無縫地帯

いよいよ米国におけるネット中立性が撤廃されそうです

「大量にネットで動画などを観てトラフィックに負担をかける人たち」に従量制課金をさせることの是非なども含む「ネット中立性」の議論が進み始め、オバマ政権旧弊打破を狙うトランプさんらしい展開になりました。

以前にもこちらで以下のような記事を書きました。

米国がネット中立性という建前論をやめるようですが我が国への影響はどうなんでしょうか(Yahoo!ニュース 個人 17/4/5)

いわゆる前オバマ政権時に作られた規制をどんどん撤廃しようというトランプさんの一連の施策の一つであるわけですが、いよいよ具体的な形で規制の撤廃が行われることになりそうです。

ついに議論が本格化するようで、これはこれで時代なのかなと思うわけであります。

米、「ネット中立性」規則の撤廃が濃厚に--12月採決へ(CNET Japan 17/11/22)

採決へ投票する権利を持つ5人のうち3人が与党共和党の人間であるため、大方の予想としてはネット中立性の規制撤廃はほぼ間違いないだろうと見られています。もし、規制が撤廃されると何が起きるかは以下の日経記事の解説が参考になります。

米、「ネットの中立性」撤廃コンテンツの扱い格差容認(日本経済新聞 17/11/22)

規制緩和が実現すれば、ネット接続サービスを手がけるAT&Tやコムキャストなど通信・CATV会社はコンテンツの内容に応じ、追加料金を課す代わりに高速通信を提供するなど自在に速度や価格を決められるようになる。日本経済新聞
たとえば、ネットの帯域をより多く消費するような映像配信コンテンツを視聴したければ専用の高額な回線プランを利用することが今後必要になるといった感じでしょうか。もしかすると通信事業者系の有料コンテンツサービスに加入することで通信費そのものは据え置きみたいな展開もありそうです。当然ながらこうした動きに対して非通信事業者系のネット事業者は反発しています。

グーグルやフェイスブック、アマゾン・ドット・コム、ネットフリックスなどが加盟するインターネット協会は「ネット接続会社はその立場を利用してウェブサイトやアプリを差別してはならない」とネットの中立性の維持を求める声明を発表した。日本経済新聞
こうした問題は何も米国に限らず我が国でも以前から議論となっていますが、これまであまり良い解決策もないままで問題が先延ばしされてきた印象です。

急浮上した「インフラ“ただ乗り論”」に出口はあるか?(@IT 06/3/24)

動画配信などを行うサービス事業者は多くの場合、自社が直接接続するプロバイダに費用を支払ってトラフィックを運んでもらう。しかし、そのプロバイダからピアリング(相互接続)でIXを経由してトラフィックを受け取る別の通信事業者は、サービス事業者からの費用を受け取っていない。費用を受け取らないまま動画配信の大量のトラフィックを運ばないといけない――これが“ただ乗り”の問題点だ。ISPからはサービス事業者に対して直接接続するプロバイダ以外のインフラコストも負担するよう求める声が出ている。@IT
まあ、日本の場合、明確にネット中立性を厳守せよとする法律も存在しないため、通信事業者系コンテンツサービスを利用すると一定期間サービス料金が無料になったり、課金料率が低めに設定されたりといったことが既に横行しているという現実もあったりしますが…。

日本のような玉虫色なやり方ができない(?)米国では今回バッサリと通信事業者寄りに行政の舵を切りなおすということなのかもしれません。もし12月14日の採決でネット中立性の規制が撤廃されるということになれば、米国ではYouTubeやNetflixのようなネット帯域消費の激しいサービスは通信事業者によって何らかの帯域規制が科され、それを解消したいユーザーは割増し料金を通信事業者に支払うといったことになるのかもしれません。また、そうした動きは普及しつつある動画広告などにも影響が出る可能性は大いにありそうですし、さらには米国以外のネットビジネスのあり方にも徐々に波及していくと考えた方がいいのかもしれませんね。