Abalance、宮城では信金に「目くらまし」
         1年前に完成したばかりの宮城県黒川郡のAbalanceの太陽光発電所。手前の若木はまだちょぼちょぼ

集中連載 3

Abalance、宮城では信金に「目くらまし」

ストイカの追及で資金繰りが苦しくなったか? SPCで56億円調達は失敗、実質支配の取締役は保有株を担保差し出し。だが、既報の福島に限らず、宮城黒川郡の太陽光発電所でも、入金即出金の不自然な資金操作ばかりか、融資を仰いだ大阪の信用金庫担当者の視察に、中断した工事を「偽装再開」させるなど、まだまだブラックな材料が目白押し。

連載第1回の後、我が“恋人”Abalanceが愚にもつかないニュースリリースを出してきたので、それがどれほど中身のないものであるのかを証明しようと、連載第2回では当初の計画にない「ストイカ状」を書かざるを得なくなった。

この間も筆者はAbalanceに質問状形式でラブレターを出し続けている。が、色よい返事をもらえない。厳密に言えば、返事は来るけれど実質的にゼロ回答だ。連載第1回の「特捜案件『Abalance』の不都合な真実」で取り上げた、売上高の水増し計上が疑われる不自然な入出金は、市場参加者の耳目を集め、Abalance株は急落した。Abalanceがゼロ回答なのは、これがお気に召さなかったようだ。

龍潤生取締役が株を担保差し出し

その後もAbalanceが株価浮揚の頼みとしてきた、特別目的会社(SPC)を通じた資金調達も大失敗に終わった。当初は最低でも4000万ドル(発表当時のレート換算で56億円)を調達する予定だったが、実際の調達額はよもやの10億円割れ。上場を維持できるかどうかも雲行きが怪しい。

資金繰りが厳しそうなのは、実質的なAbalanceの経営トップである龍潤生取締役も同じだ。6月14日には、龍潤生取締役が大量保有報告書を関東財務局に提出。それによると、龍氏は保有するAbalance株のうち41万6700株を東海東京証券に金銭消費貸借契約の担保として差し出したとのことだ。さらに7月5日にはやはり同証券に対して18万3300株を担保として差し出している。報告義務発生日の終値で換算すると、合計で約7億9000万円にのぼる。

ある市場関係者は「証券会社は銀行のような融資は行わないから、龍氏個人の信用取引に関連する担保差し出しでしょう。信用取引の損益状況と、Abalance株下落の連立方程式」とみる。

どういうことか。

龍氏が自身で保有するAbalance株を担保に信用取引をしていたが、投資対象銘柄が思惑とは違った動きをして損失が発生、追い証(追加担保)の提供を求められるようになった可能性。

以前から担保として差し出していたAbalance株の下げがきつくなり、担保価値が目減りしたために追加担保を差し出すよう求められた可能性。

――①と②が絡み合って(どちらかの解がゼロである可能性もある)、大量保有報告書に記したような担保提供を迫られるに至ったとみられるという。

そもそもAbalanceはまともな投資対象にはなり得ない銘柄だ。上場してから17年近く経つのに、証券会社は主幹事証券さえ担当アナリストを付けず、企業からの依頼で投資リポートを作成する調査会社が付いているだけ。しかも大株主には生損保などの機関投資家がゼロなのは、コンプライアンス(法令遵守)上の問題を抱える銘柄への投資を忌避する機関投資家がどう見ているのかを映し出している。

監査法人転々のエンガチョ銘柄

怪しげな銘柄を見極めるうえで、経済紙の駆け出し記者がたたき込まれるポイントの一つに「監査法人や主力取引銀行が交代するのは、その会社によほどの問題が隠れていると思って警戒せよ」という点がある。

Abalanceの場合、監査法人がコロコロと変わった。

上場当初は霞が関監査法人だったのが、2013年6月期から清和監査法人(現RSM清和監査法人)に交代。2015年6月期から監査法人アヴァンティアが引き継ぎ、2018年6月期からは應和監査法人が、2019年6月期からアスカ監査法人が担当している。監査法人が距離を置きたくなるような何かがあると見るのが正札なのだ。

さて、連載第1回では、Abalanceには下請け企業との間に不自然な資金の出入りがあり、売上高の水増しや循環取引の疑いがあることを報じた。おさらいをかねて詳細を説明すると、Abalanceには億円単位の不自然な資金の出入りがあり、それは循環取引や売上高の水増し計上を疑わせるものだった。

問題の入出金は福島県の大波芽久保ソーラー第一・第二発電所にまつわるもの。古川信用組合(宮城県大崎市)、杜の都信用金庫(宮城県仙台市)、商工中金(東京都中央区)を舞台に、WWBから1億数千万円の資金が施工業者のARCAの口座に振り込まれ、これをその日のうちに別の銀行口座に移させたうえで、WWBに返金させる――。筆者の記事にはこの不自然な資金操作が2020年2月27日と28日に2日続けて行われたことを示す銀行通帳のコピーを貼りつけた。2日続けて1億数千万円ずつ誤送金するなんてありえないだろう。

実はAbalanceのこうした入出金は上記の福島県の工事案件だけではなく、宮城県内の発電所でも行われており、それはみずほ銀行と商工中金、さわやか信用金庫の口座を用いた、より大規模なものなのだ。しかも、それは経営上層部が認識した上で、つまり組織ぐるみで行われていた可能性が高いのだが、これについては後段で詳述しよう。

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