「暴言」前明石市長・泉房穂さん、出直し出馬表明の真意を問う(追記・修正あり)
立ち退き交渉が難航した建物について「燃やしてしまえ」などの暴言を部下に吐き辞任に追い込まれた明石市前市長・泉房穂さんが出直し選に立候補表明したので話を伺いに行ってきました。
現職であった明石市市長・泉房穂さんが暴言騒動で辞職に追い込まれたことを受けて、告示日3月10日、投開票日17日で争われる今回の明石市市長選。今回は元兵庫県議で共産新人の新町美千代さん(72)、前加西市長で無所属新人の中川暢三さん(63)、同県議で元明石市長の無所属北口寛人氏(53)が立候補を表明していますが(立候補表明順)、7日になり泉房穂さんも正式に立候補表明をする運びとなりました。
明石市長・泉房穂氏の暴言をよく読むと、市民の命を守るための正論である件(ヤフーニュース個人 山本一郎 19/1/29)
神戸新聞NEXT|総合|部下に「辞表出しても許さんぞ」「自分の家売れ」明石市長の暴言詳報(神戸新聞 19/1/29)
この神戸新聞の記事に基づいて私が「全文読んだら暴言だけど悪い内容じゃなくない?」という記事を掲載するまでは全く面識なかったのですが、暴言にゆかりが深い私としても興味津々で面談を申し入れましたところ過去記事の経緯もあり応じていただけましたので、以下ダイジェストで対談記事をお送りいたします。対談全文・詳細につきましては、追ってヤフーニュースや有料メルマガ『人間迷路』などでも報じてまいります。
山本:暴言吐いてめちゃくちゃ炎上してるとこすいません。
泉:あれはほんま反省してます。自分の不行き届きで、市長としてだけでなく、人として最低な発言をしたと心からお詫びしたい気持ちです。
山本:かなりのご反省をされているとのことですが、あの熱量で炎上された方が、出馬されると聞いて、好奇心から居ても立ってもいられず、お話し伺いに来ました。出馬会見もあり、超絶お忙しい中お時間下さいまして、本当にありがとうございます。
泉:いえいえ、こちらこそ、ご迷惑おかけしています。こんな形で市長という大事な仕事を辞職することになってしまい、罪深いことをしたと深く悩んでいました。ほんとどうしようかと思い詰めていたんです。
山本:30万人の首長の暴言が全国放送NHKニュースの19時、21時のトップでした。もちろんワイドショーでも、ネット上でも、なかなかのカロリーの炎上でした。黒煙が上がってましたね。
泉:はい…。すみません。私がしゃべったことで、私があかんだけでなく、明石市全体があかんのではないかとまで思われたのはほんま悲しいですし、私のしたことは罪深いとしか申し上げようがありません。
山本:でも、出直し選に出てほしいという署名が市内外から5千人弱集まって、それだけ多くの明石の人たちは泉さんに戻ってきてほしいと思っている。
泉:あの署名運動は、本当に驚きでした。こんな私のために多くの人が支援してくださるとは思ってもみませんでした。ネットで呼びかけて集まってくれた人たちらしく、赤ちゃん抱えた若いお母さんや、サラリーマンとか、私も、後援会の人たちも今まで会ったことのない知らない人たちが署名運動してくれたって聞いて、涙が出てしまいました。あんまり泣くことなど、ないんですが。
山本:でも、東京にいる私からしたら、あれだけ暴言やらかして叩かれた泉さんを支えたいという人たちが、そんなにいることも驚きでした。最初、例によって「市民」の仕込みか?と思ったんですが、調べたら本当に純粋な泉房穂支持の勝手連だったので二度びっくり。
泉:本当に…ありがたかったです。自分でも暴言テープとされるもの聞き直して、これは駄目だ、二度とこのような発言を部下にしたらアカン、人としてやってはいけないと。そして、アンガーマネジメント勉強したら、改めて良く分かったんですが、自分の発言や行動は最低ですから。私は、明石の漁師の子なんです。友達も結構言葉遣いが、あの…あぁいう言い方をする人が多い環境で育ったということも、今回気がつきました。言い訳にもならんことですけど、ほおっておくとそういう言葉遣いがポンポンと出てしまう、それで人を傷つけてしまう、そういう悪い癖が染みついていたなと反省しています。
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山本:私も江戸っ子で育ちましたので良く分かります。泉さんを批判するメディアでは、東大卒、弁護士のエリート市長で挫折知らずの奴がパワハラで暴言吐いたって話になっていますが。
泉:いや、確かにみなさんそう仰いますが、私なんてエリートじゃないですよ。うちは明石の漁師の家で貧しくて、私は小中高と、当然のように地元の公立校に通いました。大学受験も、塾に行くお金もないので、ひたすら家で勉強してました。でも別に頭が良いというわけでもないんです。「自分が勉強しないと、家族が死んでしまうんだ!」というくらいの気持ちで、必死に大学目指して頑張ってやっていただけなんです。
山本:「死んでしまう」とはなんか凄い覚悟な感じですが。
泉:とにかく、子供の頃は環境が厳しかったんです。親父は小学校卒業して漁師、母親は中卒で二人とも高校も出ていません。貧乏でした。それから、僕には生まれつき障害を持つ弟がいるんです。弟は、チアノーゼで真っ青で生まれました。生まれたときすぐに障害が残るとされ、両親は、医者からは「このまま放置でいいですね」と言われたんですね。
山本:言外に「このまま死なせてしまっていいですね」と言われた?
泉:そうです。それで両親は、一度は声も出せないまま頷いた。けれど、もう一度医者が病室へ来たときに、弟を産んだばかりのおふくろが「お願いだから助けてくれ」と叫んだんだそうです。医者は「障害が残りますよ?」と。実際、弟は4歳まで歩けませんでした。
山本:うーん…重い決断ですね。
泉:まわりは冷たかったですよ。みんな「なんで障害のある子どもを連れて帰ってきたんや」というわけです。当時はそれが「普通」だったんですね。
山本:ああ…そういえば、泉さんがご幼少の当時は優生保護法もあった時代ですからね。
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泉:それから家族の戦いが始まりました。生まれたばかりの弟に、障害があったからって本人が悪いわけがないんや。なんで死ななあかんねん、と。弟は小さいながら必死にリハビリに取り組み、小学校に入る頃にやっと歩けるようになったんです。家族みんな喜びました。でも、近くの小学校に通うために手続きをしようとしたら「うちの学校では責任が持てない」と、あっさり入学を拒否された。何やねんそれ。結局、両親が学校に直談判して、私が行き帰りに毎日付き添うということで、一緒に通えることにはなりました。
山本:泉さんの政治活動の原点を見た気がします。たまらん話ですね。
泉:もちろん、その後も理不尽なことは続きました。そもそも生活がかなり貧しいですしね。家族四人それぞれ必死でしたね。とくにおふくろは血のにじむような苦労をしていた。私は子どもながらにそういう姿を見ていて、ものすごく「腹が立った」んですよ。こんなに、努力して、それでも困って苦しんでいる人間がいるのに、国も、市も、誰も、助けてくれない。自己責任っておかしいやん!と。そのときの「怒り」みたいなものが、私の政治家としての原点になっているんじゃないかと思います。
山本:「怒り」がパワーになったんですね。
泉:だから、市長になって、ずっと怒ってました。困っている人がたくさんいるのに、できることがたくさんある立場にいるはずやのに、市の職員が、全然動いてくれない。なんで動かへんのや、って、すぐ怒ってましたね。そこで怒って暴言をバッと吐いてまう。後になって言い過ぎたなと反省するんですが、そんなんずっと繰り返していて、ほんま人として最低やったな、これは選挙に出る、出ない関係なく、改めていかないといかんと強く思ったんです。
山本:え??あの時だけでなく、まだ他に「暴言」があるんですか?
泉:まだ、たくさんあります……(苦笑)。
山本:マジすか!
泉: はい。いくらでもあると思います。自分でも、最低やと感じます。
山本:まぁ、あのテープも全部最後まで聞いたら、みんなで笑ってましたよね。あんな調子で毎日、やってたってことですか?
泉:実は、もう2年ぐらい前から、怒ることは、ほぼなくなりました。それまでは、市の職員も全然動いてくれなかったんです。市長になった時、私は無視されてました。話の分からん瞬間湯沸かし器が市長になった、いうて。ところが、やっていくうちにだんだん変わってきたんですよ、市役所の中が。ほんと申し訳ないんですけどこんな暴言市長でも政策には真面目に取り組んできたので市民に認めていただけるようになったり、明石に移り住んでくれるご家庭が増え、市全体が元気になってどんどん変わっていって、職員も楽しくなって率先してして動いてくれるようになった。ようやく、ですよ。そうしたら、怒る必要もなくなったんです。
山本:例えば、前にどんなこと言ってたんですか?
泉:「暴言を吐いたな」とすぐに思い当たるものとしては、駅前の再開発事業で、市民図書館や子どものための施設を作る企画があったのですが、すでに駅前のビルにテナントとして入っている金融業者やパチンコ業者に出て行ってもらうときに、「お前らなんかいらんのや、市民の税金で食うてくな!出てけ!」とかなり激しい暴言を吐いた記憶があります。パッと冷静になってから「あ、これはあかんこと言うたな」と反省するんですが……。
山本:めっちゃ怒って暴言やらかしてるじゃないですか。駅前開発で消費者金融やぱちんこなど遊興系は入りがちですけど、市長自らブチ切れて「出てけ!」とか、さすがにヤバいっすね……。
泉:いらんこと言うてまうんですよ…..。それから、市内に給食センターを作ろうとしていたときのことです。もともと工期が3年も遅れていて、なお反対派の妨害もあって遅れに遅れていた。その上、その土地からゴミが出たということで、さらに工期が遅れるということになった。その時にも、業を煮やして「何がゴミじゃ!埋めてまえ!」と言ってしまったこともあります。もちろん埋めてないですけどね(苦笑)。
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山本:これはやってしまいましたなあ……(しみじみ)。「出てけ!」もダメだし、「埋めてまえ!」も、ありえないでしょ。これは暴言テープがまた選挙前に出て大騒ぎになりますわね。
泉:自分のこれまでの言動は、自治体の首長としても、一人の大人としても失格です。暴言がメディアに取り上げられた直後、妻からも「ほんまにアホやな!」と言われました。市長辞任してから一か月、ずっと「人として最低や」と一生立ち直れないかと思ったぐらいです。
山本:奥さまのほうが常識人じゃないですか(苦笑)。
泉:私のほんと至らぬ点です。最近、アンガーマネジメントの本を読んでいるんです。いくら「市民のためだ」という思いがあったとしても、今までは自分の根っこの部分に、「怒る」ことで人を動かそうという考えがあった。でもこれは自分が周囲に「甘え」ているだけなんです。それは、大人として、市長として、許されるものではない、ということが今更、この年になってわかりました。客観的に、私のやってきたことは間違っていた、罪深いことやったということが、改めて理解できるようになったんです。
山本:泉さんの場合は、市長というお立場もありますし、市民運動ならともかく上下部下の関係ではパワハラのようになってしまって絶対にダメだと思うんですけど、実はちょっと「わかる」と思ってしまうところがあるんです。うちには、小学生と幼稚園児の男三人の子どもがいるんです。でも、やさしく注意しても全く言うことを聞かないんです。それで、つい強く叱ってしまう。「馬鹿野郎!HIKAKINばっかり観てないで、宿題やれ!」とか。
泉:でしょ?動かんと言いたくなりますやろ。でも実は、私、最近、前より家族との関係が良くなったんです。
山本:アンガーマネジメント効果ですか。
泉:そうそう。以前は、子どもが服を脱ぎっぱなしにしていたら、反射的に「はよ片付けえや!」と怒っていた。でもいまは、落ち着いて「これ、どうすんの?」と聞けるようになった。そうすると、子どもも、案外素直な反応で、「片付けとくわ」って返してくれるようになって。いままで、市の部下だけやのうて、家族にもこんなパワハラめいたことやっとったのは人としてマズいとよう理解できるようになりました。
山本:いい話やないですか。ちゃんとアンガーマネジメントを勉強されてるんですね。
泉:必要なことを学ぶのに、遅いはないと思います。55歳ですけど、関係ない。私は、大学出てNHKで働いて、でも人を救うには法律が必要だって思うようになって司法試験の勉強を始めて弁護士になりました。それだけでは足らんと思い社会福祉士の勉強をして資格を取りました。資格マニアじゃなく、資格はツールなんです。目の前に動けん人や、働きたいのに働けない人や、歳を取ってあかん人がいる、そういう人を助けるために自分が誰よりも前に出て助けに行かなけりゃならんと思ってしまう性分なのです。
山本:明石市長を決めるのは、あくまで「明石市民」の皆さんですからね、私も生暖かく見守りたいと思うのですが、選挙2回やって無駄じゃないかとか、本当は反省してないんじゃないかとか、さまざまな批判も出ると思います。普通に考えたら、もう少し冷却期間を置くとか、別の選挙に出るとか、いろいろと手があったように思うんですけど。
泉:ご批判も、お怒りも、ごもっともです。言い過ぎたこと、部下にパワハラするあかんやつやと思われることも当然です。ただ、こんな私でも応援したい、やり残したことを最後までやらせてやれと言ってくれる市民の方々がおる。これだけで、涙が止まらんかったんです。
山本:ほんとに報道写真で泣いてもうてるのを見ました(笑)。
泉:つい。こんな人として最低な私に、それでも何か期待してる人がいらっしゃるというだけで感激ですよ。
山本:地元が、口の悪い漁師の子にもう一仕事させよかと思ってくれる人が多いというのはこうやってお会いして、お話を聞くとよくわかりますよ。
泉:一期目と二期目を通して進めてきていた政策がいくつもあるんですが、それらが「あと一歩で形になる」という段階なんです。今、私がいないと、そのまま頓挫してしまう可能性が高い。余計な遠回りせんとじっくりやれば良かったんですが、生来口が悪いもんやから、アカンことばっかり言って問題になって、その罪深さに申し訳なく感じる気持ちしかありませんわ。
山本:泉市政になって、明石市は子どもを中心に市政を構えて勤労者人口が激増した、というのは有名ですよね。
泉:何とかやり残した仕事だけは片づけたいという思いが強いです。ほんと、反省しきりです。やるべきことは、いまお話したこと以外にも、もちろん他にもたくさんあります。ここでお話し尽くすことはできないほどたくさんあります。
山本:明石市民がどう判断するかですが、でも、同時に泉さんはYouTuber向きだとも思います。正義と情熱が溢れ出ているので、是非ともYouTuberとして炎上する発言をたくさんして頂けると、私のような野次馬から見るととても嬉しいのですが。
泉:いやいやいや。もう一期あれば明石市の、基本的な運営が軌道にのるので、それがもしさせてもらえることができたら、あとは、困った人たちを助けて回る近所のお節介弁護士に戻り静かに暮らしたいです。
山本:もう一期、任期をやりきってしまえば暴言も吐き放題ですね。
泉:ないです。ないです。「人は必ず変われる、成長できる」と信じてきました。自分もそうでありたいです。
(2019年3月7日・某所にて)
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(追記・修正について 23:58)
対談記事中、繰り返し泉房穂さんが反省の言葉をお話になり、かなり重複してしまっているので読みやすさの都合上割愛させていただいておりましたが、よく考えたら辞任後出馬を決断されるにあたり暴言騒動に対する泉さんの心情をより正確に書き起こすことのほうが正しいと思い直し、いったん記事非表示対応をしましたうえで、割愛していた泉さんの反省と謝罪の言葉を復活させ、再掲することにしました。
記事がいったん非表示になり、読みにくいところもございますが、どうかご容赦ください。
ご迷惑をおかけしましたこと、深くお詫び申し上げます。