良くも悪くもGoogleのハードウェア部門は落ち着かない感じですね
Googleが買収したNestをいったんは分社化していたものを、再び吸収合併するというニュースが流れておりましたが、スマートホーム系のハードウェアに限らず他でも積極的な買収と売却を繰り返しています。
Googleが過去に買収しながらも分社化させていたスマートホーム企業のNestを改めて吸収合併することになりました。
グーグル、Nestを再統合--「Googleアシスタント」拡大へ(CNET Japan 18/2/8)
Googleが、機器メーカーNestを再び傘下に収める。この動きの大きな目的は、Googleの人工知能(AI)技術と「Googleアシスタント」を、Nestの新製品にさらに簡単に搭載できるようにすることだ。CNET Japanなるほど、このところ話題の音声アシスタント機能との連携を推進するためというのが大きな理由となっているようですね。まあ、Nestの経営についてはあまりうまくいっていなかったという話も過去にはありましたので、色々な意味でテコ入れという側面もあるのではないかなと思わなくもありません。
NestがスマートホームRevolvのサービス打ち切りAlphabet-Googleの悩み(クラウドWatch 16/4//11)
Nestの業績への懸念も浮上している。2014年はじめに同社をGoogleが32億ドルで買収すると発表した当時、共同創業者でCEOを務めるTony Fadell氏の素晴らしい履歴(Apple出身で、「iPod」開発の中心人物の一人とされる)もあり、Googleの新しい事業の柱となるかと期待されていた。クラウドWatchこうした業績不振の責任を取るような形で共同創業者かつCEOのTony Fadellさんは2016年の6月にはNestを退職。さらに今回は同じ共同創業者のMatt Rogersさんも退職ということで、もはやNestのDNAは完全に潰えるということになりそうです。
Nestの共同創設者ロジャース氏が退職へ(CNET Japan 18/2/9)
このNestのGoogleへの再統合劇において興味深いのはNest創業者達が去った後に同事業の実質的な責任者となる人達の経歴です。
Google、スマートホームのNestをハードウェアチームに統合「Googleアシスタント」搭載へ(ITmedia 18/2/8)
発表はGoogleのハードウェアチームの責任者、リック・オステルロー上級副社長とNestのマルワン・ファワズCEOの連名で行われた。米CNETによると、ファワズCEOはオステルロー氏の直属になる。両氏はいずれも米Motorola出身だ。ITmediaGoogleがMotorolaを買収したのが2012年、そして同事業をLenovoに売却したのが2014年でした。一方でNestがGoogleに買収されたのが2014年です。そのタイミングでMotorolaからやってきていたお二人は色々思うことがあったのかもしれません。臥薪嘗胆したかどうかは知りませんが結果的に生き残ったのはMotorola組であり、Appleの血統を持つNest組は去ることになったというのは、Googleという企業文化との相性などがやはり影響したのかどうか。勝手に想像する分には面白いものがあります。
それにしても、改めてGoogleというところはハードウェア事業についての方針が落ち着かない印象を覚えます。スマホに関してはMotorolaをわずか2年ほどで手放し、もう自社では端末の製造販売はやめるのかと思えば今度は台湾のHTCを手に入れました。自動運転車にしても当初は既成自動車メーカーが作りそうにない特殊車両を開発して注目を集めながら自分達で車そのものを作ることはかなりあっさりと放棄しています。また、ロボティクス分野でも買収したSchaft社やBoston Dynamics社をソフトバンクグループに売却しています。特定の事業領域で事業の入れ替えを頻繁に行っているというよりは、Google自身がハードにかかわる全ての事業分野でかなりダイナミックに取捨選択をしているイメージです。
こうしたGoogleの姿勢を事業運営に対する評価・判断が早く行動力があると前向きに評価するのか、周りの事情や都合を考えず自分勝手に先走って変更ばかりしていると後ろ向きに評価するかは、人それぞれの価値観によって異なると思いますが、ソフトウェア開発におけるベータ版的な考え方をそのままハードウェア事業にも持ち込んで実行していると解釈すべきなのでしょう。Googleのやり方に慣れているアーリーアダプター的な人であれば特に支障はないのかもしれませんが、そうではないどちらかといえばレイトマジョリティ的なエンドユーザーにとって、ハードウェアの方針がこういう形でポンポンと変更されるのはなかなか付き合い辛いかもしれません。このあたりのやり方が、今後Nestのようなスマートホーム製品などの市場展開においてどう作用していくのかは興味深く見守りたいところであります。