無縫地帯

中国ファーウェイ製品をめぐる毀誉褒貶、そして利用規約を巡る謎

中国大手携帯ベンダーであるファーウェイには、かねてから安全保障上の問題が囁かれていましたが、ここにきて一般ユーザー向け製品の利用規約にも問題の個所があることが明らかになり、物議を醸しています。

ここ最近のITニュース界隈でスマホの話題というとiPhoneが売れていないようだという話と中国メーカー製品の品質向上ぶりが2大トピックという印象を受けます。とくにファーウェイ(華為技術:Huawei社)製スマホの高いコストパフォーマンスぶりにはどこのメディアもかなり好意的な取り上げ方をしており、一昔前の中華スマホの安かろう悪かろうが当たり前だった頃とは隔世の感があります。

スマホ1位狙うファーウェイ鍵はユーザー目線(日本経済新聞 18/11/27)

スマートフォン(スマホ)の世界シェアで米アップルを抜き去り、トップの韓国サムスン電子をとらえようとうかがう中国・華為技術(ファーウェイ)。日本経済新聞
ファーウェイLi Changzhu氏が語るMate 20シリーズの魅力(ケータイWatch 18/11/21)

ファーウェイ、高性能で爆安な新スマホ「nova 3」国内投入狙いを聞く(Engadget日本版 18/10/3)

いろいろファーウェイを褒める記事も多い割に、注意深く見ていくとファーウェイなどは記事広告の出稿率もかなり高いようなので、大絶賛記事が目についたとしてもすべてが客観的な情報とは限らないという注意は必要かもしれませんが…。

それはさておき、ファーウェイが通信機器製造事業者として高い技術力をもっていることは確かであり、その結果世界中でスマホに限らず通信インフラ機材でも急速にシェアを拡大しているわけですが、そうした状況に対して米国などから安全保障上の危惧を訴える声が高まっているのが昨今の大きな話題でもあります。

米政府、日本など同盟国に中国「ファーウェイ」製品不使用を要求(産経ニュース 18/11/23)

米政権による説得工作の対象は、日本に加えドイツ、イタリアなど華為の製品が広く使われている国々で、各国の政府関係者や通信会社の役員らに対し、華為の製品はサイバー安全保障上のリスクだと訴えたとしている。産経ニュース
パプアの通信インフラ敷設中国ファーウェイに決定(日本経済新聞 18/11/26)

中国はパプアなど太平洋諸国にインフラ投資を通じて影響力を強めており、米豪は警戒感を抱く。日本経済新聞
日本でもソフトバンクが5G関連でファーウェイとガッツリ組んで事業を進めている経緯がありますが、今後どのような影響が出てくるのかはかなり気になるところです。また、12月19日に上場を予定しているソフトバンクグループの携帯電話子会社ソフトバンクとして、上場後に実質的にファーウェイや中国電信(チャイナテレコム)など中華勢の軍門に降るようなベンダーアフィナンスを組んでいるのではないかという報道もあるなど、中国系企業は拡販のためには何でもやる雰囲気がかねてからあるのが気になります。

ノキアがドコモに5G基地局機器を提供、ファーウェイはソフトバンクと5G共同実験(WirelessWire News 18/1/23)
孫正義「毒皿」ファイナンス(FACTA 18年9月号)
孫正義がアーム担保の「背に腹」資金繰り (FACTA 18年10月号)

いずれにしても、ここで問題視されているのははあくまでも通信事業者の業務用機器のレベルであって、一般ユーザーがファーウェイ製品を使うことまで規制しようという話ではありません。ただ、安全保障問題とはまったく違う次元で、個人のセキュリティ・プライバシー保護の見地からファーウェイ製スマホには問題があるかもしれないという指摘があるようです。

ファーウェイの利用規約は英語と日本語で違う、全てのデータを持っていかれる?(格安SIMとスマホの口コミ 18/10/31)

ファーウェイ製スマホの利用規約には「データ利用に関する同意」という項目があり、この記載内容が英語版と日本語版では異なっており、なぜ異なっているかなどの質問に対してファーウェイ側からは明確な回答が得られていないということのようです。なかなか興味深いのは以下のあたりでしょうか。

この文章はもともとは

「ユーザーの端末からデータを収集・利用することに同意するものとします(技術情報、連絡先情報、SMS/音声メッセージなどを含みますが、これらに限定されるものではありません)。」

という文章だったのが、ネットで炎上して2017年9月に改定して、

「ユーザーの端末からデータを収集・利用することに同意するものとします (技術情報に限るものではありません)」

という文章に短くなっただけのはず・・。つまり、炎上を避けるために、書いてないだけで、連絡先情報、SMS/音声メッセージも入っているはずなのに、どういうことだと問い詰めると、後日回答しますの巻。格安SIMとスマホの口コミ
上記ブログ記事ではカスタマーサポートとのやりとりが報告されており、ファーウェイ側でもこのままではまずいと認識しているようでありつつも、できれば回答しないでやり過ごそうとしている気配も感じられ、なんとも趣深いものがあります。ただ、この件をうやむやにしてしまうのは、ハイエンドスマホとしてのブランドマーケティングを推し進めている最近のファーウェイとしてはかなりマイナスなんじゃないかと思うのですがどうなんでしょうか。まあ、ファーウェイとしてみればそんな心配は余計なお世話だという感じなのかもしれませんが。