無縫地帯

国内Android関連開発市場が周回遅れになっている件

Googleがスマートフォン向けOS最新版となる「Android P」のパブリックベータ版を公開しましたが、日本ではAppleのiOSシェアが高いこともあって、悩ましい状況になっているようです。

Googleがスマホ向けOS、Androidの次期最新版となる「Android P」のパブリックベータ版を公開し、AppleのiPhone環境にますます似てきたようだということで海外では話題になっております。

Androidの新しいジェスチャーはiPhone Xそっくり(TechCrunch 18/5/9)

スマホが現行主流のタッチスクリーン上でGUI操作する手法を踏襲するかぎり、最適化を進めていけば似たり寄ったりの仕組みになっていくのはある程度仕方ないことなのだろうとは思います。まあ逆に考えればiPhoneであれAndroidであれ、ある程度の進化が落ち着いた現状においては“スマートフォン”という既存のフォーマットに縛られている限りはもう殊更に驚くほどの画期的なモデルが登場することはあまり期待できないのかもしれません。

新しいOSが出たとなればちょっと試してみたいと考えるのが人情でしょう。とくに開発者的な立場の人であればそういうことが仕事でもあります。しかし、日本国内では今すぐにAndroid最新ベータ版を試すことが可能な端末はほぼ存在しないという問題が起きています。そのあたりの事情はしばらく前の記事ですが以下がわかりやすいかもしれません。

Android P開発者プレビュー版が配信。日本の開発者は合法機体消滅へ(すまほん!! 18/3/10)

さすがに現時点では対応機種が増えてはいるのですが、残念なことに国内で正規流通している端末はまだありません。かろうじて個人輸入もしくは一部輸入商社経由で入手可能な海外発売モデルの「Essential Phone PH-1」が技適マークを取得しているそうで、合法的にAndroid Pをインストールして試すことが可能なようです。

Googleのスマホなど向け次期OS「Android P」をSIMフリースマホ「Essential Phone PH-1」で試してみた!技適マークも表示され、日本でも安心して実機確認が可能【レポート】(エスマックス 18/5/9)
Essential Phone PH-1にAndroid P Betaをインストールする手順(Qiita 18/5/9)

端末そのもののサポートを日本国内で受けることが期待できないため普通のユーザーにはまったくおすすめできない状況ですが、それなりの不自由は覚悟の上でAndroid最新版をどうしても試したいという開発者であれば挑戦するのも悪くなさそうです。

しかし、こういう気軽に開発者が最新OSを試すことができないという状況は国内におけるAndroid関連開発市場の成長を著しく制限することになります。こうした状況になってしまっている要因としては、まず国内スマホ市場のデファクトがAppleのiPhoneシリーズであり、販売面でApple優位の市場になってしまっていることは大きく影響しているでしょう。

書棚の向こう側(PC Watch 18/5/11)

いま、iPhoneのiOSがそれに近い地位を得ている。とくにシェアの高い日本では、国民機的な存在になっているといって良いだろう。PC Watch
まさに日本におけるスマホの国民機はiPhone以外ないわけでして、こうなるとGoogleとしてもスマホ関連の展開は優先度が下がるのも無理はないのかもしれません。また、日本での携帯端末販売がキャリアの都合優先になるという背景もAndroidにとってはネガティブに働いていることは否めません。このあたりはスマホ/ケータイジャーナリストの石川温さんが最新Android事情を語る記事の中で触れられておりましたので以下に少し長めに引用させていただきます。

今年10周年を迎えるAndroidが「フラグメンテーション(断片化)」の撲滅に追い打ちをかける(Engadget日本版)

メーカーとしては「最新OSをいち早く使えるようになる」という環境を整備しつつあるが、あとはキャリアという大きな壁をどう乗り越えるかが課題だろう。

これまで、キャリアは自分たちの仕様やサービスのアプリをメーカーに押しつけてきた。メーカーはBSPの完成を待ったあとは、キャリアのサービスに新しいOSのバージョンが対応できるかに、労力とコスト、時間をかけてきた。

今回、グーグルと半導体メーカーが一致団結して、BSPの課題を解決してきた。あとはキャリアがスマホメーカーに対して、無理な押しつけを我慢できるかどうか。我々、日本のユーザーにとって「最近のAndroidをいち早く使えるかどうか」は結局、キャリア次第ということになりそうだ。Engadget日本版
期せずしてといいますか、石川さんの「キャリアは自分たちの仕様やサービスのアプリをメーカーに押しつけてきた」という言葉に通じるようなトラブルがまた起きているようでして、結局ツケはエンドユーザーに全部押しつけられるような展開になっていてなんとも言葉がありません。

ソフトバンク「+メッセージ」アプリの配信を一時停止「既存メール全て消えた」との悲鳴相次ぐ(ねとらぼ 18/5/11)

あくまでも「たられば」の話になってしまいますが、国内Android開発者界隈がもう少し盛り上がっていれば、もしかしたらキャリア側の不適切な運用を補完してトラブルが出ない形にできていたのかもしれないなと考えたりもします。

そもそもが国内キャリアは海外プラットフォーマーに市場の美味しいところを食われるのが嫌で土管商売以外に手を広げつつある印象もありますが、そうであればスマホに独自の細かい仕様を要求するよりも、どんな仕様の端末でも関係なく利用可能にする方向に事業展開するほうが結果的により多くのユーザーを囲い込めるような気がするのですが、なかなかそういう方向に注力しているように見えないのが不思議です。