新しいiPhoneが出るようですが、これどうなんでしょうか
新型iPhoneの発表会があり、そこでの内容が実に微妙なところでして、一方で日本市場への「にじりより」が興味深い発表内容でありましたので、反応含め取り上げてみました。
山本一郎です。iPhone使いですが、仕事ではWindows機とUNIX機を併用しています。
ところで、Apple大好きな皆さんが一斉に盛り上がる新型iPhoneの発表会があったわけですが、なんか様子がヘンです。
iPhoneにマリオ、Suica対応、WatchにポケモンGO――日本向けの内容が盛りだくさんのAppleスペシャルイベント(ITmedia 16/9/8)
新型iPhoneは、ハードの進化もスゴすぎる(東洋経済 16/9/8)
新iPhoneは7じゃなくて『6ss』?確実に進化する機能と本体デザインの関係:週刊モバイル通信番外編(Engadget日本版 16/9/8)
やはり注目すべきポイントはAppleがわざわざ日本市場だけのためにFeliCaチップ搭載の独自仕様モデルを突っ込んできたというあたりでしょう。これはAppleも思い切ったなと感じるわけです。
なんかこう、最近Appleが日本市場に正面から目を見据えてにじり寄ってくる感じがしてならなかったんですが、ここまで踏み込んでこられると「ボディーゾーン突破して間近から話しかけてくる親しげ過ぎる陽気なブラジル人」みたいな感じがしてドキドキします。
そうした展開となった背景には、Engadgetの記事にもあるように「諸外国に比べて極端にiPhone比率が高い日本ですが、やはり、この市場は、アップルにとっても無視できなかったことがうかがえます」というところなのでしょう。で、そうした論考をもっと振り切ってみるとどうなるかは、村上福之さんのブログがかなり痛快なことになっています。
iPhone7に見る日本人のカモにされっぷりと、課金厨と中国政府とAppleの関係。(ふくゆきブログ 16/9/8)
結果として、Appleは今まで中国ラブラブしていたけど、日本のほうが儲かることが分かってきたので、今回の発表に至ったと思う。ありがとうApple。ふくゆきブログやはり優良顧客(=カモ)として日本市場は美味しいよねというブラックな見方をせざるを得ないのでしょうか。そのあたりの判断は読者一人ひとりの判断にお任せしたいところではありますが、今回のFeliCaチップ搭載に至るまでにはかなりの折衝が諸関係者の間で交わされ、色々と苦労があったのではないかと想像されます。実際の国内サービス開始まではまだ時間があるため、すべての問題は解決しておらずとりあえず保留となっていそうな部分も多々ある雰囲気ですが、現時点で分かる話としては以下の記事が詳しいです。
iPhone 7のSuica対応を分析する。「カード版Suica」を置き換え、日本独自モデルで展開(AV Watch 16/9/8)
サービス開始までにはもう少し詳しい話もわかるとは思うが、現状アップルは、「日本でできる限り多くの利用者がすぐ使える」ことを重視し、少々アクロバティックな手法を採ることになったのだ……と筆者は理解している。AV Watchなるほど。相当にApple側も日本の事情に妥協したニュアンスを感じる話となっているのが興味深いです。
しかし、こんな美談を聞かされても日本以外のiPhoneユーザーにとっては全く訴求力のない話であります。まあ、当たり前の話ですけど。メディアは人気者を叩いてなんぼの商売という側面もあるため、どこまでが実情に近いのかは不明ですが、こんな記事もあります。
「最大の目玉がイヤホンジャック無しでは…」失望の声テコ入れ効果は限定的(産経ニュース 16/9/8)
7シリーズの投入で買い替え需要が刺激され、販売台数は一定の回復が見込まれるが、株式市場では「最大の目玉がイヤホンジャクをなくしたことでは消費者は納得しない」との厳しい声も多い。カメラ機能の改善なども施されているものの、2年に1度のペースで投入してきた新機種としては迫力不足は否めない。産経ニュース日本以外の市場では新しいモデルに買い替えるためのインセンティブがかなり乏しいということのようですね。今回Appleは日本市場でのバカ売れに社運を賭けたということになるのでしょうか。日本も以前ほどには景気良くないのでどうなんでしょうね。
さて、iPhoneと同時にスマートウォッチのApple Watchも新モデルが発表されましたが、こちらも微妙な気配を感じます。
アングル:新型アップルウオッチ、フィットネス機能に特化(ロイター 16/9/8)
フィットネス機能への特化により、コアな利用者に対するアップルウオッチの訴求力は高まった。一方でアナリストらは、ニッチなデバイスとしての立ち位置も確立されたとみている。結局、スマートウォッチというのは贅沢なフィットネス用品でしかなかったという結論をApple自らが認めたような展開となっています。腕時計そのものがいまや生活必需品ではなく非常に偏ったニッチな趣味の品でしかないわけですが、当初Appleが目指したと思われる高級腕時計市場への切り込みについては無残にも失敗に終わったという宣言でもありそうです。まあ、18金モデルがいくつ売れたのかはちょっと知りたいところですが。
ジャックドー・リサーチのアナリスト、ジャン・ドーソン氏は「問題なのは、フィットネス用デバイスを求める顧客層が限られていることだ」と指摘。「もっと多くの人に受けるようにするには、機能を拡張しなければならない」という。ロイター
18金のApple Watchは理想的な大馬鹿者発見器(TechCrunch 15/3/12)
見ていて思うのは、我が国の産業は最終的な製品としてフィーチャーフォン(ガラケー)を世界に送り出すことはできなかったが、その旺盛な内需と謎な販売促進費を駆使して、ついにiPhoneのガラケー化に成功した、ということなのでしょうか。
ただ、iPhoneに慣れてしまうとやっぱりAndroidはちょっとなあというところもありまして、もうAppleが日本に本社を移してくれるぐらいの勢いで取り込んでいきたいです。
絶対無理だけど。