どたける浅井・豊橋市長に公開質問状

「産廃」の関心領域シリーズ 4

どたける浅井・豊橋市長に公開質問状

折しも10月末の衆議院選挙に、11月は市長選挙とダブルヘッダー。産廃疑惑のみならず、豊橋市の暗部が致命傷になりかねない。愛知15区の現職、根本幸典氏は旧安倍派の裏金議員。市長一期目の浅井由崇氏の頼みの綱だが、はや足もとから亀裂が走って、風雲急を告げている。=全文無料

 

前回記事では、成和環境の小島達也社長が9月の市議会が始まる直前に伊藤篤哉・市議会議長を訪問、その帰途で社内向けに「(廃棄物埋め戻しの件は)議会で取り上げられることはないと確認してきました」と連絡しており、水面下で事前の調整が試みられていたことを報じた。

さらに「浅井由崇・豊橋市長が取材をかわし、一連の問題について頬被りしている理由や背景を取材しているうちに、市長自身が廃棄物問題とは別に抱えている様々な問題が次々と浮かび上がってきた」――と書いた。今回はその続きから始まる。

今回の記事を書くにあたって、本人の認識や見解を問うために改めて浅井市長宛てに質問状を送った。市内に点在する不法投棄や実質的な廃棄物の問題が放置されていることに市長としてどう対処するのかを中心に、浅井市長によるパワハラの問題や選挙資金の問題など数点を問い質す内容だが、同市役所企画部秘書課を通じて「回答を差し控える」とのことだった。

浅井由崇・豊橋市長(豊橋市ホームページより)

浅井市長が沈黙しているのには訳がある。11月に市長選を控えている浅井市長にとって、あるいは廃棄物問題以上に大きな痛手になる問題も含まれているためだ。それもワン・ストライク・アウト――つまりストライクひとつでアウトを宣せられかねない、政治生命上の致命的問題である。

浅井市長から回答を得られなかったのは残念だ。仕方がないので、浅井市長宛ての質問状をこの場で公開質問状に切り替え、質問内容をここに公開して市長選で誰を選ぶか、豊橋市民の判断材料にしてもらおうではないか。

西七根は三度も「頬かむり」

最初の質問は成和環境の不法投棄疑惑についてだ。昨年6月に土砂崩れを起こした西七根では2021年以降、別の箇所も含めて数カ所にわたって土砂崩れを起こし、地元民の通報を受けて一部の豊橋市議と地元選出の愛知県議が豊橋市役所に修復を求めた。2021年から昨年6月までに少なくとも三度は土砂崩れを起こしているのだ。このとき対応した豊橋市役所の道路維持課は「あれは産業廃棄物。税金を投入して修復することはできない」として突っぱねた。

そう、廃棄物対策課か道路維持課かという違いはあるが、この頃から豊橋市役所は西七根一帯に成和環境の不法投棄があったことを把握していたのだ。この時は結局、成和環境が修復に当たった。関係者の証言によれば、成和環境と接点があった愛知県議が同社に修復を働きかけたのだという。

今年6月の試掘調査がおざなりなもので、廃棄物対策課が深さ50センチほどを掘っただけにとどめたのも、前回記事で2020年(令和2年)に怪文書がばらまかれたときに「恐ろしい問題が潜んでいます」と書かれていた西七根については、現地調査をしないまま「不適正な内容はみられなかった」と結論付けたのも、同課が不都合な真実には敢えて触れようとしなかったとみて間違いないだろう。歴代の環境部長の責任が問われかねない問題だからだ。

市民病院の隣だけでない集積場

さて、筆者は西七根の問題以外についても廃棄物問題について質問した。豊橋市民病院隣の集積場についてである。

――豊橋市民病院東隣(青竹町と石洲)に大量の青いパッケージが野積みされ、これを管理する会社は市民や市役所に対して「これは有価物である」として、事実上放置しているに近い状態です。よく似た事例が茨城県石岡市でも問題になっていましたが、業者が「リサイクルして海外に売る」と言い続けていた大量の廃棄物の強制撤去がつい先日、始まりました。同じような廃棄物の山は豊橋市内のあちこちで見つけることができ、豊橋市民は他の自治体と豊橋市の違いを思い知らされているのではないでしょうか。

万一、廃棄物が崩れて道路を塞いだり、何らかの原因で自然発火するなどした場合、市民病院の運営や救急搬送にも影響が出かねません。環境部廃棄物対策課は「有価物である以上、廃棄物対策課では対処できない」との立場ですが、浅井市長はどのように認識しておられますか?

「530運動」が泣く?豊橋市民病院と東隣にうずたかく積まれた青いパッケージの山

1975年に全国に広がった「530(ゴミゼロ)運動」発祥の地である豊橋市だが、市内には何年も野外にうずたかく積み上げられたままの「リサイクル資源」の山が方々にある。豊橋市民病院の隣に積み上げられた青いパッケージの山はその一つだ。これらが何らかの理由で発火、炎上すれば、隣接する豊橋市民病院はその煙のために日々の運営に支障が生じかねない。

しかし学生時代には早稲田大学雄弁会に属して弁が立つはずの浅井市長は、この質問にも沈黙したままだ。

秘書2人が相次いで「鬱病」

浅井市長のパワハラ疑惑についても質問した。

――浅井市長が豊橋市長に就任してからの3年間に、秘書課の職員2人が市長によるパワハラで鬱病になったと聞いております(中略)。兵庫県などの例を見るまでもなく、首長によるパワハラは全国ニュースになって一発退場になるケースが少なくありませんが、浅井市長ご自身はパワハラの心当たりはありませんか?

という内容だ。

実は豊橋市役所では、浅井市長のパワハラ体質は公然の秘密である。市役所の内か外かを問わず浅井市長が「どたける(三河・遠州地方の言葉で「暴れる・怒鳴り散らす」の意)」ところが目撃されている。市庁舎の内部はもちろん、ある時は乗客がいる新幹線の中で市職員をどたけて、その直後に「新幹線の改札を出たところでも市職員をどたけていた」とは、ある豊橋市民の証言だ。

同様の場面に居合わせた関係者に聞くと「何らかの具体的な問題について厳しく叱責するのではなく、些細なことで『お前、こんなこともできないのか』と大声でやり始める」のだという。

こんな調子だから、2020年に豊橋市長に就任してから、2人の秘書がパワハラで鬱病を発し、別の部署に異動していて問題は深刻だ。市役所内では鬱病を患うことになった2人について、多くの職員が口をつぐんで何も語ろうとはしないが、ある関係者が匿名を条件に明かしたところにより、これら2人の氏名も現在の配属先も6ケタの職員番号も把握できた。

殷鑑遠からず、兵庫県前知事のひそみに倣うのか。

選挙期間外でも「陣中見舞い」

浅井市長は、前回の市長選時の選挙資金にも問題がある。

――令和2年の豊橋市長選挙時に作成された「選挙運動費用収支報告書」を確認したところ、10月31日に「浅井よしたかを応援する会」から陣中見舞いとして400万円が振り込まれた旨、記載があります。同選挙の選挙期間は11月1日から7日であり、専門家の言によれば、「厳密にはそれ以前・以降のやり取りは陣中見舞い(寄付)とは認められず、所得として計算するのが適当である」とのことでした。

また11月25日にも、同様に50万円が入金されていますが、これは明らかに選挙期間中とは言えず、公職選挙法違反の疑いがありますし、寄付として認められない場合、所得として扱われ、税務申告していなければ脱税になる恐れがあるとも聞いております。

首長の選挙活動資金に不審な点があったり、脱税の可能性があるのでは、納税者の理解を得るのは難しいのではないかと思います。上記の陣中見舞いについて、どのように処理なさったのか具体的に伺いたいと思います。

上記の質問にも浅井市長は沈黙したままだ。株式市場に上場する企業には“comply or explain”(コンプライ・オア・エクスプレイン)の原則が課せられる。「法令を遵守せよ。さもなくば説明せよ」という意味であり、株式市場に限った話ではあるまい。

以上のほかにも豊橋公園に建設予定のアリーナについての問題や、市の法律顧問などについての質問も盛り込んだが、それらは事実確認程度の質問内容だったり、問題の深刻さの度合いが異なるため、ここでは割愛しよう。

商工会議所が規約「違反」?

説明責任から逃げ回ったまま、浅井市長は11月の市長選を迎える。10月8日に豊橋市公会堂で開かれた、豊橋商工会議所青年部による「浅井よしたか企業後援会大集会」は選挙を意識したイベントだっただろう。その式次第には連合後援会の大須賀憲太会長やヤマサちくわの佐藤元英社長、豊橋農業協同組合の伊藤友之組合長ら、地元財界の重鎮の名がずらり。

豊橋商工会議所の神野吾郎会頭

そもそも商工会議所の規約には「商工会議所等は、これを特定の政党のために利用してはならない」などと定められており、青年部による開催はこれに違反する恐れがあるうえ、「豊橋商工会議所会頭神野吾郎」としてスピーチが組まれ、ヤマサの佐藤社長も会場では副会頭として紹介された。神野会頭はサーラコーポレーション(東証プライム市場上場)の経営トップである。選ぶ方も選ばれる方もルールや立場などお構いなしか。

これについて豊橋商工会議所とサーラコーポレーションにコメントを求めたが「担当者が不在」とのことだった。

しかし11月に予定されている市長選では、浅井市長の足もとに亀裂が走っている。

前回選挙では連合愛知の推薦と共産党の自主支援を受けたが、今回の選挙で最も浅井市長が頼っているのは地元愛知15区選出の根本幸典衆議院議員(自民党所属)。一連の不法投棄問題でもメディアの追及が始まるや、浅井市長が「何とかしてほしい」とすがりついたのが根本議員だという噂が、豊橋市民のあいだで流れている。もっとも根本議員は、自らの裏金問題や自民党総裁選、衆院解散・総選挙に忙殺されて、不法投棄問題どころではなかっただろう。

裏金議員の足もとでねじれ

ところが市長選が近づき、矛盾が浮き彫りになってきた。市長選で自民党が推薦しているのは近藤喜典・元豊橋市議会議長なのに、自民党所属の根本議員が近いのは浅井市長だからだ。「自民党として誰を推すのか」でねじれが生じているのだ。

そのため、これまで浅井市長や根本議員と足並みを揃えてきた愛知県議(自民党所属)が最近になって袂を分かち、浅井市長から離反した。また、前回は浅井市長の自主支援に回った共産党は、別の候補を推す構えだという。前回選挙とは支援の構図がずいぶん異なるのだ。

しかも頼みの綱の根本衆議院議員は、旧安部派の陣笠議員だが、裏金問題に連座し、後援者に「東京地検とは司法取引ですべて話しており、オレは逮捕されない」と言い放った。後援者に「もはや現在より上のポジションを望むことはできないのだな」「いずれ豊橋市長になるつもりなんだろう」と見透かされており、国会議員としての貫目や影響力が軽くなっているのは間違いない。

地元財界でも、これまで浅井市長を支持してきた地元食品メーカーの経営トップがこっそり距離を置き始めており、必ずしも一枚岩ではない。

10月27日の衆議院選挙と、11月に予定されている豊橋市長選挙。このダブルヘッダーの結果次第では、豊橋に激震が走る。(つづく)■

 

***********************

編集部より本シリーズは全回を無料でご覧になれます。前回の第三回だけ一部有料としましたが、入会の際にカード支払いが逆探知されると誤解した方がいらしたようです。ストイカは決済を代行会社Stripeに任せており、登録会員の管理上メルアドだけ必要ですが、氏名、住所、属性、クレジットカード番号などは一切探知できない仕組みですのでご安心ください。以上のことから本シリーズは非会員であっても、どなたも閲覧自由とすることにしました。ふるってご覧ください。

 

他の記事