マイクロソフト「IE依存」せざるを得ない現場の苦悩
利用者の間で怨嗟の対象になりやすい「IEのみ対応」という問題、マイクロソフトが気まずそうにサポートの打ち切りについて遠回しな言及を重ねているのが印象的です。
日本マイクロソフトのInternet Explorerサポートチームがなかなか意味深なタイトルのブログ記事を公開しておりました。
Internet Explorer の今後について(Japan IE Support Team Blog 18/7/18)
現在の Web アプリケーションが古いブラウザーである Internet Explorer 固有の機能に依存している状態であれば、そうした依存性を無くし、最新のブラウザーである Microsoft Edge で閲覧できるように見直していただくことを、今からご検討いただくようお伝えをしていくことが、私たちサポート チームの使命と考えています。Japan IE Support Team Blogなんともオブラートに包んだような回りくどい表現の文章でありますが、誰にでも分かるように単刀直入に言い換えれば、IEに依存した古くさいシステムを使い回してぼろい商売をやってる国内ベンダーと、そうした業者にだまされてIEに依存したシステムを導入・継続利用しているユーザーは、そろそろIEを使うの諦めてくれという話であるようです。
まあ、日本マイクロソフトとしてもエンタープライズ向けにIEの独自機能を強化してそれをメリットですよと売り込んできた経緯があったりするわけでして、そうしたサービスのあり方が多くの企業ユーザーを惹き付けしっかりと実績にもつなげてきただけに、突然バッサリとは切れないというのもあるでしょう。そうしたしがらみの諸々を思案した結果がこの「お前ら分かるだろ、察してくれよ」というニュアンスに満ちた宣言になったのでしょうし、さらにはまことに慇懃無礼ともいえるような味わい深いおことわりの一文にまで至ったのだろうなと思うわけです。
Internet Explorer はいつまでサポートが提供されるのか?など、将来の予定についてお問い合せをいただいたとしても、大変恐縮ですが回答することはできません。Japan IE Support Team Blog要するに、この件で何か問い合わせがあっても相手する気はないのでよろしくとしか書かれていないわけですが、なにやら丁寧かつ深い配慮があるように読めてしまう巧妙な言い回しになっておりまして、日本的風情といいますかちょっとしたおもてなし感というものを覚えます。しかし、こういう書き方をしてしまうと、IE依存のベンダーやユーザーからすれば逆に言質を取ったと言わんばかりにまだしばらくはIEで行けるやろという解釈をするところが出てくるのではないかと、まったくの他人事ながら心配してしまいます。いっそのこと日本マイクロソフトは明確にIEのサポート終了期日を宣言してしまったほうがすべての人にとって幸せになりそうな気もしますけれど、そうはいかない事情がいろいろあるのでしょう。
とはいえ、もういい加減古いIEの技術的なお守をするのもどうかという話でもありますし、マイクロソフトの言い分も、マイクロソフトを信じて依存してきたベンダーやユーザーも、ネットの技術進展の中で古いIEに依存するのが困難という技術的背景も、いずれも理解できるのが辛いんですよね。一度導入したら10年15年というスパンで設備を使う業界も多いうえに、ネット関連のソフトもハードも技術トレンドにマッチするように設備更新するには負担が大きすぎるので後回しになりやすいというのもまた事実で、電力会社の現場ではクローズドな環境ながらいまだWindows XPが現役で稼働していて、さすがにどうするか検討しなければならないという話が出るぐらいの話はあります。おそらく、日本の現場にはそういう話が普遍的にあるのでしょう。
そういえば、先日の大雨災害のときに一部の地方自治体がウェブ公開しているハザードマップがWindows環境のIEとFirefoxでしか閲覧できないということが話題になっておりました。もはやスマホが当たり前の時代に一般市民向け情報提供でもまだまだこんな感じなのですから、ましてや限定された企業内システムであれば今後もIEに依存していて何の問題もないという感覚は決して少数派ではないのかもしれません。
もちろん、サポートされなくなれば、何らかの脅威にさらされるのはベンダーでありユーザーなのですが。マイクロソフトもそれが分かっている分だけ、顧客の心情を思うと「やめますわー」と簡単には言えないという。そういう古い設備にしがみついて生産性が低い民間も公的機関も滅べとも言いづらいですしね。