ここ掘れワンワン、豊橋試掘の茶番劇

「産廃」の関心領域シリーズ 2

ここ掘れワンワン、豊橋試掘の茶番劇

論より証拠。やっと始まった市の試掘作業は、あってはならない廃棄物を掘りあてる〝想定外〟で中断した。だが、昨年の埋め戻し時点で、作業員が口を滑らした録音録画がある。ストイカがYoutubeで公開、4年前には怪文書も流れた。トヨタ系、ホンダ系、三菱ケミカル、中部電、花王、東京製鐵など廃棄物処理の委託企業も知り得たのでは? =全文無料公開

また6月がやって来た。2023年6月2日に集中豪雨とそれに伴う河川の氾濫や土砂崩れが豊橋市を襲ってから1年が過ぎたのだ。そして1年前の被害を想起させるように、台風もまた来た。

台風1号の小雨降る夕方

5月26日にフィリピン沖で台風1号になった<イーウィニャ>は日本でも「災害級の大雨が降る恐れがある」と報じられながら、本州の南岸をかすめるように通過。幸いにも台風は本州を直撃することなく、太平洋上を北東に進みながら5月31日に温帯低気圧になった。四国や東海地方でも災害級の大雨が降る可能性があると報じられたとき、豊橋市に大雨が降らないよう祈るような気持ちになったのは成和環境だっただろうか、それとも豊橋市だっただろうか。

豊橋市西七根の農地が昨年6月の大雨で土砂崩れを起こし、海水浴場につながる道路と水路を塞いだ。土砂には大量の不法投棄物が含まれており、これが地表に現れた。汚泥や建築廃材、ドラム缶など、不法投棄物は大量であり、周囲は畑に囲まれて土壌汚染の可能性も否定しきれない。市民が豊橋市環境部の廃棄物対策課に通報したが……というのがストイカ・オンラインが6月1日に公開した第一報の概要だ。

関係者によると、第一報を受けて豊橋市役所には市民から問い合わせや、懸念を訴える電話が多く寄せられており、その対応を巡って、地元の政界も割れていると聞く。そればかりか、地元政治家のカネに絡んだスキャンダルも取り沙汰されて、これが今秋の市長選や補欠選挙への影響が予想される事態になりつつあるというから、土砂崩れは廃棄物を白日の下に晒したばかりか、地元政界の闇の部分まで暴き立てようとしている。

しかし、ここではそれは措くとしよう。我々、ストイカがなすべきは、行政のあり方を問いつつ、どの政治家を信ずべきかを決める材料を市民に提供することだ。

豊橋市が重い腰を上げて、土砂崩れ箇所を本格的に調査するべく準備を始めたのは、イーウィニャがフィリピン沖にありながら、本州にも雨を降らせた5月27日である。この日、埋め戻しに当たった社員を立ち会わせて、試掘に向けた準備に取りかかったのだ。朝から雨がやまず、現場での試掘箇所の確認は小雨になった夕方16時に行われたという。

重い腰を上げて2カ月半

通報者が豊橋市役所の環境部廃棄物対策課を訪れてから、すでに2カ月半ほども経っていた。通報を受けて1カ月ほども手を着けずにいた同課だったが、その後も無為に過ごしていたわけではない。4月30日には成和環境に立ち入り検査を実施し、5月7日には埋め戻し作業に当たった社員に聞き取りも進めた。第一報で添付した画像に写っていたコンクリートの破片やドラム缶、ビニルシートなどの有無や、埋め戻しの経緯について聞き取りが進められた。

こうした聞き取り調査の一方で、同課は土地所有者である豊田能史・成和環境会長(当時)に連絡を取り、現地への立ち入り調査に向けて承諾を取りつけた。これが5月13日である。

こうして本格的な試掘調査が始まったのは、6月19日午後3時である。前日に降った大雨のせいでせっかく造成した斜面が再び緩み、土砂崩れを起こさないか、この日の朝に判断したうえで廃棄物対策課と成和環境の計8人が現場に参集している。筆者らメディア関係者は<土砂崩れ箇所に面する道路からなら>という条件付きで、試掘調査の取材が認められており、調査を遠巻きに眺めている。

掘りあてたらそこでストップ

筆者が7カ月あまり前にこの地を確かめに来たとき、形成されたばかりの法面には一本の草もなかったが、この日は生い茂り始めた夏草で地表はすっかり見えなくなっている。

午後3時になって、小型のパワーショベルのエンジン音が響き、試掘調査が始まった。階段状に造成された崩落箇所で大型の重機を使うと、その重みでまた土砂崩れを起こしたり、重機ごと転落する恐れがあるとの理由で、小型のパワーショベルを使うことになっている。しかしそれでは1メートルほどの深さしか掘り進めることはできず、十分な試掘ができるかどうか。

どこを何カ所掘るのかは事前に決まっている。埋め戻し作業に当たった社員本人が操縦するパワーショベルはバケットを地面に突き入れ、少し掘っては紅白のポールを突き入れて深さを測りながら、試掘は進められた。その現場に参集した者たちは談笑しながら

「ないですね」

「出て来ない」

と口々に話しているのが、作業現場に面した道路にいる筆者らの耳にも届いた。

ところが、それからしばらくして、あってはならないはずの物が出てきた。別の箇所を深さ50センチほど掘ったところで、レンガ片や木くず、ペール缶などが見つかった。廃棄物が見つかったらそこでストップするという当初の方針に従って、この日の試掘は終わったが、もう少し広範囲に、もう少し深く掘っていたら、何が出てきたことか。

ただし、見つかった廃棄物の量が少なかったことから、これを廃棄物と判断するかどうかはいったん持ち越しとなった。が、6月27日、廃棄物対策課は「埋め戻しは認められない」と判断した。掘り起こした物がいつ埋められたのか、はっきりしないのだという。

裏のはたけを掘ったれば

かわらや瀬戸欠けがらがらがらがら

「花咲かじいさん」の童謡の一節、覚えていますか。ここ掘れワンワンで、大判小判を掘りあてた花咲かじいさんと違って、いじわるじいさんは思惑はずれだが、それとそっくりの場面が笑える。

さて、ここで話が少し変わる。

埋め戻し作業員の証言に「?」

廃棄物対策課によると、埋め戻した社員は試掘調査前の聞き取りに対し、「6月の大雨で斜面が崩落し、10月に土砂で覆われた道路を補修するよう指示が出た。作業者が独断で造成工事を行い、担当社員に事後報告した。社長はこの担当社員から報告を受けて認識した」「斜面を掘削したらコンガラ(コンクリートの破片)が出てきたので、10トントラック2台分の廃棄物を同社の中間処理施設の弥栄工場に運んで適正に処理した」「(写真に写っている)ビニル等には気付かなかった。表出したのは汚泥ではなく堆肥だった」と説明している。さらには、成和環境の社長が埋め戻しを指示したわけではなく、土砂崩れで表出したコンクリート片などは適正に処理しており、問題はないとの説明である。

この言葉を額面通りに受け止めるかどうか、豊橋市役所は決めておらず、あくまでも成和環境側の言い分を聴取したに過ぎないとのスタンスだ。

ところがこの聞き取り内容と食い違う証言がちゃんと残っているのだ。

証言の主はほかならぬ、昨年埋め戻しを行った作業員自身である。問題の埋め戻し作業中に地元住民に問われて、作業の経緯や内容について答えているのをスマホで撮った動画だ。そこには、成和環境の指示で土砂を片付けていると話しつつ、ゴミを「埋め戻している」ことを説明する社員の姿と声が残っている。

昨年10月に録画録音したその画像データ(計9分20秒)を、誰でも見られるYoutubeに字幕付きで公開しよう。HTMLのアドレスはhttps://youtu.be/J4KBMjS18usなので、読者には積極的な拡散をお願いする。リンクを張ったので、下線部分をクリックしてやりとりをとくとご照覧あれ。

(編集部注=なお、このファイルをダウンロードする場合は、画像・音声データが重く10分近くかかるため、データを軽くした圧縮簡易版https://youtu.be/M04iYTg_Sdsもご利用ください)

もちろん、人権上の配慮から、この作業員と聞き質している市民の顔はモザイクで丁寧に消し、音声も万が一にも再現できないようプロに頼んだ。ジタバタしても無駄である。もとの動画ファイルには声も顔も鮮明に残っており、上記の説明と食い違う部分の多い説明内容だったことは、逃げも隠れもできない。

昨年10月、松前谷で市民が作業員に聞き質した日のパワーショベル

さあ、豊橋市廃棄物対策課はどう答える?これで「埋め戻しは認められない」などと強弁するつもりか?耳を澄まして作業員当人の弁を聞くがいい。市の聞き取りをやり直すべきだろう。画像などの証拠はまだたっぷりある。Youtubeで次々と豊橋の恥がさらされていいのか。

筆者は成和環境や、まして埋め戻し作業にあたった社員を攻撃するのを目的として記事を書いているわけではない。そうではなく、一度過去を清算してみてはどうかと言っているのだ。

試掘の結果をねじ曲げて<廃棄物はなかった>と結論づけたところで、また大雨が降って西七根が再び崩落したときに廃棄物が表出する可能性があるし、そのときに犠牲者が出ないとも限らない。上記の動画で埋め戻している作業員本人が「また崩れる」と言い放っているほどだから、これほど心許ないことはない。本格的な夏を迎えて、七根海岸が家族連れの海水浴客やサーファーで賑わうようになるのだ。これらの客が土砂崩れに巻き込まれでもしたら、豊橋市も成和環境も大きな批判を免れることはできまい。

さて、この不法投棄を角度を変えて眺めると、産業廃棄物処理を取り巻く関係者の無関心が起こした問題とも言える。

令和2年に出回った「怪文書」

ほんの数年前にはこんな文書が出回ったことがある。

「突然ではありますが、ゴミを成和環境(株)に委託している皆さんには事実を伝えたいのでお送りします。この手紙は成和環境(株)が長年に渡り皆さんを欺き、環境汚染している事実を内部告発するものです」(原文ママ)

と始まるその文書の日付は、令和2年11月30日付けになっているから、土砂崩れを起こす2年半ほど前ということになる。「成和環境株式会社による不正行為についての告発」と題したこの文書は、宛先として「代表者様へ」とだけ書かれているだけだが、文章の脈絡から推して、成和環境に廃棄物処理を委託している排出事業者に向けたものとみられる。そこには「我々は、元従業員で、環境を守る仕事であるはずが同社の不誠実な仕事への向かい方に怒りを覚え、また不当な扱いを受けて退職したものです」とも記されている。

成和環境に廃棄物処理を委託している事業者には、地元企業では東海漬物やヤマサちくわなどの非上場企業の他、その地理的環境のためか自動車メーカーも多い。トヨタ自動車系ではトヨタ車体、東海理化、ホンダ系では武蔵精密工業などが挙げられる。他にも自動車部品メーカーではユニバンス、自動車メーカー以外では中部電力や三菱ケミカル、花王、東京製鐵など。いずれも上場企業であり、コンプライアンス(法令遵守)に厳しいこれらの企業に送られた可能性がある。廃棄物がどう処理されているのかを、これら排出事業者が最後までチェックする姿勢を忘れていなければ、見逃されることはなかったはずの不正なのだ。

当時、この告発文は<怪文書>として扱われ、不発に終わった。しかし昨年の土砂崩れで不法投棄物が大量に出て来てしまった今、文書の内容を問い直す意味はいやが上にも高まったと見なければならない。

その文書はA4サイズの用紙でわずか1枚という短さで、お世辞にも整った文章とは言えない。しかし問題点を簡潔に列挙し、「弥栄工場の不正」と「運搬の不正」に分けて指摘している。

そこで言う「弥栄工場の不正」とは不法投棄に関する問題だ。

虚偽マニフェストには厳罰

成和環境の弥栄工場は中間処理施設である。中間処理施設とは一般に集めた廃棄物を最終処分する前に、ここで脱水・焼却・中和するが、弥栄工場の場合、廃棄物を破砕・圧縮する。それによって無害化、安定化された廃棄物は最終処分場に運ばれて埋め立てられる。文書では地元住民との間で取り決めた操業時間外にも工場を稼働させていることや、顧客の事業者から収集した廃棄物を未処理のまま工場敷地内に埋め立てていること、そしてその廃棄物は建物の下に投棄されているとのことだ。

そしてもう一つ、「運搬の不正」とは<マニフェスト>と呼ばれる産業廃棄物管理伝票についてだ。産廃が契約通りに適正に処理されたかどうかを確認するための伝票があり、排出事業者が処理業者に廃棄物を引き渡すときに交付することが義務づけられている。この伝票をマニフェストと呼び、虚偽の内容を書き込めば法律違反となる。1年以下の懲役または100万円以下の罰金などが科される厳しいものだ。

告発状には成和環境が廃棄物の運搬を外部に委託しているのに、自社で運搬しているかのように記入していることが指摘されている。

そして最近の廃棄物対策課による調査に、その一部を成和環境が認め始めた。ところが、豊橋市はこれも行政処分ではなく、文書指導で済ませることにした。不法投棄物ばかりか、一連の問題が埋め戻されることになったのだ。(以下、次号)■

他の記事