無縫地帯

民進党蓮舫代表「野田佳彦幹事長以下の執行部、全員更迭」とかいう方針の波紋

東京都議会選挙も党の退勢を止められなかった民進党代表・蓮舫女史が、一度は更迭を見送ったはずの野田佳彦幹事長以下執行部の交代を決断したと報じられ、大変なことになってきました。

いろいろ起きていたわけですが、ついに民進党代表の蓮舫女史が決断した模様です。

民進党・蓮舫代表執行部交代の意向固める(日本テレビ 17/7/21)

それに先立つ13日に、幹事長である元首相の野田佳彦さんが「解党的出直し」まで言及、都議会の敗戦を総括する形で党勢回復に向けた党内合意を取るぞ的な話をしておったわけです。

野田氏「解党的出直しで頑張る」(ロイター 17/7/13)

一方で、一足先に責任を取る形で民進党都連会長だった松原仁さんが辞任に追い込まれ、文脈としては「小池都知事の方向性を支持」としたうえで、民進党都連から脱退して小池百合子都知事の都民ファーストの会に鞍替えした皆さんもいらっしゃいます。

民進党都連の松原仁会長が会見(全文1)小池都知事の方向性、強く支持する | THE PAGE 大阪(17/6/19)
【東京都議選】「敗北の責め負う」民進・松原仁都連会長が辞任(産経ニュース 17/7/3)

今回、更迭の対象ではないと目される代表代行の江田憲司さんは、目下横浜市長選で横浜市議の伊東ひろたかさんを担いだかと思えば微妙に梯子を外すなど不思議な挙動をしていて変なことになっております。むしろ、伊藤さんが惨敗すれば本来なら伊藤さんを出馬させた江田憲司さんも責任を取る話になって、そして民進党本部には蓮舫代表しかいなくなるというシュールな人事でもやるのではないかと期待されるところではあります。

また、本来であれば幹事長とまではいかずとも蓮舫女史からの信頼を得て党要職にでも就くのかとみられた柿沢未途さんですが、こちらは江東区選出の都議でもある奥さんの柿澤幸絵女史が何を考えたのか民進党をいきなり離脱。都民ファーストの推薦で都議選を戦って無事落選し、夫婦そろって声望が地に墜ちるという素敵事案が発生しておりました。

てっきり都民ファーストの会の国政進出の足掛かりに柿沢さんを間に挟んで民進党蓮舫女史と都民ファーストの会野田数さんの暑い抱擁でも発生するのかと期待して見ていたのに、全面的に弛んだ展開になってしまって座布団が飛び交う状況に陥ってしまいました。

こうなると、一足先に離脱した長島昭久さんや民進党内の非主流派が支持母体である連合をどこまで巻き込んで主導権を取れるのかという流れになるはずなのです。ところが、肝心の連合が民進党から自民党にも目くばせをする現実を見据えたような動きを加速させたため、蓮舫女史への求心力がさらに失われる、という流れになってきたわけであります。

自民、連合と政策懇談会(日本経済新聞 17/7/6)

蓮舫女史としても、二重国籍問題での騒ぎが広がり、批判に譲歩する形で別に戸籍など公開しなくてもよいものを出す羽目になってしまいました。保守主義者の私から見てもドン引きな展開ですが、こうなってしまったのであれば仕方がありません。

民進党・蓮舫代表”二重国籍”で戸籍出す出さない攻防を見る側の心情(デイリーニュースオンライン 17/7/17)

おそらくは、蓮舫女史も、本来であれば2016年に参院選ではなく都知事選に出馬して小池百合子女史と都知事の椅子を争うはずが参院選出馬から野田佳彦さんのエスコートで民進党代表に駒を進めたところまでは我が世の春だったろうと思います。ところが、民進党の人気を復活させる起爆剤だったはずが、中に外に酷い体たらくを晒してしまったのでは政権交代を再び狙うどころの騒ぎではありません。

自民党としても、蓮舫女史が「弱い民進党の代表」であり続けてくれることが支持率低下して困っている中では非常にありがたい状況にあるわけで、勝手に民進党が自壊するのは歓迎でも本当に崩壊して解党してしまって、うっかり右派が都民ファーストの会に、左派が共産党などとの野党共闘路線にそれぞれ吸収、というのはあまり望ましくない政界(野党)再編の構図であろうと思います。

だからこそ、本来であれば横浜市長選というのは実に大事な局面になっていたはずが、地元の有力者がカジノ問題の不始末などから自民党と距離を置き始め、しかしそのバックグラウンドの筋の悪さからむしろ距離ができて歓迎という図式になってしまうと、自民党バッシングは底を打つ可能性もあって、そう簡単には事が運ばない流れになっています。

蓮舫代表が幹事長としての野田佳彦さんを切る動きが確実なものとなると、民進党本部として「解党的出直し」を議論するまでもなく、堂々と党を割る動きが出てくる、そこには一部の有力な後援者も票田である連合もついていくとなると、労働組合からの支持を失って党消滅の一歩手前まで来てしまった社民党(旧社会党)と同じ轍を踏みかねません。

民進党は上も下も「人気があると思って担いだ蓮舫がさっぱりだった」というがっかり感が蔓延する中で、党全体を盛り返していくような新しいミッションも具体的なロードマップも提示することが蓮舫執行部ではできないとなると、戦争しようにも兵隊も弾もないという状況に陥るのではないかと危惧するところです。

悲惨なのは、蓮舫女史を代表から降ろすにしても「誰を代表に?」という話になり、蓮舫女史が代表に留まり執行部を更迭する決断をしても「誰が幹事長をやってくれるの?」という問題にぶち当たり、目先の横浜市長選でまた負けて今度は誰に責任を取らすのだという流れになって、自民党・安倍晋三政権が都民ファーストの体制が固まらないうちに解散総選挙に打って出るようなことでもあろうものなら今回の都議選のような分裂を再び引き起こすことでしょう。

時間もカネも人材もいないなかで、本当にどうするつもりなのか、危機感をもって見物してまいりたいと存じます。