無縫地帯

YouTuber「ヒカルさん」大炎上でVALU越しに見るネット著名人ビジネスの限界

著名ユーチューバーの「ヒカルさん」らがネット上のプラットフォームビジネス「VALU」上で自身の価値を釣り上げ売り逃げしたとされる問題がさらに広がっていっているので解説してみました。

大物YouTuberとして人気を博していた、ヒカルさん、ラファエルさん、「禁断ボーイズ」いっくんさんなどがVALUに参入し、彼らが発行し手がけていたVAが不当な手段で値段を釣り上げられていた問題が勃発。ネットコミュニティから金融クラスタ、果ては日弁連まで出てきて壮大な騒ぎに発展してきました。

かなりの混乱もきたしており、多数の通報が警察当局に寄せられているそうで、来週、早い段階で大きな動きがあるかもしれないとのことです。

この問題の経緯だけで言うならば、VALUで発行したVAの値段を釣り上げる目的でヒカルさんがVA購入者に対して優待を仄めかして、値段が上がってVA購入者が増えたあとで優待を記述したコメントを消し、そしてヒカルさんや関係者が持つVAの大量売却を行い、5,000万円以上の利益を得た形となります。もしも現在提示されている一連の事項が事実であるならば、現段階でどのような釈明をヒカルさんやその関係者がしようと詐欺的行為を行って不当な利益を得たという懸念は揺るがないことになります。

一番の問題は、騒動が発生しなければこのヒカルさん一派は5,400万円あまりの収入を返還したり補償に使うことはなかったであろうという点で、問題が起きた当初は事態を軽く見たのか「規約違反にすぎず犯罪ではない」という書き込みすらも行っていました。もちろん、外形的には典型的な詐欺事案に見えるうえ、初動で甘い対応を行ったことで詐取の意図がなかったとはいえないかもしれません。

すでに日経新聞など一部の報道機関も一連の事項についての有識者コメントを出しておりますが、VALUの仕組み的な欠陥を付く形でVAの価値を釣り上げ、それをVA発行人が悪用する形で巨額の現金をBTC経由で引き出す仕組みが攻略されてしまっているため、おそらくはいったんすべてのVALUによる取引を差し止め、リセット再始動しない限り解決は極めて困難な状態に追い込まれているのではないかと愚考するところです。

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VALU「売り逃げ」騒動弁護士「『株式』扱いに問題」:日本経済新聞

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すでにVALUの仕組みの悪用の方法については、イケダハヤトさんが詳述しており、しかも方法論としてはVALUにおいて有効であることは理解できるため、最低限、このような方法で収益を上げる方法をVA発行者が簡単に実施できないように仕組みや規約を変更していかなければなりません。VALUはおそらく多くの利用者に使ってもらいたいという気持ちもあって規約をゆるく作っていたのであろうと思うわけですが、日経新聞でも指摘されているようにVAは有価証券など金融商品ではなく、金商法などの対象にならないという前提があります。

[[image:image01|center|イケダハヤトさんによる「悪質な手順」のご開陳。]]

また、今回はヒカルさん一派が派手にやらかしたので補償だ返金だという話にはなりましたが、それ以外の売買者でこれらの釣り上げや買い煽りがどのくらい行われていたのか、イケダハヤトさんなど初期からVALUに参入してVAを発行したり第三者のVAを買ってきた人たちの中で、問題となる行為はなかったか、きちんとした調査がプラットフォーム事業者であるVALUで行われるべきではないかと思います。

「VALUの適法性は、VAが金融商品ではないということに立脚している」にもかかわらず、銘柄売買の板で個人が発行体となるVAを取引させることであたかも証券であるかのように誤認させる仕組みが介在しています。当然、投資による収益を目指す金融商品ではないため、VA購入者に対する配当は行えず、優待も義務ではないなど、自益権、公益権が設定されません。また、発行体である個人がヒカルさんのようにいきなり保有VAを全量売ったり、流動性を低くして値段を釣り上げたり、突然VALUでの活動を休止し消滅・逃亡するなどのリスク(ゴーイングコンサーンに対する義務がない)なども制限できません。

つまり、VALUは規約上「発行したVAを買った人に何の便益を与えない著名人でも、VA発行による収入が得られる」という対価性なき収入が可能になるという点が問題になります。さらに、VAの価値が前述のように適当に釣り上げる方法をいくらでも思いつくような仕組みである以上、イケダハヤトさんのように悪用の手口が普及すると情弱ビジネス以前の問題が発生してしまうわけです。

ヒカルさんの今回の手法は控えめに言って大変悪質なもので、またその悪質な行為が実施できてしまう仕組みで資金を流通させることを可能にしていたVALUはプラットフォーム事業者として適切な対策を取り、再発の防止と、金融商品を誤認させるような販売方法の撤回、さらにはVA発行者が確保する収益に対して適切な納税実務ができるような仕組みを完備する必要が出てきます。配当や優待など対価性なしに金員(BTCなど仮想通貨を含む)をVA購入者に渡す行為に対して手数料を取っている以上、VA購入者である個人からVA発行体である個人に対する贈与であるとみなされるからです。

また、メルカリなど他のサービスでもそうですが、今回のVALUにおいても、VAが自家ポイントとなっているため、おそらく本来は資金決済法上の資金移動業者の登録を行わなければならないでしょう(金融庁は「VA発行が資金移動業者の登録を必要とするか」は問い合わせに対して明言しませんでしたが、VALUの発行する自家ポイントであるという認識はあります)。そうなると、VALUは発行総額の50%にあたる金額を保全するため、消費者保護のための供託金を積むか、信託銀行と保全契約をしなければならないでしょう。また、50人以上からの資金を集める場合には、出資法の対応を取らなければならないはずで、10万円以上の取引が行われる場合には犯罪収益移転防止法に基づき取引者本人確認徹底のための手続きを取らなければなりません。マネーロンダリングの可能性が否定できず、ヒカルさん一派のような強烈に悪質な事例への対応が困難になる可能性があります。

VALUに関しては、証券取引のような体裁を見せていますが、実態としては中古車販売仲介に近い業態であると考えられます。BTCを挟んでいるので、一見すると仮想通貨や電子マネー、ICOのようなフィンテック風味を見せていますが、実態で言うならば単なる私募プラットフォームであって、必ずしもBTCを使う必要などどこにもありません。VAという自家ポイントをクッションとして発行し、VA発行者と購入者の間で時価取引ができる仕組みさえあれば成立するのであれば、円建てでも金商法上は適法です。ただし、換金性があるのでみようによっては刑法賭博罪に該当するという考えを持っている有識者も(個人的には賛同しませんが、賭博的性質を持ち、VALUが胴元だと警察庁が考えれば摘発も可能ではないかという意見はかねてからあります)。

本来ならば、小さな事件をいくつか解決し、乗り越えていきながら規約やシステム運用を修正し、良いサービスに仕上げていこうという考え方もあったのかもしれません。ところが、いきなりヒカルさんのような相応に著名な人物がVALUを悪用して5,000万円相当以上のBTCを確保していたという話になると、以前ディー・ブレイン(現・日本クラウド証券)がやっていたような私家市場のようなものを立ち上げて、認可金融事業としてやり直したほうが正しいようにも思います。規約で縛るとしても、前述のようなイケダハヤトさんのようなみんなで示し合わせてVAの価格を釣り上げる手法に対しては制限のかけようもないし、チェックもできない上に、そもそもいまのVALUでは流動性が確保できないのです。

いまも、VA取引をヒカルさんが再開して、取引可能なVAの流動性を絞りさえすれば、また、一気に売り出すような真似さえしなければ、どんどんヒカルさんのVALU上の時価総額を引き上げることは可能です。

ヒカルさん一派の悪質さもさることながら、これらの問題は常識的には事業を立ち上げる時点で法務(リーガル)や事業経験者がアドバイスして事前に対策しておくべきものであり、問題が発生した時点で全体のサービス停止を提言してこれ以上の被害者が出ないようにするべき筋のものです。

しかしながら、実際に起きていることはこの発展途上で穴だらけのシステムのうえで、かなり最低な悪用をYouTuberがやらかしたのを目の当たりにしながら、革新的なサービスだからとかフィンテックの未来を潰すべきではないなどとベンチャー投資界隈が擁護に回っていることです。

モラルのないビジネスで犯罪と見られてもおかしくない行為が大々的に行われ、またそれに対する対策も現段階ではすべては打てていない状況を擁護するのは、ベンチャースピリッツでもチャレンジを容認する起業環境でもありません。

一方、やらかしたユーチューバー界隈からはヒカルさん一派に対する強い反発もあるようで、中にはちょっとシャレにならない攻撃がヒカルさん方面に行ってしまっているようです。確かに詐欺まがいの行為をし、過去にも奇天烈な情報商材ビジネスに携わっていたようですが、だからといってプライバシーを過剰に暴いたり、他宗教に対する侮辱的なコラ動画(のようなもの)をばら撒いたりするのは冷静さを欠いている部分もあると思うので、なにごとも程々にしましょう。

なお、こちらがいまなおVA発行承認の降りない私の素敵なVALUアカウントです。

山本一郎 ーValu


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