Abalanceとベトナム、中国系相関図の謎

集中連載 5

Abalanceとベトナム、中国系相関図の謎

いよいよ、Abalanceの売り上げの大半を占めるベトナム子会社、VSUNに斬りこもう。もとは中国の太陽光パネルメーカーで、ナスダックにも上場したが、経営が悪化してAbalanceの子会社傘下に身を寄せた。だが、その企業譲渡や株主には数々の謎がある。またも東京・台東区のちっぽけな別会社を突き止めた。=記事は一部有料

前回記事では、昨年6月21日に弁護士や公認会計士らのチームが証券取引等監視委員会に出向き、Abalance(東証スタンダード)の開示内容に関する疑問点などに関する分厚い資料を手渡したことについて書いた。そして拙稿は「AbalanceとVSUN、そしてこれに群がる中国系人脈が、Abalanceの株主に内緒で何をしていたのか、そして彼らの臭気漂う関係がどんなものか――に深々と切りつけよう」と結んで大見得を切った。

今回はその続きである。

以下に掲げる種々の事歴はAbalanceの有価証券報告書にも掲載されていない点が多いが、信憑性の点においては同社の有報より上だろう。なにしろ香港の弁護士らが会社登記などの公開情報を徹底的に収集し、これをもとに冒頭で触れた弁護士・会計士らが報告書を作成したからだ。いわゆるOSINT(Open Source Intelligence)の手法を、国境をまたいで駆使して作成された報告書が証券監視委に持ち込まれたと言える。

そこにはこれまでの記事にも登場していない人物群や企業群(企業としての実体が希薄な会社も含む)が数多く登場し、ややわかりにくいが、できるだけわかりやすくまとめたつもりだ。

ナスダック上場企業のなれの果て

話は20年前に遡る。

2004年8月、中国人実業家の陸廷秀が中国・南京で太陽光パネルメーカーを立ち上げた。社名を中電電気(南京)光伏有限公司と言うが、CSUNと記述した方が通りがいいだろう。事業拡大が進んで2007年にはCSUNはナスダック上場を果たすからだ。

この年の6月、CSUNは中電電気(上海)太陽能科技有限公司(SST)を 100%出資子会社として設立する。これが後にCSUNの事業を実質的にVSUNへと移し替える橋渡し役になるから覚えておいてもらいたい。

一方、CSUNが上場を果たした頃の米国株式市場や金融・資本市場には黒雲が立ちこめ始める。米国の住宅バブルが崩壊してサブプライムローンを組み入れた資産担保証券の元利払いが不安視されると、8月に仏BNPパリバ傘下のファンドが投資家からの解約を凍結し、これをきっかけに信用不安が広がった。信用不安は金融機関を次々に飲み込み始め、翌年には投資銀行のベアー・スターンズがJPモルガンによって救済買収され、米国政府は連邦住宅抵当公庫のファニー・メイやフレディ・マックを公的管理下に置いた。

そして2008年9月にリーマン・ブラザーズが経営破綻に追い込まれると、資本市場から金融市場、さらに商品市場から不動産市場まで、世界中の市場という市場は止めどなく崩落した。リーマン・ショックである。

そのあおりを受けたのがAbalanceの前身である旧リアルコムだった。米国で買収した子会社がリーマン・ショックの影響で業績が振るわず、リアルコムはそののれん代の償却を求められて債務超過に陥り、上場廃止の瀬戸際に追い詰められたのだ。

そこに現れたのが、龍潤生らが率いるWWBだった。この頃、WWBはCSUNの総代理店をかたって旧リアルコムに接近しており、これを信じたリアルコムはWWBの提案を受け入れた。何らかの事情で上場できない会社が、窮境に陥った上場企業と株式交換によって「裏口上場」を果たす乗っ取りである。

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