キュレーションメディア「RETRIP」にて無断で人気グルメブロガーお薦めを騙った件で
キュレーションメディアを標榜する「RETRIP」で、人気グルメブロガーのフォーリンデブはっしーさんの名前を無断借用した題名で記事を作成した件について、この問題の構造を解説します。
グルメ系ブロガーで人気のある、フォーリンデブはっしーさんという御仁がおられまして、いろんな食べ物レビューをネットでされている方です。このフォーリンデブはっしーさんがお薦めしたと騙ってキュレーションサイト「RETRIP」に記事を書くという事案が発生しまして物議を醸しておりました。
ブログを拝見しているとひたすら飯を喰って写真を撮って店を紹介して飯を喰って写真を撮って店を紹介して飯を喰って写真を撮って店を紹介して飯を喰って写真を撮って店を紹介している感じですが、先日勃発した「食べログ」のうどんが主食さんのような方面ではなく、カラッと顔出ししてひたすら飯を食べており、「俺のことを疑うのか、ならばこの体形を見ろ」と言わんばかりの素敵な笑顔で人気が出ているようです。まあ、題名でお名前を無断借用したい気持ちは分かります。
『グルメエンターテイナーフォーリンデブはっしー』公式サイト(LINEブログ)
食べログレビュアー「うどんが主食」が「高評価飲食店」から過剰接待 (文春オンライン 17/6/7)
「うどんが主食」氏レビュー、文春告発後に全削除 「アンジャ」渡部にも飛び火 (J-CAST 17/6/12)
このように、キュレーションサイトやグルメ、旅行などのサイトでは一般人がレビュアーとして投稿できる傍ら、完全に騙しのようなタイトルで読者を釣る記事を書いてもほとんどノーリスクであるという点でメディア運営側も質の担保が大変困難な状況になっているのが実情です。
[[image:image01|right|RETRIP公式Twitterでも記事を紹介(現在は削除)]]
一方で、今回舞台となった「RETRIP」については、過去にもやらかしがある割に、きちんと各種グルメサイトへの誘導によって収入が得られるアフィリエイトが貼られ、また広告売上に見合った分配をこれら書き手に還元する仕組みを用意しています。
「職業、旅人」をRETRIPから。「RETRIPキュレータープログラム」を始動
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キュレータープログラムご登録までの流れ
(1)RETRIPにログインをし、キュレータープログラム利用規約をご確認の後、こちらのフォームより必要事項を入力し、ご送信ください。編集部にて簡単な審査を行いますので、日頃お使いのFacebook、TwitterなどのURLを明記いただけるとスムーズです。
(2)所要1〜2週間程度をいただき、編集部から登録完了メールをお送りします。その際、まとめ記事の投稿フォームの使い方ガイドや、RETRIPらしい記事、トップページにピックアップされやすい記事の基準を記したピックアップガイドラインをお届けしますので、そちらを参照しながら記事を投稿ください(なお投稿いただいた記事は利用規約に準拠しているかの確認等のため編集部の目視によるチェック、ならびに一部、タイトル、サムネイル、本文の修正を行わせていただく可能性があります)。
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(2)インセンティブお支払いのプロセス
・寄稿記事全体の月末時点PV数等からお支払い額を算出し翌月10日までに決定額をお知らせします
・5000円以上から、ご指定口座にお振込み手続きを可能とします(お振込手数料はキュレーターの皆さまのご負担とさせていただきます)
・さらにその翌月末までにお振込みを完了します
一応、この「RETRIP」を運営しているTrippiece社も、キュレーションプログラムに参加しようとしている人物についてはFacebookやTwitterアカウントなどで活動の履歴を参照して、あからさまに騙し記事を量産するような人物は排除する仕組みを用意しているようにも見えます。
[[image:image02|left|タイトルに人気のあるキーワードを入れてアクセスを狙ったか(現在は削除)]]
ところが、今回フォーリンデブはっしーさんの名前を記事タイトルに無断借用した人物”Vanila8282”さんは、過去の記事でも「オフィシャルサイトの解説記事に、Instagramでその場所やお店のタグがついた画像を拝借してきてコピペしただけ」の記事が量産されていることに気づきます。逆に言えば、自前の画像はほとんどなく、毎週のように行ってもいない台湾だ名古屋だ札幌だといった観光地のお薦めをでっちあげ続けていることになります。そして、登録に使ったと思しき”Vanila8282”のTwitterアカウントは、この騒動が起きる前にすでにアカウントが停止されていました。
RETRIP -Vanila8282
[[image:image04|center|強いキーワードと公式サイト紹介文コピペと画像拝借が中心の記事群]]
普通にこの仕組みで一記事10,000PVとか普通に叩き出しているわけで、そこにグルメサイトや旅サイトのアフィリエイトが貼られて一山いくらのビジネスをしているとなると、さすがに仕組み上大丈夫なのかという話になります。本来であれば、キュレーションメディアだと主張するならば自分が実際に行った、食べた旅行地や飲食店の画像を自前で用意して掲載するのが筋です。ネットで拾ったガイド文章にInstagramで検索してもってきた画像を貼り、そこに地名や飲食店の強いキーワードでタイトルをつけネットに放流するビジネスは、明らかに騙しであろうと思われるわけです。
今回、フォーリンデブはっしーさんの名前をタイトルに拝借してきたのも、彼自身がブログで紹介している飲食店や掲載している画像を一部もってきて、他の人のInstagram画像とセットで記事を構成することで、多くの検索エンジン系の流入を期待しているからとも言えます。
逆に言えば、キュレーションメディアとしてはCGMだという建前をもってページビューさえかき集めれば広告収入が得られ、一定の割合をユーザーに還元しても利益になる、あるいは、地名で検索してやってきた読み手が記事を読んで「ホットペッパーグルメ」や「ぐるなび」のアフィリエイトをタップして飛んで行ってくれさえすればお金になるということでもあります。
さらには、右カラムから飛べるスポンサードコンテンツについても、記事単体に飛んでみると見事に広告表記はされておらず、ただ「提供:マリアナ政府観光局」というリンクのないタグが付いているだけです。View数が悲しいほどしょぼいので武士の情けでメール取材するような野暮なことはしませんが、PRならばきちんとPRタグをつけるなど記事にそれと一目で分かる仕組みを構築しないといけないと思います。
[[image:image03|center|広告案件なのに、記事ページには広告表記がない堂々たるステマ状態]]
なお、このTrippiece社の取締役は、先日メルカリの新社長に就任した小泉文明さんです。
「ベンチャー投資なんだから10件に1件当たれば残り全部外れてもペイするんだよ細かいことは気にするな」と言いたいこともあるのかもしれませんが、ただでさえキュレーションサイトやウェブメディアの在り方で昨年来すったもんだし、ステルスマーケティング問題についてはネット広告の業界団体もガイドラインの遵守を各社に求めている状況ですので、業界をリードしたいというきちんとした企業理念を掲げておられるのであれば、なおのこと襟を正していただきたいと強く願うところでございます。
【追記あり】メルカリ新社長に小泉文明氏、山田氏は会長兼CEOにーーグローバル展開に向けて体制構築(Thebridge 17/4/14)
さすがにTrippiece社RETRIP編集部の意向が気になったので、取材を申し込んだところ、丁寧なご回答がありました。
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ご連絡頂きました件に関しまして、はっしーさまには、まずは今回件謝罪の上、該当の関連コンテンツは非表示対応を行っております。
今回件は、弊媒体の編集確認、配信工程における不備により起こしてしまいましたもので、はっしーさまには、改めまして経緯のご説明と、今後の再発防止のための対応方策につきましても、再度ご連絡をさせていただく方針でございます。
今般、インターネットメディア全般に対し、皆様の厳しい目も向いておりますなか、弊媒体においては、コンプライアンス等には重々留意し、読者のためになる情報発信を心がけてきたつもりですが、このようなご懸念、起こしてしまいましたこと、非常に申し訳なく、また厳しく受け止めております。
山本さまには、ご連絡もたまわりましたこと、改めまして感謝申し上げます。
どうも問題の所在についてはきちんと理解しておられ、対策を打つとのことでしたので、正座して状況の推移を見てまいりたいとは思っております。ただ、RETRIPだけでなく、いわゆるキュレーションメディアがアフィリエイト広告などと結びついて収益化する事業モデルである以上、「集まる記事を精査するコストが見合わない」「安いライターをかき集めてクソ記事を量産し検索エンジンやSNS経由で集客するのがもっとも収益性が高い」という低きに流れる構造になってしまうのは仕方がない部分ではないかと思います。なぜならば、本当に旅行している人が記事を書く場合は量産などとてもできませんし、どのように優れた旅行記であっても僻地への旅行であれば赴く人も限られ、アフィリエイトのように広く浅く広告効果を上げていく仕組みとは相性が悪いからです。
だからこそ、Trippiece社がかねてから「日本の旅行業界を変えるのではないか」と期待されてきた理由というのは、旅行をしたい人が、ネットを使ってお仕着せではないいろんなタイプの旅行をアレンジできるといういままでにない価値を提供できそうだったからです。創業間もないころにTrippiece社のプレゼンを聞いたことがありますが、それはそれは輝いておられましたよ。
残念なことに当初の事業コンセプトはなかなかスケールせず、ウェブメディアでの事業化も試みるというピボットをしてからというもの、あの輝いていたTrippiece社は旅行とグルメのアフィリエイト野郎になってしまったようにも見えます。
何とか成長したいという気持ちは分かります。編集部も事業部もみんな頑張ってはいるのでしょう。ただ、お前ら本当にそれでいいのかという感は否めません。それは、本当に正しい努力なのでしょうか。会社にリンクされているCEOの楽しそうなブログ、最後の更新が去年の3月ですよ。
Design the trip -trippiece 石田言行のBlog
もはやメルカリに自ら出品して気合入れ直して出直してほしいと願う気持ちで一杯です。
そりゃ一度は成長カーブ乗り損ねたかもしれないけど、できることはまだあるでしょ。少なくとも、題名で騙したり記事素材剽窃したり、行ってもいないレビューでPV稼いでアフィリエイト回すようなネタだけは減らしたほうがいいです。
祈ります。