無縫地帯

ドコモの新しいdocomo ID施策は実際のところどうなんでしょうか

ドコモの新しいクラウドサービスでは、docomo IDの体系を変更するようです。しかし、プラットフォーム事業者がこれに制限をかけてくる可能性があり、いろんな意味で待ったなしの展開みたいですね。

山本一郎です。朝からバタバタしております。

ところで、「日経コミュニケーション」誌のインタビュー記事によると、ドコモがクラウドサービスをその主眼として、ネットワーク周りのシステムについてかなり大がかりな変更を行っているそうです。

NTTドコモが認証基盤を大手術、「回線ベースの認証はもはや限界」(ITpro/日経コミュニケーション 2013/5/8)

新規にスマートフォンを購入したユーザーがGoogleアカウントやApple IDを設定すると各種サービスが連動されるように、端末側の専用アプリなどでdocomo IDを取得。3G/LTE契約をしているユーザーは回線契約をひも付けることで、ドコモの各種サービスが端末に連動されるようになるという。ITpro
この部分を読む限りでは、GoogleやAppleのスマホユーザーがdocomo IDを併用してくれる状況にしていくことがまずはプライオリティであり、そのオマケとしてドコモ回線契約ユーザーへも連動サービスを提供しますよというニュアンスに見えてしまいます。実際のところは違うのかもしれませんが。

同記事は、ドコモのスマートコミュニケーションサービス部オープンサービス企画担当部長に行われたインタビューをベースにしていますが、はたしてドコモ全社が一致してこちらの方向に動いているのかは分かりません。ともかく巨大な企業ですからね。

こういう流れであれば、少なくともメールサービスについては、今のspモードメールのようなまずい状況は改善されるのではと期待したいところです。こちらの記事を読むとspモードメールを使っていない人でも分かると思いますが本当に残念な感じです。

docomoのspモードメールがダメなのは、迷惑メール対策が面倒だから(見て歩く者 by 鷹野凌 2013/5/13)

いやほんと真面目な話、docomoの人ってこれを使ってて苦痛じゃないのかしら? と不思議に思います。spモードメールアプリが世に出てもう3年近くなるのですが、この辺りの面倒くささは結局改善されることはありませんでした。これって別に迷惑メール対策に限った話ではなく、いろんな場面でこのようにイライラさせられる操作が多いのです。見て歩く者
さて、日経コミュニケーション記事で語られているドコモの施策ですが、やや気にな点があります。ID連動は良いと思うのですけれど、その連動先プラットフォームが逆にドコモとの連動を拒否してきたらどうするのでしょうか。そういう可能性も含めて戦略がきめ細やかに練られているのであれば良いのですが。

先週末、LINEの人気サービスの一部がApple側から拒否されて、急遽サービス提供を終了するという事件がありました。

iPhone版「LINE」で有料スタンプのプレゼント機能を終了--アップルからの要請で(CNET Japan 2013/5/10)
LINEの「スタンププレゼント機能」がAppleの一声で突然停止 プラットフォームonプラットフォームというリスク(とあるサイトプロデューサーのブログ 2013/5/12)

Appleはプラットフォーマーなので、LINE等のプラットフォームonプラットフォームをどう思っているのか気になります。もちろん、手数料を得ているため、売上を上げてくれるアプリを制作してくれる会社は好きだと思いますが、Appleがコントロールできなくなる要素(人気アプリをLINEがコントロールする)を含むことは、好んでいないように思えます。とあるサイトプロデューサーのブログ
今回はAppleによる拒否でしたが、同じような突然のサービス拒否をGoogleが発動する可能性も絶対に無いとはいえません。

他社プラットフォームのエコシステムを利用して、自社プラットフォームを動かす際のリスクは必ず存在しますが、そのリスクをドコモIDのような決裁サービスの基幹部分に組み込むというのは、随分思い切るなという印象を受けます。もっとも、リスクが大きいのはサービス提供側もエンドユーザー側も同じです。何かサービスの利用を開始する際には、くれぐれもその選択は慎重に行いたいものですね。

プラットフォームonプラットフォームはいかんということで、mixiの倒産を祈念しています。