告を載せたら、AERAと同じく笑いのめしてやろう。
31日もセラーテムの株価は5200円安。10万円割れが目前だが、デイトレーダーがこのブログをみてどう判断するか、これは見ものである。
9月9日追記)Yahoo掲示板に「財新の記事が削除された」という書き込みがありましたが、無料公開期間が過ぎたので有料ページに移動したものです。セラーテムおよびそのシンパの期待もむなしく、記事が抹消されたわけではありませんので念のため。そこで上記のリンク先を変更しましたが、全文が読めないため、公式転載先の1つ、鳳凰網(フェニックスニューメディア)のリンク先をお知らせします。
http://finance.ifeng.com/stock/zqyw/20100829/2564520.shtml
FACTAleaks――対セラーテム戦争2 最初のジャブ
7月23日にFACTAが送った取材依頼から。まずは軽いジャブ。どういう反応かを試しました。
セラーテムテクノロジー
代表取締役社長
池田 修 様
中国事業に関する取材のお願い
平素はお世話になっております。
私ども月刊FACTAは「三歩先を読むオンリーワン情報誌」として、国内外や規模の大小を問わず、注目すべき企業の発掘・取材に力を入れています。国内経済の低迷が続く中、海外市場、とりわけ中国に代表される新興国市場の開拓が、企業の生命線を握る大きな課題となっています。しかし、すべての日本企業が新興国市場への参入に成功しているわけではありません。
そんな中、セラーテムは中国資本の導入と新事業分野(環境関連事業)での中国進出という果敢な決断により、業績をV字回復させておられます。そこで、このような決断を下した経緯、中国事業の具体的な内容と展望、パートナーとの協業の苦労話等について、池田社長に詳しくお話を伺いたく、取材をお願いする次第です。
また、子会社化した北京誠信能環科技のユ・ウエンゲ董事長にも、セラーテム傘下に入るまでの経緯や、中国の環境ビジネスの現状などについてお話を伺いたいと考えています。取材は中国、日本のどちらでも対応できます。
ご多忙中に恐縮ですが、8月3日頃までに1時間程度、お時間をいただけないでしょうか。ご検討のほど、何卒よろしくお願いします。
2010年7月23日
月刊FACTA発行人
阿部 重夫
これに対する回答は、木で鼻をくくったようなものだった。たぶん、中国サイドも取材したいという要望にびくっとしたのだ(本当はすでに取材していて正体は知っていたのだが)。アラームが鳴り、あわててフタをしようとしたのだろう。
他企業の広報担当者に告げておく。こういう回答をもらって、殺意を抱かないジャーナリストはほとんどいないだろう。本誌も徹底取材で正体を暴く闘志を燃やした。事なかれが泥沼を招く失敗例として、肝に銘じていただきたい。
月刊FACTA発行人
阿部重夫様
平素はお世話になっております。
先日、当社に取材のご依頼をいただき、ありがとうございました。
しかしながら、恐縮ではございますが、
当社は方針により、雑誌等の取材は御遠慮させていただいております。
誠に申し訳ございませんが、どうかご理解ご了承の程をよろしくお願いいたします。
今後の御社の御活躍と御発展を、心よりお祈りいたしております。
2010年7月26日
株式会社セーラムテクノロジー
代表取締役社長池田修
ご丁寧に代表者印と会社印まで押してファクスで送ってきた。
笑えるのはこの直後、8月2日の「AERA」では、どっこいしょ記事にセラーテムの社員が写真付で載っていた。お優しい朝日は受け入れるという「方針」ですかね。
そこで8月6日の決算発表会見で、彼らが腰を抜かす質問を用意した。それは次に掲載しましょう。
FACTAleaks――対セラーテム戦争1 宣戦予告
内部告発サイト「ウィキリークス」が、アフガニスタンの駐留米軍機密文書7万5000点を暴露した後も、創設者のオーストラリア人元ハッカー、ジュリアン・アサンジュと米政府機関の神経戦が続いている。
アサンジュに対し、スウェーデン政府から婦女暴行容疑で逮捕状が出たとの報道直後、逮捕状が撤回され、アサンジュが「謀略」と反発したのに対し、被害者(?)の女性がペンタゴンやCIAの関与など「ナンセンス」とCNNに語ったそうだ。なんだか「藪の中」みたいだが、25日にはウィキリークスがCIAの「諸外国が米国を“テロ輸出国”とみなしたらどなるか」という3ページの内部文書(機密度は低い)を公開した。
正直言って、この衝撃度は低い。しかしアサンジュ対ゲーツ(国防長官)、パネッタ(CIA長官)の闘いは「オープン・インターネット」というイリュージョンを限界まで試す展開になりそうだ。
さて、本誌最新号(8月20日号)の編集後記で書いたように、「ウィキリークス」に倣って「FACTAリークス」を少し実験してみましょうか。編集後記にはこう書いた。
これは調査報道ジャーナリスムと呼ぶべきだろうか。アフガニスタン駐留米軍の機密文書7万5千点をインターネットで暴露した内部告発サイト「ウィキリークス」に対し、「新味に乏しい情報が吟味されないまま垂れ流されたことに加え、兵士や国民の声明が危険にさらされかねない」との怒りが沸騰していると、産経新聞ワシントン特派員が伝えた。
▼アホか。現地紙を転電するだけの「ヨコタテ特派員」にこんなことを言われたくない。この記事自体、米国政府の弁解や非難声明の寄せ集めだ。恥ずかしくないの?そりゃあ、孫引き記者は人畜無害の記事しか書けないだろうさ。スクープとは本来、危険な匂いに満ちているものだ。ゲーツ国防長官はFBIに捜査を依頼したというが、所詮は情報管理のドジを棚に上げた話だろう。
▼機密文書の中身はまさに素材であって、整序されたインテリジェンスではない。吟味は読む側に託されている。少なくとも私には、戦場の息苦しさ、果てしないアフガンの泥沼が体感できる出色のドキュメントだった。「ウィキリークス」主宰者のオーストラリア人元ハッカー(39)がいかなる人物かは知らない。グアンタナモ収容所マニュアルや、クライメートゲートの発端となった英国の大学メールの暴露で、愚劣なネオコンやエコ規制論者を黙らせた功績は大きかった。秘密を暴かれた側の泣き言など、耳を貸すに値しない。
▼と考えていたら、イラク侵攻時に従軍報道を認める「エンベッド(埋め込み)取材」を導入したペンタゴンの元報道官ビクトリア・クラーク(51)が「できるだけ多くの情報を発信して自分たちのゴールを達成する」と語る記事に遭遇した(朝日新聞「人・脈・記」)。情報洪水でメディアを支配するという魂胆か、やっぱりね。では、対抗して「FACTAリークス」でも始めますか。(A)
有言実行ですからね。そこで、最新号のスクープ、「『中国のハイエナ』が大証裏口上場」である。決算発表会見で「スマートグリッドを受注した北京の提携先に実体があるのか」と池田修社長を問い詰めた8月6日以来、株価は3割安となっている。本誌の指摘を否定するリリースをウェブに流し、写真まで載せて実体を証明しようと躍起だが、本誌はその付け焼き刃とお笑い弥縫策を暴く所存だから、今から予告しておきましょう。
決算説明会には大勢、証券会社のアナリストも来ていたのだから、北京の出先に調べさせればすぐ分かることだ。しかし、どうも中国株をあれだけ売り込んでいる癖にその労を惜しんでいるらしい。しようがないから、「FACTAリークス」で、これまでのセラーテムとのやりとり(最初は取材拒否、ついで大あわての反論)を逐一公開しましょう。FACTAがどういう詰め将棋をするか、読者の方に少しでもご覧頂ければ幸いである。
もうひとつ、企業説明会の模様はセラーテムが画像に撮っていて(画像ソフトの会社だもの)、ウェブで公開しているのだが、FACTAに追及されたQ&A部分はみごとに割愛。こういうのはディスクローズとは言わない。どうも、FACTAを仕手筋かなんかと勘違いしているらしいが、報道機関として彼らが隠したQ&A部分をすべて公開しましょう。
そのうえで個人投資家の方も、この企業の正体を判断してください。場合によっては、警察の外事に踏み込まれるかもしれない“貴重な”事例かもしれませんから。
では、次から乞うご期待!
答える価値のない公開質問
ヤフー掲示板に以下のような公開質問状が掲載された。
FACTA編集部御中
無視されるとは思いますが公開質問をいたします。
ジャーナリストとしての矜持がおありでしたら、ご自身のブログででもお答えいただきたく思います。
貴誌の記事は玉石混交であります。スクープ記事がある反面、取材源のあやしい記事も見受けられます。今回のセラーテムについての記事についても、正しいのかあるいは不正確なのか、いまだよくわかりません。
しかしながら、最近の金融がらみの記事、たとえば日本振興銀行や日本風力開発に関する記事は、当初はあやしげに見えましたが、後々になってみるとおおむね妥当な内容でありました。
もっとも、貴誌をほめたいのではありません。もし違っていたのならご容赦いただきたいのですが、振興銀や風力開発の記事は当局からのリークによるものではないのでしょうか。
そういう深い関係(?)があるからか、下の記事では証券取引等監視委員会を持ち上げまくりです。
http://news.goo.ne.jp/article/facta/business/20100517-01-00-facta.html
これではあまりにも権力べったりです。貴誌は権力の犬なのですか?
無視されることを覚悟で書きました。
この掲示板をチェックはしているでしょうから、せめて気にはとめておいてください。
内容は表題の通りだが、明日から用意しているブログ記事の前フリとしてお答えいたしましょう。
まず、はっきり言って質問が体をなしていない。「最初はあやしげで、あとになってみるとおおむね妥当」?何が言いたいのかよくわからない。妥当とは何に対して妥当なのでしょうか?おおむねとは何に対しておおむねなのでしょう?情報通気どりでいらっしゃるが、情報源が既存メディア以外にないことはすぐに分かります。
褒めたくないなら、けなせばよろしい。証券監視委員会についてのこの記事が、寄りすぎだという批判は甘受します。しかし、最新号の新生銀行の記事では、アプラスフィナンシャル株の異常な動きを見過ごしていると批判し、日本風力開発やセラーテムなど、探せばいくらでも監視委員会批判記事があります。
本誌は正義を唱えるオピニオン雑誌ではありません。合理性のないものを排除するよう努めているのです。しかし、記事が当たっていたから、当局のリークだろう、というのは、残念ながら大手メディアの毒に犯されていると言わざるを得ません。振興銀や風力開発がリークなら、メディアが一斉に報じていますよ。
両方とも昨年に最初の記事が掲載されています。振興銀は金融庁が検査を始める前の4月20日発売号です。そんな時期にリークなどあるはずはないのです。見方を変えて、当局のほうが、本誌の調査報道記事の後を追っていると考えるのはいかがでしょう?
それがどれだけのリスクに耐え、緊張と努力を要するかを、ご想像いただければ幸甚です。「特ダネ=リーク」というのは弊誌の得意とするところではありません。当局に取材はしますが、ご用聞きに身を落とした覚えはありません。記者クラブで尻尾を振る必要のないFACTAが、権力になつかないことは当局のほうがよく知っているはずです。
鋭い公開質問はFACTAの望むところです。
コラム「時代を読む」――経済の「帰郷」と「越境」
環日本海の地方新聞にシンジケート・コラム「時代を読む」を寄稿しました。
たまたま取材もあって、青森県八戸市にいて三社大祭のお通りを見る機会を得ました。極彩色の山車が29台、青森市のねぶたとはまた趣が違って、なかなかの見ものでした。
翌日の中日には東京に戻らざるをえなかったのですが、朝に東奥日報を開いたら、2ページ目にこのコラムが載っていて、ちょっと面はゆい思いでした。掲載した新聞をこの目で見たのは初めてです。
私がつけた仮見出しは
経済の「帰郷」と「越境」
しかし、それぞれの地方紙で見出しは違うでしょう。1週間経ったのでここに掲載します。
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「里へ帰ろやれ(帰りましょ)」
浄瑠璃『芦屋道満大内鑑』(竹田出雲)と聞けば、歌舞伎や文楽好きは、狐の正体を現した葛の葉が、乳のみ子を捨てて、泣く泣く信太の森へ帰っていく名場面を思いだす。
「ここはいづくと白露も、千草にすだく虫の声、なを悲しみの真澄鏡、水に映してわがすがた……」のくだりに、時を超えて誰もが郷愁をそそられる。
島根県知事、溝口善兵衛氏から大きな封書が届いた。知事になって3年余、「真の豊かさとは何か」を考え、それをまとめた小冊子が入っていた。
知事は高校まで島根県西部の益田で育ち、大学から東京に出て1968年に大蔵省(現財務省)に入省、ドイツや米国駐在も経験して国際派のトップ、財務官を最後に退官した。
04年の大規模な円売り・ドル買い介入は、日銀の量的緩和と相まって、日本を金融危機の崖っぷちから救った快挙だった。当時の米国側のカウンターパートナー、ジョン・テイラー財務次官(現スタンフォード大学教授)を今春日本に招いた縁で、この小冊子を贈ってくれたのだろう。
溝口氏は40年ぶりに「里へ帰り」、高齢化と人口減少に悩む島根から、都市化と一極集中が進む東京を眺める立場になった。かつての国際派の目に、裏返しの日本はどう見えるのだろう。思わず小冊子を手にとってみた。
民主党政権が掲げた「コンクリートから人へ」については、島根の高速道路整備が20年立ち遅れたために、供用率が全国平均を約20%下回っていること、やっと地方に順番が回ってきた矢先の打ち切りに「コンクリートはまだ不十分」と訴えている。
地方交付税など財源問題では、さすがに古巣に矢を引くのは気が引けるのか慎重だが、知事の処方箋は「分権」(decentralization)より「分散」(decentration)にあるらしい。
大都市以外の地方に人口を分散させない限り、格差の是正は難しいと言いたいのだろう。まさに「里へ帰ろやれ」政策である。
だが、いかにして。
分権論者は、だからこそ権限移譲、財源移譲が必要と言い張るだろうが、人材もインフラも乏しい地方へ「帰ろやれ」を誘導できるか。
Uターン論やJターン論はいつか立ち消えになった。地方の暮らしやすさ、自然の豊かさをいくら訴えても、映画『ディア・ドクター』が描いたように、中山間地の医療など末端は“虚血症”に陥って、もはやサービス維持そのものが難しい。
他方、東京の埋め立て地にはタワーマンションが林立し、それがどんなに殺伐とした光景であっても、地方の若年労働人口を都会に吸い寄せる受け皿づくりに余念がない。このニワトリと卵論、どこに均衡点があるのか。
小冊子には知事のエッセイも載っている。2年前、山陰中央日報に寄稿した「不昧公の時代と現代」は、松江在住の史家乾隆明氏の著作『松江藩の財政危機を救え』の書評の体裁をとっているが、地方財政危機への知事の胸の内を語って余りある。
不昧公は松江藩第7代藩主治郷(1751~1818年)の号で、大茶人として有名だが、かたわら年貢収入の5倍、50万両の借金を抱えていた藩財政を立て直している。
その再建策の中心は、藩内の産業振興で特産品をつくり、諸国に売って「外貨」を稼ぐことだったという。たとえばアワビやナマコなど中華食材、薬用ニンジンは漢方薬として長崎を通じて清国へ売り、タタラ製鉄による鋼や平田の木綿は全国に売りだした。
新たな収入源を開拓して「外貨」を稼ぐ――そこに知事は密かな共感を寄せている。まさに国際派の面目躍如だろう。
これは地方のみならず、企業の多くが黙って中国市場へシフトを始めている日本経済全体に言えることかもしれない。
里へ帰ろやれ、ただし「外」で稼げ、と。