無縫地帯

AIアシスタント(スマートスピーカー)ネイティブの子供達が登場する時代

音声入力主体のAIアシスタント(スマートスピーカー)を子供のころから使いこなす新たな「ネイティブ」の出現が話題になり始めたようで、これはこれで興味深く見守りたいと思います。

いわゆる“戦後”から現在に至るタイムラインで考える場合、そもそもはそうした用途としてはおよそ想定外でありながら子供達が言葉や社会のルールなどを覚えるツールとして機能してきたものとして、漫画、テレビ、ゲームはとても大きな存在なんじゃないかと思います。そしてインターネット体験を幼少期に迎えたデジタルネイティブも大人になり、現在はスマホがそうした過去の諸々を統合して提供するプラットフォームとして確固たる地位を築いているわけですが、今後はそれがスマートスピーカーに代表されるようなAIアシスタント搭載デバイスに置き換わっていくのかもしれません。

「ねえグーグル、アレクサって知ってる?」2歳児、「Google Home」「Amazon Echo」と仲良しになる(ITmedia 18/5/16)

昔は「IT戦士」としてネットニュース界隈を鳴らしていた岡田有花さんも今や2歳児のお母さんなんですね。家庭でのお子さんとの微笑ましいやり取りが間近に見えるような楽しい記事ですが、スマートスピーカーのAIアシスタントが子供の言語感覚の成長に大きく影響しているであろうことを感じさせる内容となっています。また、AIアシスタントが今後広く普及する可能性をもっている要因の一つも次の一文から分かります。

「明日の天気を調べる」「動物の鳴き声を調べる」など、従来なら、文字を学ばないとできなかったさまざまな操作が、文字が分からなくてもできてしまうのが面白い。スマートスピーカーは、「識字」というハードルを取り去ってくれる、バリアフリーな家電だなあとも感じている。ITmedia
子供以外でも、キーボードやタッチパネルの操作ができない、もしくはそうした入力デバイスを使うことに抵抗感を覚えるような高齢者などにもAIアシスタントは歓迎されるのかもしれません。言われてみれば、拙宅児童もいまでこそ普通にタッチタイプやフリック入力は苦も無くこなしますが、いまでも小難しい入力をするときは音声入力を駆使しているのを見ると、より原始的な入力ツールとしてはやはり確固たる利便性を持っているのでしょう。

いずれにしても、機械に向かって話すことにほとんど抵抗感の無い子供こそが今後一番早くAIアシスタントを使いこなすようになっていくことは間違いなさそうで、まさにAIアシスタントネイティブの登場と言えます。

しかし、こうした子供のAIアシスタント利用については必ずしも肯定的な意見ばかりがあるわけではなく、AIアシスタント先進国の米国では大きな議論が起きつつあるようです。

アマゾンの「Echo Dot Kids」は子どもの健康を脅かす――米プライヴァシー保護団体や専門家が猛反発(WIRED 18/5/16)

Echo Dot Kidsは子どもたちが情報やエンターテインメントを得るうえでAlexaに依存してしまうようつくられているのです。アマゾンは子どもたちがEcho Dot Kidsに『Alexa、退屈だよ』と言うように仕向けてさえいます。そうなれば、Alexaは同社が用意したゲームとコンテンツを提供するわけですWIRED
まあ、どんな技術も子供が使い始めると悪影響を示唆する話は出ること自体が健全ではあるので、驚くべきことではないのかもしれませんが。

この点については過去の漫画・テレビ・ゲーム・スマホなどについても同様な懸念が大きく議論され、事実ネガティブな影響が生じたことは確かでしょう。あとはその都度でどうバランスをとって利用するかが大切なのですが、必ずしも理想通りに節制できないのがむつかしいところではあります。

しかし、スマホ以降のネット対応デジタルデバイス登場によってちょっと事情は大きく異なることになりそうです。そうしたツールはオンライン経由でどんどんユーザーの情報を収集していく可能性があるんですね。当然AIアシスタントも例外ではありません。

親が撤去しない限り、Alexaはあなたが2歳のときにAlexaに向かって最初に叫んだ言葉から、その先ずっとあらゆるデータを記録し続けることになるでしょうWIRED
はたしてこのような仕組みが今後どのように社会へ影響をもたらすことになるのかは実際に時間が経過してなにがしかの事態が起きてみないと分からないのですが、今のところはAIアシスタントを提供する事業者のモラルに期待するしかないということになりそうです。期待してしまっていいのかどうかはよく分かりません…。