無縫地帯

港区南青山の児童相談所開設問題の総括と燻る反対論への是非(追記あり)

以前記事にした南青山の児童相談所建設について、いまなお反対論が根強くあるようで、議論が整理されていないように感じますので、補遺として追加記事にしてみました。

先日、港区南青山の児童相談所建設について、反対する住民の問題について記事を書きました。

「南青山」児童相談所「建設反対」で、地域と家庭の問題をどう判断するべきか(ヤフーニュース個人 山本一郎 18/10/20)

その後、改めて港区議会や区議の話を聞いてみたところ、2021年(平成33年)の開設に向けての段取りという点では、行政側にこれといった落ち度もなく、港区として必要な施設であり、改正された児童福祉法に基づいた児童相談所の設置や、家庭支援サービスの充実という点では問題なく建設計画が進められるべきものなのかなという感触はあります。

児童相談所運営指針の改正について:第1章児童相談所の概要(厚生労働省)

子ども中高生プラザ・児童高齢者交流プラザ(港区公式ホームページ)

また、港区の待機児童数も前年比で概ね半減の97名で、行政としてはきちんと成果の出ている状況になりつつあります。

平成30年4月の待機児童数の状況について(速報)(港区公式ホームページ)

一方で、児童虐待の相談件数は港区は特徴的に多く、2009年度102件から2014年度363件へと三倍以上となり、全国的に増加が懸念される児童虐待通報・相談件数の伸びよりも港区は各段に高い、と言えます。

児童虐待、最悪13万件17年度児相対応親のDV目撃増え(東京新聞 18/8/30)

この問題に取り組む区議は、具体的な相談事例として典型的なのは「共働きをしている親が、シッターや保育園の手当てをせずに働きに出てしまい、日中児童を室内に置き、棟外への一人出歩きが目撃されたり、号泣が止まらないので通報されるケースがある」としています。

きちんと抜き取り調査を行った厳密な数字ではないのですが、これらの虐待児童の親世帯については、古くから港区に住んでいる住民というよりも、むしろ他の地域から港区へ移り住んできた若い住民や単親世帯に特徴的に多いように見受けられます。もちろん、厳密な調査結果が出てから何らかの対策が打たれることになるとは思うのですが、都民住宅が多く比較的低所得者が多く住む青山地区よりも、白金、麻布などに特徴的に多いように見えることも気になるポイントと言えます。

港区全域で見ても相談件数は増加していることもあり、南青山の児童相談所の設置はやむを得無いというよりは絶対的に必要と言えるレベルになっているのではないかと感じるのはこの点です。

一方、NIMBY問題については、やはり建設費用が総額100億円以上と高額であることや、青山ブランドへの毀損で地域地価に悪影響があるとの懸念は持たれているのもまた事実です。しかしながら、そもそも青山地区は港区全体で見れば都民住宅も多い地域であると同時に、すでに児童相談所が設置されているみなと保健所のある麻布十番・赤羽橋地域は特段地価が低いわけではなく、物件によっては青山よりもはるかに麻布十番のほうが高額であることは言うまでもありません。実際、地価単体で見ても、港区南青山7丁目は平米あたり約150万円、麻布十番で平米あたり210万円あまりです。東京に住んでいない人にとっては確かに「青山ブランド」はあるのかもしれませんが、港区からしますとどうしても青山周辺は古い街区のハジ地に見えてしまうのが現状です。

土地が高いから、安いから児童相談所を置くべきだ、やめるべきだという議論は無駄でしょうし、児童相談所に限らず保育園・幼稚園などの教育施設や、いきいきプラザなどの高齢者向け施設の是非は議論になります。事故率や犯罪発生率で言うならば、送り迎えが必須になる児童施設よりも、高齢者の徘徊や繰り返し行われる窃盗などを誘発する高齢者向け施設のほうが危険であるという議論はかねてからあります。しかしながら、どちらが良いか、危険か安全かという話は観念論にすぎませんし、さして意味のある論拠にならないと思うのです。

やはり、青山地区やそのほか港区の住民全体の問題として、港区は虐待児童の通報件数が他の地域よりも増えているのだ、人口比で見ても低いレベルとは言えないのだという認識をきちんと持ったうえで、地域で子どもを支えていく、育児に困っている家庭を包んでいくようなアプローチを取れたほうが良いのではないでしょうか。

青山といえばログイン編集部跡地もあったことですし、街のカラーも考えて施策を練っていただきたいですし、住民の意見を吸い上げられる仕組みがもっとできるといいなと思います。

(追記 15日 01:04)

追加の取材で、本件住民向け説明会は今週末から年内に欠けて複数回開催され、原則として地元住民や付近の学校に通わせている保護者のみの世帯に対して説明が行われるとのことでした。

また、グリーンシード社内に事務局を置く反対派の一部は、港区の住民ではないという情報が寄せられましたが、現段階では真偽不明です。続報があり次第、記事にしたいと思います。