印鑑(ハンコ)はそろそろ非効率なので撲滅のために総務省の電子認証制度が使えないだろうか
総務省が電子書類などのデータ改竄を防ぐために、公的な電子認証制度を作る方針であると報じられましたが、その出来はともかく印鑑(ハンコ)を早く廃止してほしいなあと思う次第です。
日経で興味深い報道がありました。
電子書類に公的認証改ざん防ぎ信用担保 国際商取引を円滑化(日本経済新聞 19/1/30)
総務省は企業の電子書類データの改ざんや悪用を防ぐため、公的な信用を与える制度作りを始める。データが作成された時刻を証明する「タイムスタンプ」や、インターネット上での企業のなりすましを防ぐ制度の法整備を検討する。データ認証で先行する欧州を念頭に国際的な信用を担保するインフラを整え、企業が世界で円滑に事業を進められるようにする。日本経済新聞で、この手の事案については大変知見が深い楠正憲さんが強烈なツッコミをツイートされておりました。まあ、そうですよね。
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総務省も必要に迫られて対策を捻り出したのでしょうが、抜本的な対策が実施されるにはまだほど遠い印象です。
その電子署名法についてはたいへん分かりやすい解説記事がありますのでご紹介しておきます。
電子署名法とは?電子契約時代を支える電子署名法の基礎知識と条文の読み方(サインのリ・デザイン 18/8/3)
丁寧かつ明快に書かれた解説なのでぜひリンク先を皆さんご自身で読まれることをおすすめしますが、決定的な部分を以下に引用しておきます。
将来、電子署名法制定時には知られていなかった本人性や非改ざん性を証明するためのよりよい方法が見つかるかもしれない可能性を踏まえ、あえて条文をあいまいにしておいた、というわけです。サインのリ・デザイン電子署名法という法律は“電子署名”という概念がなぜ必要であるかを定義しながらも、電子署名を成立させるための具体的な手法についてはその時代ごとに登場するであろう優れた技術に委ねることを良しとする、大変進歩的な内容になっているということです。テクノロジーの移ろいによってセキュリティを実現するための方法も変化していく現実を理解していなければこうした法律は作られなかったでしょうから、この法律の作成に携わった人々の慧眼には感服せざるを得ません。
上記の記事では最後に以下のような解説があります。
最近の電子契約サービスにおいては、特定認証業務の認定を受けていない事業者も数多く存在します。そうしたサービスの電子署名は、法的に効力がないと誤解されている専門家もいらっしゃるようです。電子署名法をよく読むと、そうした理解は誤りであることがお分かりいただけるのではないかと思います。サインのリ・デザイン当然ながら総務省の中の人もこうした電子署名法のあり方について知らぬはずはないのですが、わざわざ特定の電子署名手法を制度化して固定化しようとしているように見受けられるわけでして、その思惑はどのあたりにあるのでしょうか。いわば公証役場的なきちんとしたオフィシャルの認証が必要であるかどうかという根本のところに認識の隔たりがあるのかもしれません。
改めて日経の記事を見ると、本文中にはありませんが記事に添付された解説図の中に「公的認証(タイムスタンプ)国が認めた認証事業者が暗号化」という文言があり、このあたりで利権がいろいろと発生するのだろうなという妄想がわきます。また記事の最後には以下のような一文もあり、こちらも想像をたくましくするとなかなか美味しい話が裏に隠されているように感じなくもありません。
総務省は法制度の整備を急ぎ、日本の制度をアジアなどに展開していくことも検討する。日本経済新聞日経記事の中には「総務省は法務省や経済産業省とも連携し」とあり、総務省だけの暴走という感じでもないのだろうなという含みはありつつですが、いずれにしても過去に作られた電子署名法に比べると今回の公的電子認証のお話はなにやら生臭い印象が強いのかなと…。
一方で、なんだかんだと電子認証の話が浮かんでは消える件については、いまだ紙の契約書など証憑類において、本人が確認、承認したことだというハンコがいまだに使われ続けていることは問題視されなければなりません。日本の古き良き「印鑑文化」があったにせよ、上記のような電子決済や電子認証でああでもないこうでもないという間に、とっくに厳格性が損なわれているはずの印鑑についてはその廃止も含めた議論がなされずに放置されているようにも見えます。
銀行通帳から契約文書、登記に関する書類まで、実印や銀行印が必須とされる現状で電子認証にまずは置き換える、ということであれば、仮に今回提言される公認電子認証がゴミでもハンコさえなくなれば一歩前進という風になるのかなとも思うわけですが。