盛大にガセネタを乱舞させていた森山高至さんが東京都専門委員に就任のお知らせ(追記あり)
小池百合子都知事の進める豊洲新市場関連で、かねてから懸念視されていた森山高至さんはとの業務に深く関わる企業の取締役であることが分かりました。併せて、問題にまつわる着眼点を整理してみました。
山本一郎です。消防庁に専門委員があればなりたいです。
ところで、地下ピットの設置の報告問題については、石原慎太郎元都知事が事前に報告を受けていたことが判明して、一気にトーンダウンしてしまいました。
石原元都知事、地下空間「報告受けていた」(ヤフーニュース日本テレビ系(NNN) 16/9/16)
東京都の知事秘書室も、すでに退職した各局長経験者も、本件については「石原都知事に報告を行ったと聞いている」という回答なので、誰にも報告されずに話が進んだと問題となっていた盛り土や地下ピットについては「都知事に報告済みでした」というオチで終わりそうです。詰め腹を切らされる都職員がいないだけでも良かったね、といったところでしょうか。
豊洲新市場の施主は東京都であり、環境基準という点ではすでに東京ガスとの処理事業で完了しています。あくまで東京都で鮮魚など口に入るものを扱う市場としては、土壌に汚染が少しでもあると嫌だ、という「都民の要望」に応えるため専門家会議を設置していたわけですから、当時の都知事である石原慎太郎さんが報告を受けていたのであれば、地下ピットがあろうがなかろうが、特段の報告上の問題にはならないのでしょう。
:一人の都民としては「お爺ちゃん、いい加減にしてね」で、後から石原さんが言ったことの検証や、実態を見守るしかないのかなあと思うわけでございます。昔からかなり適当なことを言ってましたからね、石原さん。いずれ、小池劇場の劇場主と血みどろの政争の果てに共倒れしていただければ良いのではないかと思います。
石原元都知事(83)「設計事務所が変わったことで盛り土からああいうの(地下空間がある設計)に変わったと聞いた。下から(報告が)上がってきて『そうなりました』と聞いただけで、私が決定したわけではない。(地下空間がある設計に)変わったという報告を受けただけですから、市場長から。私は不幸にしてモノを決める権限もないし、知識もないし。とにかく現場がいろんな酌量をして決めたことですから」
石原元知事はこのように話し、知事在任中に都の当時の市場長から「地下空間のある設計になった」と報告を受けていたことを明らかにした。
さて、16日午後になって、かねてから就任が噂されていた「市場問題プロジェクトチーム」の専門委員に森山高至(もりやまたかし)さんが就任されました。
東京都専門委員の選任及び市場問題プロジェクトチームの設置について
この森山さんについてはかねてからいろいろ物議はあるわけですが、たとえば森山さんが取締役として経営に参画しておられる赤坂の建築事務所、株式会社CRAがあります。昨年度2015年9月期の売上高は189億1,700万円だそうです。
株式会社CRA会社概要
[[image:image07|left|いろいろ故あって、知らない先でもないところで森山高至さん(画像修正済み)]]
いずれ報道で出るかもしれませんが、森山さんが取締役を務めるこの株式会社CRAは、今回の東京都が行う公共工事および建築の一部設計や土木、解体などの施工を請け負う企業と競合関係にあります。
そのライバルにあたる会社の数社が、今回問題となった工事の設計や施工で森山さんにいちゃもんがつけられ、しかも、その内容が言いがかりやガセネタであるため、実質的に営業妨害であると当該工事にかかわった各社は判断しています。これが株式会社CRAの組織的な意志によるものとは思えませんが、森山さんもまた、ガセネタを流す理由のある一人であることは充分に推測できます。
つまりは、森山さんは商売敵の仕事に難癖をつけて妨害している、とも言えます。
しかしながら、この森山高至さんは、メディアに出演するときには表向き「建築エコノミスト」という肩書を使い、株式会社CRAの取締役であるという経歴を隠すだけでなく、東京都のプロフィールでも取締役就任の事実を隠蔽しています。もしも、事前に株式会社CRAの取締役を辞任していたのだとしても、登記を見る限り現段階では退任をしていないことが明らかである以上、東京都関係各位もこの専門委員選任のための「身体検査」は行っておくべきでしょう。
「市場問題プロジェクトチーム」専門委員 プロフィール
[[image:image06|left|他の委員が各種経歴を記述しているのに対し、なぜ君は経歴が作文なのか。]]
なお、森山さん委員選任の過程は、すでに風聞として知れていたため、誰がどう推挙したかまで把握されております。その責任を負ったまま、どこぞの補欠選挙に凱旋出馬して当選間違いなしとか緩みまくることのないよう、ご留意をいただきたいと願っております。
また、この株式会社CRAは、中国・台湾からの対日不動産投資の窓口事業を行っている会社でもあり、台湾ではサイトを開いて営業しています。そこのサイトの会社案内(最終更新日が2014年)では、まだ森山高至さんの名前は取締役に掲載されていません。
1棟投資日本不動産投資専家
何か登記情報に書くのが問題ありそうな事案でもあったのでしょうか。
■森山高至さんの華麗なるガセネタの世界
ここで、森山さんがどのような発言をしてきたのか、今回は軽くおさらいしてみましょう。
今回取り上げるのは、『週刊プレイボーイ』10月13日号では、特集タイトル「震度6弱でも、豊洲新市場はアブない!?」というおどろおどろしい文字が並べられて、森山高至さんやそのお仲間のコメントが満載になっていますが、びっくりすることに森山さんの発言はすべて嘘か、強い憶測が混じっている内容で、事実を述べているところを探すほうがむつかしいほどです。
[[image:image02|center|要するに根拠なく「大きい地震来ると豊洲ヤバいよ」って書いてあります。じゃ築地は?]]
#この記事に先立ち、森山高至さんにはメールと書面で先日質問状を送達しましたが、期限までに何らの回答もなかったことは記述しておきます。すでに豊洲新市場のすべての建物は構造計算上の安全は確認されており、その内容については東京都のホームページでご確認ください。
あまりにも間違いやガセネタが多いので、主だったものをピックアップしてみると、次のような感じです。
※1
記事:構造計算とは、耐震性を持たせた設計をするための基礎となる数字を算出するもの。それが間違っていたら、耐震性そのものが根底から揺らぐからだ。
基準を下回る数字を用いていたなら耐震性に問題が出る場合もあるでしょうが、豊洲新市場の建屋そのものの構造計算は審査によって安全だと確認が取れているわけですね。「間違っている」と指摘したいのであれば、その間違った計算式を書かなければいけませんが、先日高野一樹さん(Twitterでの通称は「ペコちゃん」)という一級建築士の人が不安を煽るだけの意見書を都議に提出し、あっさりバレて建築家協会送りになるという破廉恥が発生しました。
ちなみに、この高野一樹さんは森山高至さんと同じ事務所の元同僚だそうです。
※2
建物の耐震性能が基準を満たさない状態になっている恐れがあります。
どの建物の耐震性能が基準を満たしていない可能性を指摘しているのかはっきりしませんが、今回の豊洲新市場についてはすでに安全であることを確認済みであり、そう指摘するからには具体的な問題を明らかにしてもらわなければ風評被害そのものです。
これで耐震性能が基準を満たさないと難癖をつけるようなら、築82年の築地市場は大惨事になってしまうわけですが。
[[image:image03|left|頑張って煽ってるけど、どれも根拠や理由が見当たらないでござるの巻]]
※6
「外周がしっかり固められていない状態で高さが一階高ければ、地震の際の振られ方も違います。」
これは一級建築士の高野一樹さんの言葉になっていますが、そもそも外周に関する平面図の読み違いがあり、問題外の内容になっています。この時点で一級建築士なのに図面も読めないのかという状態で、かつ、周辺の土壌を固めたところでそれはただの土と舗装であり、地下ピットが土で固められてようがそうでなかろうが構造計算にはほとんど影響しません。なぜならば、地中に打ち込んだ500本以上の杭と強固な基礎で全体の構造を支えているからです。
[[image:image04|right|記事の主要部分がだいたい憶測かガセネタという珍しい仕上がり。さすがチーム森山。]]
※11
公共性の高い建物は高い耐震性能が必要になるため、一般住宅の1.25倍とすることが東京都の条例や建築基準法に規定されています。豊洲はこの1.25倍ちょうどの数字しかない。
都の回答を見れば最初の構造計算で1.34倍の安全率があると記載されているのですが、こちらもたいへん恥ずかしいことに森山氏は資料を読み間違えています。「計算する際の優先項目を変えることで耐震性能は1.34倍まで増えた」とか書いてますが、構造計算では優先項目を変えると計算結果が変わることはないでしょう。当初の計画から優先項目自体は何一つ変わっておらず、何を理由にこのようなガセネタを書いているのか不明です。
ひょっとして、過去に森山氏はそのようなことをやったことがあるのでしょうか?
[[image:image05|left|ご丁寧にマンホールは後日アスファルト敷かれることさえ知らない体たらく。大丈夫か]]
このように、記事全編にわたって豊洲新市場が危ないと煽る内容になっている割に、自分たちではまともに計算していないか、根拠のない言いがかりが主体となっています。このような人物がよりによって「市場問題プロジェクトチーム」の、「専門」委員として選任されること自体がやらかしであり、小池百合子都知事による豊洲移転問題が意味のない時間を浪費することは明確であると言えます。
なお、この一連のガセネタを掲載したのが日刊ゲンダイであり、そのネタを検証することなく全力で乗っかった政党こそ、先日「こんなところに強アルカリ性が!」とか「基準値以下のヒ素が検出された」などとほざいていた日本共産党都議団であったことは言うまでもありません。
#ひるおびうっわ、共産党都議団が調査したきっかけは日刊ゲンダイの記事だったのね。それを見て調査に乗り出したと。ゲンダイすげー。そして共産党が“とある建築家”に問い合わせしたのが建築エコノミストの森山高至さんとな!森山さん△!つまり、森山高至さんのガセネタに共産党都議団が乗って、それを小池百合子女史が勘案するそぶりをみせたものだから、騒動が広がったということですよね。取り返しのつかないことだと思いますよ。防衛相時代でやらかしたことと全く同じですね、小池女史。防衛省の55日については、後日、暇があれば関係者の証言をもとに別途記事を書きたいと思います。
Twitter - 朝日庵 @asahian222
■建築家は、おかしいと思ったらきちんと声を上げるべき
最後に、なぜ森山高至さんがこんなところまでのさばったのか、という点について、簡単に論じておきたいと思います。
第一義に、俗にいう公共プロジェクトというのはその性質や内容に限らず受注した民間企業に業務に対する「守秘義務」がかかります。業務にかかる問題点を協議する場合は、必ず担当省庁、あるいは地方自治体の担当者に対して承認を得てからでないと開示することができません。
今回のように、森山高至さんや高野一樹さんが工事に関する憶測やガセネタをメディアで流し、事実と違う内容が報じられても、東京都が問題を確認し対外広報してよいとなるまで、設計を担当した会社も施工を行ったゼネコン以下各社も、反論したくともできない、という状況に陥ります。
その結果が、大型建築物においては当たり前に存在する地下ピットが「謎の空洞」呼ばわりされ、地中深くまで汚染土壌が掘り出され綺麗な土壌に入れ替えられて地下水の汚染状況がモニタリングされているのに共産党が出てきてリトマス試験紙が青くなったと騒ぎ、素手でゴーグルもマスクもせずジャム瓶やペットボトルに汲んだ水を簡易検査にかける所業となるわけです。良いコンクリートに接した水には石灰が溶けてアルカリ性になることは中学校の理科のレベルであって、その程度のことさえも公式に指摘し反論することができず、慎重に「検査結果を待つ」みたいな馬鹿みたいなことで時間稼ぎをされている、というのが現状です。
じゃあ築地市場の空間ベンゼンはどうなのか、築地でのボーリングによる予備調査は結果を見たのかという話になります。走り回るネズミを退治するための殺鼠剤が、排煙をあげるトラックとノーヘル運転のターレーの間のドラム缶に野ざらしにされ、外気に吹かれて舞っている状況を見て、共産党員はそこで働く従業員の健康を考えることはないのでしょうか。
森山高至さん以下こんな馬鹿の方々のために、故ザハ・ハディド女史は人生最後の記念碑となるべき国立競技場のデザインを白紙撤回させられ、失意のうちに亡くなったかと思うと東京都民としてとても残念に思います。彼女に関しては私も誤解していたこともありましたが、今回、多くの建築家の方、築地市場で活躍されてきた方からのお話を伺うことができ、やはり、きちんと「おかしいものはおかしい」と、誰が何といおうと信じることをやるべきだ、という気持ちを新たにしました。
https://twitter.com/kirik/status/771977179131367424
第二義に、知見と良識のある建築家の方々こそが、きちんと声を上げるべきである、と思います。しっかりと検証した結果、やはり豊洲新市場は良くないと結論付ける建築家の方もおられるでしょう。しかしながら、いまだにメディアでの豊洲新市場問題は、地下ピットと地下施設と謎の空洞が混同されています。また、管理水面下4.5mまで掘り下げて汚染土壌を改修し、きれいな土壌に入れ替えるという、一般的な汚染対策という点では不必要なほどに高額の工事をしてきたことを完全に忘れて、ピット内に出た水が地下水だ、汚染の可能性があると煽り続けています。
豊洲新市場は100点満点ではないかもしれないが、関係者の充分な努力により問題のない施設に仕上がったはずが、適切ではない議論で混ぜ返され、無駄に立ち止まった結果が都税のさらなる浪費に繋がっている理由は、物事の是非の判断に必要な「本物の」議論を建築家界隈が行えていないからではないか、と思います。専門家として抱く疑問や意見を、適切に表明し、協会や学会、業界団体と一線となって改めて対応していただく以外、真の意味での豊洲移転はあり得ないのではないかと感じます。
第三義に、メディアの機能の問題です。何ですか、あの共産党都議団の青リトマス紙で右往左往する全国紙や雑誌の記者の皆さんの体たらくは。盛り土があるなしで、どういう構造上の耐震性の問題や、汚染の状況が起きると思ったんですか。そもそも、一般的な環境対策は50cm地面掘って、アスファルトやコンクリートで舗装すれば本来は適法なんですよ。むしろ、都民の「声」を勝手に想像して、安心安全を追求した結果、不必要に重厚長大な大予算市場となってしまったことを反省するほうが先ではないでしょうか。
もしも、小池劇場が話題になってメディア的に面白いからというネタであるならば、むしろ落札率のカラクリや五輪関連施設のほうが、よほど都民のためになるでしょう。
都民の健康、安全安心のために、と細心の注意をコスト度外視で払った結果、ゼロリスク症候群を引き起こし、科学知識の乏しいテレビや新聞、雑誌を巻き込んでこの体たらくで、本当に東京オリンピックは開催できるんですかね。
そこまで騒ぐんなら、もちろん五輪関連建設の入札経緯や設計も調べてひっくり返しますよね、小池女史。ちゃんとやりますよね。ね。
(追記 14:21)
Twitterやメール経由で、森山高至さんや高野一樹さんが過去にテレビや雑誌などで行った発言についての検証を進めるべきというお話を多数頂戴しております。
もしも、特定の番組で森山さん高野さんが出演されて語られた内容で、問題含みであると感じられるものがおありでしたら、遠慮なく私宛にお寄せください。Twitterは「@kirik」、メールアドレスは「BZT00066@nifty.ne.jp」になります。