無縫地帯

NTTグループが23日月曜にも傘下ISPに対し独自のブロッキング案を発表・実施か

違法サイトに対するブロッキング問題を巡り、NTTグループが自主的な取り組みとして海賊版など違法サイトへのブロッキングを行う方針で明日発表する予定であることが、関係者の話として確実視されています。

18年4月13日に知的財産戦略本部会合・犯罪対策閣僚会議において決定された「インターネット上の海賊版サイトに対する緊急対策」において、「『民間事業者による自主的な取組として』(海賊版サイトなど問題サイトの)ブロッキングを行うことが適当である」と方針が表明されたことを受けて、NTTグループが明日23日、傘下のISPであるNTTコミュニケーションズでの通信のブロッキングを問題サイトに対して実施する発表を行う予定であることが、関係者の証言で明らかになりました。

情報通信事業者の最大手であるNTTグループがこの方針に則りブロッキングを行うことになりますと、2位3位のMNOであるKDDI、ソフトバンクも近い将来この動きに追随する可能性が高くなるものとみられ、我が国の通信業界は物議を醸す方向に一歩を踏み出すことになります。

重ねて議論されている通り、海賊版サイトに対する通信のブロッキングについては、電気通信事業法に違反している疑いがあるだけでなく、憲法第21条2項「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密はこれを侵してはならない」に正面から抵触する可能性があります。憲法問題については、政府が知財本部の決定として通信事業者に対して要請や命令を行うと政府が憲法違反を問われることになるため(憲法は政府が国民に対して行う約束である)、あくまで民間の自主的な取り決めとしてブロッキングを行うことで実施への道筋をつけ、電気通信事業法については法改正までの「つなぎ」として違反状態であっても問題にならなかろうとNTTグループは判断したと見られます。

この判断にあたって、大きな役割を果たしたとされているのが、通信業界とコンテンツ業界の事実上の橋渡し役になっている角川グループ・ドワンゴの川上量生さん(資料では当時ドワンゴ代表取締役、現・ドワンゴCTO、カドカワ代表取締役)と見られます。関係者の証言によると、NTT代表取締役社長の鵜浦博夫さんとの間で一連のブロッキング問題について議論を重ねてきていたのは川上量生さんと渉外関係者で、早い時期から帯域制限の名目でのブロッキングや、上記憲法の「通信の秘密」に抵触しないブロッキングの方法について検討してきたとされています。

また、小学館・集英社などの一ツ橋グループと講談社など、売上の比重において漫画関連が無視できない出版大手各社が、対政府のロビイングで知財本部との関わりの深い川上量生さんと元議員などの関係者に対自民党・政府工作を要請したとされています。本来であれば、漫画業界は海賊版などのサイト運営者を特定し、権利者を束ねて訴訟を起こすのが基本であり、削除要請などは防弾ホスティングなどのサービス事業者の壁に阻まれることは前提として対策を打たなければならないにもかかわらず具体的な効果を上げることがなかなかできないまま現在に至っている、という厳しい現状があります。

ブロッキングに関して一定の議論が深まり、コンテンツ産業が直面する危機的な状況に対する理解も、短兵急なブロッキングの法的な問題もある程度は一般化され、また、漫画村ほか関連サイトの問題も明らかになる中で、手順を踏んだ立法的措置や既存の法体系でできる限りのことが充分になされないうちから、通信事業者の自主的な判断としてのブロッキングを通信最大手NTTグループが実施するとなると、ハレーションが怒る可能性はあります。また、コンテンツ産業・出版業界の雄として、また政策面での理想を高く掲げている川上量生さんのお考えや方針も理解するところではありますが、果たしてこの段階でのブロッキングが本当に正しい選択だったと言えるのかどうかも含めて、明日発表される(かもしれない)NTTグループのブロッキングに関する発表を待ちたいと思います。

もちろん、今後きちんと立法化に関する議論が進めばブロッキング自体は適法になりますし、併せて弊害が強かったプロバイダ責任制限法の見直しも必要になってくるとは思いますが、少なくとも適法化処置がなされるまでは、一連のブロッキングは違法性が問われます。場合によっては事業者が刑事や民事で法的紛争を抱えることにもなりかねません。しかしながら、通信業界は売上がとても大きいので、敢えて訴訟を起こさせているうちに立法化が進んでしまい、訴訟を進めているうちになし崩し的に問題が終わってしまうと高を括る声も少なからず聞こえます。

もちろん、ひとつの業界、大企業のロジックとして、そのような戦術が取り得るのは理解するところではあります。ただ、それによって踏みにじられるのは通信の秘密であり、業法であり、通信サービスの利用者である国民です。「紛争が起きても解決するまでの間に法改正なり立法措置が済んで問題は解決するのだから、いまブロッキングしても然程の問題は無い」ということに利はあっても義はなかろうと思います。

NTTだからといってNTT法という良く分からない法律で手足を縛られ、義はないと叫ぶNTTグループの気持ちも分かるのですが、同じく義のないブロッキングを通信事業法違反と知りつつ強行するのはハッテン的ではないと思わずにはいられません。ひとつの企業体の合理的判断であることは理解するとしても、そこで働く人たちはそれでも良いと思っているのか気になるところでございます。

各位の良識に期待したいと思っておりますし、未来を見据えて国民にどういう通信を提供するのかという未来予想図をきちんと描き、平等で自由なインターネットを守っていくために何ができるのか、また、安全保障から犯罪対策まで安心と安全をどう担保していくのかも踏まえた、地に足の着いた議論が今後も広げられることを願っています。