無縫地帯

やっぱりドコモは脱土管? 頑張ってるけど微妙な試みたちの現状もついでに

ドコモが発表した新サービスや、そこから透けて見える戦略らしきものをまとめてみました。どこもユーザーとしてもちょっと心配するぐらい、のんびりと幅広い方向に伸びていっているので、大丈夫なんだろうかと。

やまもといちろうです。官憲の犬です。

前回、本稿でドコモがキャリアメールに熱入ってないんで土管屋にシフトするんじゃないの、という話を書きました。その日の夜に、ドコモが「やっぱ1月は無理やったわ。3月でどや」というリークがあったようです。ケータイWatchにて、改めて「ドコモメール」が延期になったという報道があるんですが…。

「ドコモメール」、提供時期が3月に

ただし、この件に関してドコモの公式なアナウンスなどは、Webサイトのお知らせページなどを確認する限り出ていません。ドコモの中の人に確認しても、よく分からん返答です。憶測記事なんですかねえ?

また、ドコモの偉い人から「土管屋で甘んじたくないから他にもいろいろ手を打ってるんだよ。そっちもちゃんと紹介してよ」という熱いご要望がありまして…ただ、コミュニケーションツールとして一番スケーラブルで拡張性がありコスト対効果が読みやすいキャリアメールが遅れてるのに、手間がかかって外部業者と組まねばならず中抜き商売でキャリア決済に依存・切り売りとなる「その他大勢」のサービスばかりが拡張されているというのは戦略的にいかがなものかと思うわけです。

んで、NTTドコモが「2013年春モデル」の1つとして、中国Huawei製タブレット端末「dtab」を発表。

dtab (NTTドコモ製品紹介ページ 2013/1/22)

スマホユーザーにドコモが提案するWi-Fiタブレット「dtab」 (ITmedia 2013/1/22)

dtabは携帯電話回線には対応しないWi-Fi専用モデル。アマゾンが販売するタブレット「Kindle」を強く意識した販売戦略を採り、キャンペーン対応という形で1万円を切る低価格を打ち出す、ってことらしいんですが、出口がハードというやり方は過去のドコモが圧倒的シェアであったころの勝ちパターンだったとはいえ、この敗戦処理的現状では…まるで電子書籍プラットフォーム黎明期のシャープザウルスのようなしょっぱい専用機路線とならなければ良いのですが。

ドコモが提供するコンテンツサービス「dマーケット」に完全対応しているのが大きな特徴で、ドコモが掲げる新コンセプト「docomo Smart Home」の大きな柱となる製品とされています。家族全員がタブレットやスマホからdマーケットを利用して、コンテンツや商品を購入し楽しむというライフスタイルを提案するという話でありますが、もはや生活シーンでキャリアがリビングやライフスタイルの真ん中に来ることなどないと思うので、どうしてくれようかと感じるわけです。いや、理屈は分かりますけれども、ドコモが前面に立ってコンテンツマーケットの窓口を作りましたのでさあ使ってください、と言われても他に便利で専門的なサイトが林立する状態でどうやって百貨店ライクな立て付けのサービスに人を呼べるのか、見物であります。

docomo Smart Home (NTTドコモ)

そんで、家庭内でのWi-Fiネットワーク構築に向けては、他の携帯電話会社と同じように無線LANルーター「Home Wi-Fi」の無料レンタルを開始。お、おう。

Home Wi-Fi

ドコモはdマーケットを立ち上げた当初から、ネット通販の雄「アマゾン」を意識しており、加藤社長は新聞でのインタビューでも「段階を踏んで米アマゾンのようになっていく」と発言。ただ、顧客データの容量や既存取扱高も含めて、アマゾンとは全く違う戦略や法的制約の下でドメスティックに戦ってきたドコモにとっては、アマゾンどころか楽天やCCCですら背中が見えない状況であるのも事実です。

スマホ通販強化ドコモ「アマゾンになる」(産経新聞 2012/7/13)

上記発言に対する簡単な感想ブログ。

ドコモ「dマーケット」はアマゾンを目指しているのか。。。 (スマ部 2012/7/15)

さらにアマゾンに追いつくべく、ソーシャルゲームとショッピングのサービスも拡充

ドコモ、ソーシャルゲームで反撃楽天やアマゾンと同じ方向へ一歩 (サンケイビズ 2012/9/28)
ドコモ「dマーケット」でソーシャルゲームに参入海外進出も (ITmedia 2012/10/11)

このタイミングでソーシャルゲームに参入とか、ヤマダ電機より遅いという微妙な展開に。ただまあやらないよりはやったほうが良い、という点では価値があるというか、勉強料ぐらいに思っているのかもしれませんが。そして、上記の流れを受けて、プレジデントが特集記事を掲載。

NTTドコモ新社長はアマゾン、楽天を追いかける【1】 (プレジデント 2012/10/15)
NTTドコモ新社長はアマゾン、楽天を追いかける【2】 (プレジデント 2012/10/15)

2012年10月25日に、dマーケットの売上は順調に推移しているとドコモが発表。

NTTドコモの上半期決算は増収減益、dマーケットの売上高は今年度200億円超に (ITpro 2012/10/26)

一方でGoogleで「dマーケット」を検索しようとすると、自動補完される検索候補で「dマーケット 解約」が2番目に表示されるという事実もあります。これは、契約時に割引目的などでdマーケットのサービスに入会する事例などがあるためのようです。

ドコモのdマーケット、機種変更時に契約させられました。 (Yahoo!知恵袋 2012/5/15)
割引目的で加入したdocomoオプション契約の無料期間と解約手順メモ (情報科学屋さんを目指す人のメモ 2012/5/31)

果たして、dマーケットの事業実績が本当のところどれほどのものなのかは不明ですが、今回のタブレットの安売りや無線LANルーターの無料レンタルからも、さらにドコモがネット通販事業に注力して、しばらくは打倒アマゾン路線を維持するようです。ただ、なんつーか昔の名門がそのときの流行りのサービスを周回遅れで引っ張ってきて野合気味にフルセット備えたところで、ドコモブランドが通用する人ぐらいしか話ができない可能性が高いんじゃないの、というのは非常に悩ましいところであります。そもそも、それってKDDI(au)がやってたスマートパスのパクリですよね。営業方法まで一緒という…。

他にも、NTT印の正規軍ファンドや迂回ファンドがいろんなコマース系のベンチャー企業に出資する事例が多々出てきておりますけれども、そういう面で押す作戦をやるにはちょっと効果が見えるまでに時間がかかりすぎているんじゃないのかな、投資効果をしっかり計測して責任を取らせて撤退すべきものはするという方法論は考えておいたほうが良いのでは、などなど、外野だから率直に感じるプレーもかなりあるなあと思うわけでありました。

平たく言うと、センスの問題だと思うんですよね。戦略とかそういう込み入ったものではなく、イケてる司令塔がいないか、そういう人に権限が集中していないんじゃないか的な何か。それもこれも、ドコモがかつて業界をリードしていた栄光と、しょんぼりした現状との対比が激しいからなんだとは思いますけれども、戦況が思わしくないことに対してドコモ社員の人たちというのは中堅以下とっても緊張感がなく、話が進まないというのは出入り業者すべてが感じていることだと思うので、アマゾンを目指すのであればドコモが既存資源を使ってどのようなイノベーションを起こそうとしているのか、どういう顧客利益を追求しようとしている組織なのか、という根本的なところから問い直さないといけないのではないかな、と勝手に考えたりしています。