無縫地帯

健康情報サイトの闇 「ヘルスケア大学」であの「WELQ」を越えるトンデモ案件発覚か?(訂正あり)

フェイクニュース騒動やキュレーションで騒ぎとなったWELQ以上の問題になりそうなリッチメディア社「ヘルスケア大学」で、承認なく医師の名前を無断流用するなどの問題も飛び火しており、概要をまとめました。

山本一郎です。でたらめなコピペ濫造による医療情報をネット上にばらまいてあぶく銭を稼ぎまくるキュレーションメディアの筆頭だった「WELQ」が閉鎖されて早くも半年近くの時間が経とうとしています。あれだけの問題を起こしたので、少しは良いサイト作りに精を出すのかと思ったら、WELQの抜けた穴を見てビジネスチャンスとばかりに怪しいヘルスケア情報サイトがシノギを削り合うあたりがいつものウェブ界隈であります。

そうした状況の中、このところ他よりも頭一つリードした感のあった「リッチメディア社」運営による情報サイト「ヘルスケア大学」が、あのWELQに負けぬ勢いで色々とやらかしているという話を目にしました。

悪貨が良貨を駆逐する?ヘルスケア大学のトンデモパワーに脱帽。(五本木クリニック院長ブログ 17/4/29)

非常に深刻な病気についても、さらっと書き流しちゃうのがヘルスケア大学の特徴です。
(中略)
病気の名前や症状で検索するとWELQの時のように複数の記事が上位に表示されます。正しい情報であるならば何も問題視する必要はないんですが、多くのというかほとんどの記事が医師監修となっていながらレベルはWELQクラス。五本木クリニック院長ブログ
コピペ騒動に巻き込まれちゃうぞ!!ヘルスケア大学さま、第二のWELQになってしまいますのでご注意を。(五本木クリニック院長ブログ 17/4/30)

昨日アップしたブログで話題にしたヘルスケア大学の記事が数時間後に削除されていました。間違いに気がついたか、WELQのような炎上騒ぎになることを恐れた処置かは不明です・・・だって削除理由が書かれていないんだもん。

この記事はさらに数時間後に再アップされたんです、ってことは間違いは認めていないのか、間違いを理解できていないのでしょうね。

監修医師の写真とお名前は削除された代わりに「ヘルスケア大学参画ドクター」という謎のメッセージと「本記事は、内容指摘を受けており、確認中となります」というヘンテコな日本語が付け加えられています。五本木クリニック院長ブログ
ヘルスケア大学というサイトは「5231名の医師が参画するヘルスケア情報サイト]」であり「[http://www.skincare-univ.com/healthcare/about/ ドクターをはじめとした専門家のご協力のもと、主に医療・健康に関する情報の発信」することがセールスポイントとなっているわけですが、五本木クリニック院長の桑満先生によると、でたらめなコピペによるでっち上げ記事があったり、誤りを指摘された記事の監修医師クレジットが匿名のものにサラッと置き換えられてしまったりするようですね。ずいぶんと不思議なことになっています。

サイトトップに明記された「5231名の医師」という数字のインパクトはなかなかすごいものがありますが、これについても妙な噂がネット上に流れておりました。どこまで信憑性があるかと問えば、大きく「?」が付く代物ではありますが、すでにオリジナルの投稿が削除されてしまっているあたり逆になんとも気になってしまうものがあります。

【魚拓】ヘルスケア大学の医師監修名義貸し疑惑(はてな匿名ダイアリー 17/4/17)

先日同期の友人が、「ヘルスケア大学」に勝手に自分の名前を使われているとぼやいていた。
(中略)
問題は、「医師・専門家を探す」(http://www.skincare-univ.com/healthcare/adviser/)というページ。こちらに大量の医師が一覧表示されているが、自分の同期はここに無断で名前や所属医療機関の情報を載せられてしまったらしい。他にも数名、同様の被害に遭っている医師を確認できた。写真付きで出ている医師も、クリニックのホームページ等から勝手に拝借してきた画像を載せている様子。URLも”adviser”となっていて、いかにもアドバイザーとして登録されているかのような印象を与える。
(中略)
俺の中ではこのサイトは第二のWELQと位置づけて炎上やむなしと考え、増田に投稿させていただいた次第。はてな匿名ダイアリー
この書き込みにある情報はなかなか面白くて、ヘルスケア大学の出自が元々は「スキンケア大学」であったということや、4月17日当時の参画医師数が「5274名」とあり、この記事を書いている5月2日現在の5231名とは微妙に違っているのも分かります。なお、この投稿が削除されてしまった理由は謎ですが、もしかしたらサイト関係者からの申立などがあったのやもしれません。で、実際にヘルスケア大学サイトの「医師・専門家を探す」というページを見ると、現時点では「医師:4615人、専門家:99人」のリストが見つかりますが、サイトトップにある医師数とはまた微妙に異なる数字になっているあたり、どういう事情なのか良く分かりません。

ここに顔写真付きで出ている皆さんは全員がここに掲載されていることを認識されているのかどうか大いに気になるところです。中には顔写真の代わりに謎のロゴが掲載されている医師紹介もありますが、全日本民医連のロゴなどが使われている情報は明らかに不自然ではないでしょうか。穿った見方をすれば機械的にネット上から病院名や医師名、画像データなどを自動収集して掲載いるのではないかと疑われてもしかたないでしょう。なかなかすごいことになっています。

実際のところ、この「ヘルスケア大学」や「スキンケア大学」については、WELQ問題が起きていた昨年暮れにも問題は指摘されており、WELQのようなクラウドソーシングを使った問題記事量産の仕組みではなさそうなものの品質の低さには定評があったことが分かります。

https://twitter.com/waki1711/status/806706752880160768

「ヘルスケア大学」もとんでもない。これを医師が監修している、って、どういうこと?酵素関連のへんてこ記事を量産している。たとえば→酵素サプリメントの選び方と効率的な摂取方法 http://www.skincare-univ.com/article/009572/
松永 和紀 @waki1711 - Twitter

酵素サプリメントの選び方と効率的な摂取方法(ヘルスケア大学 17/3/17)

魚拓(なお、本件記事は16年11月以降何度か内容が更新されている)


ヘルスケア大学の記事を添削してみる。(びんぼっちゃまのブログ 16/12/9)

しかしながら、先日婦人画報に連載しているメディアアクティビスト・津田大介さん「見る前に跳べ!」という連載記事の中で、ヘルスケア大学が「ウェブで信頼できるヘルスケア情報」として取り上げられているとこのリッチメディア社のサイトで告知されていました。

「婦人画報」にヘルスケア大学が掲載されました。(リッチメディア 17/4/28)
魚拓

確かに「5,000人以上の医師が監修するヘルスケアサイト」として好意的に取り上げられていて、本気で紹介しているのだとしたら大変なことです。さっそく津田大介さんに問い合わせをしてみると「当該サイトについての記事に疑義が生じている件は承知しています」としたうえで「いくつかの記事に目を通した限りでは問題ないように思えたのですが、記事の数も多いため、すべての記事をチェックできたわけではありません。編集のチェックも入るため、自分の確認作業が甘くなっていた部分はあるかもしれません」との回答でした。

[[image:image01|center|]]

津田大介さんは「リッチメディアの担当者とも話して、医事監修などの実態などをヒアリングし、その内容次第で次号以降の同欄で何かしたらの補足を行うことも編集部と相談」するそうですが、実態をヒヤリングしていなかったのに婦人画報でお薦めされていたとなると津田大介さん自身がフェイクニュースに気づかなかったことになります。早めにどうにかしたほうがいいと個人的には感じますが、一方で問題となるこのリッチメディア社、一昨年は株式上場を行おうとし、上場承認されていたにも関わらず取引先との関係や売り上げの計画などが理由で上場を見送った経緯があるようです。

上場4日前に膝に矢を受けてしまってな…リッチメディアが上場ゴールを奪えず負傷退場 - 市況かぶ全力2階建 15/8/6)
リッチメディア上場延期(中止)「決算が予想値に届かない」(IPOサバイバル 15/8/8)
リッチメディア上場延期、「架空取引疑惑」が理由か(THE STARTUP 15/8/6)

リッチメディア社の上場予定については、主幹事がみずほ証券、監査法人はトーマツであります。監査法人はトーマツです。監査法人はトーマツですね。それに前後して、THE STARTUPが指摘するような架空取引が本当にあったのかどうかは分かりませんが、ヘルスケア情報やお見合いサイトで上場を目指していた会社であったことは間違いありません。

それでも足掛け二年ほどヘルスケアサイトを運営してくる中で、いろんなカルマを背負ったままここまで来てしまったのだとするならば、ここ数か月のフェイクニュース騒動はまだまだ終わることはないのだろうと感じます。

ヘルスケア情報はWELQ問題でも騒がれましたが健康情報はセンシティブなので発覚しやすい一方、それ以外の分野のウェブメディアも今後はいろんな出火をする可能性があるかもしれません。引き続き、この方面はしっかりとみていく必要があるのでしょう。

(訂正とお詫び21:38)

文中、同業他社の事例と混同した内容を記述してしまいまして、ご指摘をいただきましたので内容を訂正いたしますとともに、お詫び申し上げます。なお、リッチメディア社については別途続報を考えたいと思っております。