無縫地帯

ドコモ一人負けの原因はiPhoneだけじゃない

出揃った国内キャリアの2013年3月期連結決算を眺めますと、誰がどう見てもドコモが一社だけ轟沈しているのが分かります。一説にはiPhone問題だといいますけど、それ以外のところに理由がありそうです。

山本一郎です。ドコモの一人負けっぷりが素敵過ぎて、思わず会議中に立ち上がってしまいました。

国内3大キャリアの2013年3月期連結決算が出揃ったので見物していたわけです。興味深いことに、iPhoneを扱うKDDIとソフトバンクが共に過去最高益を更新したのに対して、iPhoneのないドコモだけが営業利益でマイナス成長となりました。

携帯3社の営業益、明暗くっきりドコモは減少(日本経済新聞 2013/4/30)

ドコモ減益の原因については、iPhone対抗施策への経費増大が大きかったという分析もありますから、一面では、まさにドコモはiPhoneにしてやられたという見方もできます。

「お客様増えず」ドコモ営業利益、6年ぶり減(読売新聞 2013/4/26)

NTTドコモ(米国会計基準)は、同社で取り扱っていない米アップルのスマートフォン(高機能携帯電話)「iPhone(アイフォーン)5」に対抗するため、販売経費をつぎ込んだことなどから本業のもうけを示す営業利益が、前期比4・3%減の8371億円と、6期ぶりに前年割れした。読売新聞
ドコモのiPhone扱いについては、それを待望するような趣旨の論考も巷には多く見られますが、今からドコモがiPhoneを扱ったとして、はたしてそれだけですぐに業績が回復できるほど簡単な話でもないような気がします。

日経の記事によれば、ドコモはMNPによって年間累計140万9500件の転出超過を記録しています。

ドコモ営業益4%減の8371億円販促費積み増し、13年3月期(日本経済新聞 2013/4/27)

こうしてドコモを離れた顧客は単にiPhoneが欲しいから離れたのでしょうか。確かにそういう理由もあるでしょうが、しかし、それ以上に今のドコモは顧客の信用を失っていることが大きいのではないかと感じます。

かなり致命的だった一件にドコモメールの提供開始延期があります。あれは、その前にスマホ向けメールサービスで始まったspモードメールが不具合多発で不評だったことに対する回答として用意された新サービスでしたから、それがまた出来ないというのはとてもネガティブな話でした。ただ、そこまでであれば、他のキャリアでも似たようなことは起きています。

実際、KDDIはこのところ、目玉のiPhone向けサービスで大きなメール障害を起こし、さらにその後にLTEの通信障害まで起こしています。上手だなと思うのは、その後の決算発表会冒頭で社長自らがしっかりと謝罪する姿勢を見せることで、メディアにとりあげられ、顧客へもその意志を伝える努力をしていることです。

KDDI決算、増収増益も相次ぐau通信障害で田中氏が謝罪(ケータイWatch 2013/4/30)

KDDIは、2012年度(2012年4月~2013年3月)の連結決算を発表。その冒頭、KDDI代表取締役社長の田中孝司氏は、2013年4月16日~19日にかけて、iPhoneなどにおいてEメールを利用できなくなった障害、および4月27日に発生したLTEの通信障害に関して謝罪した。ケータイWatch
一方で、ドコモはspモードメールの不具合やドコモメール提供延期の件で、顧客に向かって何か伝える努力をしたかというと、プレスリリースを発表した程度で、社長が出てきて謝罪するなどのような顧客向けへのしっかりしたPR活動は行っていないようです。もしかしたらどこかで行ったのかもしれませんが、それが報道などを通じて表に大きく伝わってきていません。

客に顔を向けて商売していないと感じれば、当然のように客は離れていきます。ましてや、今のようなソーシャルな時代において、エンドユーザーに向けたわかりやすいアピールが無ければ確かに炎上はしないかもしれませんが、同時にポジティブな結果も全く得られません。

現在のドコモはどこに向かって商売をしているのかがとてもわかりにくいです。一方で、良いか悪いかは別にして、KDDIもソフトバンクもドコモに比べればわかりやすく見せようとしています。まぁ、どこも料金プランについては何がどうなっているのか、わかりにくいことこの上ないですが。

とりあえず、ドコモについて一番良く分かっているのは「一人負けである」という事実のみで、それ以外はトップも出てこないしサービスも遅延しているし、良く分からないんですよね。コマーシャルまでソフトバンクモバイルの白戸家をパクってる感が強いし、いったいどうしたいんでしょう、ドコモは。