Kindle Unlimitedが激しく迷走中
Amazonの読み放題サービスKindle Unlimitedで発生したトラブルで、配信契約をしていた各社でトラブルが発生、読めるラインアップが日に日に変動しているというトラブルが発生しています。
山本一郎です。昔から「大丈夫ですか」と聞かれることの多い人生ですが、大丈夫であった試はありません。
ところで、8月に日本国内向けにも提供開始されたAmazonの電子書籍読み放題サービス「Kindle Unlimited」ですが、どうもかなり迷走しているようです。
まずサービス開始から約1か月のうちに、人気のある書籍がラインアップから消え始めるという現象が発生しました。
アマゾン読み放題、人気本消える利用者多すぎが原因?(朝日新聞 16/8/31)
今月3日にスタートした通販大手アマゾンジャパンの電子書籍読み放題サービスで、人気のある漫画や写真集などがラインアップから外れ始めた。サービス開始に合わせて多くの書籍をそろえようとしたアマゾンが、出版社に配分する利用料を年内に限って上乗せして支払う契約を締結。しかし想定以上の利用が続いて負担に耐えきれなくなり、利用が多い人気本をラインアップから外し始めたとみられる。彼らが言うには「Amazonが読み放題サービスのラインアップで手配した各出版社への利用料予算が早くも破綻してしまった」ことが原因のようですね。しかし、サービス開始からわずか1か月あまりで自社都合から事業パートナーである各出版社やエンドユーザーの読者に対して、こんな不安定なサービスしか提供できないようではちょっとまずいのではないかと感じたわけです。
(中略)
アマゾン側から「想定以上のダウンロードがあり、出版社に支払う予算が不足した」「このままではビジネスの継続が困難」などの説明があったとしている。朝日新聞
で、Kindle Unlimitedのサービス開始から2か月目のラインアップ状況は以下のような感じだそうです。
Kindle Unlimitedサービス開始から2カ月経ったので、ラインアップをジャンル別・出版社別に当初と比較してみた(見て歩く者 by 鷹野凌 16/10/2)
10月1日朝時点での読み放題対応は12万8456点。開始当初の14万点超、1カ月前の13万3000点に比べるとだいぶ減った感があります見て歩く者 by 鷹野凌ジャンル別や出版社別での内訳を見ても、たった2か月の間でラインアップの増減が著しくまったく安定していません。
こういう状況だと書籍データを提供する出版社側も付き合いづらいだろうなと思っていた矢先になんと講談社が異例とも言えるかなり強い抗議声明を発表します。
アマゾン「キンドル アンリミテッド」サービスにおける講談社作品の配信停止につきまして(講談社 PDF書類)
講談社は声明文の中で「このような状況に、書目を提供してきた出版社として大変困惑し、憤っております」と、まさに激おこであることを隠そうとしていません。企業が公に声明を出す際にはあまりこういう表現はしないですから、その怒りようは尋常ではありません。
テレビをはじめとしたメディアもこの件については一斉に報じています。
電子書籍の配信停止 講談社がアマゾンに抗議声明(NHKニュース 16/10/3)
講談社、読み放題から削除で抗議アマゾンジャパンに(共同通信 16/10/3)
講談社、Amazonへ強く抗議「Kindle Unlimited」から説明なく全作品消され「憤っております」(ねとらぼ 16/10/3)
やってしまいましたね。一体この落とし所はどこにあるのか。なお、この記事を書いている時点では講談社側の抗議に対するAmazon側のコメントなどは一切出ていないようですが、ここまで騒ぎが公になるとそれなりの対応が求められそうではあります。
Amazonの日本におけるKindle運営については、これまでKindle事業本部統括事業本部長を務めておられた玉木一郎さんが、なぜか先日鳴り物入りで国内サービスを開始したばかりのSpotify Japanの代表取締役に華麗な転身を図られたりしています。電子書籍業界に詳しい人々の間ではAmazonでは一体何が起きているのだろうねといった詮索話も密かに盛り上がったりしていましたが、どうもAmazon Japanの表向きの発表とは違うAmazon全体の事情が別にあるようです。さらには、内々で監督省庁からのヒヤリングも8月からうっすら開始されているという情報も出てきており、この先何が起きるのか分からなくなってきました。
今回の問題に詳しい関係者の中から、Amazonとの契約条件については表には出せない話も色々と出てきているようです。事実関係を当事者以外に確かめようはないのですが、漏れ伝わる話が事実であるならば、何のための電子書籍事業なのかいま一度問い直す必要はあるかもしれません。
出版業界の中の人達は今回の講談社の一件で思うことは多々ありそうであります、はい。
まあ、いくら読み放題だからって半エロ漫画ばかり読み漁っていると「そういうアカウントなのだ」と思われる可能性もあるので、未来のあれこれが気になる方はなるだけご自身の本垢と紐づかない方法を模索された方が一般的にはよろしいのではないかと考える次第です。