無縫地帯

「都民ファースト総崩れ」音喜多駿さん離脱で、小池百合子都知事に都議会で不信任案が可決か(訂正あり)

小池百合子女史の都知事就任以降、都民ファーストの会が結党される前から少数与党として支えてきた音喜多駿、上田令子両氏が都民ファースト脱退を表明。さらに10名規模の離脱が噂され、小池都知事不信任も視野に。

都民ファーストの会が立ち上がる前から小池百合子女史を支えてきた都議の音喜多駿さん、上田令子女史が都民ファーストから離脱するという話が入ってきました。

都民ファーストの会:2都議が離党へ小池氏手法に反発(毎日新聞 17/10/2)


まだ小池百合子女史が都知事に当選したばかりで文字通り都議会での「少数与党」時代から小池女史を支えてきた3名のうち、八王子選出の両角穣都議を除く2名が党を去る話になってしまい、大変なことになってきました。

また、現在都民ファースト内部では都議同士の会食や宴会も表向き禁止される一方、昨今の小池百合子都知事の「希望の党を通して国政に前のめりとなる姿勢に不安を感じる都議が多い」こともあって、地元の支援者などからの不安も噴出。これといった説得の材料を持たされないばかりか、民進党系以外の都議はほとんどが一回生で「支援者対応をしたことがない」事情もあって状況が逼迫していると見られます。

都民ファーストのある都議は9月下旬、支援者に対して文書で「(都議会が閉会する)10月5日以降での都民ファーストの会からの離党を検討しているので、支援していただきたい」と表明。いきなりの造反が発生したことで、都民ファーストも党幹部がすぐに気づいて慰留に走ったものの、むしろ都議の支援者から「都民ファーストはまったく都民のことを考えていないのではないか」と突き上げを食らうなど、国政へ軸足を移し、日本初の女性首相と政権交代を目論む小池女史の足元が揺らぐ方向になってきています。

また、民進党系の別の都議は、具体的な内容は明言しないものの「昔、民進党都議団でお世話になっていた松原仁さんに結果として弓をひくことになって、後悔していた。ところが、今度は国政で希望の党に松原さんや長島さんが合流され、都民ファーストで小池さんを担ぐはずが、いままでの民進党よりも劣化した組織や予算で戦う状況になってしまっている」と説明しています。さらに現在の状況としては「他の都議とも連携を取りながら都政の立ち遅れている部分を調整したいが、肝心の都民ファーストの党本部が機能しておらず、また他の議員と話し合うなという強い司令も出ているため、表立って何かを調整したり、共同作業をして提案するといったことがまったくできなくなっている」と言います。

民進党を支える区議や市議の間で衝撃が走っているのは、希望の党と立憲民主党、さらにはどちらにも合流しない無所属に国会議員が別れたことにより、野党共闘で肩を並べて関係が良好であった共産党系の区議や市議、また連合から出た各議員も方針が定まらず漂流しているところにあります。

「これといった都政の実績もないどころか、豊洲や2号線建設で失政しかない小池さんではもたない」小池都政が行き詰まりを鮮明にしているのは、都議会「与党」の都議会公明党との関係が解消に向かっていることで拍車がかかっている現状があるからです。今回「すべての東京都の小選挙区で候補者を立てる」と発言した若狭勝さんのテレビでの発言から、国政では与党として自公政権を確立している公明党の支持基盤が揺らぐことを懸念しています。


【衆院選】都議会公明党、小池百合子知事との連携解消の結論先送り「国政転身」見極めつかず(産経ニュース 17/10/2)
http://www.sankei.com/politics/news/171002/plt1710020016-n1.html
小池百合子都知事、22年ぶり女性副知事任命へ - (産経ニュース 17/9/29)

そして、都知事としての小池百合子女史は、女性副知事任命と華やかなニュースを送り出す一方、副知事退任となる安藤立美、中西充、山本隆の三氏については退任の意向とされます。中でも副知事の中西充さんは都政の事情において目下もっとも外してはならない人物と目されてきましたが、幾つかの重要な都政の運営にあたり都知事小池百合子女史の方針に正面から衝突、退任というより解任させられたという見方がもっぱらです。

そのため、勢力の衰えていた都議会自民23議席だけでなく、19議席を擁する共産党、都民ファーストの会との提携解消を目指す都議会公明党23議席、旧民進党で立憲民主党への関係が深いとされる5議席に加えて、都民ファーストの会からの脱落者が23名出ると大変なことになります。都知事に対する不信任案は地方自治法により都議会本会議で都議127議席の3分の2以上(83名)が出席し、4分の3以上(最低63名)が賛成すれば可決されます。この場合、小池都知事は10日以内に辞職か、議会解散の選択を迫られることになり、もしも都議会を解散しない場合は知事は自動的に失職します。都議会本会議は5日までで、今回の都議会本会議で不信任案が可決される可能性は極小ですが、12月に招集されるの定例会の前に10月22日投開票が行われる衆議院選挙で何かが起きると、一気に都民ファーストの会から議員が切り崩されて大変なことになる可能性があります。

127議席確定! 都民ファースト55議席、自民党は23議席 (選挙ドットコム編集部 | ザ選挙17/7/10)

都政のしくみ/議会[組織・権限・運営]


小池百合子女史の都政での失策は豊洲市場移転問題や東京オリンピック開催、2号線建設、旗頭のはずの情報開示の不徹底など、ほとんど話題になった政策は手当たり次第に失敗している印象です。一方、都民ファーストの会や希望の党に目を転じると民進党議員の受け入れで持参金(事実上の公認料)を求める割に立候補予定者に選挙資金を供出しないという党の方針の問題や、元都民ファーストの会代表の野田数さんの資金横領問題で東京地検特捜部荷動きがあるとされる問題など、多岐に渡ります。もちろん、希望の党は比例東京では支持も高く、比較第一党となる可能性は高いものの、全国区で見れば支持率は6%程度にとどまり、実態はほとんど民進党保守系議員によって占められているものであって、仮に政権交代に必要な233議席確保に向けた立候補者を立てられたとしても、10月2日時点での選挙予測は小選挙区・比例代表あわせても100議席前後に留まるという見方が大勢です。

また、小池百合子女史本人もおそらくは衆議院選挙に立候補できません。すでにJX通信社の米重さんも分析結果を記事にしておられますが、肝心の東京都での小池百合子女史の支持率が急落中で、それどころではないでしょう。当然、サプライズ出馬(東京一区)は考えられますが、小池女史の権力基盤である都議会や後継者、副知事など人事の面で行き詰まりが顕著です。

小池知事「国政転身」に黄信号?支持率急落、転身反対72%=JX通信社 衆院選第2回情勢調査(ヤフーニュース個人米重克洋17/10/1)

最悪のシナリオとしては、希望の党が想定を大幅に下回り、政権交代どころではない程度の議席しか取れなかった場合(80議席程度)に、都政の失策で支持者からの突き上げに堪えられなくなった都民ファースト系都議が音喜多駿さんのように大量離脱してしまうと舛添要一さんのような不信任案が出るか、豊洲市場移転問題にまつわる失策や不透明な人事により百条委員会が招集されかねません。

見ていてつくづく「小池百合子女史の周りにはまともな人が少ないのだな」という印象を強くするのですが、欲得無く少数勢力のころの小池「都知事」を支えてくれていた都議の離脱から、少しは小池女史に思い至る何かがあることを期待してやみません。

繰り返しになりますが、前回の都知事選挙では私は小池百合子女子に投票しました。
本当に申し訳ございませんでした。

(修正21:30)

記事本文中、地方自治法上必要な可決議席数に誤りがありました。正しくは「最低63議席」です。複数のご指摘をくださった方には御礼申し上げますとともに、謹んで訂正いたします。