EDITOR BLOG
モブキャストへの公開質問状
交流サイト(SNS)のソーシャルゲームで、「コンプガチャ」の射幸性が社会的に騒がれているなかで、独立系プラットフォームの「モブキャスト」(3664)が6月26日に東証マザーズに上場される。
14日に公開価格が決まり、仮条件(640~800円)(単位100株)上限の800円となり、6月18日から21日までの申し込み期間である。
本誌はモブキャスト上場に疑義を呈する。その理由は最新号「『ハイエナ』同伴のモブキャスト上場」をお読みください。上場承認を与えた東証、主幹事証券の三菱UFJモルガン・スタンレー証券、マーケットメーカーとして参加する大和、SBI、岩井コスモ、丸三、いちよし、岡三の証券各社の非常識を批判するため、本誌がモブキャストと監査法人のA&Aパートナーズに送った質問状を公開する。
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モブキャスト広報担当石橋さま
取材のお願い
拝啓時下ますますご清祥のことと存じ上げます。昨日、電話でお願いしました「御社の上場に関する幾つかの疑問」につきまして、「依頼書」を作成しましたのでお送りします。
弊誌(ホームページがありますのでご参照ください)は会員制の経済月刊誌ですが、上場企業が業績不振に陥った際の資金調達につきまして、「反市場勢力」が食い込んでくる可能性が高く、それが犯罪を誘引することが多いために厳しく監視、批判的に報じてきました。そうした勢力の事を「資本のハイエナ」と表記、現在、証券取引等監視委員会が重点的に調査するきっかけを作ったと自負しております。
「反市場勢力」とは、暴力団との関連性をもって語られる「反社会勢力」ではなく、「自らの利益の為に、上場企業や株主、そして証券市場を汚す勢力」と定義づけられるもので、「反社会的勢力」を取り込む幅広いものです。
「反市場勢力」であることが金融商品取引法などに即時抵触するわけではないとはいえ、一度、「怪しい資金調達」に手を染めた企業(人物)は、何度も繰り返す“習性”があり、それが人脈を形成、反市場勢力間で複雑な人間模様を形成、やがて事件化していく過程を、弊誌は何度も目にし、報じてきました。
弊誌が御社の上場に疑問を持つのは、役員や大株主のなかに「反市場勢力」と呼んで差し支えないような方がいるからです。存在自体は合法でも、過去に繰り返した「怪しい資金調達」への便乗は、それを“習性”と捉え、報じるべきだと考えております。
その問題を中心に、上場準備の過程で御社が行った幾つかの“工作”についても耳にしており、それを含めて、以下にお答えいただけませんでしょうか。
①「反市場勢力」が生息する「ハコ」と呼ばれる上場企業、もしくはそれに付随する未上場企業は限られており、弊誌は、そうした企業に偶然ではなく積極的にかかわった企業(人物)を、「反市場勢力」として問題にしています。それに該当しているのは、以下の方々です。
・清田卓生取締役(日本エーエム、ビービーエー、ハート&ブレイブコンサルティング、ビットアイル)
・寺田航平ビットアイル代表(モバイルジャッジ、デジタルアドベンチャー)
・藤井雅俊元取締役(ジャパンデジタルコンテンツ信託)
・前川昌之監査役(ザウスコミュニケーションズ、パワーインベストメント)
・高森浩一監査役(ゲートウェイ、プリンシバルコーポレーション)
ひとりふたりではなく、これだけの役員・元役員・大株主が、直接間接にハコ企業に関わっているのは尋常ではありません。御社の企業体質が問われると思うのですが、どう認識していますか。
②会社設立時から上場を意識していた藪代表は、第一期から監査を入れていたと聞いております。にもかかわらず、A&Aパートナーズが監査証明を出したのが第7期と第8期だけであるのはなぜでしょうか。
③上に絡みまして、弊誌は、御社が第5期において取引先企業の「映人」などを通じた「循環取引」に踏み切り、数千万円の売り上げを立てたという情報を入手しております。また、第6期において映像部門から撤退、相当な赤字決算を余儀なくされ、第7期から業績が上向いたために、第7期と第8期の2期分の監査証明となったと聞いているのですが事実でしょうか。
質問は以上です。6月20日発売のFACTA7月号での掲載を予定しており、恐縮ですが、6月11日(月曜日)までにご回答をいただけませんでしょうか。よろしくご検討ください。敬具
続いて監査法人のA&Aパートナーズにも以下の質問状を送った。
監査法人A&Aパートナーズ
日高様
取材のお願い
拝啓、時下ますますご清祥のことと存じます。昨日、電話でお願いしました「御社の上場に関する幾つかの疑問」につきまして、「依頼書」を作成しましたのでお送りします。
電話で、「守秘義務があるのでお答えできない」と言われたことについては十分、承知しておりますので、以下の2点のみご回答いただけませんでしょうか。
①モブキャストの藪代表は、会社設立時から上場を意識しており、第1期から監査を入れていたと聞いております。にもかかわらず、貴法人は第7期と第8期の2期分のみ監査証明を出しています。これはなぜでしょうか。
②弊誌が収集した情報では、モブキャストは第5期で取引先を巻き込んだ「循環取引」を行い、第6期にそれは行わなかったものの、映像部門の撤退による相当な赤字決算を余儀なくされ、そうした「負の決算」であったために、貴法人は第5期と第6期の監査証明を出さなかったと聞いていますが、事実でしょうか。
掲載氏は6月20日発売のFACTA7月号を予定しており、恐縮ですが、6月11日(月)までにご回答いただけないでしょうか。よろしくご検討ください。
いずれも回答をいただいたが、その骨子は最新号記事に載せた。いずれ支障のない限り全文を公開しよう。弊誌はモブキャストが晴れて上場したら、公開企業としての義務をまっとうできるかどうか、徹底して追求していくつもりだ。
三菱東京UFJ銀行への公開質問状
FACTAオンライン版では6月18日18時(今月号は印刷工程の関係で18時の公開とさせていただきます)からオンライン会員に記事が公開されますので、それと同時に最新号に掲載されている「三菱東京UFJ銀行の『仮面』<上>」で、同行に送った質問状をこのブログで公開します。弊誌は1年前、オリンパスに粉飾の疑いのある内外の合併案件について質問状を送り、同社の不正を暴くことができました。今年の標的はメガバンクの雄、三菱東京UFJ銀行です。弊誌は2008年に民事再生法を申請し、元会長と元副会長が逮捕・起訴されたニイウスコー事件で、メーンバンクの三菱が果たした役割を再検証しました。その調査報道の第一弾が最新号に掲載されています。記事と併せて、質問状をお読みいただければ、問題の所在がどこにあり、その回答のどこが致命的かがお分かりになると思います。
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三菱東京UFJ銀行
広報部御中
ニイウスコー事件についての質問状
ファクタ出版株式会社
月刊FACTA発行人阿部重夫
拝啓
時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。弊誌は調査報道を中心とする総合誌で、昨年のオリンパス報道などでもご承知かと存じます。昨年9月、元会長と元副会長が横浜地裁で有罪判決を受けた元東証1部上場企業のニイウスコー事件について、弊誌編集部は再検証の取材を行っております。そこで当時のメーンバンクであった御行に対し、当時の状況を確認させていただこうと考え、下記のような質問を作成いたしました。お忙しいところ恐縮ですが、ご回答いただけたら幸いです。
1)2008年5月2日の債権者説明会では、平成19年(07年)6月期に債務超過になったことを受けてスポンサー選定に着手し、「国内外のスポンサー候補先数十社の中から選定されたロングリーチグループおよびフェニックス・キャピタルを引受先とする総額200億円の第三者割当増資を実行」(説明会資料5ページ)とありますが、同年6月期決算が確定する前の同年4月に、ニューホライズンキャピタルとシルバーレークパートナーズが御行との相談に基づいてニイウスコーへの投資を検討していたとの情報があります。これが事実なら、なぜ債権者説明会でその事実が伏せられたのでしょうか。
2)この説明会では、ニイウスコーの粉飾について「これまでの会計監査やロングリーチグループとフェニックス・キャピタルが出資前に行ったデューディリジェンスによっても発見されておらず、平成19年(07年)11月の増資完了後に旧経営陣および従業員からの告白によって初めて判明した」(説明会資料6ページ)とありますが、御行の企業審査部がそれ以前に知っていたとの情報があります。当時の企業審査部長、審査担当役員、頭取はニイウスコーの不祥事発覚を恐れ、事実に蓋をしたことはありませんか。
3)07年6月に別の監査法人が行ったデューディリジェンスでも循環取引や在庫の不透明など粉飾の可能性が指摘され、御行の指示によりその記載を削除・変更した事実はありますか。もしあったとしたら、債権者説明会での説明はもとより、10月に200億円の第三者割当増資に応じたロングリーチやフェニックス・キャピタル(発表は8月末)の投資家に対して、重大な背信行為があったことになりませんか。
4)債権者説明会資料によれば、破綻したニイウスコーの一般債権者は2%台の弁済率となり、ロングリーチやフェニックスを含む株主への弁済率はゼロでした。清算貸借対照表の長期、短期借入金を見ますと、帳簿価額と清算価額を比べた弁済率は85~100%ですから、これは04年、06年の2回の増資と07年の第三者割当に応じた投資家の資金を、銀行の債権回収に回したと見ることができます。ニイウスコーの粉飾を知りながら、株主を泣かせて銀行が債権保全を図ったとすれば、金融商品取引法違反の恐れがあると考えますが、御行のご見解をうかがいたい。
5)横浜地検によるニイウスコー捜査では、御行も事情説明を求められたと思いますが、御行幹部が早くからニイウスコーの粉飾を知っていた可能性についてどう回答されたのでしょうか。もし上記の可能性が弊誌の調査報道によって証明された場合、御行は責任問題をどう考えられますか。
質問はとりあえず以上です。この件については事実確認の質問状をニューホライズンにも送付しようとしましたが、守秘契約を理由に受け取りを拒絶されました。御行およびMUFGには株式公開企業として説明責任があると考えますので、ぜひご回答いただくようお願い申し上げます。恐縮ですが、弊誌の締め切りの都合もございますので、回答期限は今週金曜、6月8日までとさせていただきます。メール、FAX、郵送いずれでも構いません。もし面談がかなうのでしたら、当時の頭取であった畔柳信雄元会長を希望いたします。敬具
6月4日
これに対する回答は6月8日午後9時過ぎにファクスで弊社編集部に届きました。金曜夜まで残業していただいて恐縮ですが、回答はほとんど全面否定でした。
1)ご回答
・債権者説明会は債務者が開催し、同資料も債務者が作成したものであり、当行はお答えする立場にございません。
2)ご回答
・「それ以前に知っていた」事実はございません。また、「事実に蓋をした」事実もございません。
3)ご回答
・「当行の指示によりその記載を削除・変更した」事実はございません。
4)ご回答
・ご指摘のような事実はございません。
・なお、民事再生法手続きにおきましては、再生債権に対する弁済率は、所定の手続きに基づき、少額弁済を除き、債務者に係らず同一に扱われていると認識しております。
5)ご回答
・捜査に関することはコメントを控えさせていただきます。
記事に書いたように、この高飛車な全面否定に、弊誌はほくそ笑んだ。2)と3)は明らかに虚言である。記事はその大嘘を物証によって覆すことができたと思う。最新号の誌面を見れば、「事前に知っていた」動かぬ証拠が載っている。誰かの企業小説のタイトルではないが、三菱は「広報室沈黙す」の事態にいたったことだろう。オリンパスと同じである。FACTAをなめたらあかんぜよ。
公開質問状にもあるように、畔柳前会長のインタビューは実現していない。ぜひ再考をお願いする。またデューディリジェンス報告書改竄の前後の事情を知っているニューホライズン、KPMG FASなどの関係者も、守秘義務を理由にした取材拒否を再考し、真実を語ってほしいと思う。
雑誌は誌面の制約があって報告書の一部しか載せていないが、今後はこのブログなどあらゆるメディアを通じてニイウスコーの実態を銀行がいかに蓋をしたかを暴露していく予定である。
オンライン版公開は18日夕から
FACTAオンライン会員向け限定のサービスとして、本誌は毎月18日正午から最新号がこのサイトで読めるようになりますが、今号は都合により公開時間を遅らせ、本日(18日)午後6時30分からといたします。
“三流証取”の大証が、不名誉な記録を更新中
大阪証券取引所にとって、先週金曜日(6月15日)は踏んだり蹴ったりでした。この日は、本誌が疑惑を追及してきたジャスダック上場企業、セラーテムテクノロジーの四半期決算書の最終提出期限であると同時に、3月に東京地検特捜部に逮捕・起訴されたセラーテム社長の池田修と元取締役CFOの宮永浩明の初公判が東京地裁で開かれたのです。
本誌は次号の記事(ウェブサイトは6月18日18時公開、雑誌は20日発売)で、セラーテムの不正に見て見ぬふりをしてきた大証、監査法人、顧問弁護士、監査役、社外取締役など「共犯者」たちの醜悪な責任逃れを追及します。しかし発行日の関係で、締切をぎりぎりまで引っ張っても6月15日の出来事の反映は無理。そこで、記事よりも一足早くブログで補足するとしましょう。
セラーテムは、2009年6月と11月に実施した2度の第三者割当増資を通じて、英領バージン諸島に登記されたWCIとNLGという中国系ファンド2社に発済み株式の過半数を割り当て、増資により調達した資金で中国の環境関連企業、北京誠信能環科技を買収したと嘘の発表をしていました。WCI、NLG、北京誠信は実際には一体であり、一連の操作はセラーテムを「ハコ」にした北京誠信の裏口上場だったのです。
本誌はこの疑惑を10年9月号でスクープ。その後、証券取引等監視委員会が11年5月末に強制調査に着手し、今年3月6日に特捜部が池田、宮永らを逮捕しました。3月26日には証券監視委が法人としてのセラーテムと池田、宮永の三者を金融商品取引法(偽計)の嫌疑で告発。同日、特捜部が三者を東京地裁に起訴しました。
日本の証券取引所は規定上、裏口上場を禁じています。上場廃止基準に「不適当な合併等」という項目があり、怪しげな第三者割当増資や未上場企業の買収は証取の審査部門のチェックを受けなければならない。にもかかわらず、大証はセラーテムの一連の操作をあっさり通しました。それどころか、本誌が疑惑を暴いた後も「不適当な合併等にはあたらない」「理由は個別の判断」などと強弁し、セラーテムをかばい続けたのです。
大証の厚顔無恥は、証券監視委と特捜部が摘発した後も、頑として誤りを認めないことでしょう。池田と宮永が3月6日に逮捕されると、大証はセラーテムを監理銘柄(審査中)に指定しました、しかし、監視委の告発から2カ月半が過ぎた今も、審査結果を出していません。上場企業をめぐる不正について、監視委が偽計で告発したケースは過去に10件もなく、全て告発から1カ月以内に上場廃止になっています。そんななか、大証は不名誉な記録の最長不倒距離を更新中です。監視委も特捜部もなめられたものですね。
セラーテムは、事件の影響で2012年6月期の四半期報告書を期日までに提出できず、6月15日の最終期限に提出できなければ自動的に上場廃止になるはずでした。大証にとっては、決算報告書の未提出を理由に上場廃止にできれば、表向き過去の誤りを認める必要がなく好都合だったはず。ところが、セラーテムは過年度決算を修正した決算書を15日午後に提出。この決算書は、監査法人から「結論を表明しない」と匙を投げられました。
その結果、ついに大証はセラーテムを上場廃止にすべきかどうか、つまり自分の誤りを認めるかどうかの決断を下さなければならない窮地に追い込まれたのです。さらに、池田と宮永の初公判では、検察の冒頭陳述で決定的な事実が明らかになりました。セラーテムの一連の操作を審査した大証の担当者は、「不適当な合併等」に当たる可能性を認識していたのに、池田と宮永の虚偽の説明を鵜呑みにしたことを、特捜の事情聴取で証言していました。
さて、大証はどう落とし前をつけるのでしょうか。この際、決断の先送りを続けてセラーテムの上場を維持し、イカサマ企業に世界一優しい“三流証取”として売り出してはどうでしょう。中国から上場申請が殺到するかもしれませんよ。セラーテムと背後でつながったチャイナ・ボーチーを野放しにしている東京証券取引所の合併相手としても、実にお似合いです。
ちなみに初公判では、裏口上場の青写真を描いた宮永が、09年4月頃に知人のトーマツ関係者にアドバイスを求めていた事実も明らかになりました。当時、宮永はチャイナ・ボーチーの副総裁を名乗り、トーマツは現在もボーチーの会計監査人です。監査法人が顧客の裏口上場計画の相談に乗るとは、実に立派なサービス精神ですね。トーマツへの質問状のネタがまたひとつ増えました。
水俣病の故原田正純医師と「暗いはしけ」
私にとって水俣病はサンクチュアリーである。
熊本日日新聞の論説委員長、高峰武氏とはもう20年近く前に知り合い、彼の生涯テーマである水俣病の本をたびたび贈っていただいた。ほとんど半世紀近くに及ぶ熊日の追跡は、地方紙としてというより、ジャーナリズムとして脱帽するほかない。断じて忘却の彼方に去らせまいとするその姿勢は、内心敬服するほかなかった。
それに、私が駆け出しの記者だった時代に読んだ石牟礼道子さんの『苦海浄土』は、息をつめて読んだ本である。よくあるアジ調の告発ではなく、あんなに詩的な優しい文体で怒りを書くことができるなんて驚きだった。今でも自分はとうてい及ばないなと自戒している。
その水俣病の研究と患者救済に一生を捧げた原田正純医師のことも聞き及んではいたが、6月11日に77歳で亡くなられたと聞いて瞑目していた。ある知人から熊本学園大学水俣学研究センターの追悼文を教えてもらった。インターネットで読めるという。それによると、原田先生は、人生最後の数週間をアマリア・ロドリゲスの「暗いはしけ」を聞きながら過ごしたそうです。
ポルトガルの歌謡ファドについては、このブログでも何度か書いたことがある。「暗いはしけ」は映画「過去をもつ愛情」でファド歌手のロドリゲスが歌って、世界に知られた名曲である。人生最後のベッドであの曲を聴きながら、あの世へ旅立つというのは、原田さんは青春に帰っていたのだろう。
船に揺られて沖に漕ぎでるような不思議なリズムで歌われるから、暗い海にちらつく不知火を思い浮かべていたのだろうか。ほんとうは「暗いはしけ」はファドではなく、ポルトガルの植民地だったブラジルの子守歌の替え歌なのだ。
もとは白人農園主の乳母兼子守りとなった黒人女の嘆きの歌「黒い母」である。ご主人さまの赤ん坊の揺りかごを揺らしながら、小屋で乳もろくにやれずに泣いているわが子と、奴隷として鞭打たれる夫を思いやる歌詞がなんとももの悲しいララバイだ。
サラザール独裁政権下のポルトガルで、その植民地の旧悪を暴露する歌詞が認められるはずもなく、「黒いはしけ」は時化の海で行方不明となった船乗りの夫を案じる妻の歌詞になった。それでも人の心を揺るがすのは、歌自体にエレジーの魂が宿っているからだろう。
私の知り合いのファド歌手が、両方の歌詞で歌った画像がYoutubeにあるから紹介しよう。
原田医師の霊も、この悲しい旋律に乗って、不知火海の夜空に瞬く犠牲者たちの魂のもとへ旅立ったと信じたい。
恥ずかしくないの? 読売「記者が選ぶ」の書評
今は編集期間のブラックアウト中だから、このブログを書く時期ではないのですが、目を疑うような記事を読んだのでちょっと一言。
6月10日付の読売新聞朝刊読書面「記者が選ぶ」の項目で、『オリンパスの闇と闘い続けて』(浜田正晴著、光文社、1400円)の書評が載った。
オリンパスの内部通報制度を信じて、上司を内部告発したら、その窓口から上司に筒抜けで、左遷され干されたオリンパス社員が書いた本である。裁判所に訴えて高裁で逆転勝訴したのは、本誌が菊川剛元会長らの損失隠しと穴埋めのための巨額粉飾を暴いたのと同時期だった。もちろん、両方ともオリンパスの体質の一端を象徴していたから、オリンパスの事件化とともに、浜田さんがその闘いの記録を本にすることは当然だし、その勇気は本誌も敬服している。
だが、この書評は何だろう。
巨額損失隠し事件を扱った「オリンパス本」が複数出版されているが、それとは全く別の話。ただ、報道で批判された隠蔽体質と相似形の嫌な話が満載だ。
不思議な書き出しだ。オリンパス事件について書かれた本は(便乗本を除けば)、当事者である山口義正記者の『サムライと愚か者』、ウッドフォードの『解任』、われわれチームFACTAの『オリンパス症候群』の3冊にすぎない。それぞれ視点が違うが、ひとくくりにして「オリンパス本」とジャンルみたいにしている。そんなジャンルは存在しないぜ。悪意たっぷり、棘のある表現ですな。
「嫌な話」?スキャンダルが心地いい話のわけはないから、ここは書評子である森記者にとって「嫌」なのだろう。そういう個人的感情を忍びこませるのはいいが、これでは浜田さんの本の書評などそっちのけではないか。浜田さんが気の毒だ。
森記者の正体は後段になって明かされる。
敗色が濃厚な中、読売新聞が「オリンパス社内告発で『制裁人事』」と報じたことで局面は代わり、高裁で逆転勝訴した。
その記事を書いた当人が、おれの手柄だと言いたいだけの書評。品下がるとはこれを言う。
確かに2009年2月27日付で読売は「告発者名を社内窓口明かすオリンパス社員制裁人事」なる記事を1面に載せている。記事の内容からは、浜田さんの代理人弁護士の持ち込みネタであることが察せられる。現にその3日後の3月2日、浜田さんは東京弁護士会に人権救済を申し立て、司法記者会で会見をしたから、各紙とも3日付の朝刊で一斉に報じている。
つまり、たった4日先んじただけで「局面は代わり」とは大仰な。いち早くネタをつかんだのに、君らはそれから何をしていたのかと問いたい。浜田さんの問題からオリンパスの腐敗を暴く取材へとどうして一歩進められなかったのだろうかと。ウッドフォードが解任されてから、読売新聞社会部はどうしたかを明かせば、FACTAに電話をかけてきて「ネタを教えてくれ」と虫のいいことを言ってただけ。
「コンプライアンス」という言葉が、まるで魔物のような、別の意味に思えてくる。
あなたの会社はどうなのか。パイプくわえたご老体主筆に平身低頭、会社のていをなしてないないではないか。ぜひ、協会賞を取れるような記事が載ることを期待しています。
チームFACTA『オリンパス症候群』の自薦
自分たちで書いた本を宣伝するのは気恥ずかしいのですが、小生のほか高橋洋一、磯山友幸、松浦肇の4人でチームを組んで書いた『オリンパス症候群』(平凡社、1680円、税込み)が出版されました。
オリンパス関連では、これまで弊誌に記事を書いてくれたフリーランス記者、山口義正君の『サムライと愚者』(講談社)、解任された元社長マイケル・ウッドフォードの『解任』(早川書房)が出版されていますが、今度の本はオリンパスを糸口にした「日本株式会社」論と言ったほうがいいかな。
なぜ20年間も不正が見過ごされたかという問いから、時間軸を四半世紀前までさかのぼって、日本の「オンリー・イエスタデー」を書こうとしました。オリンパスはその症例の一つであり、読者から小生がよく受ける質問――第二のオリンパスはありますか、という問いに「イエス」と答える内容です。
なぜなら、オリンパスに限らず、日本企業全体に蔓延する「共犯」構造がある限り、不正を不正と感じていない予備軍はいくらでもあるからです。胸に覚えのある方々はぜひ読んでみてください。これは僕らの宣戦布告であり、ひとたび不合理に食いついたら放さないつもりだからです。
第二のオリンパス、第三のオリンパス……がどこなのかは、毎月の弊誌の記事で追跡するしかないのですが、その途上で後ろを振り返って、日本の経済報道が何を追い、どこで尻尾を巻いたかの検証もしてみました。それはチームFACTA4人に共通の原基といったようなものです。
そういえば、スウェーデンのミステリー3部作『ミレニアム』シリーズで、「探偵カッレ」のニックネームがついた月刊誌「ミレニアム」発行責任者、ミカエル・ブルムクヴィストはご存じでしょうか。
彼みたいに禁固刑に服したくはないけれど、あの徹底した追跡とジャーナリストとしての気骨はフィクションとはいえ学ぶところ大ですね。早世した作者のスティーグ・ラーソンも記者出身とか。FACTAもリアルな社会での、ミレニアムにならなければ。
そんな志を本にしたのが『オリンパス症候群』です。
SBI幹部諸氏への投降勧告
将軍様支配下のSBI人民民主主義共和国の幹部諸兄に呼びかけます。本誌の北尾マジック追及シリーズも今号で第五弾に達し、いよいよ中枢に触れてきたことはお察しかと存じます。38度線の南から、将軍様についていくかどうか、お迷いの方々にサジェスチョンしましょう。
もちろん、本誌はSBIを最後まで追う所存です。まだまだ材料は山ほどありますので、ネタに困ることはありませんが、これから先は個別攻撃になることを予告させていただきます。オリンパスのケースで、社長だったウッドフォードが、自らが罪に問われることを危惧したように、この泥船に最後まで乗っていたくない方々は、そろそろ降り時だと思います。
将軍様が「戦うんだ」と口癖のように言い始めていますが、そばにいるあなたがたもご存じでしょう。これは勝ち目のない戦いです。海外のファンドや、国内の親密先とのツケ回しでちょろまかそうなんて、丸ドメなご当局相手ならいざしらず、FACTAのような海外にアンテナを持つメディアには通じません。実はウッドフォードのように”I was gob smacked.”と呟いていらっしゃるのでは。
将軍様独裁下でも、金融のプロがいらっしゃるのだから、このままの粉飾ではやばいということはお分かりのはず。それが証拠に第一質問状に返事して以来、ちゃんとFACTAに反論していない。決算説明会で見え透いた言い訳をふりまいても、もはや噴飯ものの屁理屈だとはあなたがたのほうが知っているでしょう。
SBI内部からはホイッスル・ボロワーが次々に弊誌に内部情報を流してきて、将軍様の鉄の規律もどこへやら、ダダ漏れになっています。将軍様の自己玉まで丸見えです。一緒に厳罰を喰らっていいのですか。すでに当局は掲載分を読んで、これからの各論を待ちかねているでしょう。
将軍様に尻尾を振っている外部関係者の方々、社外取締役の夏野剛氏(元NTT)、渡邊啓司氏(元トーマツ代表社員)もよおく考えてくださいませ。あなたがたが今もらっている役員報酬が、いざ事件になった場合の株主代表訴訟コストに見合いますか。FACTAが追及した日本振興銀行事件の結末と取締役会議長まで務めた元銀行マンの作家のことを思い出してください。下手したら、オリンパスや東電の役員と同じく、自己破産の憂き目を見るでしょう。
内部監査人たちもどうせ将軍様の犬とはいえ、同じ運命です。監査法人トーマツも、有価証券報告書に適正意見をつければ、これだけオープンリーチなのだから同罪になります。社員のみなみな様も会社の具合がおかしいことはご承知のはず。
二二六事件で放送された「兵に告ぐ」を再録しましょう。
此上お前達が飽く迄も抵抗したならば、夫(それ)は勅命に反抗することになり逆賊とならなければならない。
正しいことをしてゐると信じていたのに、それが間違って居たと知ったならば、徒(いたず)らに今迄の行きがかりや義理上から、何時までも反抗的態度をとって、叛き奉り、逆賊としても汚名を永久に受けるやうなことがあってはならない。
今からでも決して遅くはないから、直ちに抵抗をやめて軍旗の下に復帰する様にせよ。そうしたら今までの罪も許されるのである。
お前達の父兄は勿論のこと、国民全体も、それを心から祈って居るのである。速かに現在の位置を棄てて帰って来い。
なかなかうがった勧告でしょ。反省を知らない将軍様にまだついていくか否か、自分の胸に手を当てて行動してください。それでも投降しない方々については、各個撃破しかありません。名指しをご覚悟ください。
オンライン読者への最新号公開は午後4時から
本誌はオンライン読者限定サービスとして、雑誌郵送に先立って毎月18日正午から、ウェブ画面上で最新号の記事が読めるようになりますが、最新号の6月号については公開時間を遅らせ、本日(18日)の午後4時からにいたします。
ギリシャ問題などで欧州の金融危機が再燃し、東京市場でも株価などに下押し圧力が働いて不安定な状態になっております。株価急落などの不測の事態を避けるため、東京証券取引所の引け後に公開時間をずらすことにしました。ご了承ください。
月刊誌FACTA発行人阿部重夫
ラムズフェルド『真珠湾からバグダッドへ』のススメ
2012年5月6日付熊本日日新聞の書評欄で、ブッシュ前政権の国防長官だったドナルド・ラムズフェルドの回顧録『真珠湾からバグダッドへ』(幻冬舎、税別2600円)を書評しました。
同書には、ロンドン時代からの畏友、谷口智彦氏が優れた解説を書いていたので、それに触発されて書評で取り上げました。一般に自伝なるものは自慢話と自己弁護ばかりで、放り出したくなる内容の本が多いのですが、ラムズフェルドの腹蔵のない語り口と、本人の負けず嫌いむきだしの舌鋒のゆえに、波乱万丈で読み物として面白い。
もちろん、自分はアメリカの専門家ではなく、いわんや、ネオコン諸氏とはお会いしたことがない。ネオコンの元祖とされるレオ・シュトラウスに興味があって、コジェーヴやシュミットを少々聞きかじったにすぎない。そのささやかな知識の範囲内で、このタフガイを論じられるか、ちょっと挑戦してみた。
原題のタイトルは、15世紀の二クラウス・クザーヌス『知ある無知』De docta ignorantiaをすぐ連想させる。でも、プリンストン大学出とはいえ、アマチュア・レスラーだったラムズフェルドが読んだかどうかはおぼつかない。そういう思弁とは対極の人のようである。
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負けず嫌いの敗戦記
超大国アメリカの独善的で傲慢なマッチョ像は、ベトナムを舞台にしたグレアム・グリーンの『おとなしいアメリカ人』以来、すっかり定着している。近年、その代表と目されたラムズフェルド元国防長官が回顧録、いや、敗戦記を書いた。
ブッシュ大統領には絶対忠誠で、アフガニスタンとイラクの攻略を主導し、執務室では一日8時間以上起立しっぱなしで働く。グアンタナモの捕囚を4時間立たせたままにする“拷問”の是非を質されると、「ふん、それっぽっちか」とやり返す。矢継ぎ早にメモを口述、ホワイトハウスなどを紙吹雪の嵐にするモーレツ伝説の人だ。
その結果が、ベトナム戦争を超す泥沼と戦費で米国を消耗させた。敗軍の将、兵を語らずの美学はなくもがな、このタフガイの弁明は、読まないほうが損というものだ。
攻撃的な原題である。Known and Unknown。顰蹙を買った自身の発言を逆手にとって、この世には「知っていると知っていること」「知らないと知っていること」「知らないと知らないこと」があり、イラクの大量破壊兵器は三番目の類だ、と冒頭で言い切っている。
つまり敗北を断じて認めない。ほかに選択肢はなかった、ファイティングポーズを崩したら、テロリストに誤ったメッセージを送り、弱みにつけこまれるだけだ――。
戦え、それに尽きる。が、その「ノウンとアンノウン」には抜けているものがある。「知っていると知らないこと」が欠けているのだ。ラムズフェルド自身が無意識に遮断したのだろう。
ナチスの政治学者カール・シュミットの定義「主権者とは例外状態で決定を下す者をいう」のように、テロという例外状態が起きたとき、米国はイラクやアフガニスタンの主権を踏み越えて軍事行動を起こす「主権」を発動した。グアンタナモに超法規的な収容所が生まれたのはそれゆえ必然だった。
が、その例外状態はまた、相手側にも無差別テロを発動する根拠を与える。イラクでその負の連鎖が起きることは予見できた。ラムズフェルドの解は、懲罰目標の限定と早期撤退、つまり例外状態からの「出口」を急ぐだけだったかに見える。
その失敗はワシントン内部の縄張り争いに帰せられ、ミスリードしたマクラフリンCIA副長官、形勢が悪くなると前言を翻したパウエル国務長官、閣内の不和にも優柔不断だったライス大統領首席補佐官、権力欲の塊だったブレマー暫定行政機構長官ら、かつての同僚たちを容赦なく槍玉にあげている。
そのチームプレーの悪さは特筆すべきだが、ほんとうは超大国アメリカが例外状態の無限連鎖に対する解を持っていなかったことに帰着する。
フォード政権下で軍産複合体と衝突して20年余も在野の人だったラムズフェルドは、解のない戦いと知りながら貧乏クジを引いた。最大の後悔はイラク刑務所虐待事件で辞任しなかったことだというが、彼は軍事学者クラウゼヴィッツの至言「戦争は政治の延長」を体現していたのだ。
この負けず嫌いの男の内面をうかがわせるのは、彼が収集したアフォリズム(警句)集「ラムズフェルドのルール」だろう。本書の随所にまぶされているが、よくよく眺めると、物事の一面をドライに切り捨て、行動に突進するための遮断装置と知れる。
金言格言の鎧で武装したマッチョは鉄壁ではない。ネバー・ギブアップと往生際の悪さが同義語であることを痛感させる自伝である。
大鹿靖明著「メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故」書評
2月27日のブログでも紹介しましたが、4月8日の北海道新聞朝刊に書評を寄稿しましたので、こちらも掲載します。
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「もうこのへんで」。伏し目がちの医師がささやく。半透明のカーテンの彼方の生ける屍(ネオモール)。肉親たちは無言でうなずく。人工心肺のスイッチが切られ、奇妙な静寂が訪れた。変哲もない臨終の光景である。
だが、この隠微な安楽死の光景は、「3・11」以降の東京電力でもある。福島第一原発はチェルノブイリと同じく「石棺化」するしかない。浜通りのゴーストタウンは、すでにウクライナの草むす無人地帯と化した。ウサギ追いしかの山も、小ブナ釣りしかの川も、もう戻らない。誰も想像できなかった「終末」が日常に出現したのだ。
死に体の東電を生かしておく、気の遠くなるようなコストと時間。それを誰も口にする勇気がない。だが、最適解はどこにあったのか。
本書は、そこに切り込んだ数少ない試みである。息をのむのは東電の法的整理を避けようとする動きを追った第二部「覇者の救済」だろう。メーンバンクの三井住友銀行が、金融庁を介して資源エネルギー庁電力市場整備課長の案に乗り、それを内閣官房経済被害対応室の財務省テクノクラートが覆してしまうプロセスは圧巻だ。
霞が関の深部に接した経済記者の貴重な記録である。首相官邸を「子供のサッカー」とけなすだけで、東電を調査できなかった民間事故調の隔靴掻痒の報告書とは決定的に違う。
本能的に自分の縄張りだけ守ろうとする霞が関は「東電解体」という選択肢を取れなかった。経済産業省の改革派官僚だった古賀茂明氏が提案した、東電の法的整理と発送電分離を進めるプランをハナから排除したがゆえに、東電の植物人間化とその巨大コストの国民への転嫁という「第二の人災」を発生させたのだ。
かつてヘーゲル学者コジェーヴが言った「歴史の終焉」である無為のスノビズムが、今の日本を覆っている。「もうこのへんで」と誰かがささやくのを待つだけ。この奇妙な沈黙に、著者はたった一人石を投じた。
嵐の公開質問状シリーズ2 ネクシィーズとトーマツ
SBIに出した第4質問状と同じく、SBIアラプロモ(SBIファーマに社名変更)の怪しい「益出し」――特別利益計上の根拠について、株式の一部売却先であるネクシィーズと監査法人のトーマツに問いただしたものです。
まずはネクシィーズの近藤太香巳年社長あてに。
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(株)ネクシィーズ
代表取締役社長
近藤太香巳年様
SBIグループとの取引について
ファクタ出版株式会社
月刊FACTA発行人阿部重夫
拝啓
時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。ご承知かと存じますが、弊誌はSBIホールディングス(“以下SBI”)についての記事を2012年1月号、4月号で掲載しております。同社は本誌に対して名誉棄損の損害賠償請求を東京地方裁判所に提訴しておりますが、本誌はさらなる記事を準備中であり、先日発表された御社とSBIホールディングスの取引についてお尋ねさせていただければ幸甚と存じます。質問は以下の通りです。
1)3月30日、SBIは、関連会社のSBIアラプロモ(株)(以下アラプロモ)を「複数の事業会社等」に5.83%売却し、約42億円の特別利益を2012年3月期に計上すると発表いたしました。この今回取得した「複数の事業会社等」の中に御社ネクシィーズは含まれているのでしょうか?
2)御社の2011年9月期有価証券報告書の中には、御社が投資有価証券としてアラプロモを194株、帳簿価格199,542千円で保有していると記載されています。2010年9月期には保有されていませんでしたので、2010年10月~2011年9月の間に取得されたと思いますが、取得されたのはいつですか?
3)御社有の価証券報告書上のアラプロモ株の簿価は一株102.8万円となります。アラプロモはSBIの決算説明会資料によれば、2011年3月通期で営業損失11億円、2012年3月3Q累計で8億円の営業損失です。アラプロモの直近増資は2009年12月から2010年11月までの期間に行われた一株5万円であります(SBIライフサイエンス・テクノロジー投資事業有限責任組合の有価証券報告書より)。なぜ直近の増資時価格の20倍という高い評価で赤字会社の株式を購入されたのですか。御社の払った値段でのアラプロモの企業価値評価は700億円以上になりますが、そう評価した理由をお教えください。
4)御社の2011年9月期有価証券報告書の中には、「その他の投資有価証券」としてSBIイノベーションファンド2号投資事業有限責任組合900口を900,000千円、SBIブロードバンドファンド1号投資事業有限責任組合5口を335,043千円、SBIビービ-モバイル投資事業有限責任組合2口を157,571千円、SBI・NEOテクノロジーA投資事業有限責任組合2口を128,996千円、保有されています。これらの組合への投資も2010年9月期には記載がありませんので、2010年10月~2011年9月の間に取得されたと思います。これら4つのファンドのうち、SBIイノベーションファンド2号投資事業有限責任組合とSBIブロードバンドファンド1号投資事業有限責任組合は運用期間が終了しているはずです。SBIイノベーションファンド2号投資事業有限責任組合は出資者の当初出資額の100万円/口で評価されています。これらのファンドは誰からどういう事情で取得したのですか。
以上でございます。近藤社長が尊敬する北尾氏にもこの件で質問状を出しています。
御社も上場会社として株主に説明責任がありますので、お忙しいところ恐縮ですが、4月11日までに文書または電話か口頭でご回答いただきますようお願い申し上げます。敬具
4月6日
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つづいてトーマツあてに。
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有限責任監査法人トーマツ
広報担当者御中
SBIについての再質問状
ファクタ出版株式会社
月刊FACTA発行人阿部重夫
拝啓
時下、ますますご清祥のこととお慶び申しあげます。3月に弊誌が発した質問状に対し、個別の案件については答えられないというノーコメントをいただき、まことに残念でした。しかしSBIが3月末に次の不透明取引を発表しましたので、重ねてお尋ねいたします。
3月30日に発表されたSBIアラプロモ(以下アラプロモ)の一部持分5.83%を「第三者である複数の事業会社等に譲渡する契約を締結した」というくだりと、「本件譲渡に伴う売却益約42億円を、2012年3月期決算における特別利益として計上する見込みです」という一文についてお尋ねいたします。アラプロモは、SBIグループとコスモ石油(株)などが主要株主でアミノレブリン酸(ALA)を利用した医薬品、化粧品、健康食品の研究開発を行っている企業という触れ込みですが、5.83%で42億円の売却益が発生するということは、企業価値は少なくとも720億円はあるということになります。営業損失8億円(2012年3月期3Q累計:SBI説明会資料)のアラプロモの評価としては大変不自然です。お尋ねしたいことの骨子は以下のとおりです。
1) アラプロモの今回の譲渡先の 「第三者である複数の事業会社等」とは具体的にどのような会社、ファンド、個人か、監査法人トーマツは承知していますか。
2)売却益42億円をもたらした譲渡価格はいくらで、第三者の評価は受けていますか。監査法人トーマツは認識していますか。
3) ベリトランス譲渡の発表のように、買い手の「第三者である複数の事業会社等」の財務内容と、それらの主体がSBIホールディングスとの間の資本関係、人的関係、取引関係、関連当事者への該当状況、さらに譲渡の決済受渡し日についての情報を取引所は当然要求すると思いますが、なぜこれらの情報が開示されていないのですか?
4) 2011年9月期の(株)ネクシィーズの有価証券報告書の中で、投資有価証券として199,542千円のSBIアラプロモ(株)が194株計上されています。これは一株102万円強の評価となるもので、これがこの3月の譲渡のベースとなる価格となっているのだろうと思料します。企業価値にして720億円以上です。トーマツはこの評価を肯定したのですか。
今度も「個別案件」を理由にノーコメントとの返答にならないよう期待します。お忙しいでしょうが、締切の都合もございますので、4月11日(水)までに文書または電話か口頭でご返答いただけたら幸いです。SBIの北尾氏、(株)ネクシィーズの近藤社長にも、この件についての質問状をお送りいたしております。敬具
4月6日
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これに対し、ネクシィーズは回答なし。こちらから電話で確認したところ、「すでに開示した情報以外にはありません」と返答した。オリンパスとそっくり。あとがどうなるかはご承知だと思いますがね。
トーマツはファクスで以下のような回答が4月9日に届いた。
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ファクタ出版編集部
再質問状について
有限責任監査法人トーマツ
広報室新井香織
平素よりお世話になっております。
有限責任監査法人トーマツ広報室の新井と申します。
FAXでお送りいただいた再質問状について、ご回答差し上げます。
個別クライアントに関しては守秘義務があり、お答えできません。
なお、守秘義務は公認会計士法第27条に定められたもので、本件に限らず、個別具体的な会計処理やクライアントに関する質問に対する回答は控えています。
以上、よろしくお願い申し上げます。
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やっぱり、事実上の回答拒否ですね。いつもの台詞ですか、それくらいは覚悟の上です。
しかし、なぜ執拗に質問を続けるかというと、あなたがたが守秘義務をいつも逃げ口上に使っているからです。監査料のためにお目こぼしばかりしていることへの牽制球です。
SBIの12年3月期決算、よほど心してかからないと、第三者委員会を設けなきゃならなくなりますよ。そうならないよう、せいぜい目を凝らすんですな。いまや衆人環視で、言い逃れはできないのですから。
嵐の公開質問状シリーズ1 SBI第四質問状
ブラックアウトが終わりましたので、これから嵐のように質問状シリーズを続けます。第1弾はいまや訴訟でどちらが倒れるかの力相撲になっているSBIホールディングスから。先月は「後出しジャンケン」であれだけ威勢よくリリースしたのですが、その後に追撃でこのブログに載せた第三質問状にはまた沈黙。FACTAが今月の最新号の取材で送った第四質問状にも期限の11日までに答えませんでした。
ところが、13日には、質問状で聞いたSBIアラプロモ(社名変更でSBIファーマ)でリリースを発表して、またもや「後出しジャンケン」に出ました。このリリースだけじゃ、いかにも唐突すぎて、一般の人は何のことかわかりますまい。FACTAの追及に対する苦し紛れの後付け理屈なのです。
サプリの赤字子会社で、創薬の研究開発機能などなきにひとしいのに、弊誌に痛いところを衝かれたものだから、慌ててバーレーン政府と基本合意などというとってつけたようなリリースをだしたものと思われます。それでも時価総額720億円などという値がつくようなニュースとは思えませんが、これで市場の目をくらませるとでも思っているのでしょうか。
質問状は以下の通りです。
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SBIホールディングス
SBIインベストメント
代表取締役北尾吉孝様
第四質問状
ファクタ出版株式会社
月刊FACTA発行人阿部重夫
拝啓
時下、ますますご清祥のこととお慶び申しあげます。第二質問状に後出しジャンケンながらお答えいただいたことで第三質問状を公開させていただきましたが、本日まで回答なしとは誠に残念に存じます。決算説明会と同じく、都合の悪いことには答えないのは「資本市場の清冽な地下水の守護者」としてはいかがなものでしょうか。泉下の北浦喜一郎元野村證券社長も嘆いていらっしゃると思いますが、次の不透明取引を発表されました。
3月29日、御社は100%子会社のSBIベリトランスをデジタルガレージの連結子会社である(株)ウィールに130億円で譲渡して、87億円の特別利益が発生すると発表しました。買い手のウィールの簡単な財務内容が述べられ、また買い手との間には資本関係、人的関係、取引関係、関連当事者への該当状況はないと明確に書かれています。また譲渡の受渡日も明確になっています。5つのコア事業の一つ(証券、銀行、損保、生保、決済)の事業であるSBIベリトランスを売却するとは、さぞ資金がお要り用だったのですね。2月24日にSBOベリトランスが上場廃止になるときに、御社は下記のように発表されていますが、完全売却ということは僅か一カ月で事情が変わったということですね。北尾様の良く言われるブリリアントカット化の一環なのでしょうか。
SBIベリトランスの有するEC決済のシステムやノウハウを完全子会社化による経営統合を通じて迅速かつ、効率的にグループに取り込むことが大きなシナジー効果を生み出すことになると考えております。
さて、翌日の3月30日に発表されたSBIアラプロモ(以下アラプロモ)の一部持分5.83%を「第三者である複数の事業会社等に譲渡する契約を締結した」というくだりと、「本件譲渡に伴う売却益約42億円を、2012年3月期決算における特別利益として計上する見込みです」という一文についてお尋ねいたします。アラプロモは、御社とコスモ石油(株)などが主要株主でアミノレブリン酸(ALA)を利用した医薬品、化粧品、健康食品の研究開発を行っている企業とのことですが、5.83%で42億円の売却益が発生するということは、企業価値は少なくとも720億円はあるということになりますね。営業損失8億円(2012年3月期3Q累計:御社説明会資料)のアラプロモの評価としては大変不自然です。お尋ねしたいことの骨子は以下のとおりです。
1) アラプロモの今回の譲渡先の 「第三者である複数の事業会社等」とは具体的にどのような会社、ファンド、個人ですか?既存株主であるコスモ石油、(株)ネクシィーズなどの上場企業は含まれていますか?さらにホメオスタイルやその全株を売却した「一個人」、またはSBI傘下のファンドは含まれていますか。
2)売却益42億円をもたらした譲渡価格はいくらで、第三者の評価は受けていますか。監査法人のトーマツは認識していますか。
3) ベリトランス譲渡の発表のように、買い手の「第三者である複数の事業会社等」の財務内容と、それらの主体がSBIホールディングスとの間の資本関係、人的関係、取引関係、関連当事者への該当状況、さらに譲渡の決済受渡し日について開示していただけますか?取引所は当然要求すると思いますが、なぜこれらの情報が開示されていないのですか?
4) 2011年9月期の(株)ネクシィーズの有価証券報告書の中で、投資有価証券として199,542千円のSBIアラプロモ(株)が194株計上されています。これは一株102万円強の評価となるもので、これがこの3月の譲渡のベースとなる価格となっているのだろうと思料します。企業価値にして720億円以上です。ネクシィーズの近藤太香巳社長は北尾様を崇拝する経営者と聞いておりますが、102万円の株価で買ってくれた理由は、どこにあるのでしょうか。
今度は質問項目が少ないのでお答えしやすいかと存じます。3月18日に出したような熱烈なる「ヤブヘビ回答」を期待しています。お忙しいでしょうが、締切の都合もございますので、4月11日(水)までに文書または電話か口頭でご返答いただけたら幸いです。監査法人のトーマツ、(株)ネクシィーズの近藤社長にも、この件についての質問状をお送りいたしております。
敬具
4月6日
ウッドフォードの本の読みどころ
オリンパス報道で第18回雑誌ジャーナリズム大賞を受賞した山口義正君の『サムライと愚か者暗闘オリンパス事件』(講談社)に続いて、元CEOマイケル・ウッドフォードの『解任』(早川書房)も出版されました。自分が登場人物の一人になっているので、これはだれかに書評はお任せするのが妥当でしょう。
山口君の本は、本誌次号で高田昌幸氏の書評が載りますので、そちらをよろしく。
高田氏は北海道警の裏金問題をスクープして2004年度の新聞協会賞を受賞した元北海道新聞の記者です。その後、道新が訴えられ、新聞社と警察が手打ちする形となって、彼は新聞社を辞めました。
しばらく浪人で、新橋で朝日の新聞協会賞受賞記者と3人で飲んだことがあります。道警問題に踏ん切りをつける新著『真実新聞が警察に跪いた日』(以文社)を出版しました。こちらも読んでいただくと、新聞の現状がよく分かります。そしてこの4月からは故郷の高知に帰って、高知新聞社に入社して、久々に報道の最前線に戻りました。そこで、彼に書評をお願いした次第です。
さて、ウッドフォードの本、これまでエコノミスト誌の会合や外国人特派員協会などで彼の話を聞く機会が何度もあり、そこで彼が表情豊かに明かした「解任」までの話はいろいろ聞いています。
セールスマンらしく話が具体的で面白いので、何度か大笑いしました。でも、さすがに当時の心境、煩悶などの内面の心理の襞は、この本のように字にしてみないと分からないものです。
そういう意味で、彼の実直でストレートな性格がよく出ていて、彼を鬼みたいにけなしていたオリンパスの主流派もぜひ読んでほしい。株主総会に出て質問するそうだから、はぐらかさないで答えるべきです。
ところで、ウッドフォードから聞いていなかったエピソードが106ページに載っていた。彼の追及を受けて、菊川会長がCEOをウッドフォードに譲ることを決めた9月30日の取締役会のシーンである。柳澤一向専務がウッドフォードをなじったあとに、社外取締役が発言するのだ。
さらには、今度は社外取締役の来間紘が、私が手紙のコピーを監査法人のアーンスト・アンド・ヤングに送ったことを強く非難しました。我々はファミリーじゃないか?なぜ、騒ぎを大きくするんだ?なぜ、わざわざ部外者を呼び込んだのだ?と。
奇妙な追及でした。日本経済新聞出身の来間は社外取締役で、コーポレート・ガバナンスを監督するのが彼の仕事だったはずです。
あちゃー、こりゃあきまへん。来間氏は約2週間後の10月14日には海外にいて、ウッドフォード解任取締役会には欠席していたのですから、罪一等を減じられると思っていましたが、この発言はアウトですね。FACTAの記事を当然読み、私のことも熟知していて、こんな発言をしたら、立場がなくなることは知っていたはずです。それとも日経をファミリーなんて思わなかった私のことが念頭にあったのでしょうか。
ウッドフォードの日経不信の原因のひとつは、これだったかと膝を打ちました。「社長になって以来、このような敵意を持って質問されたことははじめてでした」という彼は、ちゃんと本で復讐したのです。
来間さん、残念ながら、あなたは歩がない。少なくともオリンパス在籍期間は、あなたのほうがわずか3カ月、ウッドフォードは子会社歴を含めれば30年、社長歴でも6カ月です。そのあなたに「ファミリー」を説教されるいわれはなかったのです。
一から株式会社というものを勉強しなおすべきでしょう。彼の後輩の全産業部記者は、このシーンをどう感じるでしょうか。イエスマンらしい、と苦笑するでしょうか。
すでにブラックアウト
例によって編集期間に入りましたので、しばしブログはお休みです。今回はあちこちに質問状を発して、先週はブログを書いている暇なし。再開したら大忙しとなるでしょうが、送った先の方々のみならず、読者のみなさんもお楽しみに。
アントニオ・タブッキを悼む
もちろん、須賀敦子さんの翻訳でタブッキを知りました。
外国語の翻訳物はなかなか気に入る訳がないのですが、須賀さん本人も好きだという短編集『島とクジラと女をめぐる断片』がいい。大西洋に浮かぶアソーレス諸島(ポルトガル領)が舞台なのですが、さりげない会話や描写にはほとほと脱帽させられます。この小説の才能を前にしたら、下手なフィクションを書こうなどという気が起きるはずもありません。
タブッキはイタリア人なのですが、ポルトガルに深く傾倒していました。絶対に存在しない書の影、あるいはコピーに過ぎないという『不安の書』を書いた詩人フェルナンド・ペソアを、たびたびその小説に登場させています。タイトルにもある『フェルナンド・ペソア最後の三日間』はもとより、『供述によるとぺレイラは…』も、ペソアの影がちらついています。
どこか、精妙につくられたフーガのようなところがあって、映画にもなった『インド夜想曲』は、メビウスの輪のように自分で自分を追いかけるような不思議なプロットでした。
そんなことをぼんやり考えていると、証券取引等監視委員会がセラーテムテクノロジーの池田社長と池永元取締役を偽計(金商法)で告発したと発表しました。
我田引水を承知で言えば、このリリースはFACTAの記事にそっくりですね。事件の構図をほぼ完ぺきになぞっていただいたようです。監視委員会にはお礼を申しあげましょう。でも、これって自分で自分を追いかける『インド夜想曲』のような気もしてきました。
FACTAの記事から被告台送りになったのは、先日、有罪判決を受けた日本振興銀行の木村剛元会長に続いて第2号です。続いてオリンパスの菊川前会長兼社長が第3号の列に並んでいらっしゃる。
さて、その次はどなたですかね?
最後にヤフー掲示板のステマ諸兄、およびその追随者たちに一言。匿名で私に公開質問状を出しても当然回答は出しませんので、念のため。ちゃんと本名を名乗って、覆面を脱がないと答えませんよ。もちろん覆面を脱いだら、きっちり対応させて頂きます。
それとも、自分の虚像のメビウスの輪をくるくる回ってるほうが幸せということでしょうかね。
SBI追及へCrowdsourcing
SBI将軍様との全面戦争は、インターネット上の戦争でもあります。SBI証券(旧Eトレード)が傘下にあるので、それならお手の物と言いたいのでしょうが、そうは問屋がおろしません。水に落ちた牛に群がるピラニアのような「エミールと探偵たち」のような戦い方もありますから。
どうやら将軍様は、覆面社員にヤフー掲示板を占領させて、他の投稿を削除させるステマ(ステルス・マーケティング)に励んでおられるようです。バレバレですよ。kabutennjinnと牛丼がかけあいで繰り広げるけなしあいだなんて。FACTAは創刊前からソニーのステマを叩いていますので、正体はまる見えです。80年代の株式市場で株価操縦やり放題だった野村の手口を、そのまま踏襲ですか。これは相当焼きが回ってますね。
SBIに泣かされた投資家のみなさんは、本当にお気の毒です。でも、SBIステマ部隊が消し忘れた掲示板の投稿をひとつご紹介しましょう。
説明資料へのリンクが(SBIホールディングスの3月19日リリースには)多数記載されていますが、ホメオ社株式の売却については、それぞれ数行でふれているだけのものです。詳しいスキームや交換により取得した株式についてはふれておらず、十分開示したという反論にはなっていないのでは。
http://ivory.ap.teacup.com/kaikeinews/
そうだよ、反論になんかなってないよ
只単に過去に言ってた程度のことで、箸にも棒にも掛からない
掲示板にはSBIステマ部隊が投稿しているみたいだけど、世間一般から見ても何の反論にも証拠にもなっていない
香港より東証の方が開示義務が軽いとかありえないだろう
それとも香港証券所の方が開示義務が東証よりも重いのか?
もっとも、東証で開示があったら俺が真っ先に見つけてただろうけど、香港の開示を調べてから宣戦布告って、徹底抗戦みたいだな
http://facta.co.jp/blog/archives/20120319001078.html
後出しじゃんけんって汚男の昔からの自慢するための手段だから、別に驚くようなことじゃないよな
それより、今回の係争は相手を引き吊り出したと定義して全面戦争と言うのだから、まだまだ弾の在庫はあるはずなのに容易に引き吊り出されちゃって振り上げた拳をどうやって下ろすんだろう?
(投稿者のID/ニックネーム:kokorogaorerundayo)
ご心配には及びません。弾の在庫はたっぷりあります。前回の第三質問状でも、いくらでもSBIが馬脚を現してくれることはお分かりでしょう。もちろんFACTAはステマなんて卑劣な手を使いませんから、この投稿者とは何の関係もありません。でも、せっかくだから、インターネットで闘うジャーナリズムの先鋒として、劇場型を試みることにしました。それは――「クラウドソーシング」。知ってますか。
クラウドソーシングとは、crowdとoutsourcingを重ね合わせた造語です。Journal of Information Scienceの定義によると、
"Crowdsourcing is a type of participative online activity in which an individual, an institution, a non-profit organization, or company proposes to a group of individuals of varying knowledge, heterogeneity, and number, via a flexible open call, the voluntary undertaking of a task. The undertaking of the task, of variable complexity and modularity, and in which the crowd should participate bringing their work, money, knowledge and/or experience, always entails mutual benefit. The user will receive the satisfaction of a given type of need, be it economic, social recognition, self-esteem, or the development of individual skills, while the crowdsourcer will obtain and utilize to their advantage that what the user has brought to the venture, whose form will depend on the type of activity undertaken".
The Economistの3月17日~23日号で、「宇宙のナチス」Nazis in Spaceの記事で、「Iron Sky」というSF映画づくりの金集めとCG場面の制作をクラウドソーシングにしていると書いていたコラムが載っていました。フィンランド人のTimo Voutensolaが、前作の「Star Wreck」に続き、この新作でもやっているユニークな試み。一石二鳥だそうで、映画制作にインターネット・ユーザーを巻き込み、製作費を安上がりに仕上げると同時に、制作にコミットした人は当然、映画の出来栄えを観に行きますから、観客も確保してしまうというわけです。
面白いですね。映画制作でできるのなら、調査報道でもクラウドソーシングはできないでしょうか。実はオリンパス報道では、このブログで新聞やテレビ、雑誌の記者たちに共同の調査報道を呼びかけましたが、「エミールと探偵たち」のようにはなりませんでした。こちらが拍手を送りたくなるような、新規開拓のネタを彼らはほとんど発掘できなかったのです。この業界に身を置くものとしては、大いに失望しました。
そこで、今度はSBIで泣かされた投資家の方々に、あるいはSBI内部で疑問をお持ちの関係者の方々に直接呼びかけましょう。FACTAはウィッスル・ブロワー(内部通報者)を受けます。
守秘義務?それが不正行為であれば、守秘義務は成立しません。
ただし、ステルスマーケターはお断りです。匿名、仮名の場合は、残念ながら聞きおくだけになります。堂々と実名を名乗り、その資料に信憑性がある場合には、FACTAが隠し砦をぶち破るお手伝いをします。もちろん、取材源の秘匿は厳守いたします。いわゆるタレコミには私情、私憤も多いのですが、FACTAが起動するのは、あくまでもフェアネスに立脚するものでなければなりません。日本にはウィッスル・ブロワーに賞金(不正額の3分の1)を与えるアメリカのドッド・フランク法のような法律はありませんから金儲けにもなりませんし、FACTAはもちろん空売り筋のダミーでもありません。あくまでも私利私欲でなく、Altruismが主役ですので、それ以外の下心のある方はご遠慮ください。
SBIは許せない、というあなた。調査報道のクラウドソーシングに、ふるってご参加ください。
SBI「将軍様」への第三質問状
このブログ、しばらく休んでいたので、さぞかし北尾将軍様は、鼻の孔を広げて枕を高くして寝ていたかと思います。
後出しジャンケンがお得意の将軍様が、後からどんなパンチを繰り出してくるか、キンシャサのモハメド・アリみたいに、グローブの間からじっと相手を見ていました。正直、にやりと笑う心境になりました。わーわー言えば言うほどボロが出てくる。突っ込みどころ満載ですから。
訴状は確かに届きました。1億5245万円の損害賠償請求と、FACTAおよびFACTAオンラインに謝罪広告を6カ月掲載せよ、というものでした。厚さ4センチもある写しが東京地裁から郵送されましたが、ほんとにコケおどしですね。本体は20ページばかりで、あとは謄本ばかり。訴状まで上げ底なんですね。
グループ総力をあげての反論も回答書、通知書、それにリリースからヤフー掲示板までじっくり拝見させていただきましたが、肝心なところは「契約上の守秘義務」とやらで、都合が悪くなるとイチジクの葉っぱの癖が丸見えです。
それにしても、キジも鳴かずば、の譬えどおり、社員と弁護士総動員であれっぽっちの反論とは。唯一の成果といえば、将軍様はご自分に都合の悪い質問にはお答えいただけないのだと思っておりましたが、御社のホームページを拝見して、質問には(後出しジャンケンでも)お答えいただけるのだとわかったことです。
さすがは、資本市場の「清冽な地下水」の守護者です。ちゃんとお答えいただけるなら、これにまさる喜びはございません。これからは遠慮なく質問しましょう。
そこで、さっそくですが、丁寧なお答えを期待して、また質問状を差し上げる次第です。
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SBIホールディングス
SBIインベストメント
代表取締役北尾吉孝様
第三質問状
ファクタ出版株式会社
月刊FACTA発行人阿部重夫
質問1
御社が香港証券取引所のみで開示されたホメオスタイル(以下“ホメオ”)売却の取引は、東証および大証の開示規定上の軽微基準に該当するから開示しなかったというご説明でしたが、ホメオの売上94.9億円(2011年6月期)は、SBIホールディングスの売上1410.8億円(2011年3月期)の6.7%です。同社の純損失10.2億円(同6月期)は、SBIホールディングスの2011年4~12月期の純利益3.1億円の3倍以上です。これを日本語で「軽微」と言うのでしょうか?御社は業績予想を公表しておられないから開示しなくても構わないということですか?東証の松崎裕之上場部長はじめ取引所の上場部は何と言っていますか?野村証券ご先輩の斉藤惇東証社長にも説明されましたか。
質問2
ホメオ売却の際の9億円の損失は、2012年3月期第3四半期の決算で、投資有価証券売却損の10.65億円のうちに含まれているのですね?確認までにうかがいます。
質問3
買い手の一個人の氏名については「ホメオの買主様との契約上の守秘義務があるためお答えいたしかねます」とのことですが、これは不思議なご説明です。東証・大証に開示した場合には当然必要とされる情報だと思います。この守秘義務があるから、東証・大証に開示しなかったという意味でしょうか?どうしても買い手の氏名を言えない条件の取引であれば、取引自体、しなかったほうがよかったのではありませんか?買い手の税務上の問題でもあるのですか。
質問4
本件取引は、御説明によれば、買主の一個人がホメオを100%引き取り、SBIホールディングスがインターネット総合研究所の投資有価証券を100%引き取った、その代金はお互いに23億円であった、ということですか?また、ホメオスタイルが23億円としたのは評価を第三者に委託せずに買主との間で決めたとのことですが、逆にSBIインターネットキャピタルに新設分割して引き取った資産の中身はどういうものでしたか?23億円の価値があることを説明いただけますでしょうか?ウェブ上で検索すると、(株)ブロードバンドセキュリティ-、夕張映画社など、SBIインターネットキャピタルが株主となっている会社が見つかりますが、SBIインターネットキャピタルの資産の金額・内容を教えていただけますか?こうした情報は東証・大証に開示した場合には当然必要とされる内容と思います。
質問5
ホメオ向け貸し出しは15億円だとお答えいただきましてありがとうございました。この貸し出しの条件、利率、期限、担保の有無などについてご教示いただけますか?有限監査法人トーマツの監査人の方々はこれについて正常債権と認識されているのですか?違う場合にはいくらの引当てが必要と言われているのでしょう?今までは間接的に完全子会社であったホメオが他人の所有物になったわけですから、債務履行がなされるかどうか、御社の株主の方々も関心があるのだろうと思います。
質問6
「ホメオスタイルの買主様への貸し出しはありませんでした」、とのことですが、もう少し具体的にうかがった方がよかったのかもしれません。2011年3月31日時点、2011年11月30日時点、それぞれ、買い手個人への貸し出しはありましたか?
質問7
社外取締役からの反対意見は出ていないとのことでしたが、本件取引はそもそも御社の取締役会に上程して決議されたのでしょうか?この質問の答えがイエスならば、それは、いつの取締役会だったのですか?出席の取締役はどなただったかも御教示いただけますか?
今回も明快なご説明をお願いいたします。
3月24日
SBIホールディングスへの第二公開質問状
3月8日にSBIホールディングスが出したリリースによると、同社は弊誌を名誉棄損で訴え、東京地裁で訴状が受理されたそうです(訴状がまだ届いていないので詳細は不明ですが)。
1月号の記事に対し、SBIホールディングスおよびSBIインベストメントの代表取締役CEOである北尾吉孝氏から届いた訂正要求と警告文(いずれ公開しますが)で、また書いたら訴えるとの趣旨の脅し文句を忠実に履行したものと思われます。
なぜなら、リリースを出す前日、弊誌は第二弾を準備中と宣言したうえで、北尾氏に昨年12月15日にこのブログで公開した質問状に続く第二質問状をお送りしたからです。訴訟好きの北尾氏、追い詰めればそう出るだろうことは承知の上でした。
前回はコーポレート・インフォメーション部から文書回答をいただけたのですが、今回はいきなりリリースで、うんともすんとも言ってきません。回答の意志があるかどうか、2月12日に確認の電話を入れたところ、「係争中なので回答はありません」と返答してきました。
「では、存分に書かせていただきます」と言いましたが、FACTA最新号にこちらもお約束どおり、「SBIが『連結外し』隠蔽」という記事を掲載し、オンライン上で公開された18日になって、SBIはリリースだけで回答してきました。奥ゆかしいですねえ。記事が出てからでないと回答できないのですか。後出しジャンケンとは、恐れ入りました。それだけ必死なのだ、と理解します。
全面戦争です。いや、北尾氏には最終戦争かもしれません。肉を切らせて骨を断つ、さてどちらが倒されるでしょうか。FACTAは白兵戦にも怯みません。
ところでFACTAに対し3件も立て続けに名誉毀損訴訟を起こし、みごと検査忌避で逮捕起訴されて訴訟を取り下げた日本振興銀行の木村剛被告は3月16日、懲役1年、執行猶予3年の有罪判決が下されました。感慨深いものがあります。
とにかく、どちらの言い分が正しいのか、質問状と記事を両方読みあわせてご覧ください。
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SBIホールディングス
SBIインベストメント
代表取締役執行役員CEO
北尾吉孝様
SBIの香港取引所開示資料について
ファクタ出版株式会社
月刊FACTA発行人阿部重夫
拝啓
時下ますますご清祥のことと存じあげます。2月6日付通知書で御社は弊社に対し名誉毀損訴訟を準備中であると告げておられますので、弊誌も第二弾の調査報道の準備中です。
SBIホールディングスが2011年11月25日、香港取引所で開示した英文資料について、確認も含めいくつかお尋ねしたいことがあります。資料によると、香港取引所の上場規則14条に基づき、売上比率5~25%の範囲内の子会社売却であるため開示すると前置きしたうえで、御社グループのHOMEO(ホメオスタイル)株17万9422株を“一個人”に売却し、ホメオを連結子会社から外したうえで、SBIがこの“一個人”との間でホメオ株と100%交換する会社としてIRIの名を挙げています。
質問は以下の通りです。
①本件取引は東京証券取引所では開示されていません。なぜでしょうか。
②香港のリリースでは、32億円の簿価のホメオを23億円で“一個人”に売却するのでSBIホールディングスは9億円の損失を被るとありますが、今期第3四半期決算のどこに計上されましたか。関係会社事業損失は4億2100万円で数字が合いませんので、投資有価証券売却損10億6500万円でしょうか。だとすると、100%子会社のホメオ株を投資有価証券とした理由は何でしょうか。
③我々の調査ではホメオは債務超過会社です。23億円の評価額は何が根拠なのでしょうか。その企業価値評価はどこが行いましたか。
④ホメオの11年6月決算では、負債31億円のうち短期借入金22億円が計上されていますが、これはSBIグループからの借り入れではないのですか。
⑤ホメオと全株式を交換されるIRIはインターネット総合研究所のことで、この“一個人”とはその創業者である藤原洋代表取締役所長でしょうか。
⑥藤原氏と見られる“一個人”は、香港のリリースでは、香港取引所の規定する利害関係者ではないとありますが、SBIグループ、もしくはその運営するファンドからの貸し出しはありませんか。あるのでしたら金額、利率などの融資条件はどうだったのでしょう。
⑦同リリースでは、SBIはこの“一個人”からIRI全株式を譲り受け、12年1月末日に売却代金23億円を超える金額の資産については当該“一個人”に返却することになっています。返却された資産の中身は何ですか。
⑧本件取引について、御社の監査人である有限責任監査法人トーマツは認識していますか。
⑨取締役会で社外取締役の方々も同意したのですか。トーマツご出身の渡邊啓司氏はどんな意見表明をしましたか。
以上です。東証上場企業が適示開示する場合、上記の点については開示が必要とされる事項だと思います。弊誌の締切もございますので、恐縮ですが3月12日(月)までにメール、ファクス、郵送等いかなる形でも構いませんが、ご回答いただけたら幸いです。
なお、御社監査人のトーマツの松尾清様、大仲康行様、遠藤康彦様にも同趣旨の質問状をお送り申し上げております。敬具
3月7日
訂正
3月20日発売の最新号(12年4月号)の雑誌版で、ミスがありましたので修正します。
22-24ページの高橋洋一氏寄稿の「『人身御供』白川日銀哀れ」の記事で以下の部分です。
23ページ2段目、11行目「そ他のの中で」は「その中で」に修正
24ページ3段目、「14日の日銀の措置で5年ほど円安」は「5円ほど円安」に修正
オンライン版では修正してあります。
雑誌版は印刷の関係上、間に合いませんでした。