経済産業省「プレミアムフライデー」と「キャッシュレス推進政策」の悪魔合体が低品質な件で
経済産業省が失敗に終わったように見える「プレミアムフライデー」とこれから推進するべき「キャッシュレス社会」を突然融合させて謎のキャンペーンを始めてしまい、余計なことをしないでほしいと願っています。
政府・安倍晋三政権が力を入れて推進している「働き方改革」の一環として経済産業省主導で2017年2月に始まった「プレミアムフライデー」ですが、今も生真面目に励行している企業や団体はどれくらいあるのでしょうか。役人が「これはいい」と軽率に始めた事業が、不評をかこっても途中で撤回して取りやめたりすることができずに焼け太るという事例はブロッキング議論や静止画ダウンロード違法化でCODAとか文化庁などが壮大な自滅をしているのを見ると何となく理解できるのですが、民間の金曜日夜の働き方に口を出す前にお前ら霞が関の残業をもう少し減らして働きやすい環境づくりに精を出せよなという気持ちになるのは私だけではないのかもしれません。
ちなみにプレミアムフライデー実施2年目を記念して(?)行われたネット調査の結果によると、「『認知率』は9割を超えているものの、『実施された』と回答したのはわずか1割にとどまった」という素晴らしい数字が叩き出されておりました。
開始から2年…プレミアムフライデーの現状、経産省の涙ぐましい努力に涙(BCN+R 19/2/22)
「実施された企業がうらやましい」という声もあるかもしれないが、実は苦労も多い。アンケートでは「導入にあたっての苦労・懸念点」を問う設問もあるが、「残業・時間給など労務上の対応」に苦労したという声や「業務の圧迫」を懸念する声が多く上がった。また、「プレミアムフライデー」は働き方改革以外に消費喚起の目的もあるが、「日本経済への影響はあるか」の問いには「特に影響はない」が76.4%という寂しい結果になってしまった。BCN+R金曜早く帰ったところでみんな自動的に居酒屋にいくとは限らない、その金曜は早めに帰っても他の日に仕事が積み残されて業務量は行って来いになる、という当たり前の結論に経済産業省のご担当が気づかないというのはいかにも問題のように思います。
残念ながら一、般的な日本人労働者のほとんどはプレミアムフライデーとは縁の無い日々を送っていたということであり、経済産業省の威勢の良い掛け声は日本中のほぼどこにも届いていなかったという現実があるようです。虚しいですね。そして、一定の割合いるであろうフリーランスや中小企業での従事者は、この手の施策にはほとんど無縁ですし、クリエイティブではないがきちんと勤務時間を務めあげることが大事なインフラやサービスなどの従事者は「金曜休め」と言われても代替要員はより雇用の不安定な契約社員や期間工で埋めることになるだけだという発想は是非持ってほしいと思うわけであります。みんながみんな、自由に休める仕事だと思うなよ、という感じでしょうか。
Twitterなどでも以前は月末の最終金曜日になると嫌味を込めてプレミアムフライデーをいじるようなツイートを見かけることもままありましたが、ここ最近はほとんど目にすることが無くなったように感じます。そうこうこともあり、最近の経済産業省の中の人がどういう心づもりであるかは知りませんでしたが、事実上プレミアムフライデーは終わったキャンペーンだとばかり思っていたわけです。もちろん、意図や目的は良いのです。金曜に月一早く帰ったところで何の意味もないというだけで。
ところがどうやら経済産業省の中の人は全然諦めていないようで正直驚いたというか呆れたというか、これはニッコリ微笑んで生暖かく見守ってあげるしかないのでしょうか。
経産省「プレミアム“キャッシュレス”フライデー」を発表キャッシュレス決済の拡大目指す(ITmedia 19/3/13)
経済産業省消費・流通政策課の永井岳彦課長は「プレミアムフライデーとキャッシュレス決済には、個人の消費喚起という共通目的があると考え、コラボすることにした」と説明。ITmediaいったい何を考えているのでしょう。
「コラボすることにした」というあたりがキラキラしていてうっかりしていると目がつぶれそうですが、ほぼ民間ではそっぽを向かれてしまった実績十分なプレミアムフライデーと、これから盛り上がる可能性のあるキャッシュレス事業が連携することでネガティブな方向へイメージが広がり結果的にすべての機運が萎んでしまわないかと妙な心配をしてしまいます。
イメージキャラクターに「鉄腕アトム」を起用して「ゆくぞキャッシュレス!」というのも今の若い世代には全然刺さらないデザインじゃないかと不安になりますが、おそらくこちらは小金を貯め込んで悠々自適な団塊の世代あたりがターゲットにしようということなんだろうと解釈することにしました。そもそも、鉄腕アトムは物凄く夢のあるキャラクターですが、エネルギー源が精製ウランによる小型原子力発電ですよ。経済産業省のキャンペーンというよりは、資源エネルギー庁のほうが向いているのではないかとすら思いますし、精製ウランが取れるなら朝鮮半島有事を見込んで日本の核武装の是非を問う議論喚起を誘発したほうが国益になるんじゃないかと感じます。
経済産業省がキャッシュレス社会を目指していろんな手配を進めていることは知られていることです。ただ、余計なお世話だと感じるのは、地方の温泉が取り柄の田舎町に経済産業省がお墨付きだという中国系電子マネー決済会社が営業にやってきてインバウンドだキャッシュレス社会だと説明して帰っていくという事例が少なくありません。もしも本当にキャッシュレス社会が国益だとするならば、中華資本の決済システムを日本に導入することではなく、旅行者用のJCB決済(日本資本)や貸与する日本のスマートフォンに搭載したお財布マネーでも普及させたほうがいいんじゃないのかと思います。
また、なぜか「中国で普及しているから」とQRコード搭載のキャッシュレスビジネスを推進する方向に行っているようですが、むしろ欧米系のキャッシュレス社会はデビットカードやSuicaやEdyなど非接触ICカードのほうが主流で、さらに携帯電話端末との連動を有りきにした与信管理にまで一本化するのがデータ資本主義的にはありうべき姿なのではないかと思います。実際、経済産業省の人に個別に話をしていると「そちらのほうが将来性があり日本のためになる」と言っておきながら、省全体の方針になるといきなり妙な方向に走って行ってしまうのは仕事をする際に誰の顔を向いて働いているのか他人事なれども心配になる部分はあります。
さらには、世にはPayPayや楽天Pay、LINEPayなどなど新しい支払い手段を前面に押し出して百花繚乱である一方、互換性も含めたサービスの連携という意味では交通機関系、ICTコングロマリット系、携帯キャリア系、カルチュア・コンビニエンス・クラブ、商社・GMS・コンビニ系、カルチュア・コンビニエンス・クラブ、銀行などの金融機関系、カルチュア・コンビニエンス・クラブなど、大変に乱立してしまっている、というのが問題となります。決済を押さえれば個人の消費の動向が分かる、究極の個人情報だと言いたいのかもしれませんが、その手の話はカルチュア・コンビニエンス・クラブのTポイントの失敗でみんな懲りたはずなのでは、と思うわけであります。おそらくは、大手数社に向こう数年で合従連衡に集約されて行かざるを得ないのでしょう。
そういう無駄な競争で広告宣伝費の無駄打ちが乱舞して経済効果に影響が乏しく汐留某社の特定の営業局だけが儲かるような話にするのは物悲しく、キャッシュレス社会を本当に実現しようと考えるのであれば産業政策としていかなる資本形成を行うべきか、国内市場だけでなく海外ででも使える仕組みをどのようにするのかも含めた大きなグランドデザインを考えて経済産業省は頑張ってほしい、あるいは経済産業省は他省庁の仕事に生半可な知識で足を踏み入れないでほしいと願うのみであります。
それにしても、経済産業省はちょっと空回りしてる感がこのところ加速しているような雰囲気があって心配ですが、それは余計なお世話ですかそうですか。