無縫地帯

ニュースの切り口を変えると世間の見え方も変わりますね

読売と日経で、産業支援のためネット個人情報の取り扱いについて総務省が検討を始めたというニュースが出ておりますが、実際の元ネタと思われる内容と報じられた記事の表現の微妙な違いが興味深いです。

山本一郎です。あれやこれや、いろいろ起きておりますが、今日も私は元気です。

ところで、読売と日経で、産業支援のためネット個人情報の取り扱いについて総務省が動き出したという主旨の報道がありました。

ネット個人情報収集指針、IT産業支援で作成へ(読売新聞 2013/4/23)
ネット個人情報活用で官民組織ルール策定へ総務省(日本経済新聞 2013/4/23)

総務省はインターネット上の個人情報の活用を進めるため、利用の際のルールを作る官民の新組織を年内に立ち上げる方針だ。利用目的の明示や個人からの同意取得の義務化などを盛り込む。
日経の記事によれば、「意見の公募などを経て、今夏に最終決定」し、「年内に設置する方針の新組織は国や企業、消費者団体、有識者らで構成する」とあります。

これらの記事だけを読むと、総務省がIT産業支援を骨子として突然動きだしたニュアンスに見えてしまいますが、実情はやや違うと言えましょう。

いずれの記事でも正確には触れられていませんが、上記の話は、総務省が平成21年4月から開催している「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」の中で、昨年12月に設置したワーキンググループ「スマートフォン時代における安心・安全な利用環境の在り方に関するWG」による中間発表を受けたものと思われます。

総務省のスマホ利用環境WGが中間まとめ、利用者情報の適正な取り扱いなど提言(INTERNET Watch 2013/4/22)

スマートフォンにおける利用者情報に関する課題への対応や、サービスの適正な提供のあり方、アプリの利用における新たな課題への対応について、これまで行なってきた検討を踏まえた中間とりまとめを行った。
こちらの記事を読むとわかることですが、同ワーキンググループにおいては、産業支援という側面は様々に議論されている課題の中のほんの一部であり、どちらかといえば、スマホが当たり前となりつつある今日の通信環境をどう整理して利用者の立場を守っていくかというポイントが大きく、青少年によるSNS利用の現状なども検討されています。

なお、総務省による中間取りまとめそのものはPDF形式で概要と詳細が公開されています。

利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会中間取りまとめの公表(総務省 2013/4/19)

読売と日経の2紙が、今回ことさらに産業支援という部分を強調するような形でこの件を取り上げたのは、やはりアベノミクスで踊らにゃ損みたいな空気がどこかにあったのかもしれません。

ところで、国のIT施策といえば、警察でも動きがあるようですが、これはちょっとどうなんですかね?

警察庁有識者会議:サイト管理者が通信遮断を匿名悪用で(毎日新聞 2013/4/18)
日本の警察庁、匿名化ツール「Tor」のブロックをISP各社に要請へ(WIRED.JP 2013/4/22)

解説が一部勇者によって掲載されておりますが、実に興味深いところであります。

警察庁が ISPに Torのブロックを要請!? (セキュリティは楽しいかね? Part 2)

個人情報を巡る産業界のつばぜり合いについては、いずれじっくり書きたいと思います。もはや、私も人事ではないので。