無縫地帯

LINEがいろいろと発表していたのでサクッと感想など

LINEが先日カンファレンスを開催。多くの新規事業への取り組みを発表する中で、世界的にブームになりつつある音声による人工知能スピーカーの取り組みやB2Bショッピングなど意欲的な取り組みが明らかに。

今月のはじめに、日本テレビがLINEと政府の提携話をすっぱ抜きして話題となりました。
いまから思えば、あれはお見事でした。

独自:LINE政府と行政サービス連携へ(日本テレビ 17/6/2)

無料通信アプリを展開するLINEが政府のオンライン行政サービスと連携することが日本テレビの取材でわかった。LINEの画面からマイナンバーカードを使って一部の行政手続きなどができるようになる。日本テレビ
当然他のメディアも色めき立って裏取りなどが行われたようですが、体よくはぐらかされて終わっております。まあ、いつものパターンですね。

LINEが「マイナポータル」と連携かLINEがコメント(ITmedia 17/6/2)

LINE広報部はITmedia NEWSの取材に対し「政府との交渉も含め、何も決まったものはない」とコメントした。ITmedia
火のない所に煙は立たないと言いますが、その噂が出てから約2週間後に同社の定例発表会がありまして、オンライン行政サービスとの連携などについても目出度く公表された次第です。

【コーポレート】内閣府とのマイナポータル連携に関する協定締結のお知らせ(LINE 17/6/15)

それにしても、今回のLINEの発表会はなかなかに中身が濃いといいますか盛り沢山で、そのあたりはITジャーナリストの三上洋さんが実況ツイートしたものがとっちらかり具合も含めてなかなか雰囲気が分かって面白いです。

LINEがマイナンバーと連携。LINE発表会に高市早苗大臣が来るという謎展開(Togetter)

国の大臣が、一企業の発表会に来る。マイナポータル普及のためとは言え、ちょい理解しにくいなあ三上洋
まあ、そう感じますよね。総務省としてはマイナポータルの評判が今ひとつなので広報に必死ということなんでしょうか。しかし、LINEはMVNO事業者でもあるわけでして、そういう企業の宣伝活動現場に総務省の長がニコニコしながら出てくるのはかなり微妙というか脇が甘いと言われても仕方ないかもしれません。それだけ意欲的に取り組んでいると前向きに評価したいとは思いますが。

キャッシュバック警察のドンがLINEの発表会に。Junya ISHINO/石野純也
まあそういう諸々も含めて高市さんらしいという感じでしょうか…。

気になるLINE上でのマイナンバーに関連した個人情報の取り扱いに関しては以下のような説明がされております。

マイナンバーとLINE連携高市総務相「行政窓口を身近に」と期待(産経ニュース 17/6/16)

情報流出の懸念に関連して、「マイナンバーや氏名などの個人情報はLINE上でやり取りせず、LINE上には残らない」と強調した。産経ニュース
具体的には、LINE上のボットと会話してマイナンバー関連の質問をすると、マイナポータルのクリッカブルURLを提示してくれたりする仕組みだそうです。しかし、URLを提示するだけであればLINEに限らず、おそらくネット検索機能を備えたサービスであればどこでも同じように対応できそうではあります。

一方で、LINEのブランドを使って自前で始めてみたはいいけれど上手くいかなかった事業もこれまでにはあるわけですが、懲りずに再挑戦するそうです。

LINE、「ショッピング」と「フードデリバリー」に再挑戦(CNET Japan 17/6/15)

同社は、2013年12月にCtoCフリマアプリ「LINE MALL」を開始したが、約2年半でサービスを終了。その後、「LINEフラッシュセール」や「LINEトリップバザール」などのECサービスも終了している。また、2014年11月にフードデリバリーサービス「LINE WOW」を開始したが、わずか1年でサービスを終了していた。CNET Japan
前回は自社の中で事業を全部まわそうとしたのが失敗だったということなのでしょうか、今回はLINEを入口としながらも実際のサービスについてはいずれも各事業者のサイトへ誘導する仕組みとなっています。さすがに前回の反省を生かしてきたなという印象はあります。

ざっと見る限り、B2B規模で展開するアフィリエイトという感じでしょうか。これなら再び失敗してもLINEとしては直接被る痛手はあまりなさそうです。人気事業者の入れ替えや追加も簡単にできそうですし、さすが頭の良い人達が集まっているウェブサービス事業者は違うなと感心します。想像するにノリとしてはマイナポータルとの提携もこの一環なのでしょう。

で、今回のLINEの発表の目玉はというと、近頃流行りのAIアシスタント機能を搭載したスマートスピーカーをLINEも遂に製品化するということでしょう。しかも、単にスマートスピーカーを出すというだけではなく、その音声AIエンジンを応用してトヨタやファミリーマートと提携していく計画を発表したのが派手で良い感じでした。

LINE、トヨタと音声AI「Clova」で提携--ファミリーマートの新プロジェクトにも参画(CNET Japan 17/6/15)

ただし、音声AIエンジンが本当にどれだけの性能を実現できるのかは未知数ですし、トヨタやファミリーマートとの提携にしても具体的に何ができるようになるのかは不明です。あくまでもそういう計画があってこれから頑張りますという話なので、とりあえず風呂敷を広げてみたというところでしょう。まあ、ファミリーマートについては提携解消の噂が出ているCCCとしては、今回のLINEの発表はかなり危機感をもって注視していることとは思いますが。

一方で、日本国内の大手事業者においてこのような音声AIエンジン方面の国際的な流れにフォローアップできている事業者が少ない、というのは気になるところでもあります。その意味でもLINEには頑張ってほしい、と書くと、いやLINEは日本企業ではないとか言い出す人たちも出てくるのでありましょうか。

いずれにせよ、LINEは日本のサービスプラットフォームとしてきちんとした一角を占めていることを考えると、意味のある形で事業進出することは大事だと思いますし、来年の発表会では「新規に取り組む発表」ではなく「成長している経過報告」になってくれるよう願うのみです。

CCCのTポイントカード由来のデータがイマイチだという話(やまもといちろうオフィシャルブログ 17/6/15)

いずれにしても、LINEの発表会で示されたものに完成品は少なく、ほとんどはこれからこんなことをやってみようと思いますという計画であり今後の報告待ちということになります。いつもは飛ばし記事で元気いっぱいな日経も冷めた視線で成り行きを見守っているようですね。

AIスピーカー 日本語対応先陣LINE、停滞払拭なるか(日本経済新聞 17/6/15)

昨年の上場から約1年、今のLINEには業績にも株価にも期待されたような勢いはない。発売時期の早さにこだわった新端末は現状打開の一手となるか。日本経済新聞
株価が落ち着いているいまだからこそ、手掛けられることも沢山あるのでしょう。
どこかのタイミングで球界進出でもしてくれると個人的にはニヤニヤできて有難いのですが。