Abalance、謎のベトナム子会社と暦屋
        Abalanceのホームページに登場するベトナム子会社「VSUN」は、Abalanceの連結売上高の95%を占める

集中連載 4

Abalance、謎のベトナム子会社と暦屋

昨年6月、証券監視委に弁護士ら3人が渡した厚さ10センチの分厚いバインダーの資料。折しも❝新疆❞産パネル疑惑で株価が急落し、市場は阿鼻叫喚だった。浮かんできたのは連結売上高の95%を占めるベトナム子会社といい、御徒町の大株主といい、中国人つながりの不可解さ。

私と恋人のAbalance(東証スタンダード)に別れの秋が忍びよってきた。Abalanceに深刻な危機が訪れているのだ。

決算に対する信頼が揺らいでいるところに、インサイダー取引容疑でこの5月に前執行役員が逮捕され、役員の交代や中期経営計画の数値目標取り下げなどがこれに続いた。

またもや監査法人が交代

さらには前号で「監査法人や主力取引銀行が交代した企業には要注意」と書いたら、7月29日にAbalanceは監査法人の交代を発表した。アスカ監査法人に代わって、今期、つまり2025年6月期から中部総合監査法人が監査業務を引き継ぐという。監査法人の交代は旧リアルコム時代から数えて5度目だから、これだけ忙しく交代する上場企業も珍しい。

「監査品質を維持するための体制を組むことが困難」というのがその理由だが、これは監査法人が交代する時にしばしば使われる、よくわかったような、わからないような言い条だ。はっきりしているのは、アスカ監査法人から縁切りを言い渡されたことだろう。走り始めた今期はさておき、監査業務の真っ最中である前期の決算についてどうするのか、アスカ監査法人に取材を申し込んでみた。以下は質問状のうち、取材の趣旨を記した箇所だ。

去る8月9日に公認会計士と元検察官の弁護士のチームが『Abalance株式会社の上場廃止に関する考察』と題するレポートを金融庁に提出したとの情報を得ました。そこでは「Abalanceとその子会社VSUN社に関して2018年4月にVSUNの株式取得以降、常態的にVSUNに関連する重要な事項を開示していないことは重大な上場契約違反に該当すること、またVSUNを持分法適用会社から不適切に除外し、さらには有償支給取引の会計処理の訂正が組織的な不正による売上と利益の嵩上げに起因するもので悪質性の高い有価証券報告書等の虚偽記載の訂正に該当すること、さらには、有償支給取引に関する監査等委員会及び監査法人の対応、持分法適用会社から不適切に除外したことに対する監査法人の対応等を総合的に判断すれば、Abalance社を上場廃止にするべきであると思料します」と記されており、Abalanceの不正会計のほか、貴監査法人の責任も指摘する内容になっています。

上の取材の趣旨については、多少の説明がいる。金融庁にレポートを提出した会計士と弁護士のチームは、証券犯罪に強い専門家であり、Abalanceやその経営陣によって事業上の痛手を受けた人物や株主の意を受けて動いている。そんなチームが証券監視委に情報提供したことこそ、Abalanceが直面する経営危機の最大の要因だろう。

ベトナム子会社「VSUN」の謎

質問状を読んだ読者は「VSUN?唐突にベトナム子会社の名前が出てきたのはなぜ?」と思うかもしれない。この連載では、Abalanceには循環取引による売上高の水増し計上の疑いがあることや、それに伴って下請け企業との間で資金の不自然なキャッチボールが行われていたこと、金融機関から融資を引き出すために工事の偽装工作を行っていた疑いがあることなどを指摘してきたが、VSUNに関する深刻な問題について触れるのは、初めてだからだ。

そのVSUNとは、Abalanceのベトナム子会社Vietnam Sunenergy Joint Stock Companyのことである。2018 年にAbalanceの傘下に入った太陽光発電パネルメーカーだ。有価証券報告書によると、Abalanceの子会社WWBがFUJI SOLARを通じて2018年に子会社化した。2015年にベトナムで設立されたこの会社は、売上高が毎年3倍に拡大する急成長を遂げ、今では太陽光パネル製造事業はAbalanceの連結売上高の95%を占めるに至った。しかしVSUNには不明瞭な点や不自然な点が少なくない。

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