Googleがニュースサービスページにファクトチェック機能を導入した件
インターネット上に広がる様々な情報に対し、その信憑性や真実性を担保する仕組みがGoogleなどで始まりました。ネットで出るデマ対策は日本でも進みそうです。
山本一郎です。しばらく酒をやめてて、久しぶりにイベントの壇上で黒ビールをジョッキ4杯ほどあおったところ盛大に酔っ払いました。結構酒には強い自信があったのですが、結構ショックです。人間、酒でも何でも慣れるといろんなものが麻痺するものなんですかね。
ところで、海外報道メディアの間で話題になっていますが、Googleが自動ニュース配信サービス「Google News」において「Fact Check(事実確認)」タグを導入したことを発表しました。
グーグル、ニュース記事に「事実確認」タグ導入(AFP 16/10/15)
米グーグル(Google)は13日、同社のニュース記事に付ける「fact check(事実確認)」タグを導入したと発表した。米大統領選に関連して公の場で真偽の定かでない極端な発言を繰り返すトランプ氏がきっかけになったということで、いろいろと批難の集中する同氏でありますが、禍を転じて福となすといいますか、虚報が拡散しやすいネットメディアにとってはある意味で結果的に良い方向へシステムが改善されたといえるのかもしれません。
(中略)
この新機能は、数多くの主要メディアと米大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ(Donald Trump)氏が事実をめぐって論争を繰り広げるさなかに導入されることとなった。AFP
トランプ候補、選挙結果が投票所で操作されていると主張(ロイター 16/10/17)
Google Newsで提供されるファクトチェック情報は、GoogleをはじめMicrosoftやYahooなどが支援するSchema.orgがファクトチェック用に提供している「ClaimReview」を元に構成しているとのことで、まずは米国と英国でサービスが開始だそうです。
ファクトチェックという言葉自体があまり日本では馴染みがありませんが、欧米諸国のメディアではこの数年増加傾向にあるようで、少し前の情報ながら以下の記事が参考になります。
ソーシャル時代に求められる”ファクトチェック”メディア(News of News 15/1/22)
Duke's Reporters' Labが、世界のファクトチェックメディアの数が増えていると伝えています。2014年5月に行った調査では、アクティブ* なファクトチェックメディアは59ありましたが、2015年に入り、その数は89に増えているそうです。残念ながら日本国内ではファクトチェックを専門にするようなメディアは存在しませんし、ファクトチェックという行為自体がメディアにおいてあまり重視されていない傾向があるのかもしれません。こうしたファクトチェックが重んじられないことについてはそれを問題視する指摘も以前からありますが、今のところあまり変化はないようです。ファクトチェックが存在しない理由としては以下の論考にもありますが、日本の主要メディアの報道スタイルそのものがファクトチェックと折り合いが悪いからということもありそうです。
(中略)
ファクトチェックメディアとは、その名の通り事実確認を行うメディアのこと。政治家の発言が正しいかどうかのチェックや、オバマ大統領の政策公約達成度を追跡する「オバメーター」を行う「PolitiFact」が有名です。PolitiFactは、2009年にはピューリッツァー賞を受賞しています。News of News
「コメントは編集」が当たり前の日本とは大違いアメリカで活躍する専門家集団「ファクトチェッカー」取材ノートやテープも取り寄せ事実をチェック(現代ビジネス 11/1/13)
日本では、記者会見やインタビューなどでの発言が大幅に編集されて新聞紙面上に載ることが多い。ここでの「編集」とは、紙面上の制約から発言の一部だけ抜き出されるという意味に限らず、発言自体に手が加えられるという意味も含む。現代ビジネス厳密なファクトチェックが日本のメディアで行われるようになると、色々と困る人はメディアの中にも少なくなさそうです。
今のところはせいぜいが、メディアの誤報があった際にそれを取り上げて検証するニュースサイト「GoHoo(ゴフー)」がいくらかファクトチェック的な役割を担っていると言えなくもありませんが、もう一つ踏み込んだファクトチェック機能が実現することが望まれ状況だと思われます。
GoHoo
GoHoo(ゴフー)は、マスメディアの報道の正確性などを検証し、「報道品質」向上やメディア・リテラシーに有益な情報を提供するニュースサイトです。非営利の一般社団法人日本報道検証機構が運営しています。GoHoo日本の事例では、やはりテレビのワイドショーがデマを流してしまい、結果としてそれに踊った国民が混乱するという事案が多々あり、先日も豊洲新市場の件で森山高至さんや高野一樹さんが行った発言に誤りがあることで、どうもガセネタを流されて被害を被った側がテレビ局各社に問題解決の申し入れを行い騒動が広がりつつあります。
テレビ局は、なぜ豊洲問題で騙されたのか(ヤフーニュース個人 山本一郎 16/10/9)
Buzzfeedでも誤報の検証を進めていくプロジェクトが立ち上がったりするなど、いろんな動きはあるようですが、このあたりは日本でも徐々に進められていくと思いますので、注目してまいりたいと存じます。
やはり、炎上商法のようないっときのPV稼ぎがうまくいって麻痺してしまうと、それを繰り返さないとビジネスが成り立たないような状況に陥ってしまうわけでありまして、この辺は酒もガセネタも同じなんだな、だんだん過激になって、最後は身体を壊したり破滅をしたりといったところまで追い詰められてしまいかねないのだ、という気持ちを新たにしつつ、また再び節酒生活に戻りたいと思います、はい。