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最後からの二番目の真実

傀儡新社長ではオリンパスは立て直せない

10月26日のオリンパス社長交代会見で、FACTAが「招かれざる客」として会見場に入れなかったことに改めて抗議したい。会見では菊川剛前会長兼社長が顔も見せないことに質問が集中していたが、出てきた高山社長の説明はしどろもどろだったようだ。彼が傀儡であることがよくわかる。

質問の中に「都合の悪いメディアはこの会見に出られないのか」と聞いた記者がいたが、これはFACTAのことである。高山社長の返答は「わからない」だった。「招かれた記者」が御用記者で、「招かれざる記者」が弊誌であるということは、会見場にいた記者全員に対する侮辱でもある。

そういう新社長にオリンパスが立て直せるわけがない。ウッドフォード前社長の解任において、弊誌の告発内容の真偽も確かめず賛成票を投じたことからも分かるとおり、高山氏も共犯である。菊川氏は平取締役に留まり、嵐が過ぎればと首をすくめているのだろう。ワンポイント・リリーフの後に、またトップ復帰のチャンスを窺っているとすればこれ以上の茶番はない。27日朝の緊急会見の追加情報も、われわれが報じていたことをなぞったもので新味がない。この法外なM&A手数料と価格を正当化する理由は見いだせないのだ。

ここに会見の全文(一部省略)を載せよう。あるのは、逃げと隠蔽の言葉だけである。



10月26日オリンパス会見

冒頭、小暮俊雄総務人事本部長が社外取締役3名からのコメントと菊川剛からのコメントを代読した。

(社外取締役、林田康夫・来間紘・林純一)コメント
高山修一専務を代表取締役社長に推薦した。医療技術現場を長く経験した後、映像の現場を担当している。今後の事業立て直しを行ううえで最も適切な人材である。

1990~2003年に人事のトップも経験し、社内人材の適材適所の判断もできる。社内をこれからまとめていくため重要な人望の厚い人材である。今後は高山を中心にモノづくりを追求し、「オリンパスウェイ」を社内全員で追求していく。

(菊川剛会長兼社長)コメント
社長の交代に端を発する一連の報道や株価低迷について、お客様、お取引様、株主の皆さんなど各方面にご心配、ご迷惑をおかけしていることをお詫び申し上げる。

過去の買収は適切な評価、手続きで実施したもので、不正行為はないが、第三者委員会を立ち上げ、改めて公正に調査していただくための準備をしている。

第三者委員会の設置にあたって、今後の取り組みについて新しい体制で臨むべきと判断した。よって社長辞任を申し出て了承された。一日も早く事態を収拾し、社会の信頼を取り戻して、お客様、お取引先様、株主様に安心してもらえるよう取締役の一人として尽力する。

(高山新社長)
ご紹介いただいた社長拝命した高山です。きょうはありがとうございます。経緯、今後についてご説明します。

平成23年10月14日の代表取締役社長の交代に端を発した一連の報道内容や株価の低迷を通じ、当社の製品をご愛用いただいているお客様、取引先、株主のみなさまに多大なるご心配とご迷惑をおかけしていることを深くお詫び申し上げる。

本日の取締役会において会長兼社長の菊川は代表権および会長、社長、CEO(最高経営責任者)を返上し、今日付で私が代表取締役社長に選任された。

10月21日に東証およびHPで開示したとおり、当社グループは過去の企業買収に関する第三者委員会を設立する準備を急いでいる。現在、外部の有識者にお願いをしているところで、構成メンバーについては詳細決まり次第速やかにご案内する。

私の社長就任は先ほどご案内があったように、社外取締役および取締役からの強い要請を受けたものだ。私自身も当社として各方面にご心配やご迷惑おかけしていることは大変残念に思っている。事態の深刻さを認識し、信頼回復に向けた陣頭指揮を執る覚悟を固めた。

信頼回復を最優先課題とし、社長として2010年5月発表後、順調に推移している2010年経営計画を遂行し、筋肉質な会社をめざし、コストカットや構造改革も引き続き行い、企業価値を高めていきたい。また、研究開発はオリンパスの命綱。独自技術を生む研究開発もこれまでどおり行う。

私は1970年にオリンパスに入社し、長らく研究開発ならびに製品開発に従事してきた。とりわけ内視鏡の研究開発・技術開発は、医療の現場の先生方、お客様の強い期待を肌で感じながら業務に従事してきた。管理職としては研究開発関連の管理職に長年従事し、人事も担当した。

取締役就任後は顕微鏡、産業システムのカンパニー長を務めた。今年4月からはカメラ中心とする映像事業を行う関連子会社のオリンパスイメージング社長に就任している。当社の映像機器は、感動の現場を記録するのに欠かせない道具であり、世界中の方々にご愛用いただけるよう収益改善にまい進しているところだ。

私は研究開発、技術開発の上流から、製造部門やお客様の下流までの経験があり、さらにはカメラ、顕微鏡、内視鏡、その他オリンパス主要の全事業を経験している。今後の企業価値拡大、コーポレートガバナンスの推進にまい進したい。

私の経験を全て注ぐことはもちろん、関係者からの協力を得ながら、信頼を一日も早く取り戻すことが使命と考える。会社として、早期に第三者委員会を立ち上げ、きちんと結論を出すことが喫緊の課題。会社としてできる限りの情報をできるだけ早く皆様にお伝えすることもお約束する。なにとぞよろしくお願いします。


(質疑)
Q(日経):ウッドフォード前社長が提示した疑問に対し、社長交代で答えられたと考えるか。

A:ウッドフォード氏の発表は取締役の立場での発表ですから、私どもにとって見れば大変問題なことだと思っているが、この疑問に現時点ではお答えできる状態にはございません。第三者委員会に改めてご確認いただいて、その上で私どもとしてはウッドフォード氏が公開した社内機密の情報の確認をしていくということでございますので、いずれにしてもこれから早期に立ち上げる第三者委員会の結論によると申し上げたい。

Q(ロイター):ウッドフォード氏は役員全員が辞任すべきだと主張した。それについてのコメントを。菊川前会長兼社長とはどのような関係だったのか。

A:確かに全員辞めて、ウッドフォード氏自身が会長につくんだと言っていますね。言っていることは事実だが、私どもは全くそのように思っておりません。それ以上、細かい部分もあると思いますが、これから立ち上げる第三者委員会に差し支えるので、コメントはそこまでで差し控えたい。

(ウッドフォード氏と)菊川氏の関係は最初は大変よい関係だったと思っているが、すでに私たちもコメントしているように、ウッドフォード氏の独断専行があまりにも目に付いたうえ、日本に数日しかいない月もあり……

(広報:質問が高山氏と菊川氏の関係についてだとしたため)今までは社長兼会長と専務の関係でした。私は人事部長の時代には一緒に仕事をした。その後は今のような関係で、特別いいというわけでもありませんが悪くもありませんし、仕事を進める上ではいい関係を持っている。

Q(テレ東):ウッドフォード氏への法的措置は取るのか。第三者委員会のメドは。株価も半値に下がって、日本企業に対する批判の目もあるが、投資家からの不信を招いていることについては。

A:株価は確かに下がっている。私の考えとしては、企業価値を毀損しているわけではない。事業も順調に推移し、前半の期もそう悪くない。株は下がったが、必ず回復できる。

ウッドフォード氏については、(オリンパスが)法的措置も考えるという報道もあった。考えてはおりますが、ここで発表できる状況にはないので、これ以上は差し控えたい。

第三者委員会は、先ほど申し上げましたが極力早く立ち上げたい。私自身もこの体制の中で第三者委員会は最初の大きな節目と考えている。現在、全社あげて客観的に評価できる有識者を対象にお願いをしている。そういう状況なので明日、明後日とか日を言うのは難しいが、いずれにしても大至急。立ち上がったらご報告申し上げるし第三者委員会からも発表していただくようお願いしていきたい。

Q:菊川氏が来ていないのはどうしてか。

A:今回の新体制の中で第三者委員会を通じて改めてその内容を確認すると言っているので。菊川がそれを行うわけではない。私の交代発表なので、今回は出席していない。

Q:英米の捜査当局が捜査を始めたという報道があるが、事実関係は。

A:これは全く現在つかんでおりません。

Q(読売):ウッドフォード氏が主張する、ジャイラスの買収手数料が不当に高いということについてはどう考えるか。国内3社買収、減損処理の会計措置については。ファイナンシャルアドバイザー(FA)の選定は適切だったか。取締役会としての選定は。(高山社長が)ウッドフォード氏の解職に賛成した意図は。

A:ジャイラスの手数料という表現をされているが、19日の適時開示に書いてあるが優先株の処置がございますので、全部手数料ではない。ここはぜひ(認識を)お願いしたい。ウッドフォード氏は全て報酬と言っているがこれは間違い。

国内3社の買収は、基本的には将来価値を計算し買収に至った。これについても第三者委員会等含めた適切な評価をしていただいているので、適切だと認識している。FAの選任は、その作業に私は携わっていなかった。その状況について(答えられる材料は)持っていない。

ウッドフォード氏の退任に当たっては、私も賛同した1人。理由は先ほどのとおり、独断専行な行動や、私の部下を含めて、きわめて強い恫喝を受けたり、といったことがあったので、これでは会社としてうまく進んでいくことはできないという認識をしたということ。

Q(朝日):社長は、喫緊の課題として株価下落の原状回復が最優先といっているが、株価が落ちている原因は、指摘されていることについて会社からの情報開示がされていないこと。今日もこれまでの内容と変わらない。菊川氏もいない。今日のような説明で先ほどのようなことが解消されるか。

A:私は改めて第三者委員会をつくりました。そこでの評価をきちんとしていただくことで我々の信頼が回復できると考えております。

Q(日経):東証はFAへの手数料という表現で、名指しはしていないが、上場企業としての情報開示を求める開示をしている。上場企業として東証にここまで指摘されていることについてのコメントは。

A:大変ご迷惑をおかけしていることだと認識している。これについても、私としては、かなり予測に基づくような情報が出されているわけですが、これを回復するためにはやはりきちんとした第三者委員会の審査が必要だと思っている。確かに「第三者委員会、第三者委員会」ということで皆さんもそれでいいのかという話もあるかもしれませんが、私としては、第三者委員会がやはり重要なポイントだと考えている。

Q(東洋経済):株主代表訴訟の話もあるが、株主からの動きは。

A:今のような、株主代表訴訟ということは聞いていません。しかし、これだけ株が大きく下がったので、直接言ってくる人はいるし、大株主の人もいる。大変心配だ、このまま大丈夫なのかということは皆さんおっしゃる。これも(ポイントは)二つある。ガバナンスの問題がどうなのかということと、本当に企業価値が下がってしまったのかということ。(二つ目の)これはないと思いますので、これは強調したい。

Q(日経):過去の会計処理についても適切だと言っているが、11月8日決算発表は通常通り、監査法人含めての意見が上がっているのか。菊川氏の役割は。

A:中間決算は今のところやる予定。特にやることについて大きなコメントはないと認識している。菊川は取締役で、役職はありません。

Q:(菊川氏の)第三者委員会や経営への関わり方は。ほとんどいないのか。口を出すか。

A:口は出さないと思います。

Q(共同):(この場に)菊川社長がいない理由は。社長交代(会見が)1人なんて異常。社外取締役等からの強い要請があったのか。事実上のクーデターなのか。これまでも製品リコール(の発表)もHP上だけだったり、ウッドフォード氏の解任も水曜まで認めなかったりしているが、具体的にどう改めるのか。

A:(広報:菊川の退任は社内で要請があったのか、自らの意思かという趣旨かと思う。)

菊川は、世間にこれだけ大きな問題として取り上げられたということと、株価への影響が大きいことについて責任を感じたということ。報道の中でも出ているが、ウッドフォード氏の選任への責務、それから、国内、特に3社の新事業、これは将来価値はあるという前提での買収をしている。しかし、新しい事業はなかなか立ち上がるのに時間がかかる。やはり、現在利益を出すまでに至っていないことに、経営としての責任はあるだろうということも出している。こうしたいくつかの点を総合して菊川は今回退任するということを考えたということ。

(広報:広報体制について)

確かに、今ご指摘のとおり、遅いじゃないかというご指摘は真摯に受け止める。今後は可能な限り、……できるだけ早い開示を心がけていきたい。これが遅いじゃないかというご指摘があればいつでも言っていただければと。

Q(朝日):ウッドフォード氏は経営刷新を求めた結果として解任されたと主張している。実際にそういう指摘が取締役でもあった高山社長本人にあったのか。それを見た上で本来であれば問題があれば社内で検証したうえでウッドフォード氏の処遇を考えると思うが、そういうことなしに解任したことが適切だったか。適切ならば、なぜあえて後から第三者委員会で検証しなければいけないのか。

A:全員に対してどうだったかということはありませんでした。菊川・森に対して、辞めろということはありませんでした。

Q:文書で、皆さんに主張していたと。

A:一方的に送られてきました。それから、内容について検討すべきだったんじゃないかということですが、その内容自体に対して我々十分な検討をする時間的余裕がなく、それよりも、辞めろと言われてどうするんだということがありましたから、まずそちらを優先したということ。逆に言うと、ウッドフォード氏は取締役でありながら社内の機密情報を全て開示してしまった。我々はこのことに対して大変な憤りを感じている。今ご指摘の点もあるが、短期間の間にたくさんいろいろなことが起きましたから、結果として、我々としてはウッドフォード氏を解任するという結論になった。

適法なら第三者委員会をやらなくていいというご意見のようだが、ファンドからも書面で、第三者委員会を開催すべきだということも来ていますし、これだけ大きな問題になりましたから、改めてやるべきだという考えでございます。

Q:第三者委員会で過去に問題があったという指摘になったらどうする?

A:それにふさわしい対応をするつもりです。

Q:具体的には?

A:内容次第なので、ここではコメント差し控えたい。

Q(TBS):ケイマンに支払った金額は適切だと思うか。

A:私は適切だと思っております。問題がないと考えております。

Q(朝日):8月の高裁の判決で、社内のコンプラ違反を指摘したら左遷されたという人が勝訴している。そういうことが相次いでいるのは、会社のガバナンスに問題があったのでは。内部告発者、公益通報者保護という視点からは(どう考えるか)。

A:全く無関係でございます。本日は大変申し訳ないが、その件についてコメントするときではないので、今日は以上にさせていただきたい。

Q:無関係だということであれば、もう少しご説明を。

A:今日は差し控えさせていただきます。

Q(CNBC):株価低迷でTOBの可能性について危機意識は。内視鏡シェアは75%。

A:今のTOBとかはございませんので、全く聞いておりませんので、現在その心配はないと思っている。やはり、この株価の低迷に対して我々やれることは会社の問題をクリアにすること。それ以上に、現在の事業が極めて健全であるということを示していきたいと思っている。ですから、11月の中間の業績報告をするが、ここでは認識いただけるものと思っている。

我々の企業価値を拡大していくということについては先ほど触れたが、開発に対する投資など、これをしっかりとしていくことで今ご心配があるような株価の低迷を払拭していくことをお約束していきたい。

Q(テレ朝):ここに前会長が出席していないことはおかしい。今日の内容を聞いて、株主は信頼できると思える内容だといえるか。中間決算では会見はないと聞いているが。

A:菊川がいない件については、先ほど来申し上げたとおり、第三者委員会を推進する立場ではないということで来ておりません。

Q:社長交代の会見ですよね。

A:私が第三者委員会を依頼をして、私がその結果を受けまして今後の対応をしていくということでございますので。

Q:社長交代の会見ということなので、社長を前社長が紹介しないことがおかしい。

A:それは、まあそうですね、私としては菊川の経緯は言ったとおりですし、それが違うということであればご意見の違いということで。

Q:それが御社の体質だということか。上場企業が(普通)する会見をしないと。
A:この会見を済ませて、ずいぶん誠意を尽くしてやっていると。

Q:前の人がいないことが普通のことだと?

A:菊川の退任は、世間の皆様にいろいろなご指摘をされ株価も低迷している中で自分の判断で辞任をすると考えたもの。それを尊重しております。

Q:それが株主に対する答えだと。

A:もちろんでございます。

Q:中間決算については。兜町での会見は。

A:(広報:物理的な問題?それは後ほど広報のほうで)

Q(共同):菊川前会長が責任を感じていたという国内3社は、売上高数億円に対し、買収額はどのようなベンチャーであってもありえない金額。取締役の善管注意義務違反ではないか。そこの疑義は。FAの選定、反社会的勢力との関係も疑われるが。

A:国内3社の業績は低迷はしているが、今後の高齢化社会に向けたアンチエイジングの化粧品や食品で、今後の社会の動向にあっている。先ほど申し上げたとおり新しい事業の将来価値はきちんと精査をして金額を決めた。現時点では業績は低迷。しかし、将来的にはこれが大きく育っていくだろうという予測の元に投資した。それから、反社会的勢力というのは全く認識をしていない。そういうふうにご理解いただきたい。

(広報:第2四半期決算、翌日に決算説明会を準備している)

Q(東洋経済):08年のジャイラス買収のアドバイザー2社について、ウッドフォード氏の報告書で実体がないと指摘されている。適切なアドバイザーだったか。

A:当時のアドバイザーについて、私は当時、常務ではなかったので十分なお答えはできません。PWCの評価のことですよね。あれはオリンパスが依頼したことになっているが、ウッドフォード氏が依頼をしていて、私どもは依頼した認識は全く持っておりません。したがって我々も依頼した記憶もございませんし、ウッドフォード氏が勝手にやったことで、内容的にもいろいろ疑問があります。これも第三者委員会の内容に絡んでくるのでこのくらいにさせていただきたいと。

Q:当時常務じゃなかったということは、調べたら問題が出てくる可能性は否定できないと(いう意味か)。

A:第三者委員会の結果次第。

Q(日経ビジネス):菊川体制時代をどう総括するのか。今回辞めたことが責任取ったことになるのか。他の責任の取り方は。

A:菊川はどういう考え方でいたかというと、オリンパスを新しい生き生きとした会社にしたいと。方針は創造的破壊と革新と謳っていた。そういった意味で、従業員の意欲を引き出して一人ひとりが高い能力を引き出すこと、その総和がオリンパスの能力だと。このことは私も正しいと思っている。
先ほど来、新しい事業がうまくいっていないという指摘もあるが、果敢に挑戦することについては評価している。ジャイラスについては、米国を中心に販売している事業を買っている。こちらは国内3社と違って、買収した段階から収益に貢献する事業だった。菊川が常々言っていたのは、内視鏡の分野については内生内視鏡は75%のシェアだが、外科は15%。これを、ジャイラスを買うことで泌尿器や産婦人科のシェアはかなり増えた。こういった新しい事業を取り込んでいくことで菊川の功績は大きかった。
辞めたことでこれ以上どうするかについては、私の責任で今後対応させていただく。

Q:役員報酬のカットなども?

A:ここでコメントはできない。今後の中で検討していく課題。

Q:(菊川氏の)功罪の罪は?

A:今回こういうことになってしまったこと、これはひとつの大きな(功罪の罪)だったかもしれませんね。

Q(NHK):株主が今求めているのは、菊川氏が自ら買収案件について語ることではないか。今後そういう予定は。

A:必要に応じてあるかもしれません。その程度しか今はいえません。

Q:菊川氏が発言することの重要性はどう認識しているか。

A:内容次第だと思います。今ここでお約束することはできませんし、今後の中で、私が判断し、必要であればやりたい。

Q(ブルームバーグ):ジャイラス買収、FAに支払ったのが手数料と優先株買戻しと言ったが、FA手数料だけでも300億超。御社はいつもFAにそれくらいの金額を支払うのか。適切だと思っているか。適切なら、FAはなぜそれだけ払う価値があったのか。

A:まず、手数料がどうだったかは、ケースバイケース。業界によっても違う。今回は医療業界。これは、適切だったかどうかということになりますと、医療の条件の中では適切だったと考えている。

Q:FAにそれだけ払う価値はあるのか。2000億の買収で300億支払い。

A:ある幅があったが、その下のほうで決断をしているので、今回は適切だったと認識。

Q(ロイター):トップの刷新で信頼回復ということだが、新社長は菊川レジームからの決別を標榜するのか。

A:今日、菊川がここにいないということもこの表れだとご認識いただきたい。私は私自身の考え方でやっていきたい。

Q:その中でもこの会見自体、都合の悪いメディアは入れていないという話もある。

A:私は分かりません。

Q:社長確認してください。それから、難しい質問になると第三者委員会の結論となるのはいいんだが、ご自身の言いたいことは。反社会勢力については既に断言されているが。

A:基本は、第三者委員会にゆだねます。ただ、私自身がどう思うかと聞かれているので、お答えしたまで。基本的には第三者委員会に委ねる。

(広報:M&A関連は分かり次第適切に開示、その時点で会社としてのコメントさせていただく。事業にかける意気込みとかよろしく。)

Q(CNBC):菊川(体制)脱却でどう変わるか。

A:昨日の今日でございますので、まだ十分にそれをお話できることはありませんが、イメージングの事業はこれから低迷をしてきておりますので、これをきちんと変えていくということだけは私の仕事なので明言させていただく。

Q(東洋経済):第三者委員会はメドとして、何カ月以内、いつまでにというイメージは。

A:何カ月というのもなかなか、本当にできるだけ早く、今お願いしているところなので。ただ、メドといわれると、どうなるか分からないのでお約束はできかねるが、できるだけ早く。

Q:1カ月でなく1週間2週間というイメージか。

A:そういうふうに、内々にはそう考えている。今お約束すると問題が起きるが、そのくらいの感じで。

Q:報告時期は。

A:申し訳ありませんが、申し上げることはできませんね。

Q(ダウジョーンズ):第三者委員会が中立性・効率性を担保するためにどう選ぶのか。誰を選んでもバックグラウンドを調べる。

A:やはり、有識者、世間の中でこの人だったらいいと推薦していただける方を頼っている。そういった形でできるだけ公平な中立な方を選ぶということしか方法がないので、それを今一生懸命行っている。

Q(ロイター):第三者委員会の人選について、過去の買収でも内部の監査向けに第三者委員会を設立してきたという話だが、今回はその人たちは対象に?

A:私は現在、情報を持っておりません。かなり秘密。どういう方がなるかということはいろいろな関心ごとなので、担当がきちんと納得できる形でおさまるようにやっている。過去の方がどうだったか、どうかなとは思いますが、ご自分がおやりになったものをまたやるということは普通は考えにくいように思いますが、これは、第三者委員会が設立された(ときに)できるだけ説明していただくようにお願いはしたい。

Q:人選について担当とは?

A:そこまで申し上げるのは控えさせてほしい。基本的にはいろいろなつてがありますので、コーポレート関係、その業界の第一人者に相談するとかしているので、その情報を私は持っていないということ。

Q:選任の責任は社長には?

A:私が今日なりましたので、今後聞いていく。

(広報:取締役会に諮って選任するというプロセスを踏む)

首を取ったFACTAは会見場締め出し

なんて会社だろう。オリンパスは、菊川剛会長兼社長の退任(平取締役に降格)と高山修一専務の社長昇格をリリースした。火付け役の弊誌としては、会見に当然出席できるものと思った。

ところが、同社広報・IR室(南部昭浩室長)は、5時半から京王プラザで開かれる高山新社長の会見への弊社記者の出席を断った。会見場に入れるのは彼らがよしとするメディアだけで、FACTAはその中に入らないという説明だった。

おいおい、冗談かね。「招かれた」記者諸君、なぜFACTAが出席できないのか、新社長とこの広報・IR室長を問い詰めてほしい。オリンパスがそういう選別をするなら、こちらも容赦しない。





日経のオリンパス社説

批判はしたくない。私も90年代に日経の論説委員だったから、オリンパスについて社説を書けと言われた論説委員の苦衷はよくわかる、としか言いようがない。

10月25日朝刊の日本経済新聞は2面の社説に「オリンパスは真相解明早く」と9面の「企業総合面」に、「オリンパス株、13年ぶり安値M&A報酬、疑問拭えず」の記事を載せた。本来なら同日午後、日経フォーラム世界経営者会議の講師にオリンパス会長兼社長の菊川剛氏が登場する日だった(結局、「都合により」欠席)だけに、両方とも腫物に触るようだった。

社説は見出し以上のことは何も書いていない。「早急に調査を進め、問題の真相を株主に説明してほしい」とあるが、早急に取材し、株主を含めた読者に真相を説明するのがそれこそ経済紙の役目だと思う。会社側と解任された前社長と「両者の言い分は一致していない」と言ってるが、深層を取材して突き止めるのがスジなのではないか。

海外メディアからの取材が弊誌に相次ぎ、異口同音に「雑誌発行人もライターも元日経なのに、なんであそこまで沈黙を守るんです?」と聞いてくる。正直、小生としてはどう答えればいいのか分からない。オリンパスはすでに世界に知られた「日本の恥」になりつつある。日経を含む国内大手メディアの沈黙もまた、いずれ「日本の恥」として喧伝されるのだろうか…。おひざ元の経済部出身の子会社社長が部下を殴ってこっそり交代だなんて、海外メディアに知られたらボコボコにされそうだ。

新聞やテレビの現場にいる若い記者たちは、こぞって取材に走っているという。が、事件化しないとデスクが取り上げてくれいないと言うから、「報道自主規制」の問題は記者の質というよりもメディアとしての構造的なところにあるのだろう。日本の当局が動いたときに報じるなら、それはプレスリリース・メディアと言われてもしょうがない。

野村の元オリンパス担当、S氏の独り言

いよいよ乱戦になってきました。

オリンパスは24日に1000円割れ寸前まで売り込まれ、1000円の大台割れは時間の問題となっています。東証引け後にニューヨークタイムズ電子版が「FBIがオリンパス捜査着手」を報じていますから、25日も売り込まれそうです。菊川オリンパスはもう風前の灯だが、こうなるとどこから弾が飛んでくるかわからない乱戦になってきます。

かつて野村証券のオリンパス担当だったS氏が匿名で書いている「闇株新聞」なるブログがあって、そこに「オリンパスの闇・第二幕」という奇怪な記事が載ったのには驚いた。



S氏といえば、09年6月に偽計取引容疑で東京地検特捜部に逮捕され、昨年、有罪判決を受けたばかりだからご記憶の方もいるだろう。当時の読売新聞を引用しますと、



ジャスダックに上場していた住宅リフォーム会社「ペイントハウス」(東京、現ティエムシー)の架空増資事件で、東京地検特捜部は6月24日、増資にかかわった投資コンサルタント会社「ソブリンアセットマネジメントジャパン」(東京)社長・S容疑者(58)を旧証券取引法違反(偽計)容疑で逮捕した。特捜部は、S容疑者が株価のつり上げを狙って架空増資を行い、ペイント社株を売却して約3億円の利益を得ていたとみている。

ソブリン社は企業再生を目的とした投資の仲介などが主な業務で、2004年11月、経営不振だったペイント社と業務委託契約を結んだ。

発表などによると、S容疑者はペイント社の株価をつり上げるため、05年5月26日、ソブリン社が出資した投資事業組合を通じ、ペイント社の新株27万8000株分の代金として3億4000万円を払い込んだが、翌日には国内外での取引を介してソブリン社側に資金を戻し、同31日、ペイント社が増資をしたとするウソの発表をさせた疑い。

これによりペイント社の株価は上昇。S容疑者らは約2か月後、株を売却して利益を得ていた。



ま、業界でいう「ハコ企業」を使ったボロ儲けで捕まった証券マンです。お嬢様がテレビ局の女子アナだそうで、小沢一郎元民主党代表の元秘書で、例の陸山会事件で有罪判決を受けた石川友裕衆議院議員と結婚したことが明らかになったばかり。

そんなS氏が勝手知ったるオリンパスのことを匿名ブログで明かしているのだ。ウッドフォード前社長解任の当日、「第一幕」を書いていたが、今度はジャイラス買収に絡んで法外な手数料をせしめた日本人名が浮かんできたので、24日も黙っていられなくなったらしい。S氏は、90年代にはじけたバブルの損失の後処理をオリンパスがしていなかったとしており、それが雪だるま式に膨らんで、この巨額の背任M&Aにいたったと書いていますが、これはFACTAの見立てとほぼ一致している。個人的な横領と見るには、抜いた額が巨額すぎるからだ。



バブル期の1980年代から延々と、トップ主導で、財務担当役員やごく一部の財務担当者の間でひそかに「処理」され続けてきたのです。その間の社長は下川氏(※筆者注:正しくは下山氏)、岸本氏、菊川氏の3名だけで、多分次は森久志・副社長に引き継がれるはずだったと思われます。

従ってこれらの「損失先送り」などの処理も、ごく少数の「長い付き合い」の外部の人間にだけ相談されていたのです。

それが野村証券の事業法人部でオリンパスを担当し、その独立した横尾宜政氏と、メリルリンチやドレクセル・バーナムなどでオリンパスに深く入り込んでいたN氏です。



このブログの後にニューヨークタイムズ電子版が、佐川氏とともにナカガワ・アキオ氏の名も報じたので、N氏とは佐川氏の上司だったこの人のことなのだろう。S氏ご自身も野村のオリンパス担当だったから、知ってるのも当然でしょう。片隅で匿名で書いてないで、もっとどんどんブログで語ってくださいな。

*S氏ご本人の申し入れによりイニシャルとします。

FBIがオリンパス捜査着手

ニューヨーク・タイムズ電子版(現地次官23日、日本時間24日)でベン・プロテス記者が報じた記事「2 Japanese Bankers at Heart of Olympus Fee Inquiry」で、英ジャイラス買収にからみフィナンシャルアドバイザー(FA)をつとめたAXAM/AXESに関与した2人の日本人、ハジメ・サガワとアキオ・ナカガワの名前を報じるとともに、この件で連邦捜査局(FBI)が捜査していると報じました。

NYタイムズに対し、FBI広報はノーコメントと答えていますが、確信があるのでしょう。オリンパス広報は同紙にWe are not aware of any investigationと答えていますが、早晩、菊川剛会長兼社長と森久志副社長の退陣は必至でしょうね。もう年貢の納め時。

次は日本の捜査当局ですぞ。



オリンパスと日経。そして4万人の従業員

オリンパスの従業員は、3月31日現在の連結社員数で39,727人という。そのうちどれくらいの方がこのサイトを覗いてくれているのだろうか。金融庁、証券取引等監視委員会、国税など当局の方はどうだろうか。連日、多くのアクセスと応援メッセージをいただいていることに、この場を借りて感謝申し上げます。

週末だが続報を書きたい。

聞くところによると、オリンパス社内で厳重な情報管理令が出ているのだとか。「社内資料を取られるな」との大号令が下り、USBなどに落として抜かれないよう、各部署(の管理職?)は絞めつけられているという。だが、ウッドフォード前社長の提供資料のコピーは欧米で奔流となっており、法的措置云々の脅しをいくら会社が口にしようとも、菊川剛氏、森久志氏、山田秀雄氏の3人の名前は、「日本の恥」として世界的に知られまくっております。

ジャイラスから法外な手数料と優先株値上がり分をせしめて姿をくらましたAXAM/AXESも、元野村証券の日本人の名前が浮かびフォーチュンはじめ米国のメディアが追跡しているようですから、世界的な捕り物競争になっています。オリンパス首脳陣、気が気じゃないでしょう。

さらに嫌なのは、FACTAの第一報がウッドフォード前社長でなく(前社長はむしろFACTAの記事を読んで愕然としたと言っている)、別の情報源であることでしょう。いくら第三者委員会を設けて弁護士や公認会計士のお墨付きであのバカげたM&Aの不正を隠す「イチヂクの葉」にしようとしても、彼らの知らない新資料が出てくることが恐いとみえる。情報源をあぶりだそうとあの手この手で、御用新聞の記者を使ってあちこちでカマかけのガセ情報を流しているのは往生際が悪すぎませんか。このブログで2度ほど言及した日経出身の来間紘社外取締役も「(FACTAの)阿部と組んだ情報源」などと疑われているらしく、それはそれで気の毒ではあります。

来週24日、25日に帝国ホテルで行われる日経フォーラム世界経営者会議の講師に菊川氏が入っていたことは既に書きましたが、いつのまにか会議のサイトから菊川氏の顔写真と名前が消えており、「10月25日・セッション5の菊川 剛氏(オリンパス会長兼社長)登壇が、都合により取り止めとなりました」とのお知らせが出ている。実は菊川氏から「出席する」と言われ、事務方が困り果てていたというが、さすがに取り止めになったようだ。

菊川氏が宣伝担当の部長だったころ、日経の産業部や首脳陣がさんざん接待されたことが、筆が鈍っている原因だとは思いたくないが、その「都合」とやらを報じるのが経済ジャーナリズムの責務ではないか。今回の件に関してTwitterのコメントなどを読んでいると、日経はじめ大手メディアに対する失望感が溢れている。元日経記者としては虚しい限りである。

ところで、弊誌にとってはこの騒動はとんだ余禄となった。海外メディアは日本と違って、一番槍をつけたメディアの名を明記するため、弊誌も調査報道メディアとして報じられた。創刊以来、ひそかに亀鑑としてきた英国のThe Economistにも最新号で言及されたことは素直に喜びたい。

さて、オリンパスの技術力が高いことは誰もが認めるところ。すでにバラ売りしようと画策する金融機関も出始めているという。4万人の社員がどう動くのか注視したい。

「報道ステーション」「報道ステーションSUNDAY」についての質問状

今月号に「『古舘プロ』が牛耳るテレビ朝日」と題した記事を掲載しましたが、テレビ朝日広報部に送った質問状と、それに対する回答書を掲載します。



テレビ朝日広報御担当
古館プロジェクト広報御担当御中

「報道ステーション」「報道ステーションSUNDAY」についての質問

ファクタ出版株式会社
月刊FACTA発行人阿部重夫

時下、益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。

弊誌FACTAは調査報道を中心とした月刊総合誌で、テレビ朝日についても何度か記事を掲載させていただきました。最近では昨年1月号の「企業スキャンテレビ朝日目算狂う新聞株『持ち合い』」、今年4月号の「朝日新聞が『早河テレ朝』粛清も」、同7月号の「黒字予想のテレ朝、TBSは甘すぎないか」などがあり、あるいはご記憶かとも存じます。

さて、私どもは独自の取材をもとに「報道ステーション」と新番組「報道ステーションSUNDAY」について次号11月号(10月20日発売)で記事の掲載を予定しております。つきましては、確認したいことが数点ございます。ご多忙中のところ、大変恐縮ですが、ご回答いただければ幸いでございます。

お尋ねしたいのは以下の点です。

1)テレビ朝日編成局、報道局、古舘プロジェクトが共同制作をされる番組では、テレビ局側の制作責任者が視聴率などを恒常的に古舘プロジェクトの佐藤孝社長に電話などで報告されているとうかがいました。これは事実でしょうか。

2)昨年春、テレビ朝日編成担当役員の関連会社への異動が内定したものの取りやめになったのは、佐藤孝社長からテレビ朝日早河洋社長に直接働きかけがあったからとうかがいました。事実でしょうか。

3)報道ステーションのデスク(テレビ朝日社員)の異動に、古舘プロジェクトから異議を申し入れたことはあったのでしょうか。「市ヶ谷に詫びを入れに来い」などの発言があった可能性はありますか。

4)テレビ朝日と古舘プロジェクトの契約のなかに、テレビ朝日側の役員およびスタッフの人事に干渉できる事項があるのでしょうか。

以上です。大変心苦しいのですが、締切の都合もございますので、10月14日(金)までにご回答いただければ幸甚です。ご連絡は電話、FAX、メールいずれでも構いません。なにとぞ宜しくお願い申し上げます。敬具

10月11日







深みにはまるオリンパス

マイケル・ウッドフォード社長の突然の解任(10月14日)から株価の暴落が続くオリンパスが、今度は問題の国内3社と英ジャイラスの疑惑の買収について、これまで「適切な情報開示をしている」と突っぱねていたが、とうとう公表に追い込まれた。

「情報の小出し開示」という、もっとも下手な危機対応では、ドツボにはまるばかりでしょう。FACTAの公開質問状に回答を拒否し続けていたが、やはり情報開示が適切でなかったことを認めたも同然ではないか。

しかも追い込まれての開示だから、次々と馬脚があらわれて疑惑を深めるばかりだ。つい2日前までは、ジャイラス買収のフィナンシャルアドバイザー(FA)に支払ったのは300億円としていたのが、いつのまにか6億8700万ドルに変えている(優先株値上がり分4億4300万ドルをFA報酬に入れていない)。差引2億4400万ドルだけFAの報酬としているが、これは合理的な説明とはいえない。あきらかに報酬を小さく見せるためでしょう。

2億4400万ドルでもM&A業界の常識外なのに、優先株値上がり分がその倍もあるというのは気前がよすぎる。しかもこのFAの正体について「優先株の買い取りをもって取引関係は終了しているので、その後の状況については関知しておりません」ときた。ウッドフォード前社長は、FAはケイマン籍のAXAMで、3か月後に登記抹消で消えたとしているのだ。3か月で消えるような「幽霊会社」に、こんな巨額の支払いをした理由を何も説明できていない。最初から足跡消しのためにつくったペーパーカンパニーに横流しさせたのでは?と誰だって疑うだろう。そうでないことの証明は、相手の正体に口をつぐんでいてはできない。

それから国内3社の買収。いずれも売上高数億円の小さな企業をそれぞれ288億円、214億円、231億円で買った理由について、「第三者機関である外部会計事務所の評価を得ている」と言いはっているが、その程度の権威づけでしのげると思っているのなら驚きである。この外部会計事務所は「井坂公認会計事務所」である。朝日監査法人、メリルリンチを経て独立したそうだが、3社の株主価値算定報告書のうちアルティス分を公開しましょう(井坂公認会計事務所が作成したアルティスの株主価値算定報告書/PDF・492KB)。他の2社も似たり寄ったり、単純な目くらましである。

DCF(ディスカウント・キャッシュフロー)法なんて御大層に言っているが、将来のキャッシュフローを過大に見積もって、そこから逆算して現在価値を膨らませただけのこと。こんな手品で投資家を騙せると思っているのだろうか。問題は08年度4億8800万円しかないアルティスが、09年度35億円、10年度57億円、11年度94億円と3年で20倍近く売り上げを伸ばせる根拠があったのかどうかだ。絵にかいたモチ、とらぬ狸の皮算用など承知の上、単なる「判断ミス」(菊川剛会長兼社長)ではなく、最初から仕組んでやったのではないか。「井坂」なる公認会計士も、金をもらって会社の言うがままの数字を出した共犯であり、事と次第によっては会計士資格が問われることになるだろう。

こんな幼稚な手口で、隠しおおせると思ったことが間違いだ。これでは海外の株主が代表訴訟を起こすことも十分考えられる。菊川氏は25日の日経フォーラム世界経営者会議に講師として出席する予定だという。テーマは「日本から世界へ」。日本から世界へスキャンダルを発信した当人が何を語るのだろうか。

菊川オリンパス会長兼社長の墓穴

4日の唐突な外国人社長解任で、株価が急落しているオリンパスは、18日も続落して一時は1200円台まで下げた。解任発表前のほとんど半値をつけている。14日の会見で解任理由を「前社長の独断専横」とした菊川剛会長兼社長はさぞかし焦っているはずだ。ウッドフォード氏は英SFO(重大不正局)に出頭したようだから、これは国際的なスキャンダルになるだろう。

2010年にアカデミー助演男優賞と助演女優賞をとった映画「ザ・ファイター」を思い出す。力はあるのについていないボクサーの主人公(ミッキー・ウォード)が、天才肌だが身を持ち崩した兄のアドバイスで勝つというスポ根ものだが、相手にぼこぼこに打たれても、ズジンズシンと重いボディーブローで消耗させ、最後にKOするという作戦だった。

7月20日発売でオリンパスのスキャンダルをスクープしたが、当時はどこのメディアも追随しなかった。会社側が取材に応じず、通り一遍の「適切な情報開示をしているので答えることはない」というダンマリ作戦だったからだ。そこでボディーブローを放ち続けた。いつか膝を折る、と信じて。

やはりパンチは効いていたのだ。ウッドフォード前社長は日本語が読めないが、FACTAの最初の記事を耳にして、内容を知るために英訳させ、読んで愕然としたという。何が彼を不安に陥らせたかは、18日正午解禁のFACTAオンライン版(会員限定)の記事「オリンパス窮余の社長解任」(2011年11月号)が明かしている。彼は菊川会長らを問い詰めたあげく、“窮鼠”に噛まれて解任されたのだ。

それを海外有力紙の記者に明かしたため、フィナンシャルタイムズ(FT)やウォールストリート・ジャーナル(WSJ)、ニューヨークタイムズなどで、菊川会長らの嘘が暴かれ始めた。前社長に企業不正を暴かれそうになって、解任の強硬手段に踏み切ったというのが真相だと。自力で調べる気のない日本のメディアまでそれを引用しだしたから、オリンパスの株価は炎上した。

形勢不利とみた菊川氏は、頼みの綱の日経にすがる。18日夕刊の「海外買収の手数料、適正」という菊川氏の反論記事を独占掲載したのがそれだ。虫唾が走るような「御用新聞」根性ではないか。まさか、10月24~25日に開く日経フォーラム世界経営者会議に菊川氏が講師として出席するので、かばおうとしているなんてことがあるとは思いたくない。

だが、この記事で菊川氏は墓穴を掘った。ウッドフォード前社長がジャイラス買収時に正体不明のファイナンシャルアドバイザー(FA)に700億円の手数料を払ったと主張していることに対し、「払ったのは300億円」と白状したことだ。この手数料についてFACTAが送った公開質問状に対し、オリンパスは返答してこなかったが、図らずも白状したのだ。FACTA最新号の記事ではこれを「250億円以上」としているから、われわれの推定に近かったと言っていいだろう。

しかしである。2700億円の買収に手数料300億円?それだけで10%を超す法外な手数料だ。ウッドフォード前社長は、会計法人大手プライスウォーターハウスを使って調べ、ケイマン籍のAXAMという正体不明のFA(3か月後に登記抹消)になぜ支払われたかを問い詰めたのだ。M&Aの常識を超える手数料を「適正額」と強弁する根拠を、日経の記者はなぜ聞かなかったのだろう。アルティスなど売上高数億円の企業3社を700億円もかけて買収しながら、それを「赤字は判断ミス」と菊川氏が言ったところで、もう許してしまっている。ここは何の判断を誤ったかを突っ込むべきところだ。最初から過大な業績予想見積もりをもとに株主価値算定報告書を会計事務所に出させ、それに法外な値をつけた可能性が濃厚なのだから。価格最初にありきだったのに、菊川氏の嘘にまったく突っ込んでいない。

19日朝刊でも日経は「混乱収まらず」というコラム記事を載せている。しかし表を見れば一目瞭然、ウッドフォード側の主張はすべて海外紙の引用である。それで「真相は見えず」と平気で書いてある。取材できていないだけではないか。世界経営者会議への菊川氏出席を許せば、いい笑いものになるだろう。

もうひとつ、オリンパスの社外取締役3人は何をしているのか。会社側の不正を調べる立場なのに唯々諾々。順天堂大学元教授の林田康男氏はオリンパスのお得意先だし、来間紘氏は日経元専務で前テレビ愛知社長、林純一氏は野村証券出身でアングラム代表と、メディアと金融の利害関係者ばかり。ウッドフォード解任は当人以外全員が賛成したので同罪だから、このままだと株主代表訴訟の被告になるでしょう。

追記(10/19 15:00):ウッドフォード氏はFTのビデオインタビューで、「FACTAの記事を読んで恐くなった」「FACTAが報道したのに、メーンストリームのメディアは報じなかった」とはっきり言っている。日本のメディアに対する外国人投資家の不信感は増すばかりだろう。

オリンパス火砕流、続報次々に

先週末の10月14日、突然、マイケル・ウッドフォード社長の解任を発表したオリンパスは、週明けの株価も下げ止まらずにストップ安、約24%という暴落を記録した。

むろん、前社長のインタビューを載せたFT(フィナンシャルタイムズ)の記事が火砕流を招いたのだが、それを見て赤っ恥「買い推奨」のゴールドマン・サックスはじめドイツ証券、JPモルガン証券、シティグループ証券、大和証券キャピタル・マーケッツ、野村証券などが投資判断を引き下げた。これでようやく国内メディアも報じ始めたから、一気に流れる情報量も増えるでしょう。弊誌としては嬉しい限りである。

FT報道に対しオリンパスが懸命に反論している。「一部報道について」というニュースリリースを17日に流した。



マイケル・ウッドフォード取締役の代表取締役及び社長執行役員の解職について、一部、憶測等に基づく報道がなされておりますが、解職の理由は、これまでもご説明しております通り、他の経営陣との間に経営の方向性・手法に関して大きな乖離が生じ経営の意思決定に支障をきたす状況になったためです。また、すべてのM&Aは適正な手続き・プロセスを経たうえで会計上も適切に処理し、実施しております。



FACTAの二度の公開質問状への回答と同じではないか。まさに壊れたテープ。上場企業の資格なしである。

それにしても、だらしないのは東証だ。売買高でも値下がり率でも注目銘柄になっているのに、ロイター報道では、この期に及んで「会社側の説明を尊重するとの立場を示しながらも、追加情報などがあれば開示を待ちたい」(上場部ディスクロージャーグループ)というのだから投資家を馬鹿にしているとしか思えない。既にオリンパス本社には当局者が入ったとの情報もあるから、売買停止、上場廃止になるシナリオも十分考えられる。

FTの続報に加えて、WSJ(ウォールストリート・ジャーナル)も参戦し、こちらはFACTAが先鞭をつけていたと記事でフェアに書いていただいている。英文で引用すると、



Mr. Woodford said the concerns that led to his split with Mr. Kikukawa began in late July, when an article in the Japanese magazine Facta raised questions about Olympus's purchases of three small Japanese companies between 2006 and 2008 for nearly $800 million



きちっと書いていただいたJuro Osawa記者には感謝申し上げたい。

香港に出国したウッドフォード社長が、解任の引き金を引いたのはFACTAの8月号と10月号の記事だったと発言していることは、弊誌も存じています。

さて、17日夜、オリンパスの森久志副社長が投資家の前で「ウッドフォード前社長の情報漏えいに法的措置をとる」という脅しを口にしたとロイターが報じています。が、残念ながら、不正行為が立件されかねないのは、菊川会長や森副社長ら現経営陣のほうではないでしょうか。FACTAが入手した内部資料を毎日ひとつ公開して検察、国税、証券監視委など関係省庁や、業界関係者全員に分析してもらえば、森副社長の脅しなど一蹴できるでしょう。菊川オリンパスが丸裸になる日は近い。

次号にオリンパス独走報道第3弾掲載!

FACTAの愛読者はもうよくご存じでしょう。オリンパスのスキャンダルについては、8月号に掲載した「企業スキャンオリンパス――巨額M&A失敗の怪」以来の調査報道とスクープで報じた通りです。14日朝に突如、マイケル・ウッドフォード社長の解任が発表され、株価が1日で17.6%も値を下げたことも、記事をご覧になっていれば意外とは思わなかったはず。

この一連の記事に、わずか半年で外国人社長が解任された理由のすべてが書いてあります。一部のメディアで言われているような、外国人経営者を排除する日本の島国文化だとか、菊川剛会長が会見で言った「独断専横」とか、お家騒動とかの文化摩擦説はすべてこじつけにすぎない。守屋武昌防衛省次官、木村剛日本振興銀行会長などなど、FACTAの調査報道の対象になった面々の獄門台に、またひとつ新しい首が並ぼうとしているということです。

M&Aに絡む巨額の不正を隠ぺいしようと、口封じの社長解任が実態。それを裏付けるのは、英経済紙フィナンシャル・タイムズの東京駐在ジョナサン・ソーブル記者が書いた「Ex-Olympus chief questioned payments」(前オリンパス社長が支払いに疑問)の記事である。

このインタビューでは、前社長自身が解任理由を明かしている。オリンパスが2008年に2700億円を投じた英社ジャイラスの買収をめぐって、買収の際のフィナンシャルアドバイザー(FA)だったケイマン籍のAXAMに買収総額の3分の1に値する6億8700万ドルも支払いながら(手数料にしては巨額すぎる)、3カ月後にAXAMが消えてしまった不可解を経営陣に問いただしたところ、いきなり首を切られたというのである。

まさに虎の尾を踏んだのだ。記事の第1弾はフリー公開にしたのでご覧いただきたい。そのタブーをFACTAは追及していた。ウッドフォード前社長の疑問は至極当然だった。菊川会長が目くらましに据えた「お飾り社長」とはいえ、われわれの追及と同じ疑問を前社長も抱いたのだろう。代表取締役が善管注意義務を果たして何が悪いのか。

このブログでも二度にわたりFACTAはオリンパスに公開質問状を送っているが、「適切な開示をしており、お答えすることはありません」と一貫して知らぬ存ぜぬだった(第1回第2回)。が、社長解任によってわれわれの質問状がまさに「菊川オリンパス」の機微に触れるほどの痛撃だったことが証明された。

それにしても情けないのは、解任発表当日の日本経済新聞電子版に載った「オリンパス株急落、『お家騒動』に視線厳しく」である。まったくのアウト・オブ・ポイント。冷たいことを言いますが、上っ面をなぞるだけ、言いなりの記事を書くのが日本を代表する経済紙記者の存在意義ではないだろう。例えオリンパスが気前のいい広告スポンサーだとしても、ネガティブなことを書くのを避けることは、メディアとして自分の首を絞めるに等しい。

記事では三菱UFJモルスタ証券や野村証券のアナリストのコメントを引用して他人の口に語らせているが、アナリストたちが何を踏まえて喋っているかは明らかだろう。オリンパスが言う文化摩擦の言い訳など表向きのことで、特別背任が疑われる事件の隠ぺいの可能性が一言も書けていない。

もうひとつ。解任前日の13日にオリンパスを「買い推奨」と書いたゴールドマン・サックスのレポートも「秀逸」だった。曰く、今後24か月の目標株価は3800円…。が、とんだ高望みの株価予想をつけた翌日、一日で2000円すれすれまで17%以上急落している。ウッドフォード社長のリストラに期待、とあるが、その社長がリストラされたんだから笑えない。しかも翌日に。「買い推奨」で買った株主にどう言い訳するのか。ディレクターズカットのバリエーション手法とやらの前に、情報を嗅ぎ分けるスキルを身につけることをお奨めしたい。



オリンパスの投資判断を「中立」→「買い」に引き上げ、コンビクション・リストに採用、今後24 ヵ月の目標株価を3,800 円(上値余地57%、従来は今後12 ヵ月ベースで2,400 円)とする。同社の軟性内視鏡市場における圧倒的な競争優位性から、今後2-3 年で同社の収益構造は大幅に改善すると予想、真のグローバル医療機器銘柄への変貌を遂げると考える。



しかし、過去にオリンパス株が、指数を常にアウトパフォーム(凌駕)してきたといいながら、11年前の2000年までしかあげず、菊川氏が主導したこの10年のデタラメに目をつぶったのはなぜか。まさか自己資本を浪費しているオリンパスの増資をにらんで、ここでドッコイショして主幹事をさらおうという魂胆ではあるまい。

さて、最後にお知らせ。弊誌は10月20日発売(ウェブは18日正午)の次号に、調査報道第3弾「オリンパス窮余の社長解任」を載せます。お楽しみに。

FACTAleaks――セラーテムへの公開質問状

本誌が1年前にスクープした、いかがわしい中国資本による「裏口上場」疑惑。その「ハコ」として使われたジャスダック上場の画像処理ソフト会社、セラーテムテクノロジーの“内部崩壊”が始まった模様です。

上場廃止寸前のゾンビ企業だったセラーテムの第三者割当増資を、英領バージン諸島に登記された正体不明の中国系ファンド2社が引き受け、さらにその資金を使ってセラーテムが中国の環境関連企業、北京誠信能環科技を買収。セラーテムは「中国の成長分野に参入」と日本の投資家に吹聴していました。しかし実際には、中国系ファンドと北京誠信能環科技は水面下で一体であり、株価つり上げを狙った「裏口上場」の疑いが濃厚であることを本誌は解明しました。

これら一連の操作を主導したのはセラーテム取締役兼CFO(最高財務責任者)で元中国人の宮永浩明氏です。ところが、その宮永氏が今年3月と5月に自己保有していたセラーテム株を大量売却。さらに、9月29日に開催される定時株主総会で宮永氏が取締役に再任されないことや、セラーテムが宮永氏個人に一時3億7000万円を融資していた事実などが判明しました。

「裏口上場」の青写真を描き、中国側との橋渡し役を務めていた宮永氏が去れば、セラーテムの中国事業はコントロールを失ったも同然です。一体何が起きているのか。本誌は改めて同社に質問状を送ることにしました。

実は、本誌は5月にもセラーテムに質問状を送りましたが、なしのつぶてでした。しかし今回は株主総会があります。以下に質問状を公開しますので、ブログを読んだ株主の方は質疑応答で直接質してはいかがですか。



セラーテムテクノロジー
代表取締役社長
池田 修 様

取締役CFO
宮永 浩明 様


平素はお世話になっております。

月刊FACTAでは、御社を通じた北京誠信能環の裏口上場疑惑や、御社と人的つながりが深いチャイナ・ボーチーの問題について取材を継続しています。5月6日付でお送りした質問状に回答いただけなかったのは遺憾ですが、改めて事実確認したい点がありますので、質問を送らせていただきます。ご多忙中に恐縮ですが、9月29日(木)までにご回答いただけますよう、よろしくお願い申し上げます。なお、この質問状は弊誌ウェブサイトで公開させていただく予定です。あらかじめご承知置きください。

1)宮永取締役が3月28日付で関東財務局に提出した大量保有報告書の変更報告書によれば、宮永取締役は3月22日から25日にかけて発行済株式の0.71%に相当する合計8900株を市場で売却しました。御社は3月22日付で米アドビシステムズとの提携に関するIRを出し、宮永取締役はその当日から自社株の売却を開始。特に22日と23日の売却数は7588株と、両日の出来高(1万6818株)の45%にも達します。このようなタイミングで上場企業のCFOが自社株を大量に売却するのは、インサイダー取引や株価操作と疑われて当然です。なぜIR発表のタイミングで自社株を売却したのですか。過去のIR発表時にも、報告義務のない範囲(発行済株式の1%内)で類似の取引を繰り返していたのではありませんか。

2)宮永取締役が5月19日付で関東財務局に提出した大量保有報告書の変更報告書によれば、宮永取締役は5月13日に発行済株式の1.04%に相当する13000株を市場外で売却し、持ち株比率は3.40%(大量保有報告書の提出義務がない5%未満)に下がりました。御社は前日の5月12日に北京誠信能環が集合住宅向けの電気供給工事を受注したとのIRを出しており、宮永取締役はその直後に自社株を売却しています。市場外とはいえ、上場企業のCFOがこのタイミングで自社株を大量売却するのはインサイダー取引や株価操作と疑われて当然です。3月22日と同様、なぜIR発表のタイミングで自社株を売却したのですか。売却先は誰ですか。

3)御社は9月14日付で株主に送付した「第16回定時株主総会招集ご通知」および9月15日付で関東財務局に提出した第16期有価証券報告書の中で、イ)9月29日に開催される株主総会で宮永取締役が再任されないこと、ロ)取締役会の承認の下で御社が宮永取締役に3億7000万円を融資し、3月31日までに元本と利息を回収したこと、などを公表しました。そこでお聞きしますが、

3-1)宮永氏が取締役に再任されない理由をご説明ください。宮永氏は株主総会後にセラーテムを退社するのですか。あるいは社員、顧問などの肩書きで残留するのでしょうか。

3-2)宮永氏は中国系ファンドへの第三者割当増資や北京誠信能環の買収を取り仕切った中心人物です。御社が宮永氏抜きで中国事業をコントロールするのは困難と考えられますが、今後の経営のガバナンスをどうするお考えなのでしょうか。

3-3)宮永氏はいつ、どのような理由で3億7000万円の借り入れを申し込んだのですか。また、取締役会はなぜ宮永氏個人への融資を承認したのですか。実際の融資資金は御社の関連会社のどこから工面したのでしょうか。

3-4)宮永氏は何らかの理由より被った個人的損失を御社の融資で一時的に穴埋めし、持ち株の売却によって精算したのではありませんか。また、取締役会は宮永氏が自社株を大量に売却せざるを得ないことを知っていながら、融資を承認したのではありませんか。

3-5)宮永氏の現在の持ち株比率は何%ですか。上記事実が公表される直前の9月12日~14日にかけて、セラーテムの株価は20%近く急落しました。事前に情報が漏れていたのではありませんか。

以上、ご回答をお待ちしております。


2011年9月26日
月刊FACTA発行人
阿部 重夫

FACTAleaks――オリンパスへの第二公開質問状

デジタルカメラや内視鏡などのメーカー、オリンパス(東証1部)について、FACTA8月号(7月20日発売)でその巨額損失の奇怪な裏側を調査報道しました。この発行人ブログでも7月に質問状を公開しています。

しかしながらオリンパスは音なし。あれだけ書かれながら、事実を否定も肯定もせず、ひたすら沈黙を守っています。株価は8月に入って2700円台から2200円前後に下げており、それは円高だけが理由ではないのですが、シカト作戦でしのごうとしているようです。

菊川会長は何事もなかったように日経の紙面にコメントを載せ、テニスの全米オープンでも会場の壁面には「オリンパス」の広告が見えます。日本のテレビでも宮崎あおいのCM「ココロとカラダ、にんげんのぜんぶ」が始終流れています。

それなら「暗部のぜんぶ」を暴いてあげましょうか。オリンパスには日経元役員も入っているので、まさか日経は隠れ蓑を進呈していらっしゃるのではないでしょうね。おいしい広告主でもあるし……。

よろしい。FACTAも第二弾をご用意しましょう。オリンパスの異常な買収とその損失は、当局も虎視眈々ですし、監査法人や格付け会社など業界関係者の要望もありますから。

もちろん、次号(9月20日発売、10月号)で記事を掲載しますが、その予告編として同社に送った質問状をまた公開しましょう。その回答は添付の画像のように、またも木で鼻をくくったよう。こういうのを火に油、というのです。

では、最新号で何が書かれるか、をお楽しみに。



オリンパス株式会社
広報・IR室

Jブリッジおよび英ジャイラス買収についてのご質問

ファクタ出版株式会社
月刊FACTA発行人阿部重夫

拝啓

初秋の候、時下ますますご清祥の段、お慶び申し上げます。弊誌8月号掲載のオリンパスの記事では取材にご協力いただき、厚く御礼申し上げます。さて、弊誌はその後も継続取材を進め、新たにいくつかお尋ねしたい点が出てまいりました。

(1)編集部の取材によると、8月号で採り上げた貴社傘下のアルティス等を子会社化するにあたり、貴社はケイマン籍のNeo Strategic Venture, L.P.とDynamic Dragons Ⅱ SPCから株式を買い取っておられます。このうちDynamic Dragons Ⅱ SPCはアジア・アライアンス・ホールディングス(旧商号ジェイ・ブリッジ、東証2部)が立ち上げたものですが、同社について弊誌昨年7月号は「『最後のハイエナ』Jブリッジの往生際」と題した記事を掲載し、投資家を火ダルマにしたまま、シンガポールに逃れた枡澤徹前社長の無責任なファンドビジネスを批判、当局が動静を追っていることを報じています。まずおうかがいしたいのはこの件です。

質問ⅰジェイ・ブリッジの詐欺同然の投資募集に投資家が損害賠償請求訴訟を起こしており、株式市場でも同社と反社会的勢力のつながりを指摘する声が絶えませんが、社会的に優良企業とのイメージが強い貴社が、なぜこの悪名の高い企業に多額の資金を供給することになったのでしょうか。

質問ⅱNeo Strategic Venture, L.P.についてもDynamic Dragons Ⅱ SPCと同様のファンドではないかと考えられますが、貴社はどのように認識しておられますか。

(2)貴社が英ジャイラスを買収した翌期(2009年3月期)に計上した特別損失について、有価証券報告書には「前期損益修正損15,516百万円は、前連結会計年度に資本参加したGyrus Group Limited等の投資について、手数料の支出額が最終的に決定し取得原価の配分が完了したため、暫定的な会計処理を確定させ、費用処理すべき金額をすでに計上したのれんの修正額として連結損益計算書に計上したものです」と説明書きがあります。この件についてもお尋ねいたします。

質問ⅲ編集部の取材では、この会計処理を巡って「過大な手数料をのれん代に計上することは認められないとするあずさ監査法人と意見の対立が生じた」「最終的にはオリンパスがあずさの意見を容れて特別損失を計上したが、この意見対立のために翌期からは新日本監査法人に変更した」などと指摘する声が聞かれました。監査法人との意見対立とそれを理由とした交代は事実でしょうか。新日本監査法人にその経緯を説明しましたか。

質問ⅳジャイラス買収時にFA(ファイナンシャル・アドバイザー)に支払った手数料は、上記の15,516百万円を含めて総額250億円余りになると聞きます。これは事実でしょうか。

質問ⅴこの手数料額が事実なら、通常に比べて割高というよりは法外ではないかと思いますが、どのような事情によるものでしょうか。

ご多忙中とは存じますが、弊社の締切の都合もあり9月9日(金)までにご回答をいただければ幸甚です。ご回答はファクスまたはメール、電話、あるいは直接インタビューに応じていただく形でも構いません。よろしくご一考のほどお願い申し上げます。敬具

9月5日(月)



オリンパスから届いた回答書。


円高の正体 浜田宏一☓高橋洋一☓阿部重夫

米エール大学教授の浜田宏一氏と元財務官僚で嘉悦大学教授の高橋洋一氏をゲストに、円高の正体について徹底討論した動画をYoutubeにアップしましたので、ぜひご覧ください。まずは(1)〜(3)まで。続きは順次アップしていきます。






FACTAleaks――オリンパスへの公開質問状と宣戦布告

デジタルカメラや医療用装置のメーカー、オリンパス(東証一部)に対し、FACTAは株主総会前に下記のような質問状を送りました。

しかしながら同社広報・IR室の返答は、菊川剛会長へのインタビューを「時間の都合がとれない」と断り、各項目については「適切な開示を行っていると考えているので、お答えすることはない」とゼロ回答にひとしいものでした。

なるほど、FACTAをナメていらっしゃいますね。これだけ懇切に尋ねたのだから、シッポはつかんでいますよ。ほっかむりさせないために、質問状をここで公開します。

念のために申し上げましょう。日本経済新聞系のテレビ愛知社長を退任した来間紘氏が、オリンパス取締役に就任されました。来間氏は小生の尊敬する先輩です。菊川会長以下の経営陣の方々は、FACTAおよび小生がどういうジャーナリズムかをご存じでなければ、来間取締役にお尋ねください。

今月20日発売(オンライン版の掲載は18日)の最新号で、オリンパスの暗部を明るみにさらすことをお楽しみに。ぜひとも、震えながらお待ちください。



オリンパス株式会社
広報・IR室

オリンパスM&Aについての質問状

ファクタ出版株式会社
月刊誌FACTA発行人阿部重夫

拝啓

梅雨の候、貴社いよいよご清祥のこととお慶び申し上げます。弊誌は調査報道を中心とした月刊総合情報誌で、貴社のM&Aについて取材をお願い致したく、質問状を差し上げる次第です。

貴社は6月17日に業績見通しを発表されましたが、株式市場では評価が二分しており、高いレーティングをつけるアナリストは業績見通しを評価し、低いレーティングを付けるアナリストは貸借対照表の中身を気にしています。

貸借対照表を気にする向きは、貴社には2008年頃から十分な情報開示がなされていないM&Aがあると指摘しており、弊誌編集部が取材を進めたところ、アルティス、NEWS CHEF、ヒューマラボという3社の社名が浮上、単独ベースの貸借対照表などから判断して08年3月期に最大で800億円を支出して3社を買収したのではないかとの推論に至りました。

そこで、御社に直接取材をお願いしようと考えた次第です。主な質問項目は以下の通りです。

(1)事実関係の有無

これら3社を買収した事実の有無、それぞれの買収金額(あるいは合計買収金額)は上記のように800億円ほどと考えてよいかどうかについて伺いたい。

(2)買収金額の不合理

取材では、アルティス、NEWS CHEF、ヒューマラボはいずれも05年に設立されたか、休眠会社を業態転換させて営業を再開させた会社であることが判明しています。信用調査会社の調べでは、08年時点での売上規模はいずれも2億円ほどであり、業績面でも履歴面でも背景が希薄な会社の買収に数百億円もかけるのは常識的ではありません。場合によっては、3社の株式を買い取ったグローバル・カンパニー社に対する利益供与も疑われますが、御社の見解はいかがでしょうか。

(3)減損処理

決算公告によると、アルティス、NEWS CHEF、ヒューマラボの3社は、すでに債務超過に転落し、アナリストなどによれば、貴社がそれらの株式については買収したわずか一年後には一括して減損処理を済ませたとみられる、と聞きます。

a、アナリストたちの言うように、減損処理は済ませたのでしょうか。

b、(済ませたのであれば)09年3月期に計上した特別損失のうち、これら3社に関連した損失はそれぞれいくらでしょうか。

また3社について、その後に追加計上した特別損失の有無について。

c、上記のような一連の動きを考えると、子会社化の決定には重大な判断ミスがあったと考えられますが、貴社ではどのような御認識でしょうか。取締役の善管注意義務違反はなかったとお考えですか。監査役は業務監査や会計監査を十分に果たし、違反はないとお考えでしょうか。違反がないとお考えなら、その理由は?また株主への説明責任についても併せて伺いたく思います。

(4)ジャイラスについて

貴社が買収する以前にジャイラスが公表していた財務数値によると、06年12月時点でジャイラスの総資産(4億6000万ポンド)の半分以上が「のれん代・営業権」(2億5300万ポンド)で占められており、製造業としても医療機器メーカーとしても、その貸借対照表は極めてアンバランスであると思われます。

a、のれん代・営業権が過大と思われるジャイラスに対して、さらに貴社がのれん代を上乗せして買収した形になっていますが、この買収のファイナンシャルアドバイザーはどの会社で、貴社にどのような説明をしたのでしょうか。またその説明に対して、貴社ではどのようにお考えでしたでしょうか。

b、ジャイラスの買収にあたって、株価上40%ものプレミアムを上乗せし、さらに一千億円の優先株まで追加購入したことについて、オリンパス本体の監査法人及び、海外子会社の監査法人はのれん代等について、どのような会計処理を求めていますか?また優先株の購入先がどこかについても伺えれば幸いです。

c、ジャイラスの「のれん代」は、オリンパスの連結貸借対照表上、どの科目に計上されていますか?

(5)純資産について

貴社の連結貸借対照表で「純資産の部」をみると、「その他包括利益の累計額」が987億円のマイナス、外貨換算調整勘定にいたっては1008億円のマイナスとなっています。売上高や資産規模が同程度の同業他社と比べてもマイナス幅が極端に大きく、アナリストからは「何らかの損失が未処理のまま隠れているのではないか」と疑う声もあります。この点についても説明をお願い致します。

以上の点について、ご回答をお願いするとともに、菊川剛会長への面会も併せてお願いする次第です。ご多忙中とは存じますが、弊誌は次号締切の都合上、1週間後までにご返答、もしくはインタビュー等のご都合を伺えれば幸いと存じます。よろしくご一考のほどお願い申し上げます。

敬具

6月24日

ののちゃんとファド6――槇さんのポスター

7月10日付の朝日新聞朝刊の連載漫画「ののちゃん」4967回に、またまたファド歌手、吉川ロカさんが登場しましたが、ちょっとうれしい異変がありました。例によって売れないロカが、連絡フェリーで懸命に歌っているのですが、2コマ目の壁にファドのポスターが張ってあって、そこには別の歌手の絵と名前があります。「槇」と読めます。

このブログに1月4日付で載せた「ののちゃんとファド5――Gaivota(かもめ)」と、そこに埋め込んだユーチューブの画像をご覧ください。私が応援する実在のファド歌手、槇さん(プロフィルは彼女のウェブをご参照ください)です。「ののちゃん」の作者、いしいひさいちさんが漫画に載せてくれました。

実は槇さん、小生の知り合いの朝日新聞の方を通じて、いしいさんにファンレターと自分のLIVEのポスターを送っています。まだ日本ではマイナーなファドですが、熱烈なファンらしいいしいさんがしばしば「ののちゃん」にファドの歌詞を載せ、ファドファンにはその判じ物を解くのが楽しみになっています。そのお礼をかねたレターでした。

いしいさん、それをずっと気にかけていただき、返信の代わりに漫画のなかに「ポスター」として槇さんを登場させたようです。朝日のいしいさん担当者の方から、掲載前日に丁寧なお知らせをいただきました。身に余る光栄、本人はさっそく、ポルトガルギターの奏者、マリオネットの湯浅隆さんに報告していました。いしいさんに心よりお礼申しあげます。

虚実皮膜の間、とはこれを言うのでしょうか。絵本を見ていて、いつのまにか絵のなかに飛び込んでしまった、といった感じですね。自分で「ののちゃん」の世界を歩きまわって、キクチ食堂をひょいとのぞき、やけにファドに詳しいあのおばあさんやバイトのロカに会って、語りあってみたくなります。

ところで1コマ目のポルトガル語の歌詞。知らない人には判じ物でしょうが、ここで謎解きをしてみましょう。これはモザンビーク生まれのファド歌手、マリーザが歌う「Minh' Alma」(わが魂)の最初の部分ですね。

Alma ai! Minh' alma
Diz-me quem eu sou

魂よ、ああ、わが魂よ
わたしが何か語っておくれ

マリーザの情熱のこもった朗々たる歌声は、以下のユーチューブでごらんください。



さすが、いしいさん、いい歌を聴きわける耳をおもちのようです。マリーザの歌は、槇さんもLoucura(もの狂い)など3曲ほど、日本語に訳してレパートリーに入れようとしています。

この「わが魂」もいずれは訳さなければなりませんね。でも、歌うのは難しそう。マリーザはうますぎる!

オリックスをめぐる記事について

弊誌2009年1月、3月、6月号に掲載したオリックスをめぐる記事について、同社と争っていた名誉棄損訴訟で東京地裁民事7部の提示した和解案に応じることにしました。遺憾ながら弊社側証人が出頭せず、これ以上争っても時間を浪費するだけと判断したからです。2009年時点での事実関係では譲っても、その後の経営状況を追跡し、報道するフリーハンドを優先しました。資本主義と司法の歪みをただす弊社の調査報道の使命は、この和解によってもいささかも揺るぎません。

The King’s Speechの末尾と同じ言葉を、我々も宣します。We shall prevail.


復興財源と原発賠償のまやかし

連休で告知が遅くなりましたが、元財務官僚で経済学者の高橋洋一氏をゲストに、東日本大震災の復興財源と原発賠償のまやかしについて討論した動画をYoutubeにアップしてあります。日経新聞出­身のジャーナリスト磯山友幸氏にも特別出演して頂き、鼎談形式としました。政府と財務省、日銀が一体となって主導する増税論がいかに愚論であるかをロジカルに解説します。興味のある方はぜひご覧ください。




3月25日の衆財政金融委員会での一幕

今月号に掲載した「国債『日銀引き受け』強行なら日銀執行部は全員辞任」が反響を呼んでいるとスタッフに言われた。

先月号の「震災復興国債は『日銀直接引き受け』で」もフリー公開したところ、多くの方に読んでいただけたようだ。実は、3月25日の衆財政金融委員会で山本幸三議員が、日銀直接引受が毎年行われていると野田財務相と白川日銀総裁に質問していて、その時の答弁の一部がツイッターのまとめサイトに集約されているが、やや読みづらい部分があるので、このブログにほぼ全文を引用させていただことにした。ぜひ記事と併せてご覧いただきたい。



山本議員「自由民主党の山本幸三でございます。私も、ちょうど二週間前、2月11日(3月11日の間違いだろう)の夕方からの審議に備えまして一生懸命勉強しておったわけでありますが、そのときに、突然大変な地震が発生いたしました。

東北関東大震災という形になりまして、多くの方々が犠牲になり、そして被災されました。亡くなられた方々には心から御冥福をお祈りしたいと思っていますし、被災者の方々には、お見舞い申し上げたいと思います。」

引き続き山本議員「そのときはですね、私は日銀総裁を呼んでおりませんでね、税制の話をしっかりしたいと思った。いつも日銀総裁ばっかりやってるわけじゃないっていうのを(場内笑)、ちょっと、示したかったんでありますけども、えー、事態が急変いたしましてね、今日またおいで頂きました(場内笑」

山「それはですね、まあ要するに、税制なり特会公債法というのは、歳入のことですね。で、歳出をするためには歳入がいるわけですが、それはまあ、税でやるか国債でやるかしかない。そのときに、通例だと特例公債ということで市中発行の、ことをやっていたわけでありますが、この大震災が起こると、私は、「これはダメだ」と。これじゃ足りない。これはもう、日銀直接引き受けやってもらうしかないというのが私の考えでありまして、この点は緊急アピールで皆さん方のお手元にも配布させていただいておりますが、これはですね、何故かというと、これは迅速にやらなきゃいかん。それから、規模を十分に確保できるものでないといけない。そして、経済に悪影響を及ぼすものであってはならない。この観点からすると、私はどう考えたって、まあ…まさに、20兆円規模…が私は適当だと思っておりますが、まあその、規模は異論があるかもしれませんが、日銀の、国債直接引き受けでやるしかない。…と、確信をしております。で、ところが、この日銀の直接引き受けっていう問題については、まあいろんな議論がありましてね、まあ与謝野さんは「法的にできない」なんてバカなこと言ってる。で日銀総裁はこのまえのこの委員会の審議では、「貨幣の信認が失われる」。…で、五十嵐財務副大臣は「インフレになる」。というような話をされました。まあ私から言わせると、俗論・妄説の類でありましてね(場内小笑)、それに決着をつけるために今日私は質問に立つ(場内笑)のであります。でー、まずね、一番わかりやすいのは実例を見るのが一番いいんですね。財務大臣ですね、日銀の直接引き受けというのは異常なもの…のように思ってますが、実は毎年相当やっているんですよ。この事実をご存知ですか。」そして野田財務大臣の答弁。

野田財務大臣「あのー、日銀が長期国債の買い入れをやっているということは事実でございます」

山「いやいや、直接引き受け」

野「直接?…あのー、ま、要は、日銀のやってることは、その、いわゆる金融政策の一環として」

山「知ってますか。知ってますか知ってませんか、どっちか」

野「いや直接は知りません」

山「五十嵐副大臣どうですか」五十嵐副大臣「あのー、借換債、乗り換えについてはですね、直接引き受けをしております。これは総則に基づいてやっております」山「あー、結構です。よく勉強しておられますね。日銀総裁はどうですか知ってますか」ここで白川日銀総裁。

…野田が「知りません」と言ってのけたのにはちょいと驚かないこともない。知っててすっとぼけたのか、それともマジで知らなかったのか…せめて副大臣あたりにでも「直接引き受けッスか?直接引き受けって何スか??借換債とか、ぐぐったら出てきまッスか???」とか聞いておけばよかったのに。

…まあいいか…で、白川日銀総裁のご登場。「えー、日本銀行は、市場から国債を買い入れ、いわゆる「オペ」を行っております。で、買い入れました長期国債が満期を迎えたときには、あー、そのー、金額につきまして、現在は、短期国債で乗り換えております。この金額は、財政法五条の但し書き、に基づく金額の中で、既に買い入れました国債の、満期償還後について短期国債の乗換えを行っていると、いう事実は、qwrkl:*@^-(語尾不明瞭。あるいは日銀語でゴニョゴニョ)」

山「その通りでありましてね、毎年やってるんですよ日銀の直接引き受けというのは。予算総則、特別会計の予算総則ですか、第五条にこう書いてある。『特別会計予算総則第五条 国債整理基金特別会計において、財政法第五条但書の規定により、政府が平成23年度において発行する公債を、日本銀行に引き受けさせることができる金額は、同行の保有する公債の借り換えのために必要な金額とする』。」心なしかドヤ顔気味に見えなくもないが、これは気合いの表れと見るべきであろう。「『借り換えのためには』、国債引受を毎年やってるんですよ。日銀総裁、これで通貨の信認失われましたか?」

白「この国債の、乗り換え引き受けにつきましては、これは日本銀行が市場に対して資金を供給するという、金融政策の目的上、行いました国債、その国債の乗り換えでございます。したがって、この乗り換え引き受けによって日本銀行による国債の買い入れ金額、保有金額が増えるというものではございません。で、かつ、乗り換えにあたりましては、そのつど乗換えが金融政策運営上、支障が無いかどうかそれを確認したうえで乗換えを行うという判断を行っております。いずれにせよ日本銀行が大元の買い入れ金額を決めた上での乗り換えの話でございます」

…「通貨の信認は失われましたか?」という質問の答えにまったくなっていないあたり、いつも通りの白川総裁である。当然、そこを指摘される。

山「あの委員長、私の質問にちゃんと答えるように言ってください。私が聞いてるのは、これは借り換えだろうと、本来なら金返して、それでまた借り換えするということの、それを、適宜借り換えるということをやってるんだけど、国債直接引き受けに変わりありませんよ経済学的には。だからこれは、通貨の信認を失ったことになったのか。イエスかノーか。それ以外のことは答えなくてよろしい。」白「えー、日本銀行を含めどの中央銀行も、国債の買い入れが金融政策上の目的を離れて、財政のファイナンスのために行われていると、いうふうな、認識が広まりますと、これは通貨への信認を損なう、というふうになっています。」…やはりまったく 答えになっていない。

山「委員長、しっかり私の質問に答えるように言ってくださいよ。通貨の信認を失ったんですか!?どうですか!?どっちなんだ。イエスかノーか」

委員長「通貨の信認を失ったか否か(場内失笑気味)、について、日本銀行総裁」

白「あの、山本先生の、問いかけは非常に難しい、問いかけでございまして(山「難しくない!」)、イエスかノーかで答える性格のものではなかなかないと思います。日本銀行が、金融政策の目的を離れて、自動的に、財政ファイナンスのために国債を引き受けるという体制になりますと、これは通貨の信認を毀損する恐れがあるというふうに思います。」…さらに芯を外した答弁の白川総裁。毎度のことながら何だこれ。

山「私は将来の話じゃない仮定の話をしてるんじゃない。毎年、日銀は直接国債引受をやってんだ、借換債という形だけど。これで通貨の信認が失われましたか!?どうかって聞いてるんですよ。一番簡単な質問じゃないですか。委員長、ちゃんと、それしか答えないようにしてくださいよ。つまんない他の事言わなくても、他の事はこれからやるから。」

委員長「毎年、買い入れをしていることについて、今、山本議員が質問をいたしております。その点について、もう一度白川総裁のほうから答弁を求めます。白川総裁。」

白「日本銀行は、毎回乗り換え引き受けのつど、金融政策に支障が無いか確認し、支障が無いことを確認したうえで、乗換えを行っております。その結果として通貨の信認を失うということのないように努力しています。」…ここで誰かの拍手が。何故だ。

山「つまり、日銀は、毎年国債の直接引き受けをこれまでやってきた、だいたい11兆円ぐらいだ。巨額ですよ。借り換えだけど。しかしそれは直接引き受けと変わりない。財政法第五条但書にちゃんと書いてあるんだから。ね。そういうことなんですよ直接引き受けっていうのは。そして今、日銀総裁は、今までやってきたことで通貨の信認を失うということはない、言明されました。結構です。で、五十嵐副大臣、インフレになりましたか?」

五「それはあの、市中消化原則をどう見るかという話なんだろうと思います。市中消化原則に支障が無いから、乗り換えについては大丈夫だということになっているわけでありまして、これによってインフレがおきるという性質のものではないということです。」

山「最初のところはよくわからないけれども、インフレでなかったってことは確認できたということで。そこで、次に日銀総裁にいきますがね、『通貨の信認が失われる』とはどういうことですか?」

白「通貨の信認ということは、これは釈迦に説法でございますけども、これは、あくまでも、ペーパー、記録でございます。で、このお金をなぜ人々が受け取るかといいますと、これは将来の価値が安定していると、いうふうにみんなが信頼を置いているからこそみんなが貨幣を使う、通貨を使うわけでございます。で、この、通貨の信認が失われるという事態は、将来中央銀行の金融政策が物価安定という目的からずれて運営されていくというふうに、人々が思い始めますと、その結果として将来の通貨価値が不安定になってくる。その結果、通貨が、ですね、普通に使われるという事態からだんだんに離れてまいります。そうした状態になると、いうことが、『通貨の信認が失われる』状態だというふうに、考えてます。」

山「まあだいたい結構だと思います。要するに、『通貨の信認が失われる』というのは、ハイパーインフレになること、そのときしか起こらないんですね。つまり、インフレ率が高くなりすぎて、通貨を使う価値があるかないか、ということですよ。だからつまり、『通貨の信認が失われる』っていうことは、まあハイパーインフレをどうやって維持するか…次第にもよるんだけども、いわゆるハイパーインフレと呼ばれた現象が、歴史的に、過去いくつかの国でありました。そういうときには、『通貨の信認が失われる』、ということを言うだろうと私は思いますよ。それでいいですか。」白「通貨の信認が失われるケースには二つあると思います。一つは激しいインフレが起こる、ということがございます。もう一つは、通貨それ自体のですね、支払能力についての疑念であります。」

白「いま日本銀行券の金額よりか遥かに多くの通貨は、じつは銀行預金という形で、これは提供されております。で、一国の銀行システムの安全性というのはこれは最終的には、これは政府の信用度、というものに依存しております。で、リーマンショックを始めとしていろんな金融システムの問題が、問題というのは、これはギリシャのときにもそうですけど、最終的に、金融機関の負っている債務である預金という通貨に対して、人々が信認を失う、でこれは最終的には政府の、財政支払能力というものに対する疑念が出てきますと、その面からも通貨の信認は失われます。いずれにせよ、通貨の信認が失われるというケースは、インフレと、それから金融機関の支払能力、あるいは最終的に政府の支払能力というものに対して疑念が生じてまいりますと、どこかの段階で人々の予想・信認というのが非連続的に変化してきます。で、そうしたことを、過去われわれは内外のさまざまな経験によって、そうした事態をわれわれは直面してきております。したがって、人類の英知として、あらかじめ、中央銀行が国債を引き受けるということは、これはしないということを、これは導入しているわけでございます。で、世界の多くの国、これは先進国はもとよりですけども、新興国も、たびたびの金融危機の経験を経て、そうした中央銀行の引き受けを未然に、そうしたことはやらないと、いうことを導入をし、そうした運営を行っているというふうに思っております。」

山「最初の激しいインフレの時には、ハイパーインフレのときに通貨の信認を失うというのは、わかった。二番目の、これはつまり、政府が信用できなくなったっていうtきに、通貨の信認が、っていうのは、それはまあ、今の政権がとてもじゃないけど信用できないって言ってるのと同じことですが、日本銀行はそれを心配しているわけですね?…そこでだ、今、20兆円ぐらいの日銀国債引受をやって、そんな事態が起こりますか?私は起こらないと思う。だって、20兆円以上のデフレギャップがあるんでしょ?そこからこの震災で、民間シンクタンクは、GDPはもう0.5(%)くらいは吹っ飛ぶと。30兆円吹っ飛ぶ。もっと吹っ飛ぶんですよ。そういう状況で、日銀国債引受をやって金を出して、ハイパーインフレになるわけがないじゃない。これを増税でやれば、いっそう消費を減らして、経済を収縮して、税収なんか上がりませんよ。それから、これを市中で国債発行やれば、いよいよ金利上昇プレッシャーがかかって円高になりますよ。効かない。それじゃなくたって財政支出拡大だけで円高になるんだから。それを防いで、経済にいい形で迅速に思い切ってやるためには、日銀が国債引き受けて、金を出して、金利が上昇しないように円高にならないようにしながら、やるしかないんですよ。で、それが、ほんとにインフレのときに、ハイパーインフレになりそうだったら私はこんなことは言いません。しかし、ね、デフレで、デフレギャップがこれだけあって、しかもGDPがこれだけ落ち込みそうだっていう話をしているときにこの政策を使わないでどうするんですか。あなたは、20兆円国債日銀引受やって、ハイパーインフレになると思ってるんですか。それともよっぽどこの政権に能力が無いと判断しているんですか。どっちですか。」

白「えー、現在、日本の国債発行額は大変大きな金額に上っております。年間100兆円を上回る金額の国債が発行されています。それだけの大量の国債が現実に市場において安定金利で安定的に調達されています。こういうふうに、国債が安定的に調達できるという状況をしっかり維持するということは、今後の国債の厳格な発行を考えるうえで非常に大事なことでございます。この点で大事な事は、人々が『将来、通貨の価値がどういうふうになっていくんだろうか』ということについて疑念が生じないことであります。現在、世界の多くの国では、これは、国債の引き受けは認められておりません。そういう意味で、中央銀行が、国債の引き受けを行わないというのは、これは世界で確立された考え方になっております。そういうもとで、日本が、国債の引き受けを、中央銀行による引き受けを行うようになりますと、今直ちに状況が変化するかどうかそれはわかりませんけれども、しかし、日本の基本的な、通貨、経済に関するこの『運営の仕方が変わったんだ』と、いうふうに、国民あるいは内外の投資家が、そういうふうに認識を変化させると、いうふうになってまいります。何処かの段階で、非連続的変化が生じてまいります。勿論、その非連続的変化がいつ起こるのか、正確に特定することはできません。しかし、そうしたことが、過去多く起きてきたと、いうことで、引き受けを禁止すると、いう規定になっているというふうに思います。そういう意味で、私が、中央銀行による国債の引き受けについて、慎重な考え方を申し上げたわけであります。」

山「あのねえ、最初に示したように日銀の直接国債引受というのはやってんですよ。だからできないなんて、どの口で言えんだ。さっき示したじゃない。予算総則で。だからそんなことは言うな。それから、まあ心配しているというのはわかりますが、説得力ないね今のこと、答弁でね、『いつかは非連続的になるかもしれない』。その前に安定的に穏やかなインフレ率へ持ってくのが仕事ですよ貴方の。それもしないでデフレにいて、(このへんはジェスチャー)…穏やかなインフレ率に持っていくっていうのは、最大の仕事ですよ。それが、ね、財政ファイナンスだろうが、そんなのは関係ない国民にとっては。国民にとって一番大事なのは物価が穏やかなところで安定する(ジェスチャー)…それをやれっ。これを…ね、まあ日銀だけにやれって言ったって、まそんな度胸ないでしょ。これは政治決断しかない。財務大臣、いろんなことから考えて、先ほどもちょっと申し上げたけれども、これ以上特例公債や他の法案を出してやるんですか?この日銀国債引受だったら補正予算の予算総則に一行書きゃあ、もうすぐできちゃうんだから。その迅速性・規模、で20兆円やったってインフレになんかならない。むしろ、2~3%の、インフレ率になるのも足りないぐらい。それでほんとにインフレが心配だったらインフレ目標政策をきちっと決めりゃいいじゃない。そのためにあるんだインフレ目標政策っていうのは。そういうことを含めてやれば、これしかないと私は思うけれども、財務大臣、御見解を伺いたい。」

野田「あのー、先ほど来でている日銀の乗り換えはですね、私は基本的にはこれは財政規律からいえば中立的だと、いうふうに思います。だから、今回のご提起の話とは少し趣が違うんではないかと思います。そのうえで、まあ『これは政治決断だ』というお話でございましたけれども、私はやっぱり財政法第五条、これは基本的には過去の歴史を踏まえて、大変重たい規定だと、いうふうに考えております。(山本)委員のご指摘のような、こういう危機の状況だし、いろんなそういう懸念は無いという、一つの論はありますけども、ただ、様々な識者(記者?)からは別の懸念も示されていると。そういうことを総合的に勘案しながら判断しなければいけないというふうに思います。」

山「あのねえ、そのー、昭和恐慌のときの高橋是清の歴史をよく勉強してくださいよ。高橋是清が日銀引受を発表して、彼が殺されるまでの間は日本の経済パフォーマンスは最高だったんだよ。物価は2%で安定し、実質成長率は7.2%。金利はもちろん長期金利は、下がった。株はどんどん上がった。まったく、インフレも起こらないし、成長は安定したんですよ。そして、一気に経済は回復した。これを今やるのが、野田財務大臣、貴方の力量に懸かってるんですよ。平成の高橋是清になってくださいよ。歴史に残る。今やらなかったら、いつやるんだ!こんな、大災害のときにやらなかったらいつやるんですか。まあこれは、いずれ…ちょっと私、税制の話をちょっとしたいんでね、今日はここまでにしときますが、はっきり示したように日銀の直接引き受けってのは毎年やってるんだってことを、よく知っといてくださいよ?何もおかしな話じゃないんだ。そして、こういうときにはむしろ、やらなければ、他のやつの、歳入政策をとったら弊害が起こる。インフレが心配だったらインフレ目標政策をきちっと、決めてやる。ね、デフレ議連の松野(?)さん、頑張ってくださいよ(場内小笑)。それが、今、やるべきことですよ。これは与野党超えて、是非、一緒に私はやってもらいたいと、やるべきだと思います。まあこの話は、いずれ、また、何度もやりますが、せっかくですから税制の話もちょっといきます。もう日銀総裁は結構。で、税制のね、今回の、税制法案で、私が気になるのは…ああ日銀総裁、どうも。」…これ以降は税制について(たぶん。確認してない)。

※一部、改行および句読点を調整しています。



佐藤栄佐久・前福島県知事が語る「日本の原発政策」

昨日(18日)、日本外国特派員協会で行われた佐藤栄佐久・前福島県知事の会見をYoutubeにアップしました。最新号でも、「原発への危惧が的中天仰ぐ『冤罪』前知事」と題した佐藤氏のインタビューを掲載してますので併せてご覧ください。今後、少しずつですが動画も活用していくつもりですので、お楽しみに。