連載再開 8
第三者委が暴いたAbalanceの「急所」
龍潤生会長兼最高経営責任者(CEO)に退場勧告が出た。恐れていた第三者委員会が「粉飾」と明言した有償支給取引を装う会計不正を暴いた報告書に、会社寄りの「シロ」の結論を出していた監査委報告は否定された。株価も急落し、国本亮一社長ら役員の相次ぐ辞任は、いよいよ空中分解の前兆か。次に起きるのは……。 =敬称略、一部有料
もうおしまいだろう。あれほど恐れ、忌避していた第三者委員会の立ち上げを余儀なくされ、Abalance(東証スタンダード)の会計処理問題にメスが入ったのだから。その報告書では同社の上層部で調査対象となった役員や幹部社員が刑務所行きを恐れながら不正を続けていた様が浮き彫りになった。
第三者委の報告書が発表されると、翌週には社外取締役の弁護士が就任後わずか1年余りで辞任を発表。国本社長と藤澤元晴副会長も辞任を申し出たのは、会社組織の空中分解とエクソダスが始まる予兆なのだろう。だが、第三者委がそれとなく示唆しているように、抉り出されたのは問題の一部に過ぎないのだ。
龍潤生CEOに「引導」
12月17日に公表された、第三者委報告書は遠慮がなかった。
「当委員会は、Abalanceが上場企業として株主をはじめとする利害関係者から信頼されるに足る企業となるための本質的かつ根本的な再発防止策として、まずもってA氏がAbalanceグループから退くべきことを求める」――。
第三者委が3カ月半をかけてまとめたこの報告書はこんなふうに結ばれている。添付されている「定義一覧」によれば、ここで言うA氏とは経営トップの龍潤生氏であり、第三者委は経営トップの責任を明快に認め、引導を渡したのだ。
さて、改めて経緯から説明しなければなるまい。太陽光発電所の追加工事代金を巡ってAbalanceが施工業者から支払いを求められたのは、2023年12月のこと。これに端を発し、Abalanceの会計処理にいくつもの疑義が浮かび上がる。正確な財務実態を表しにくいことから、本来なら認められない有償支給取引の売り上げ計上が多数見つかり、収益の水増し計上が発覚したことや、これを調べた監査等委員会の報告内容に問題が多いとして再調査の必要が生じたこと--。
そのほか、同社傘下の太陽光発電所に減損処理が必要になっていること、それらが連結財務諸表に及ぼす影響、関連当事者取引とその開示のあり方なども加わり、調査は広範にわたった。
調査結果はAbalanceにとって惨憺たるものだった。有価証券報告書が実際の経営状況から程遠いものであることを、はっきりと「粉飾」という言葉を使って指弾するとともに、同社の企業統治や内部統制に多くの問題点が潜んでいることを詳らかにした。経営そのものに落第点がついたと言っていい。そこには同社の取締役たちが犯罪性さえも明確に認識しつつ、これをどう隠蔽するか、知恵を出し合っていたことも暴かれた。その不正の輪には経営トップに辞任を迫るはずの社外取締役も加わっていたことも克明に書かれている。