Uberが必死で売り込む空飛ぶタクシーは日本で受け入れられるか
UBERなどシェアライド各社が「空飛ぶタクシー」という道路に拘束されない利便性の高い移動手段を提案していますが、まだ荒唐無稽の謗りを免れ得ない状況のようです。
米国内における配車ビジネスという土俵での勝負はすっかりLyftに置いて行かれつつある感が強いUberですが、投資家筋に向けた新たなアピールの材料としてこのところ“空飛ぶタクシー”というアイディアが大変お気に入りようです。確かに、既存の道路に制限されず、飛び回ることができればコスト的にも安いし時間も早く済む…ということでしょうか。しかし、こうしたサービスは、個人による飛行機やヘリコプターの運用が盛んな米国内においても都市部で実現するにはかなりハードルが高いようで、そのあたりの事情については昨年の記事ですが以下が参考になります。
Uberが「空飛ぶタクシー」を2020年に飛ばす計画は、どこまで実現可能性があるのか(WIRED 17/11/15)
水を差すようだが、この空飛ぶタクシーが、Uberの配車サーヴィスと同じようなものになることは期待しないでほしい。少なくとも当面は難しいだろう。運用開始から当面は特定のルートしか飛行できない可能性が高いし、市内の向こう側まで移動するにはいいが、出発地や目的地と離着陸ポイントとの間は別の交通手段を使う必要がある。WIREDクリアしなければならない問題は数限りないわけですが、テクノロジーを駆使すればなんとなく実現しそうな夢のある話を語って投資家から金を集めることにかけてUberは非常に優秀でありまして、今年も盛大に話をぶち上げているようです。
空飛ぶタクシーUberAirは東京を含む5都市を第3の実験都市候補に(Engdget日本版 18/9/3)
空飛ぶタクシー、日本も候補ウーバー、5カ国から試験地選定(SankeiBiz 18/8/31)
バーニー・ハーフォード最高執行責任者は東京都内で講演し、空飛ぶタクシーは新たな移動手段として効率的で、時間を大幅に節約できると説明した。料理の宅配サービスといった「物流にも新しい商機が生まれる」とも訴えた。SankeiBiz今回はUberのCOO自らが来日して熱いアピールを行ったようですね。確かにもし空飛ぶタクシーが実現すれば新しい商機の可能性は色々とありそうです。もっとも実際にサービスを日本国内で行うためには航空機の運用にかかわる法律をはじめ解決しなければならない課題が山のようにあり、そう簡単に実用試験を行えるだけの環境を整えられるとはとても想像しにくいのですが。
このあたり日本の行政の中の人はどう考えているのかその片鱗をうかがえるような記事がありましたのでご紹介しておきます。
「空飛ぶクルマ」2020年代に実用化へ 本当に実現するのか、経産省担当者を直撃(弁護士ドットコム 18/7/16)
たとえば、ドバイや中国のように「とにかくやってみる」という方法もありますが、日本には馴染みません。困難ですが、ルールをつくり、安全性を確保してから導入ということになります。そこで大切になるのは、リスクを最小化しつつも残るリスクを許容できるだけの社会的な便益を提示できるかです。なるほど。しかしこれはあくまでも経産省の中の人の言葉であって、航空機の運用を実際に管轄する国交省の中の人はまた違う考え方をしているかもしれません。まあ色々大変ではあるけれど国交省も経産省も今後の可能性を検討するということで合同にて「空の移動革命に向けた官民協議会」を設立したということですので、今後の進展は大いに期待したいところではあります。
(中略)
自動車の普及で社会がものすごく便利になったように、もう一度、空でも「モータリゼーション」が起こる可能性があります。冷静な議論ができる環境を作れるかどうか、チャレンジしたいと思っています。弁護士ドットコム
「空の移動革命に向けた官民協議会」を設立します~“空飛ぶクルマ”の実現に向け、共同でロードマップを作成~(国土交通省 18/8/24)
ちなみに、配車ビジネスではUberの最大のライバルであり今のところ優勢な立場にあるLyftの創業者もつい最近のインタビューで「空飛ぶ自動車」について言及しておりました。
空飛ぶ自動車は?リフト創業者が描く未来(ウォール・ストリート・ジャーナル日本版 18/8/27)
実際、空飛ぶ自動車はヘリコプターをブランディングしなおしただけのものだ。仮に安全性がかなり高まり、便利で楽しく低価格化も進めば、もちろんひとつの選択肢にはなる。だが今は地上の移動手段に専念している。ウォール・ストリート・ジャーナル日本版堅実で優等生的なつまらない答えでもありますが、このあたりが両社のそれぞれの今の立ち位置を分かりやすく反映しているように思います。