Googleが広告配信事業で大事故の件
YouTubeで配信された白人至上主義団体のコンテンツにブランド広告を掲載してしまうという大事故があり、Googleが謝罪する事件がありましたが、その後の対応も見ていると一筋縄ではいかないようです。
山本一郎です。ドッグイヤーを地で行くIT業界としてはもはや誰も覚えていないような昔話の類になりますが、数年前に某広告会社が自社サービスを宣伝するために「ネット広告のアドテクは、もう死んでいる」というかなり刺激的な発言をしたことがありました。
アドテク企業の中の人が「ネット広告のアドテクは、もう死んでいる」と宣っていたようで素敵です(ヤフーニュース個人 山本一郎 14/12/17)
幸か不幸かアドテク業界はその後も死ぬことなく今に至っているわけですが、ここにきて業界最大手であるGoogleが相当に深刻かつ致命的な事故をやらかしてしまったようです。ちょっと数日経過してなお騒動が収まらない雰囲気になっています。
ヘイトコンテンツでのブランド広告掲載でGoogleが謝罪、対策を説明(ITpro 17/3/22)
先週、同社の英国向けサービスにおいて英政府や大手ブランドの広告が白人至上主義や同性愛者排斥のビデオなどで表示されていたと報じられ、英政府をはじめ、英小売り大手のMarks and Spencer、フランスの大手広告代理店Havas、ドイツAudiなどが相次いでGoogleおよびYouTubeから広告を引き上げる事態となった意図せずして好ましくないコンテンツに広告が配信されてしまった結果、クライアントのイメージが毀損されてしまうという事故はこれまでにもいくつか起きており、昨年は我が国でも同様な事故が起きたのは記憶に新しいところです。
桜井誠・在特会前会長のAbemaTV番組、広告流れたユニリーバ・ジャパンが釈明(The Huffington Post 16/9/25)
ユニリーバ・ジャパンの件ではとくに国内で広告ネットワーク事業者が責任を大きく問われるような事態にはならなかったようですが、英国での事故は結果的に英国内だけに止まることなく世界的な規模で大手クライアントがGoogleの非検索プラットフォームから広告を引き上げる事態に拡大しており、Googleとしてもその対応に追われる展開となっています。
ベライゾンとAT&Tがグーグルへの広告提供を一部中止(ロイター 17/3/23)
米通信大手ベライゾン・コミュニケーションズとAT&Tは22日、アルファベット傘下のグーグルと動画共有サイトユーチューブへの広告提供を一部中止したと発表した。いずれも社会的に問題のある動画とともに広告が掲載される不安がある点を理由に挙げた。ロイターこれまでGoogleのYouTubeにおける広告配信は人手を使わずアルゴリズムによる完全な自動化でコンテンツにマッチした広告を表示できることが売りだったわけですが、そうした最新のアドテクが実は役立たずであったことが露呈してしまったというところでしょうか。天下のGoogleもアルゴリズムの調整だけで直ぐに事態を改善することはさすがに無理なようで、当面は人海戦術で急場をしのぐようです。
ユーチューブ広告問題、グーグルがスタッフ増員で監視強化へ(ロイター 17/3/22)
今後は大規模な増員で動画の審査を早め、人種や宗教などに基づき他人を攻撃する内容を含んだ動画には広告を掲載しないようにする。ロイターGoogleのことですからそのうちお得意のAIだけで問題を解決してしまうのかもしれませんが、やはり大規模な増員といった人手に頼る手法は強力だなと妙に感心してしまうものがあります。そこから問題となるコンテンツの洗い出しができるシステムを構築するのでしょうが、アナリストたちはこの問題の当面の解決は先になるだろうと話しているようです。
莫大なリソースを擁するGoogleでさえこうした広告配信にまつわる問題をアルゴリズムなどのテクノロジーだけで現状解決することは無理であることがはっきりしたわけですが、はたして国内のネット広告配信事業者は一体どうやってサービスの質を担保するのか気になるところです。まあ、何か大きな事故が起きて訴えられでもしない限りはそんなこと誰も考えていないのかもしれませんが。
この問題に関連してネット広告で訴えられるということでは、アドテクとは対照的な昔ながらのアナクロな不当表示でやらかした案件が報道されていましたね。
IT大手GMO、不当表示で処分「今なら無料」半年続ける(共同通信 17/3/22)
GMOもこの手の話題では比較的紳士的で穏便な対応をする会社でしたが、まさかこんなど真ん中な消費者事案で処分されるようなことをされるとは思っていませんでした。襟を正していただければと強く願う次第です。