無縫地帯

情報銀行スタート間際でデータビジネス界隈がずいぶん騒がしいようです

「ドコモが会員データを協業先に有償で提供する」という発表もある中で、日本のGAFA対策の切り札ともされる情報銀行構想への観測が花盛りになってきました。

日経お得意の観測気球的な趣が強いのですがちょっと気になる記事がありました。

ドコモが会員データ開放7000万人分、協業先に有償で(日本経済新聞 19/3/9)

NTTドコモは顧客情報を活用したデータビジネスに参入する。2019年度内に共通ポイントサービス「dポイント」の会員情報を協業先の企業が活用できる事業を始める。会員数は7000万人規模で、個人の許可を得て買い物などのデータを分析する。
(中略)
ドコモはデータ基盤の開放に向け、セキュリティーを強化する。個人情報の運用ルールも厳しく設定する方針で、協業先に順守するよう求める。日本経済新聞
乱暴に解釈すると、これまでCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)社がTポイントでやってきたようなビジネスをドコモもいよいよ本格的に開始しますよという話ですね。

ドコモのdポイント会員数は7000万人規模ということですが、ライバルのTポイントカード会員数は2018年9月末時点で公称6,788万人。数字の上ではほぼ拮抗しつつも微妙にドコモが優勢な状況に見えなくもなく、CCC社としては強力なライバル登場ということでこれはかなり頭が痛いのではないでしょうか。Tポイントについて言えば、我らがヤフージャパンも虎の子のはずのYIDなる自社IDをTポイントに統合してしまわれて、データドリブンはほんとどうするつもりなのでしょうか。CCC社が変なことになる前に、Tポイントの情報を扱っている株式会社Tポイント・ジャパンと株式会社Tポイントをさっさと買収してしまったほうがヤフージャパンとしても安心なんじゃないかと余計なことを感じたりも致します。

それにしても、ドコモはこれまでやってこなかったdポイント会員情報を“売る”という行為になぜこのタイミングで踏み切ることにしたのかは気になるところです。ちょうど今月中には予定通りであれば我が国初となる情報銀行の認定事例が出る見通しですが、その動きと関係があるのでしょうか。

データ主義時代の新たな銀行「情報銀行」とはなにか(JBpress 19/3/11)

個人から信託されたパーソナルデータを適切に管理・運用する「情報銀行」。2019年3月、その事業者認定が始まる。
(中略)
政府によって推進され、日本企業がGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)に立ち向かうための手段としても期待がかかる「情報銀行」。今はまだ黎明期にあたるが、今後参入に意欲的な多くの企業や政府によって、ビジネスモデルや制度が整えられていくはずだ。JBpress
「何ができるか良く分からないけど、期待がかかる」という雰囲気に物凄い火種の予感を感じますが、そのうち目鼻が見えてくるとみんな思っているのでしょうか。

情報銀行の認定事業者には現在のところ三菱UFJ信託銀行、電通グループ、日立製作所、富士通などの大手企業が応募していることが明らかになっていますが、一方でドコモは情報銀行については認定取得に動いていないようだと昨年報じられていました。

ヤフー、ドコモ…情報銀行に距離を置く(日本経済新聞 18/12/25)

NTTドコモのスマートライフビジネス本部金融ビジネス推進部の江藤俊弘FinTech推進室長も、「情報銀行の認定を受けるかどうかは私の立場で語れないので私見だが」と断りつつ、「情報銀行の認定を受けなくても、データに基づく信用スコアを活用したビジネスは十分に展開できると思う」と語る。日本経済新聞
昨今個人情報を扱うビジネスについては各所で盛大なポジショントーク合戦になっている様相もありますが、対GAFAを標榜して国内一致団結を謳うかのような情報銀行がまさにスタートしようとする状況で、そこにはあえて参加しない大手事業者も存在するという構図はまさに戦国時代そのものに見えます。気がついてみれば大量の個人データを保有し収集できる立場の“巨大プラットフォーマー”は何も悪名高い海外勢に限らず、ドコモのような通信事業者もいれば、ヤフージャパンやLINE、メルカリなどもあるということで百鬼夜行さながらでして、これらをどうやって捌いていけばいいのか先が思いやられるばかりです。

メルカリに関して言えば、他社が権利をもつ商品の偽物が出品されている被害も出ていたりするそうでして、画像で商品検索できたり、日本郵政と組んで勝手に梱包してくれるサービスをやる前に、きちんとした口座の名寄せも含めたKYC(取引顧客の信用状況の確認などの基準、調査)の徹底や問題取引の監視をしてほしいと願っております。