「東証の恥部」連載再開 9
Abalance最後の抵抗、「屋上屋」の検査委
第三者委員会の調査で「粉飾」という禁句を用いて不正が認められてしまった、我がAbalanceが沈没寸前だ。2025年12月25日には国本亮一社長と藤澤元晴副会長が、その翌日には龍潤生会長兼最高経営責任者(CEO)が辞任を発表した。だが、本当の意味で審判が下るのはこれからだ。 =一部有料
2025年12月17日に公表された第三者委員会の調査報告書は、経営上層部が刑務所行きさえ覚悟して不正を働き、それを隠蔽しようとしていた様がえぐり出されていた。その内容に溜飲を下げた関係者は少なくない。しかしAbalanceはその調査報告書の中身に不満があるらしく、検証委員会を立ち上げると言い出した。
検証委員会?Abalanceの1月8日付発表ではその設置理由について「第三者委員会調査報告書の結論の前提とされた『財務報告における虚偽記載の不正が故意のみならず重過失をも含み得るという会計上の慣行』についても、必ずしもその根拠が十分に示されてはおらず、当事者の納得が得られているとは言い難い面があります」と記している。
ここで言う「当事者」とは龍氏のことではないのか?
「納得しない当事者」とは
なぜなら第三者委の報告書では龍氏が調査委メンバーに対して、深夜に「仮に結論が不正であれば、私は決して納得できません。なぜなら、事業部の売上計上について、私は相談されたこともなく、指示したことが一切ありませんでしたし、(途中省略)決して組織的に意図的な行為と認識していません(原文ママ)」とのメールを送りつけ、「一定の方向性を期待する趣旨が読み取れる」(調査委報告書より)とダメ出しされた。
そのうえで報告書は「A氏(筆者注:龍氏を指す)の影響力の抜本的な排除」まで求めている。ところが上のような理由で、検証委の立ちあげそのものが、Abalanceが龍氏の影響から脱していないことを証拠立てているようなものだ。検証委員会の顔ぶれは以下の通り。
委員長郷原信郎弁護士(郷原総合コンプライアンス法律事務所)
委員大下良仁弁護士(善国寺坂法律事務所)
委員藤井寿公認会計士・弁護士(リンクパートナーズ法律事務所)
経緯から見ても検証委の立ち上げには疑問符が付く。そもそもAbalanceは有償支給取引の会計処理について社外取締役らによる監査等委員会に調べさせ、その報告書に問題があるとして第三者委の立ち上げを求められた。第三者委が明確に「粉飾」を認めた報告書をまとめると、これに不満があるからと検証委員会を立ち上げたのだから、恥も外聞もない。
過去にはオリンパスや東芝の粉飾決算でも、第三者委の報告書が公表された後に検証委員会やそれに類するものが立ちあげられた。しかしそれらはオリンパスや東芝が立ちあげたものではなく、監査法人や有識者が立ちあげたものだった。まして会社側の立場や利益を代弁するようなものではなかったのだ。それでも再検証が必要なら、いっそのこと、第三者委や検証委のような強制捜査権を持たない機関ではなく、司直の手を借りた方がいいのではないか。
監視委が〝被害企業〟から聴取
しかし心配はいらない。実際、司直の手はすぐそこまで迫っている。水面下でAbalanceに第三者委の立ち上げを求め、第三者委に予定より早く報告書を公表するよう求めていたのは、証券取引等監視委員会と見てまず間違いないのだから。
Abalanceが「外部機関から指摘を受けた」として第三者委員会の立ち上げを発表したのは2025年8月12日だった。実はこれと前後して、Abalance側から太陽光発電所の工事を請け負ったARCA社に対し、証券監視委が聞き取り調査に応じてもらえるよう依頼。ARCAは8月25日には仙台市内の本社で聞き取り調査を受けていたのだ。
ARCAについて改めて説明の必要はあるまい。Abalanceが宮城県大衡村と大和町で太陽光発電所の建設を発注したのに伴って、売上高の水増しを意図した自然な資金のやり取りを繰り返した挙句、工事代金を踏み倒した下請け業者である。連載初回で銀行口座の出納状況を示す預金通帳のコピーを添付した。その出所となった太陽光発電所の施工会社だから、覚えている読者は少なくないはずだ。
調査は2日にわたってARCA本社で行われ、証券監視委の職員はAbalanceやその子会社WWBとの取引などに関する書類のコピーをとり、持って帰っていったそうだ。
「(調査にやって来た証券監視委職員が関連資料の)コピーを取らせて欲しいというから、『いいですよ』と言ったら、びっくりするほどの量をコピーして帰っていった」
監理銘柄入りの可能性に言及
もちろん調査にやって来た証券監視委職員は、証憑類のコピーを持ち帰っただけではなく、Abalance側で太陽光発電ビジネスの中心的な人物がどのように関与していたのか、などを中心にみっちりと聞き取りも進めた。