酒を飲むと少量でも「脳が委縮」の衝撃
医学的にはかなりはっきりと「飲酒は少量でも脳の萎縮など健康に悪影響を与えている」という見解に傾きましたが、タバコやギャンブル同様に自粛するような社会的ムードになったりするのでしょうか。
あまり人様に言えない年齢からタバコを吸い始め、33歳で禁煙に成功した私ですら、毎日浴びるように飲んでいた酒を去年ようやく止めたぐらいの状況ですので、あんまり信じたくなかったニュースが改めて出てきていましたのでピックアップ。
350ml缶ビールを週に9本以上飲むと脳の海馬が萎縮する? 英研究 (newsphere 17/7/8)
元論文はこちらですが、以前から脳神経系の医師の間では量の多少を問わず脳が委縮すること自体は確認されていたものの、いざ本当に委縮するのだと突き付けられると「いままでの酒は何だったのか、カネを払って不健康なことをしていたのか」という気持ちになるのが不思議です。
Moderate alcohol consumption as risk factor for adverse brain outcomes and cognitive decline: longitudinal cohort study(thebmj 17/7/6)
お酒を飲むと脳が縮む では休肝日を設ければ大丈夫?(NIKKEI style 17/3/20)
要注意!酒は脳を萎縮させます : yomiDr. / ヨミドクター(読売新聞 16/10/24)
身の回りの研究に携わっている医師に話を聞くと「どうやら本当にアルコールと健康の関係で飲酒習慣が身体に良くないということが分かってきたようだ」というのが実際のところで、研究者によってはタバコ喫煙の害よりも良くない体質の人が大勢いるのに、酒を飲みなれた結果、習慣になってしまって中高年になってから影響が徐々に表れるころには遅い、という症例も今後続々と出てくるのではないか、とのことです。
言われてみれば、どの記事にも「顔が赤くなる人(分解酵素を持たない人)」のアルコール摂取によるリスクがきちんと書かれており、論文でもタバコ以上に体質による個人差が大きいと想定される情報が記述されているのが気がかりです。確かに、有害物質が分解されずに血中に残り続けているからこそ顔が赤く酒に弱いわけで、そういう人が人生において何十年と飲み続けることが健康に良いはずはない、と言われれば理詰めに考えてその通りだなと思うわけであります。
で、依存の問題で言うならば喫煙習慣とギャンブル(ギャンブリング障害)に次いで、この飲酒(アルコール中毒も含む)は次なる依存対策の柱になるのではないか、社会的に問題にされていくかもしれない、と予想されます。確かに、私が大学生であった20年ほど前は、普通にJRの駅のホームの片隅に灰皿が置かれるほど「おおらかな」時代だったわけですけど、タバコの害、とりわけ受動喫煙が健康に与える悪影響が知られ始めるとどんどんタバコを吸える場所が狭くなり、いまや屋内完全禁煙するかしないかで塩崎恭久大臣のクビが飛ぶかどうかという話すら出る状態です。
翻って、体質によっては脳の萎縮や肝臓がんも含めた不可逆な健康問題を飲酒が引き起こす可能性が強く指摘され始めると、おそらくは大規模な遺伝的な調査のもとで本当の飲酒の弊害について広く議論され始める可能性はあります。そうなると、飲酒運転がどうとかアルコール中毒がなんだというレベルを超えた禁酒ムードが世間に広がることになるのかもしれません。
いまはまだ、酒を飲んだら脳が委縮するんだ、怖いなーというレベルで、むしろいままで飲み干してきた酒の量を思い返すと気が遠くなり脳の萎縮が進みかねない気持ちになるわけですけど、いまの若い人の酒離れや、無理に酒を飲ませない風潮そのものはむしろ歓迎するべきことなのか、と思っちゃったりもします。
元酒飲みとして、酒ぐらい楽しみで好きに飲ませろよ、と思う気持ちは凄く理解できるので、タバコ同様に「他人様に迷惑をかけずに嗜むぐらいであれば許される愚行権のひとつ」ぐらいに割り切れる寛容な社会であってほしいと思います。