メルカリみたいなフリマサービス事業者がEC業界を代表する時代になったようですが大丈夫でしょうか
メルカリがEC事業者の代表のような形で不思議な連絡会を開いたようですが、泥棒市状態になっている現状も踏まえてまとめてみました。
この数年でネット経由による個人間売買取引の仲介サービスの趨勢はいろいろと様変わりしていますが、そうした仲介事業者の素行が問題視されるのはいつの時代もあまり変わらない感もあります。
急成長「メルカリ」にはどんな法的リスクがあるか(プレジデントオンライン 17/1/12)
「グレーゾーンでも、ベンチャーは大手が参入しないところを狙う」と、ベンチャー界隈の重鎮は豪語します。しかし、現行法では違法かもしれない取引で育つユニコーンは消費者の安全や信頼を踏みつけているのではないでしょうか。プレジデントオンラインこうした背景もあり行政などからはさまざまな警告や指導などがあったことは間違いないのですが、ようやく業界としても重い腰を上げて自ら個人間売買取引市場のあり方を整備すべく事業者団体を立ち上げる運びとなったようです。
ヤフーとメルカリ、不正利用対策などを協議する「EC事業者協議会」を設立(CNET Japan 17/9/4)
ヤフーとメルカリは9月4日、安心安全なECの環境整備を目的とした「EC事業者協議会」を8月25日に発足したと発表した。すでに本業での合法性が担保されているヤフージャパンはともかく、資金決済法上の資金移動業者登録を行っていないメルカリは本来の監督官庁であるはずの金融庁と、盗品売買続発による本人確認トラブル対応で協力要請を求めてきた警察庁・警視庁が入っていないというのは画期的です。メルカリは経済産業省に泣きついて座組を作ったという感じなのでしょうか。
(中略)
ECで生じるさまざまな課題について包括的に協議するEC事業者協議会を設立。8月25日に開催された第一回の協議会には、関係省庁である消費者庁、総務省、経済産業省がオブザーバーとして参加。今後は、課題の広がりに応じて、その他の事業者や関係省庁にも参加を呼びかけるという。CNET Japan
最初の会合には関係省庁関係者を招きそれぞれのメンツを立てるような動きもあったようですが、この第一回協議会の発表が台無しになるような事件報道が奇しくも翌日起きてしまいました。
メルカリにウイルス情報 男子中学生が出品の疑い(NHKニュース 17/9/5)
インターネットで利用者どうしがさまざまな品物を売買できるスマートフォンのアプリ「メルカリ」で、コンピューターウイルスを入手する方法が売り買いされていたことが捜査関係者への取材でわかりました。これから不正利用対策などをしっかりやっていきますと大きな掛け声をあげた翌日にこうした不正利用事件が大々的に報じられるあたり、あまりにもタイミング良すぎて驚くばかりです。いったい誰がこんな情報を新聞社にリークして記事にさせたのでしょう。
(中略)
出品が不適切だと指摘されるケースが相次いでいます。出品者の目的はわかりませんが「1万円札」などの現金のほか、発行済みの領収書が売りに出されているのが見つかり「使い方によっては脱税などの犯罪になりうる」といった指摘が出て、運営会社が出品禁止の措置を取っています。NHKニュース
気になるのはメルカリでは中学生のような未成年でも簡単にコンピューターウイルスのような不正な品物を簡単に売買できてしまうことでして、なんらかの年齢制限などによる規制が設けられていなかったのかということですが、そのあたりの事情については昨年に書かれたものですが以下の記事から分かります。
メルカリ利用規約の「年齢制限」を別アプリと比較する(情報科学屋さんを目指す人のメモ 16/3/11)
このように利用規約をいろいろ見てみた結果、「メルカリ利用規約」に年齢制限がないことがわかりました。情報科学屋さんを目指す人のメモメルカリは建前としては「ユーザーが未成年者である場合は、事前に親権者など法定代理人の包括的な同意を得たうえで本サービスを利用しなければなりません」としていますが、親の同意を確認するための施策は厳密に行っていないようで、事実上未成年でも売買を行うことが可能な状態になっています。実質的に野放しで泥棒市場状態にしているというのは如何なものかとメルカリについては思います。念のため現行の規約を確認しましたが、この記事を書いている時点では上記の記事で引用されている内容と違いはありませんでした。
メルカリ利用規約(メルカリ)
なお、スマホ用アプリの年齢制限を確認してみましたが、AppleのiPhone用では「このアプリケーションのダウンロードは、17才以上の方が対象です」となっていましたが、一方でAndroid用アプリについては「3歳以上」となっているので、Androidであれば事実上年齢制限なしと解釈できます。つまりAndroidスマホユーザーであれば未成年でもメルカリを使って簡単に売買ができる状態に放置されているということです。
こんな市場調査結果も今年になって報告されておりました。
購入も出品も:10代女性の3人に1人「メルカリ活用している」(ITmedia 17/6/1)
自らEC事業者を代表する企業の一つとして安心安全なECの環境整備を行うと宣言した手前、メルカリとしても今の状況をこのまま放置しておくのは非常にまずいわけでして、一刻も早く利用規約を改正すると共にAndroidアプリについても適切な年齢制限を設定する必要がありそうです。
さらに、メルカリだけ何故か名指しの記事が飛び込んできました。
メルカリ・民泊など課税強化へ仲介業者の報告義務化(朝日新聞デジタル 17/9/9)
当たり前のことなのですが、売買を仲介している以上は仲介業者が取引者の情報を適切に確保する必要があり、課税収入の状況について本来ならば本人確認を徹底しなければなりません。VALUでの案件もそうでしたが、雑収入も含めてアカウントを持つ利用者が売却したモノによる収入を照会できる仕組みと本人特定するための作業は行うべきであり、シェアリングエコノミーや簡便なシステムを売りにしたビジネスは最終的に「盗品売買」と「徴税」のところで足元を掬われることになるのかもしれません。
それにしても面白いタイミングで事件は起きるものでして、「天網恢恢疎にして漏らさず」という故事を思い出してしみじみと感心している次第です。