無縫地帯

Googleの検索結果を消したいと思う国家は年々増えているようです

Googleの透明性レポートをみながら、我が国のネット選挙の行く末をちらちらと考察してみました。ブラジルの選挙関連では特に候補者への中傷削除を求める件数が激増しています。我が国もそうなるのでしょうか。

山本一郎です。いい天気な休日ですが、ビールも飲めずに悶々としております。

ところで、Googleは自社活動の透明性を維持するためという名目で、3年前から定期的に「Transparency Report(透明性レポート)」を発表していますが、その2012年下半期版が発表され、公式ブログでも概要を伝えています。

Transparency Report: More government removal requests than ever before(Google Official Blog 2013/4/25)

すでにいくつかの国内メディアが概要に関する抄訳記事を掲載しており、こちらを見れば趣旨はほぼ把握できます。

Googleが7回目の「Transparency Report」を公開 - 削除要請は増加の一途(マイナビニュース 2013/4/26)
Googleの透明性レポート、各国政府によるコンテンツ削除要請が増加傾向(ITpro 2013/4/26)

どうやら、ネット上には各国政府にとって表沙汰にはしたくない情報が溢れており、その対応にGoogleも忙しいようですが、ここで注目したいのは前回の2012年上半期のレポートです。

2012年上半期、各国政府によるコンテンツ削除要請が急増――グーグル(Computerworld 2012/11/17)
Googleが上半期の透明性レポートを公開政府からの要請が年々増加(2013/11/14)

2012年上半期においても、同じように各国政府からの削除要請が増加傾向であると指摘されていたのですね。2012年の上半期と下半期で比べると、削除要請数も対象コンテンツ数も約3割増しで増えている状況です。

政府からのコンテンツ削除要請はこれまでで最高の2285件に達した。合計で2万4179件のコンテンツ削除要求があったという。前回(2012年1月~6月)は要請件数は1811件、コンテンツ数にして1万8070件だった。Googleが7回目の「Transparency Report」を公開 - 削除要請は増加の一途
このままいくと、2013年度上半期はさらに削除要請が増えることになるのかもしれません。

一連の事情の中でも、各国政府による削除要請の傾向で特に興味深いのがブラジルです。

2012年下半期に削除要請が最も急増した国はブラジルだった。2012年上半期の191件(裁判所命令は143件)から697件(同640件)に増えており、大半が昨年秋に行われた選挙に関係している。Googleの透明性レポート、各国政府によるコンテンツ削除要請が増加傾向
このブラジルの件についてはGoogleの公式ブログにより細かい説明が書かれていますが、選挙関係で削除されたコンテンツの多くは、中傷など立候補者を貶める内容であることが削除理由だったようです。具体的にどのような内容のコンテンツであったかは不明ですが、ネット上で選挙活動が許されれば、こういったことが起きるのも避けられないのでしょう。

今年、日本はいよいよ参院選でネット選挙が初めて実施されるわけですが、ブラジルで起きたことと同じように、選挙法に抵触する好ましくないコンテンツがネット上に現れ、その対応でGoogleに削除申請するといった事態も起きる可能性は考慮しておく必要があるでしょう。すでに国内のISP等は色々と事前の準備を進めているようですが、中の人はかなり大変そうです。

「中傷」線引きは?ネット選挙運動解禁悩む接続業者(東京新聞 2013/4/23)

誹謗中傷に当たるかどうか微妙なケースでは、憲法で保障された表現の自由の問題もあり、業者側は難しい判断を迫られそうだ。
おそらくは従来の常識では考えつかないような珍事も起きるのではないかと思うと、不謹慎ですが今からちょっと楽しみでもあります。まあ、インターネットも普通の社会にどんどん組み込まれていく過程なのだ、と思うと分かりやすいかと思います。インフラとして、水道と同じく当たり前の世界になっていくのでありましょうか。