「19年元日に新天皇即位」もうこの際ですから「元号」普段使いするの、やめませんか
19年元日に新天皇即位、天皇陛下退位の話が広がっていますが、これを機に、元号をどのように使っていくのか改めて考える必要があるのではないかと思います。
山本一郎です。帰宅するなり飼い猫が私の足の匂いを嗅いで飛び上がって逃走したのを見て、ちょっとしたハートブレイクを感じております。
ところで、10日から11日にかけて一斉に報じられた天皇陛下の退位に関わる情報が大いに話題になりました。まだ本当にどうなるのかは分かりませんが、もしも報道が事実であるとするならば概ねの道筋が見えたということで、一連の譲位についての議論に決着がつくのではないかと思われます。
何より、ご高齢にも関わらず長年の公務をきっちりと続けてこられた天皇陛下には、私も一人の日本国民として頭が下がりますし、どのような内容であれご意向がしっかりと伝わりゆったりとした日々を送っていただきたいという気持ちに変わりはありません。いろんな賛否あるようですが、流れとしてはこれがベストだったのではないでしょうか。
【天皇陛下の譲位】新元号は平成31年元日から皇室会議を経て閣議決定へ法案提出は今年5月連休明け(産経新聞 17/1/10)
19年元日に新天皇即位、元号は半年前までに (読売新聞 17/1/11)
で、記事中には「国民生活への影響を最小限に抑えるため、新元号は元日から始め、事前に公表することが望ましいと判断した」とあるわけなんですが、さっそく民間では思惑その他舞い上がっており、特需の見込まれる手帳やカレンダーなどの印刷会社やはんこ屋の株価が急騰するなど話題になっています。
産経新聞「2年後に新元号」の飛ばし記事、平成31年問題と元号相場に号砲鳴らす - (市況かぶ全力2階建 17/1/10)
もちろん、改元と言えばシステム屋の世界も大変な騒ぎになるわけでありまして、前もって改元の日付が予告されていることは歓迎されるべきだというツイートまで出て、おおいに賛同されたりしています。
陛下のご決断に日本中のシステム屋が救われたことは、何らか明確な形で感謝の意を表明したいものです。一方で、長らく日本人の生活に密接に関係してきた元号ですが、お役所方面や契約書などでは元号を使い日付を表記するのがいまなお一般的です。直近の話とかであれば数年分まとめて覚えればそれで済むものの、不動産取引で「あれ、昭和58年って築何年だっけ」とか、登記上げてみて「大正11年とか創業何年だ?」とか、国内の文書を海外に翻訳するときいちいち元号を西暦に直すなどの手間が膨大にかかります。施工された法律を遡って逐条解説とか読んでいても、日付を元号で管理するのがどれだけの意味があるのか悩ましいと思うことは多々あります。
元号変更日が決まっててそれも年の切れ目で、新元号も半年前にわかってるなんてどんな天国。
茂田カツノリa.k.a.@shigezo
とはいえ、日本人が日本で暮らすにあたって昔から使い続けてきた元号は大事な文化資産であり伝統であることには変わりありません。そもそも明治維新以降、改元に関する考え方が変わったおかげでそれ以前のコロコロと元号が変わる不合理から解放されたのもまた事実です。元号を考えるとき、まさか現代の日本人が半世紀遡って法律や登記をひっくり返して物事を調べたり、役所に提出する書類の日付が元号縛りになって面倒なことになっているとは思いもよらなかったでしょう。
個人的には、合理性を求められるような公的な書類については元号から西暦に統一し、過去の元号が使われた書式については逆引きできる仕組みを用意する代わりに、もっと生活に身近なところで元号による日付管理や表記が西暦と併記できるような仕組みになるといいなと思うわけです。ある種、ノスタルジーとして「昭和を思い返す」とか「ああ、平成ももうすぐ終わるのだな」という感慨を持てるのは日本人だけです。そういう時代性に紐づくところはしっかりと残しながら、親の歳を思い返すときに頭では「西暦から25をひけば昭和になるのだ」と分かっていてもその一手間がどうにかならないのかなと思うわけでありまして、お役所の書類もせっかくB5からA4になったことですし、何かできんもんだろうかと思うわけであります。
天皇陛下の退位、譲位を見つめながらも、日本の伝統を大事にしつつ合理性も見据えられるような改革が行われるきっかけになるといいのですが。
なお、少し古い記事ですが、日付の連続性や文書取り扱いの合理性を考える上で、参議院での元号にまつわる答弁や、東洋経済での論考記事を参考までに置いておきます。
第108回参議院質問主意書(参議院 1987/4/10)
文書は最低西暦を併記、統計からは元号一掃を (東洋経済オンライン 12/2/13)
1国・地方公共団体等の公的機関が元号を使用すべき憲法上の義務はない。
また、現在、国・地方公共団体等の公的機関の内部において事務の統一的な処理のため元号の使用を義務づけるような規則等は別として、国民又は国・地方公共団体等の公的機関に対し、一般に元号の使用を強制する法令は存在しないと考える。
2国・地方公共団体等の公的機関の事務については、従来から年の表示には原則として元号を使用することを慣行としてきている。したがつて、一般国民から公的機関への届出等においては、公務の統一的な処理のために、書類の年の表示には元号を用いるよう一般国民の協力を求めてきているが、このような考え方は今日においても変わりがない。