無縫地帯

来るべき5G時代のIoTデバイスに必要なもの

「CES 2019」が開催され、次世代移動通信規格「5G」についての話題も取り上げられていますが、その「5G」が描く未来像はどれだけ明るくできるものなのでしょうか。

次世代移動通信規格「5G」という錦の御旗を掲げ通信業界は一様に大きな商機到来ということで色めき立っているわけですが、その勢いにおされるような形で政府をはじめ自治体や企業の多くもあれこれと取らぬ狸の皮算用を始めている今日この頃であります。

まさに開催されていた「CES 2019」でも5Gに関する記事は数多かったのですが、隔靴掻痒とも言える状況のようにも見えます。

CESに見た5G、話題の割に具体性欠く(日本経済新聞 石川温 19/1/11)

5Gは20年に一度の変革ドコモは社会課題重視で過疎地にも拡大(日経クロストレンド 18/11/2)

「4Gと5Gは何が違うのか」。日本政府が実現を目指す超スマート社会「ソサエティー5.0」の基盤になるという考え方を示したのは、総務省総合通信基盤局電波部電波政策課長の布施田英生氏だ。「生活を便利にして、産業構造を変える。そんな未来の社会の基盤を支えるのが5G」(布施田氏)と述べた。そのための総務省の役割として「2019年3月までに政府として5G向けの電波割り当てを進める」という。日経クロストレンド
思惑通りにすべての事が順調に運べば随分と便利な世の中になるのかもしれません。そこは大いに期待したいところであります。しかし、世の中いつも上手くいくことばかりとは限らないわけでして、スマートなはずのあれこれが期せずして転けるとどうなるかという分かりやすい事例がニュースになっていました。

「電気もエアコンもつけられない」スマートリモコン「Nature Remo」で障害相次ぐ(ITmedia 18/12/25)

ユーザーからは「障害のせいで電気もエアコンもつけられない」「久しぶりにテレビのリモコンを探した」「エアコンが切れなかったので電源プラグを抜いた」などの声が出ていた。ITmedia
テクノロジーの粋を究めたかのようなスマートで便利なシステムも一旦障害が起きればいかんともし難く、家電製品の制御不能をカバーするためには電源プラグを抜くという“スマート”とは対極のかなり野蛮な対処でしのぐしかないというのはどうなんでしょうか。この記事だけからではユーザーが直面したトラブルの詳細は分かりませんが、大きな関連報道は無かったのでとりあえずは誰かの生命を脅かすような危険な事態にまでは至らなかったであろうと思われます。

ほぼ同じようなタイミングで昨今何かと話題のスマートスピーカーでも、昨年末に大規模な障害が起きたことが報じられております。

ヨーロッパでAmazon Alexaがダウン、翌日も完全復旧せず。クリスマス休暇と揶揄する声も(INTERNET Watch 18/12/27)

この件を報じているTechRadarでは、クリスマスプレゼントで贈られた多くの「Amazon Echo」が一斉に接続したことでダウンに至ったのではないかと、独自の分析を行っている。INTERNET Watch
一つの可能性として、皆が一斉にスマートなデバイスを使うとクラウドの先にあるサーバ側でパンクしてしまうというのは簡単に想像がつきます。これは先に紹介したスマートリモコン事案でも障害の原因として「ユーザー数増加のためのサーバ側の負荷増」が挙げられているので、スマートなデバイスの弱点の一つであることは間違いないでしょう。

考えてみれば、ケータイやスマホが普及した結果、年末になるとキャリア各社からあけおめコール/メールの自粛呼びかけが行われたりしたのも懐かしい思い出です。あれもユーザーの一斉利用で生じた負荷にキャリア側の通話・通信設備が耐えきれなかった結果大規模な障害が起きるのを防ぐにはああするしかなかった事情もあるわけで、今後はもしかしたらスマートデバイスにおいても何かしら似たような形で通信集中による障害発生が定期的に起きるタイミングみたいなものが色々出てくるのかもしれません。

そして、いずれはスマートデバイスにおいてもそうした通信集中などによる障害問題が難なく対応できるようにはなっていくのでしょうが、暮らしの中で直接的に人体に影響を及ぼす可能性がある冷暖房などの機能制御が不可能になるとしたら、単純に電話やメールができなくなるという事象よりもずっと深刻な事態であります。ただ便利になるからスマート化するというのではなく、なんらかの障害が起きたときには大きな被害に至らないようにするためのフェイルセーフがしっかりと組み込まれているべきですし、またそうした仕組みをユーザー全員に徹底周知させることが非常に重要になるのではないかと思います。

なんとも嫌な想像ではありますが、新しい技術には受け入れられるまでの懸念や混乱はつきものです。大きな犠牲が出てからでないとそうした対策は施されないかもしれないというのはありそうですが…。