無縫地帯

大阪万博誘致案がいろいろとトンデモな方へ向かっている件

2025年の万博誘致活動を計画している「大阪万博」周りで、知能指数の足りなさそうな概要資料が経済産業省の手によって作成され、批判が出ています。

山本一郎です。2025年に国際博覧会(万博)を大阪へ誘致しようということで一部の人達が大いに盛り上がっているようです。正直、私には何をどうしたいのか、良く分かりません。大阪に誘致するカジノと連動させたいとか別の事情があったりするのでしょうか。とくに経産省は熱心に動いているようですが、あまりの熱心さが高じてなのか省内の中の人が暴走気味の不始末をやらかしてしまったようです。

万博の概要に関西弁の資料添付 経産省が不適切として撤回(NHKニュース 17/3/14)

経済産業省は2025年に大阪での開催を目指す万博の概要を取りまとめた報告書案で、関西弁で書かれた別の資料を作成したところ、不適切な表現が入っていたとして、この資料を撤回することになりました。
(中略)
世耕経済産業大臣は、14日の閣議のあとの会見で「関西出身の私が見てもセンスのよい内容だとはとても思えない」と述べたうえで「不適切な表現も入っている。おわびして撤回をさせていただきたいと思う」と述べ、陳謝しました。NHKニュース
当該資料を作成した本人にしてみればかなりイケテルという思い込みからノリノリで取り組んだに違いないと想像されますが、結果的にはまったくいけてなかったというよくありがちな独りよがりの空回りの展開。結果的には世耕弘成さんが仏頂面で頭を下げざるを得ないところまでいってしまいました。おつかれさまです。

まあ経産省も中には悪乗りしちゃう変な人はいるだろうし、滑り芸が飛び出すのも仕方ないよねと思っていたのですが、万博の大阪誘致に関してはほかにも微妙な話が見つかっております。

大阪万博新たなテーマ公表(MBS NEWS 17/3/13)

2025年、大阪万博の新テーマに掲げることになったのは「いのち輝く未来社会のデザイン」。では、このテーマに沿って具体的に万博で何を見せるのか?資料をじっくり読むと…。

「万博婚。遺伝子データを活用したマッチングなど、新しい出会いを応援する」(パビリオン案「万博婚」)MBS NEWS
遺伝子データを収集して出会い系イベントですか。華々しいといいますか、正直いろいろと社会的に波紋を呼びそうな企画ですが、どういうコンセンサスを得てこの企画を実施するのか興味津々であります。遺伝子データで婚活マッチングとかいって、これで相手がうまく見つからなかったり破談に終わったりすると遺伝子レベルで生涯独身というレッテルを貼られかねないという点で画期的です。学術的な裏付けをつけようもなさそうだし、大丈夫なのかと本気で思ってしまいます。

で、本当にこんな提案が出されているのか確認したく経産省のサイトをあたってみたのですが、どうやら当該資料はサイト上から削除されてしまっているようです。これもやはり不適切だという判断なのでしょうか。よく分かりません。あまりに気になるのでウェブ魚拓で探してみたところ、しっかりとPDF書類が残されておりましたので全78ページとややボリュームありますが興味のある方はそちらを参照してみてください。

2025年国際博覧会検討会 報告書(案)(ウェブ魚拓)

気になる遺伝子データを活用したマッチング企画の「万博婚」などについては「2025年国際博覧会の展開事例集」として46ページ目以降に記載があります。

万博婚数千万人が来場する万博で、遺伝子データを活用したマッチングなど、新しい出会いを応援する。また、万博会場で、結婚式をあげることも可能とし、幸せを来場者にお裾分けする。2025年国際博覧会検討会 報告書(案)
ほかにも、遺書をしたため棺桶に入るイベントや、地獄を謳歌する音楽フェス、バーチャルに死刑執行人を体験、死を身近に体験するためのバンジージャンプ、VRによる仮死体験、ARによる黄泉体験、世界の葬儀体験等々、妙に抹香臭い印象の企画が多数リストされており、なんだか無駄に金とテクノロジーを注ぎ込んだ総合お化け屋敷的なグロテスクものができあがりそうです。

はたしてこうした見せ物が万博の催し物として相応しいのかどうかちょっと理解に苦しむところもありますが、万博の意義として「人類は二度の世界大戦と環境破壊を経験し、科学技術万能主義の限界と矛盾が明らかになることで、国際博覧会に人類共通の課題解決を提言する場としての役割」が求められているという点をいろいろと突き詰めていくと結果としてこういことになるのかもしれません。

まあ、現時点ではあくまでも「案」ということであり上記のような企画がそのまま実現されると決まったわけではありませんし、まずは誘致が成立しなければまったくの絵に描いた餅ですから、杞憂だと言われればそうかなという気分にもなれます。それにしても、こうしたトンデモ案をもってして世界へプレゼンするのだとするとなかなか勇気があるといいますか、万博というのはそういう類の面白イベントだったんだなと認識を新たにする次第です。

なお、肝心の万博誘致に関しては、大阪はレース前からすでに絶望的という下馬評であります。そもそも対抗馬のパリ万博が前回開催が1947年と半世紀以上昔のことであり、サイトもできてて完全に仕上がってる雰囲気でございます。

パリ万博誘致公式サイト

おまけに、日本全体で言うならば「愛・地球博」なる愛知万博が2005年に開催されていて、もう「なんで大阪で万博をしようという気持ちになれたのか」というレベルで話にならないわけですよ。

愛・地球博

穿った見方をするわけではありませんが、経済産業省が盤石な安倍政権のバックできちんと機能していることは高く評価される一方、権勢を誇る驕りでもあるのかこういう気の緩んだことをしているからしょうもない企画を立てたり微妙なスキャンダルの火種になっている安倍昭恵女史が跋扈してしまうのではないかと感じます。

やはりイベントドリブンではないきちんとした政策を未来に向けて打ち出してほしいと願っていますし、適当な仕事で浮かれた所業が面白がられるようなことが無いほうがいいと思うのですが。