無縫地帯

LINEの送金サービス「LINE Pay」の促進キャンペーンに格安クーポンを起用している件

LINEの送金サービス「LINE Pay」で、携帯電話業界がかねてから繰り返してきたクーポン発行のキャンペーンに踏み切って、これはこれで話題になっているようです。

しばらく前から携帯キャリア各社が妙なクーポンを乱発して客寄せに邁進していて、これが一部の小うるさい大人などから不興を買ってSNSなどで叩かれるという光景もすっかりお馴染みとなった感があります。

近頃携帯キャリアは無料ファストフードで客寄せやってるようですね(Yahoo!ニュース 個人 山本一郎 17/2/5)

あのキャンペーンで一体どれほどの集客ができてどれほど経済効果が出てどれほど採算が取れているのかその内実はまったく不明ですが、いまだに各社ともご執心な感じがありますからそれなりにうま味はあるのでしょう。陳腐で批判されているからと言って、必ずしも効果が出ていないというわけではない、というのは真理かもしれません。

牛丼・アイス無料はすっかり定着。携帯キャリアの格安クーポンってどういう仕組み?(新R25 18/2/5)

携帯会社はユーザーの囲い込みをしながら、提携企業は集客、ユーザーは無料の商品をゲットできているのか。このサービスは、三者三様の“WIN”の上に成り立っているようだ。新R25
こちらの記事はITジャーナリストの三上洋さんがキャリア側の思惑なども含めて解説されておりましてかなり面白い内容なので気になる人は是非リンク先をご覧いただくとして、いずれにしてもこうしたクーポン施策は販促キャンペーンの体裁をとりながらも実のところは通常の携帯電話利用情報だけからでは収集できないエンドユーザーの行動データを刈り取って分析できるというのが企業側にとってかなり面白いことになっている可能性はありそうです。

で、この手のイマイチ行儀の微妙なクーポンキャンペーンをできるのは大手キャリアだけだろうなと思っていたところが、今度はLINEが送金サービス「LINE Pay」で同様な施策を展開すると発表しました。その後も一週間以上データ界隈で「あれはどうなっているのだろう」という議論が冷めないあたり、「あまり評判の良くないクーポンキャンペーンでも、参入するからにはやっぱり参考になる良いデータが取れているのだろうか」という感想になるのも致し方のないところなのかなと感じます。

LINE Pay「10円」送金で、ローソンやマックの商品がタダ。7月17日まで(Engadget日本版 18/6/18)

今回のキャンペーンでは、LINE Payのユーザー同士でお金をやりとりする「送金」機能にフォーカス。該当期間中にLINE Payで友人に10円を送金するだけで、ローソンやマクドナルドの人気商品がタダになるクーポンを、4週にわたり週替りでもらえると言います。Engadget日本版
LINE Payでわずか10円のやりとりをするだけで、150円以上の値段がするファストフードやドリンクをもらえるというのですから、単純にそこだけを見ればかなりお得な感じがしないでもありません。

ここで気になるのはLINE Payの仕組みでして、一旦LINE Payとして入金されると現金化する際に1回あたり210円の手数料が発生することになっています。今回のLINE Payのキャンペーンで提供される商品で一番高額なのはマクドナルドのベーコンエッグマックサンドですがこちらは単品で200円。単純に一旦LINE Payへ入金してからもう一度出金しようとすると、マクドナルドのベーコンエッグマックサンドを買うよりも出費がかさんでしまうという現実があるようです。

もちろんLINE Payだけで決済を行い現金化はしないということであれば手数料のことを考える必要はありません。要はサービスの使い方次第、LINE Payの浸透度合いの勝負ということではあります。このあたりの仕組みを分かった上でキャンペーンに参加するのであれば何も問題はありませんが、知らないで試すと昔からよく言う「タダより高いモノはない」を実感することになる人がいるのかもしれません。一度LINE Payを使い始めたら、現金化するのは損なので使い続けるであろう、という目論見があるのだとすると、確かにユーザーの囲い込みとデータの精度で勝負している各通信キャリアのマーケティングと似た手法で進化していく、ということなのでしょう。

サービス事業者の皆さんはいろいろと考えるものだなと感心した次第です。