無縫地帯

LINEが信用スコア事業に参入予定の件

LINEがみずほ銀行と組んで「LINE BANK」を設立し銀行業に進出する発表をする中で、なぜか信用スコア事業も手掛けるという話が出て話題になっています。

昨年の11月にLINEがみずほ銀行と組んで「LINE BANK」を設立し銀行業に参入するという発表会を行った際、ついでみたいな形で「信用スコア事業」にも参入予定であることがさらっと触れられたわけですが、この一件が年を越してからなぜかNHKニュースで雑な感じでネタの一部として取り上げられ、その結果ネット界隈の一部で話題になっておりました。

結構重要なニュースだと思うんですけどね。

あなたの信用力は?「信用スコア」 活用広がる(NHKニュース 19/1/6)

通信アプリ大手のLINEはことし、利用者数7800万のメッセージアプリのデータを基に算出した信用スコアを活用して融資を行うサービスに乗り出します。NHKニュース
おそらくはNHKとしては「信用スコアとはなんぞや」ということを視聴者に分かりやすく伝える切り口として、いまどきは誰もが名前を知っているであろうLINEも事業参入するのだという話を拾ってみただけなんでしょうが、さすがにこういう乱暴な説明だとLINEユーザー全員のデータがそのまま使われてしまうと解釈されても仕方ありません。単に「メッセージアプリのデータを基に算出」と言われると、あたかも日ごろ使っているコミュニケーションの内容を人工知能などで読み取り解釈し、銀行がそのユーザーに対して資金を貸し出して良いかどうかの信用スコアに反映させているかのように読めてしまいます。

実際のところ、LINEが信用スコア事業でどういう運用をするのかは今のところあまりよく分かりませんが、昨年の報道をそのまま素直に信ずるならばユーザーのオプトインありきでデータが収集されることになるようです。

LINE、信用スコア事業に参入第1弾は個人向けローン(ITmedia 18/11/27)

スコア算出は、ユーザーの同意を得て実施する。ITmedia
したがって、当面はLINE全ユーザーのデータが自動的に信用スコアに紐付けられるということはないと好意的に解釈したいところです。もちろん将来的にそうした条件が変更されることになる可能性があるのはまた別の話ではあります…。

信用スコア事業といえば中国の「芝麻信用」が有名ですが、我が国では一昨年前にみずほ銀行とソフトバンクが合弁で「J.Score」を立ち上げたのを皮切りに、今年はドコモやヤフーも事業を開始する予定であります。オプトインとはいえ、通信会社が貸し出し与信に資するデータをどう取るのかは非常にシビアに見られる部分はあると思います。

そしてその事業者のほとんどは当面は個人向け金貸業務に特化した形となっているようでして、穿った見方をすれば単に信用審査手続きでスマホアプリを活用することによってエンドユーザーからするとゲーム感覚で金利を有利に変更できるように見える演出をしているだけといった印象も無きにしも非ずです。平たく言えば、駅前の消費者金融が「無人貸出機」に業態進化させ、いまやアプリで手軽にお金が借りられるようにしてしまえ、という発展の仕方のようにも見えるわけです。それが本当に消費者にとって良いことなのかどうかは議論があるとしても、国内事業者の信用スコア事業がそのまま中国の芝麻信用のようにダイレクトに個人の人生を左右するディストピア的システムにまで巨大化していくのかどうか。いまのところ、本当にその方向に行くのか、判断がむつかしいところです。

まあ、某社の記事広告が相変わらず意識の高い人なら使うべきみたいな空気を醸し出そうとして失敗しているのを見ると、これまでのところはまだほとんど普及していないのだろうということは察せられるところですが、こうした状況も利用者数7800万を誇るLINEが事業参入することで変わっていくのどうかは注目したいところであります。