無縫地帯

CCCが新たなユーザー行動データ収集施策に向けてアップを始めたようですが今度の狙いは古き良き商店街?

カルチャーコンビニエンスクラブ社(CCC)が自社関係先のTポイントを使い、パナソニックと組んで日本全国の商店街にポイントカード利用サービスを提供するようです。

Tポイント戦略でリアル店舗におけるユーザー行動データ収集に余念が無いカルチャーコンビニエンスクラブ(CCC)グループですが、大手顧客であったファミリーマートが提携から離脱する意向を示すなどすべてが順風満帆とはいかない今日この頃であります。とにかく日常的に使われる小さな商いのデータと、せいぜい店舗情報や一部の位置情報までしかデータがないので、典型的な「Garbage In Garbage Out(ゴミを入れて、ゴミが出てくる)」ビジネスのままなのではないかと外から見ていて心配になります。一日1,000円使うユーザーの再訪率を数%引き上げるために高額なシステムを導入することにどのような費用対効果があるのか知りたい気分になります。

そうした状況の中、このところIoT方面へ精力的に事業拡大を図るパナソニックと新たにタッグを組み、大型チェーン店とは異なる顧客層である日本全国の「商店街」からユーザー行動データ収集を目論む動きが始まったようです。

「ポイントカードの持ちすぎ」解消へ紙のスタンプを電子化、CCCとパナソニック(ITmedia 18/11/5)

カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)子会社のCCCマーケティングは11月5日、パナソニックと「電子スタンプ」を共同開発したと発表した。商店街などの店舗が発行するスタンプを、買い物客が紙の用紙ではなくスマートフォンアプリ「スマホサイフ」で記録・管理できるようにする。ITmedia
どこの町にもあるような商店街の個人経営店舗が地味に展開しているスタンプ式の紙のポイントカードサービスを一気に今風なスマホ対応にしようというかなり思い切った提案のようです。ちょうど電子決済に対応するニーズがある地方自治体や地場経済においても一気に導入できるチャンスだとも言えます。

店舗経営者側の視点で考えると、旧来の紙のポイントカードサービスであればスタンプ用紙とスタンプを用意しておけば、あとはそれほど維持費が必要になるとも考えにくいわけですが、この新たな“電子スタンプ”を導入しようとすると、まずパナソニック製の特殊な「LinkRay」対応卓上発信機を購入する必要があります。さらに、LinkRayを利用するためには維持費が発生するようです。

LinkRay パナソニックの光IDソリューション FAQ - よくあるご質問にお答えします(パナソニック)

Q1LinkRayを利用するには費用がかかりますか?

A1LinkRayの利用にはサービス事業者様としての契約が必要となり、初期費用の他、使用するID数に対する課金が発生します。なお、お客様のサービスを利用されるエンドユーザー様への費用は発生しません。パナソニック
紙とスタンプだけを用意しておけば良かった昔ながらのポイントカードとは維持費用の勝手がずいぶん変わってくるようですね。とくに利用客が増えれば増えるほど「使用するID数に対する課金が発生」する仕組みは、後々に意外と大きな負担になる可能性もあり注意が必要かもしれません。それほど大きな利鞘が稼げるとも思えない商店街にある小さな個人商店にとってはバカにできない不安要素です。このあたりのコストも含めてCCCが全額負担してくれるという太っ腹な案件であれば問題はなさそうですがどうなんでしょうか。

また、商店を利用するエンドユーザー視点で考えると、紙のポイントカードを持ち歩いてその都度財布から差し出す手間と、スマホをかざす手間では、その面倒くささは五十歩百歩であまり大きな違いはないのかもしれませんが、その一方で、町の中の商店街で何か買い物をする度に、そうした消費行動の様子が店だけにではなくCCCの中の人にも伝わるのはまず間違いないでしょう。

導入店舗側には、利用者への情報配信、クーポン提供などで「スマホサイフの100万人以上のユーザーにアプローチができるメリットがある」(CCCマーケティングの渡辺朗スマホサイフ事業管掌COO)。CRM(顧客関係管理)への活用も見込める。いつ、どのような属性の買い物客が何回利用したかといったデータを、導入店舗が確認できる仕組みを用意する。ITmedia
別にそうした情報が知られても便利になるのであれば構わないと考える人は少なくないのかもしれませんが、この情報を元にして普段利用する店とは別のCCCの提携事業者からよく買う商品についての宣伝メールなどが届いたりする可能性が無いとは言えません。それも含めて世の中はITで便利になったと考えるユーザーならばまったく問題はないのですが、そういう形でプライバシーが他人に知られるのはあまり面白くないと考える人であれば、昔の紙のポイントサービスの方が良かったということにはなりそうです。

CCC側は今回の施策が消費者にとってもいかに素晴らしいものであるかをコメントしていますが、わたし個人としては今ひとつピンと来ません。そもそもキャッシュレス決済施策が導入されれば、決済トランザクション時にポイントカード的な顧客の消費行動データも同時に収集されてしまうはずで、そこにうまく乗っかれないCCCがわざわざ別途スマホをかざす手間を増やしているだけに見えてしまうのですがどうなんでしょうか。

(企業の間で)キャッシュレス化の熱量が高まっているのは明白だが、生活者目線の課題は置き去りになってはいないか。スマホのキャッシュレス決済が進んでもポイントカード、スタンプカードは紙のまま。財布からスマホとカードの両方を出す、煩わしい状態になっているのではないかITmedia
ファミリーマートでもヤフーでも「Tポイントカードありますか」と訊かれる煩わしさがありますが、それが地元商店街でもおじさんおばさんからTポイントの有無を尋ねられる日々が来てしまうのかと思うと、もう少しエレガントな方法はないのかと言いたくなります。